輸送力の確保を最優先に。物流の課題と向き合い、お客さまに完成車を確実に届ける
サプライチェーンマネジメント本部の中にある、日本物流部の車両物流グループ。このグループでは、国内で生産された車両を国内向けおよび海外向けに、適正なコストと納期で目的地まで届けるという重要な役割を担っています。
「車両物流グループは約90人のメンバーで構成されており、本社と工場に約半数ずつ配置されています。本社には、国内輸送計画、輸出計画、品質技術、コスト管理、戦略企画を担う5つのグループがあり、私は戦略企画グループに所属しています。
私たちが管轄しているのは、九州、追浜、栃木、平塚にある自社の完成車工場に加え、OEM供給を受けている水島と豊橋、出荷拠点である本牧、京都の計8拠点です」
国内生産拠点のネットワークを活かし、完成車物流の戦略企画を担う管山。現在2つのテーマに取り組んでいます。
「1つめは、輸送ルートの見える化を行い、同業他社との輸送協業の可能性を検討することです。社内システムのデータを活用し、輸送ルートや保管場の空きをBIツールなどで見える化し、自工会にて各自動車メーカーで持ち寄ります。そこで見えてきた各社の困りごとルートを、お互いの輸送ネットワークで助け合うような活動をしています。
2つめは、2025年4月から施行される物流総合効率化法(物効法)への対応です。ドライバー不足の課題に取り組み、荷待ち時間の削減や積載率の向上などの施策を検討し、荷主として国交省に提出する中長期計画に盛り込むための準備を進めています」
物流業界全体で深刻化するドライバー不足。2024年に年間の残業時間が960時間に規制されたことで、新たな課題が浮き彫りになっています。
「これまでは、コストと効率性を追求することがもっとも重視されていました。しかし今は、輸送力の確保が喫緊の課題となっています。労働力不足により、必要なタイミングで必要なクルマが届けられなくなってしまうリスクがあるからです。
リスクを回避するには、状況に応じて追加コストを投入してでも輸送力を確保しなければならない場合もありますし、 他社との“競合”ではなく他社との“協調”でこれらのリスクへの対応をしていくことも必須となると考えています。何より大事なのは、完成車を確実にお客さまへ届けることです。そのための最善策を選択して実行しています」
使命感を持って物流の仕事と向き合う中で、管山が大切にしていることがあります。
「私が大切にしているのは、人の話をよく聞くということです。仕事でコミュニケーションを取る際は8割聞いて、2割話すぐらいの感覚を意識しています。物流の仕事はステークホルダーが非常に多く、さまざまな部署やサプライヤーとの連携が不可欠だからです。
お客さまへ完成車を届けるという同じ目的に向かい、各関係者の意見をしっかりと聞くこと。そこに重点を置きながら、それぞれの意見を自分の中でかみ砕いた上で最適解が何かを考え、意志を持って自分の意見を伝えることを心がけています」
日産の物流網と技術力に惹かれて。荷主として改善提案をするため、異業種から転職
学生時代は農学部で食料環境政策を専攻していた管山。物流の仕事を志すようになった原点は、実習やフィールド調査に取り組んだ経験にありました。
「ファームステイなど現場に身を置いて学ぶ経験を通じ、現地・現物を重視する仕事がしたいと考えるようになりました。金融やITなど形のないものよりも、形のあるものを扱う仕事に魅力を感じたのです。
また、私は当時からバンドでドラムを担当していて、表舞台に立つギターなどと違い、屋台骨として支える役割が好きでした。物流の仕事は裏方的でありながら、形のあるものを扱うことができます。
何より物流は、社会になくてはならないインフラです。そうした観点で自分の性質ややりたいことに合致していると思い、物流業界への就職を志望しました」
そして2015年、管山は倉庫業務を主とする物流会社に入社。営業職として、メーカーや商社の輸出入貨物に対し、自社の倉庫を経由した物流スキームを提案する業務を担当しました。そこで9年の経験を積んだ後、日産への転職を決意します。
「転職を考えたのは、荷主側の立場に立ってみたいと考えたからです。物流業者の立場だと、輸送の効率化などで提案できる範囲が限られています。荷主側であれば、物流網の構築など全体を見渡した提案ができ、主導権を持って仕事を進められると考えました」
物流の仕事をめざす中で、管山が日産自動車を志望した理由。それは日産が持つアセットや先進性に魅力を感じたからでした。
「日産はグローバルな物流拠点を持っているため、大規模なプロジェクトに携われると思いました。また、EVのリーフに試乗したときに味わった感動も決め手の1つです。『EVってこんなにスムーズな走行ができるんだ』とすごく感動して。人をワクワクさせる技術力にも惹かれ、日産への入社を決めました」
こうして2024年5月、日産自動車にキャリア入社し、現在の部署に配属された管山。車両物流に関する知識は一から学んでいきました。
「学ぶ上で私が意識していたのは、わからないことについて誰かが教えてくれるのを待つのではなく、自分から能動的に質問することです。そうして主体的に学ぶことで、車両物流の知見を培っていきました。また、入社してから半年間は可能な限りすべての会議に参加し、物流の全体像を把握できるように努めました。
