「IT未経験」の私が、新しい環境へ踏み出した日
私は現在、同じ野村グループの野村證券 コーポレートIT部 コア・コーポレート課へ出向しています。
出向前は、横浜支店で、野村證券ネット&コール部の業務の一部を担当していました。お客様の口座開設手続き、入出金業務、各種書類の精査、コールセンターと連携したお客様対応などに携わり、証券会社のバックオフィスとして、多様な手続きに正確かつ迅速に対応し、お客様に安心してお取引いただくための後方支援を担ってきました。
そんな私にとって、コーポレートIT部への出向は大きな挑戦でした。ITの実務経験はなく、専門用語もプロジェクトの進め方も、最初は分からないことばかりでした。「自分にできるだろうか」と不安を感じなかったわけではありません。
それでも新しい環境に飛び込むことを決めたのは、分からないからこそ学び、これまでとは異なる視点や専門性を身につけたいと考えたからです。
コーポレートIT部で経験を積ませていただくことで、業務とITの両面から課題を捉える力を身に付け、ゆくゆくは野村ビジネスサービスにおける事業拡大やDX推進に活かしていけると思っております。
現在は、証券取引モニタリングのためのシステム基盤移行・モダナイズプロジェクトに参画しています。
取引モニタリングとは、証券取引が法令や社内規則に準拠して行われているかを監視・管理する重要な業務です。本プロジェクトでは、その業務を支えるシステムを刷新するとともに、外部ベンダーに依存せず、自社内で開発・運用できる体制、すなわち内製化を進めることを目指しています。
プロジェクトには、コア・コーポレート課に加え、複数のIT部署、企画部署、本社コンプライアンス関連部署など、多くの関係者が参画しています。それぞれが異なる専門性や立場を持つなかで、一つの目標に向かってプロジェクトを推進しています。
私はそのなかで、BA(ビジネスアナリスト)を担っています。
BAは、現状の業務や課題を分析し、関係者のニーズを整理したうえで、「何を実現するべきか」を具体的な要件に落とし込む役割です。システムをつくるエンジニアと、実際に利用する現場の方々をつなぐ、橋渡しのような仕事です。
未経験のIT領域に挑戦するなかで実感したのは、これまでの経験が決してゼロになるわけではないということです。野村ビジネスサービスで多種多様な手続きに対応してきた経験は、現場のユーザーの立場に立ち、業務の背景や意図を理解する力として、確かに活きていると感じています。
証券業務の知識とITプロジェクトの現場。一見異なる二つの世界が、BAという役割を通じて、私のなかでつながり始めています。
過去資料と議事録を読み解くところから始まった、キャッチアップの日々
コーポレートIT部への出向後、私が最初に取り組んだのは、過去のプロジェクト資料や議事録を読み解くことでした。
すでに多くの関係者によって議論が重ねられていたプロジェクトに途中から参画したため、まずは「これまでに何が検討され、なぜその結論に至ったのか」を理解する必要がありました。資料には、ITに関する専門用語だけでなく、証券取引モニタリングに関わる業務用語、法令・諸規則、システムの構成や運用に関する内容など、これまでの業務では触れる機会の少なかった言葉が数多く出てきます。
最初は、議事録を読んでも一度で内容を理解できず、「この議論は何を前提にしているのだろう」「なぜこの対応が必要なのだろう」と立ち止まることも少なくありませんでした。過去の決定事項だけを追うのではなく、その背景にある業務上の課題や、関係者それぞれの立場・考え方まで理解しなければ、プロジェクトの一員として適切に発言したり、要件を整理したりすることは難しいと感じました。
また、これまで取り組んできた業務とは内容も進め方も大きく異なるため、最初のうちは「次に何をすべきか」が分からなくなることも少なくありませんでした。システム開発やIT全般の知識が不足していたため、会議での発言内容を理解するにも、資料を読み解くにも時間がかかりました。詳細を把握しきれていない状態のなか、手探りで仕事を進めている感覚もあり、焦りを感じることも正直ありました。
そうした状況を乗り越えるために意識したのは、「一人で抱え込まない」ということです。分からない言葉や論点をそのままにせず、一つずつ調べ、過去資料と議事録を行き来しながら理解を深めました。そのうえで、自分の理解を理し、疑問点や結論を出せずに迷っていることについては、上司や周囲の方に相談するようにしていました。
「分からない」と言い出すことへの抵抗感は、最初はありました。しかし、曖昧なまま進めてしまうほうが、後々大きな問題につながる可能性があります。そう気づいてからは、無理に一人で解決しようとせず、早めに声を上げることを習慣にしていきました。
質問するときも、ただ答えを求めるのではなく、「私はこのように理解したのですが、合っていますか」と自分の考えを添えて確認することを意識しました。自分なりに整理してから相談することで、認識のずれを防ぎながら理解を深めることができました。
また、業務が順調に進んでいると感じているときでも、定期的に認識のすり合わせを行うようにしました。「うまくいっていると思っているのが自分だけだった」ということを防ぐためです。こまめに確認し合うことで、ずれが小さいうちに修正できるようになり、徐々に自分の役割に自信を持って取り組めるようになっていきました。
キャッチアップは、短期間で完了するものではありません。今もなお、資料を読み返したり、新たな論点に触れるたびに学び直したりする日々が続いています。それでも、分からなかった言葉が少しずつ繫がり、過去の議論と現在の検討内容が結びついたときには、自分自身の成長を実感します。
