プランから完成まで一貫して自社で企画・開発。「自ら操る」魅力的なアトラクションに
ホンダモビリティランドは1961年の創業以来、モビリティ文化の醸成とモータースポーツの振興に貢献してきました。日本初の本格的なレーシングコースを有する鈴鹿サーキットは、お客様自身が操れることにこだわったアミューズメントパークも併設され、60年以上にわたり愛され続けています。また1997年にオープンしたモビリティリゾートもてぎは、レーシングコースとアミューズメントパークに加え、自然体験ができるエリアがあり、人と自然とモビリティの共生をテーマにしたモビリティテーマパークとして人気です。
ここでモビリティにまつわる体験を通じて「喜び」「楽しさ」「感動」を提供するミッションに取り組む西岡と長野。所属する経営企画部・企画開発課では、アトラクションの企画立案をはじめとして、新規サービスやコンテンツの企画から導入までを担っています。
西岡:アトラクション開発ではプランからデザイン、製作管理、完成に至るまで一貫して自社で行っているのが特徴です。
長野:さらに、パーク全体のプロデュースも行っています。「お客様に最大限満喫いただけるよう、滞在時間をトータルデザインすること」をめざしています。
企画開発課では、市場調査や分析に基づき戦略を練るプランナー、戦略に基づきデザイン・演出を監修するデザイナー、設計・施工の全体管理や安全基準の策定をするプロダクトの担当に分かれ、業務を行っています。
西岡:私はプロダクトグループに所属しています。われわれのところに挙がってきた要望をカタチにして実際に導入できるよう、プロダクト管理や施工といったハード面の作りこみを担当しています。
長野:私がいるのはデザイングループです。主に鈴鹿サーキット・モビリティリゾートもてぎの両方の意匠面・デザイン面を監修しているほか、アトラクションや施設全体のデザインを管轄しています。
さらに、パークで販売しているグッズやレースイベントのグッズの企画やデザイン、製作も手掛けています。
親子で楽しめるアトラクションがコンセプト。めざすのは「誰もが楽しめる」カタチ
2020年3月、ホンダモビリティランドはレーシングカートアトラクション「カートアタッカー」を鈴鹿サーキットにオープンしました。親子や友達同士でカートが楽しめるだけでなく、ヘルメットやグローブの着用やマシンの操作方法などを初歩から学べるとあって人気を集めています。
このカートアタッカーの開発に共に携わったふたり。西岡は主にプロダクト監理・監修を、長野は施設・アトラクション・グッズのデザインを担当しました。開発当時を振り返り、こだわったポイントや想いを語ります。
西岡:ホンダモビリティランドでは、以前から子ども向けの「ジュニアカート」をベースとしたアトラクション「コチラレーシングカート」があったのですが、カートアタッカーは、コチラレーシングカートのさらなる進化と魅力アップをめざして開発されました。これまでのコチラレーシングカートがターゲットとしていたのは、小学校3年生からのお子様。そのため、大人のお客様は乗れない仕様になっていました。
カートアタッカーの開発において最も重要な開発コンセプトとして、「子どもが自ら操ることができるだけでなく、大人も楽しめること」を設定。あくまで子ども向けのものをベースとしながらも、大人でも乗れるサイズ感のハードを追求。速度やコースについても、誰もが楽しめる絶妙な難易度を狙いました。
また、親子が体験を共有することで相乗効果が生まれ、楽しさがよりいっそう大きなものになるとも考えていました。
西岡:お子様をメインターゲットとしている点はいままでと変わりませんが、カートアタッカーでは大人も一緒に楽しめる内容にしたいと考えていました。というのも、ただ見ているだけでは、カートを操るお子様の奮闘ぶりが大人には伝わってきません。大人も一緒に体験することで、お子様たちが難しいことに挑戦していることが初めて理解できると思ったからです。
その「大人も子どもも楽しめる体験」を実現したのが、長野によるカートデザインでした。
長野:まずはメインターゲットである子どもに、「乗ってみたい」という気持ちを持ってもらわなければなりません。そのためには一見してかっこいいと思ってもらうことが大切です。さらに、すべての人に興味を持ってもらえるようにかっこいいだけでなく、かわいらしいイメージを持ち合わせたデザインを検討しました。
カラフルさ、かわいい/かっこいいポイントを意識しながらも、子どもっぽくないポイントや多様性、そしてスピード感を想起させるようなデザインをめざしました。
開発では、カート車両だけでなく、多方面にわたってテコ入れが行われました。
西岡:開発過程では、もちろん安全性を確保するのは大前提となりますが、その枠組みの中でどれだけ楽しめるかが重要となります。カートの仕様やスピードだけでなく、コース設計やその見せ方、さらにはスタッフがお客様にかける言葉など、楽しさを生み出せるかどうかは工夫次第。トータルパッケージとして、かけがえのない体験をどうやって創造していくかを考えました。
一方、アトラクションのデザインを手がけた長野。心がけたのは、モータースポーツの門戸を広げることでした。
長野:レースや車に興味のない子どもたちにも興味を持ってもらいたいと考えていました。モータースポーツにはどうしてもマニアックなイメージがともないがちです。お子様たちがアトラクションに対してワクワク感を覚えるよう、なるべく明るいイメージのデザインを意識して、賑やかな意匠やグラフィックを取り入れました。
また、もうひとつこだわったところとして、お子様と一緒にカートを体験できるだけでなく、親御様たちがお子様の頑張る様子を見守ることができるように、建物の2~3階に観覧席を用意し、カウンターやインテリアを設置。大人が快適に過ごせるカフェのような空間をつくりました。