その中で初めて担当した業務は、荷役に関する問題提議と解決策の提案です。他のグループだけでなく営業担当も巻き込みながらプロジェクトを推進していきました。この経験を通じて実感したのは、物流業務の範囲の広さです。モノを運ぶだけでなく、荷主として果たすべき責任の大きさを知る貴重な経験となりました」
物流の課題にチームで立ち向かう。ステークホルダーと共に目的を達成するやりがい
異業種から転職して初めて車両物流に携わり、仕事のスケールの大きさに圧倒されたと話す管山。とくに印象的だったのは、台風対策での大規模なオペレーションです。
「九州工場には最大3万台の車両を保管していますが、台風が来ると塩害を受けるリスクがあります。被害があった場合は品質保持のために全車両を洗車しなければなりません。洗車が間に合わなければ出荷することができませんから、確保していた輸送機材や船腹を空けてしまうことになり、パートナーであるサプライヤーに多大な機会損失を発生させてしまうことになります。
その結果、お客さまに約束した納期通りに届けられなくなってしまうといったことにもつながります。そうならないためにも、本社から30~40人規模の人員が現地に派遣されるのです。私も昨年、実際に現地へ赴きました。
それだけの人員や工数を割いて、完成車の品質を守るためにチームが一丸となって対策を取っている。そのことに、一台一台を届ける責任の重さをあらためて感じました」
ほかにも印象に残っている業務として、管山はステークホルダーとの連携が鍵となった鉄道輸送プロジェクトを挙げます。
「ある特定の車種について、これまで水島から追浜まで船で輸送し、そこから新潟まで陸送するルートを採用していました。しかし、このままだと陸送力が足りなくなってしまうという課題があったのです。
そこで、水島から新潟まで貨車での輸送を検討することになりました。まずは貨車での輸送実績がある企業へヒアリングを行い、どういう対策を講じているかなどを参考にして実証実験を行うことになりました。
鉄道会社や荷役会社とコミュニケーションを密に取り、一つひとつの工程について合意形成を図りながら計画を進めていきました。そして水島で車両を貨車に積み込んで新潟まで輸送し、振動に対する耐性などのテストを実施。テストはうまくいき、輸送ルートの変更という大きなプロジェクトをみんなで達成させることができました。
こうして多くのステークホルダーと関わりながら、共通の目的に向かって一体となって取り組めることが、今の仕事のやりがいです。改善案を提起すれば、周りの仲間が一緒に考えてくれる環境があります。どんな提案も一切否定されることがなく、みんなで前向きに仕事に取り組めることもモチベーションにつながっています」
人と人とのつながりを大切に。物流の全体最適を追求し、なくてはならない存在をめざす
車両物流の仕事の魅力について、管山は現地・現物の実感や影響力の大きさを挙げます。
「実際に現場に出て完成車を見ながら仕事ができるため、自分が担当している仕事のスケールの大きさを実感できることが魅力です。また、自分の意思決定によって具体的なアクションが実現し、物流をダイナミックに動かせることもこの仕事ならではだと感じます」
そして物流の仕事は、とくにイレギュラーな状況で真価が発揮されると管山は話します。
「物流は『届いて当たり前』と考えられているため、問題が起きたときにどう対応するかが問われます。車両物流では、輸出船への積載台数やスケジュールが厳格に決まっているため、たとえば生産の遅延などで予定の積載台数に満たない場合、デッドフレート(不積み運賃)が発生してしまいます。それを避けるため、他拠点から車両を調達し、積載台数を維持することで全体最適を図ることもあります。
ほかにも雹による被害など、物流はさまざまなイレギュラーと隣り合わせの仕事です。その中で、納期を厳守し確実に届けることが、私たち物流に携わる者の使命です。イレギュラーな状況でもレギュラーの対応ができるよう、知恵を絞ることが重要になります」
車両物流の使命感を感じつつ、入社から2年目を迎えた管山。目標に向かってさらなる成長をめざします。
「まだ2年目で経験が浅いため、自分が提案した改善策を最初から最後まで成し遂げることが直近の目標です。そして将来的にはマネジメント職になることをめざし、自分が所属する部署の最適化にとどまらず、部門全体、さらには会社全体としての最適化を考えて実行できるようになりたいと考えています。
とくに物流の仕事は人と人とのつながりがとても重要なので、さまざまな関係者とのコネクションを築き、部門になくてはならない存在になりたいと思います」
これから、物流の仕事をめざす人にも、人と人とのつながりを大切にしてほしいと管山は話します。
「物流の仕事は、細かいやり取りが多く、人と人との関係性によって成り立っていると言えます。そのため、もっとも重要なのはコミュニケーションスキルです。それは自分が一方的に話すスキルではありません。私が大切にしているように、相手の話を聞く力のことです。
人の話をしっかりと聞いた上で、自分の考えを持ち、仲間と協力して最善策を選んでいく。そういうことができる人と一緒に、お客さまに完成車を届けるという重要なミッションをはたしていけたらうれしいですね」
※ 記載内容は2025年6月時点のものです