未経験の領域では、分からないことばかりで戸惑ってしまいます。だからこそ、分からないことから目をそらさず、丁寧に読み解き、周囲の知恵を借りながら自分の理解を積み重ねていく。その一見地道にも見えるキャッチアップの積み重ねが、私にとってIT領域で挑戦を続けるための土台になっています。
「聞き取って終わり」にしない。共通認識を積み重ねて見えてきたもの
現在取り組んでいるプロジェクトは、リリースまでまだ1年以上ある、比較的長期にわたるものです。今はちょうど要件定義工程――システムやサービスをつくる前に、何をどう実現するかを関係者で合意していく作業――が終わりを迎えようとしているところです。[IO1] いわば、プロジェクト全体の土台を固めている段階といえます。
このフェーズを通じて、私がもっとも痛感したのは、「共通認識を確保することの大切さ」です。一見シンプルに聞こえるかもしれませんが、実際の現場ではとても難しいことだと感じています。言葉のうえでは合意しているように見えても、それぞれの頭のなかに浮かんでいる業務フローやシステムの動きが、微妙にずれていることは珍しくありません。そして、そのわずかなずれが、後々の工程になってから大きな手戻りや混乱を引き起こすことがあるのだと、身をもって学びました。
そこで私が実践するようにしたのは、ユーザーから出た要望や意見を「聞き取って終わり」にしないことです。相手の話を受け取ったあと、私がどのように認識したのか、どんな業務やシステムの動きをイメージしたのかを、改めて言葉にして相手に伝え返すようにしました。
「おっしゃっていたのはこういうことでしょうか」「今のお話は、このような課題があるということで理解しましたがよろしいでしょうか」と確認することで、その場で齟齬に気づき、修正できるようになったのです。
また、一度確認して終わりではなく、定期的な振り返りや内容のまとめを共有することも意識するようにしました。プロジェクトが長期間にわたると、話し合いの積み重ねのなかで「あのとき決めたこと」が少しずつ薄れていくことがあります。だからこそ、こまめに立ち止まって確認し合う場を設けることが、プロジェクト全体の品質を守ることにつながると考えています。
こうした取り組みを続けるなかで、自分自身の考え方にも変化を感じるようになりました。以前は「どうすれば要望に応えられるか」という視点で物事を考えることが多かったのですが、今では
「どのような仕組みや構造が最適か」
という視点も自然と持てるようになってきました。目の前の要望だけでなく、全体の整合性や その先の運用まで見据えて考える癖がついてきたと思っています。
これも、この出向先でしか得られなかった気づきの一つです。
「恐れすぎず、信頼を積み重ねる。」出向という挑戦が教えてくれたこと
新しい環境に挑戦する際に大切なことは何か、と聞かれることがあります。私が大切だと感じているのは、「新しい環境を過度に恐れないこと」です。
もちろん、知らないことばかりの環境に飛び込むとき、不安を感じるのは自然なことです。私自身、コーポレートIT部への出向当初は、専門用語やプロジェクトの進め方など、分からないことが多くありました。
しかし、周囲の方と適切にコミュニケーションを取り、自分に必要な知識やスキルを一つずつ身につけていけばよいのだと思うようになりました。最初からすべてをできる必要はありません。「できるかな」と悩み続けるのではなく、今の自分に「できないこと」を理解し、それを一つずつ「できる」に変えていく。その積み重ねが、新しい環境で力を発揮することにつながるのだと実感しています。
出向という形で、これまでとは異なる環境に身を置いて仕事をしている今だからこそ、その思いはより強くなっています。環境が変わることへの恐れを手放して、目の前の一歩を踏み出すこと。それが、新しい場所で自分を成長させる第一歩なのだと実感しています。
今後の目標としては、まずはIT領域における専門性をさらに高めていきたいと考えています。具体的には、プログラミングや、クラウドを含むインフラ(システムを動かすための基盤となる技術環境)、データベース(データを管理・活用するための仕組み)などの知識やスキルを身につけていきたいと思っています。技術の世界は日々進化しており、学び続けることが欠かせません。自分の専門性を磨き続けることが、出向先での現在のプロジェクトへの貢献はもちろん、将来的に野村ビジネスサービスに戻ったときの組織への貢献にもつながると信じています。
もう一つ大切にしたいこと。それは、一緒に働く方との信頼関係を築くことです。私は今、異なる文化や価値観を持つ組織のなかで仕事をしています。そのなかで、私自身の言動や仕事への姿勢が、野村ビジネスサービスという会社、そしてそこで働く仲間たちのイメージに直結すると強く意識しています。
だからこそ、私を通じて野村ビジネスサービス、またそこで働く社員に対してポジティブなイメージを持っていただけるよう、日々誠実に取り組んでいきたいと思っています。
出向は、ただ仕事を覚える場ではなく、自分という人間が試される場でもあると感じています。知識やスキルだけでなく、人として信頼していただけるかどうか。その積み重ねが、組織と組織をつなぐ架け橋になっていくのだと思います。
これから出向や新たなチャレンジに臨む方にも、ぜひ伝えたいです。
環境の違いを恐れずに、まずは目の前の方と誠実に向き合ってみてください。分からないことがあっても、周囲と対話しながら学び続ければ、「できない」は少しずつ「できる」に変わっていきます。きっとその先に、想像以上の成長と出会いが待っているはずです。
私自身も、まだ挑戦の途中です。だからこそこれからも、未知の領域を恐れず、周囲への感謝を忘れずに、一歩ずつ自分の道を切り拓いていきます。
※ 記載内容は2026年8月時点のものです。