子どものワクワクした表情と笑顔。カートに夢中になる様子に喜びとやりがいを感じた
カートアタッカーの開発を進める中で、とくに印象的だった出来事があるとふたりは口をそろえます。
西岡:私には娘がいるのですが、開発段階のカートのテストドライバーをしてもらいました。開発時は小学校3年生くらいだったので、ちょうどアトラクションのメインターゲットと重なる年齢だったことから、駐車場にパイロンを立ててつくった疑似的なテストコースを走ってもらったことがありました。
走りこむにつれて、娘の表情がみるみる変わり、「すごく楽しい!」と夢中でカートに乗っていました。汗だくになりながら、一心不乱に走る様子を見て、とても感慨深かったです。開発チームでめざしていた進化への自信が確信へと変わりました。
長野:デザインという仕事においてもっとも重要なのは、実際にカタチへと落とし込むことなので、私たちのデザインが実際の設備に反映され、アトラクションとして完成したときの達成感はそれまで感じたことのないものでした。
カート乗車前後のお客様の表情の変化を見たときにも大きな喜びを感じますね。乗る前の「早く乗りたい!」というお子様たちのワクワクした表情、そして乗った後は「楽しかった、また乗りたい」と充実した笑顔に。そしてそれを見て喜ぶ親御様の様子を目の当たりにすると、価値あるものをつくることができたと実感できます。
自分たちがつくり出したサービスをお客様が目の前で体験し、リアルなリアクションを見られることがこの仕事の魅力だと言うふたり。さらにこう続けます。
西岡:もともと鈴鹿には、かなり速いスピードを出せる大人向けのカートアトラクションがありました。今回、それを廃止してカートアタッカーに絞ったことで、コアなファンが離れてしまう懸念がありました。ところが、カートアタッカーのオープン後、大人向けカートのファンの方が乗ってくれているのを見る機会があったんです。「楽しいね」と言いながらアタックステージに何回もチャレンジしてくださっていました。コアなファンの方も満足できるサービスが提供できたんだと、うれしかったですね。
そうやってコアなファンもコースを楽しめているのは、西岡がチームメンバーとともに綿密なコース設計に取り組んだからこそ。実際に現場に立ち、議論を繰り返しながらつくり込んでいったと言います。
西岡:私が描いたコースを駐車場に実際にトレースして、みんなでカートに乗りながら、「ここはコースのカーブをもう少し緩くしたほうが良いんじゃないか」「ここは道幅を狭くしたほうがおもしろい」と話し合いながらコースを洗練させていきました。
コースが難しくなればなるほどベストラインが限られ、前の車両を抜きにくくなったり、遅い人の後ろについてしまった人がタイムを伸ばせなかったりして、おもしろさが半減してしまうんです。前の車両を追い越すためのパッシングポイントを増やすだけでなく、コアなファン向けにトリッキーな仕掛けを用意してライン取りの選択肢を広げるなど、お客様がそれぞれの解釈でタイムアタックに挑めるようなコースを意識しました。
求めるのは新しい風を運んでくれる人。自分の意志で働ける環境があるからこその想い
今後もより多くの子どもたちにモータースポーツの魅力を届けるべく、ふたりはさらに先を見据えています。
長野:カートアタッカーがメインターゲットとしているのは、小学校の中~高学年。さらにその上の中学生や高校生たちにもモータースポーツを好きになってもらうきっかけになるようなコンテンツをつくってみたいですね。
西岡:私が開発部門に来て16年が経ちました。ずっと開発の仕事をやってきて、ホンダモビリティランドの開発にひと通り携われたと感じています。私の中で一度開発完了している開発案件に対して、自分からダメ出しをし、大きな進化を生み出すのは難しい面があると感じています。
これからは、新入社員や新しい仲間たちの視点や意見から刺激を受け、相乗効果を積極的に図りたいと思います。そして開発チームとのディスカッションを、自分の枠外のことにチャレンジしていける原動力にしていきたいですね。
ホンダモビリティランドでは理系の学生も求めていると言う西岡。期待を込めながら、こんな言葉を投げかけます。
西岡:機械、電気、建築、デザインなど、それぞれ専門としている分野のエキスパートになることが求められます。加えて、先端技術や協力業者様との協調など、新しい価値観を取り込んでいく度量の広さも大切です。論理的に考えながらさまざまなことを構築していく技術を持った方をお待ちしています。
長野:向上心がある人や長期的な視点で考えられる人は向いていると思います。デザインや工学系のスキルがあることは望ましいですが、それよりも人への興味や人のために役立ちたいという気持ちが大切だと思います。
入社以来これまで、確かなやりがいを感じながら仕事と向き合ってきたふたり。それぞれの立場から、ホンダモビリティランドで働く魅力についてこう述べます。
長野:論理的な考えがともなっていれば、自分がつくりたいものを自ら企画し実現できる環境があります。また、それを実際にお客様に提供するところまで見届けられるのもホンダモビリティランドならでは。お客様が体験する様子を目の前で見て反応をダイレクトに感じられるため、より良い施策につなげやすいのもおもしろいと感じている点です。
西岡:自分の意志で仕事に取り組める風土があるのは私も感じているところです。実際に挑戦して失敗することも当然ありますが、失敗をリカバリーする中で見つけた気づきが、自分なりのスパイスとしてつぎの開発に活かされていくこともあります。
「こんなものがあれば、あんなものがあれば」と言うのは簡単ですが、それを実際にカタチに落とし込むのには、生みの苦しみがともなうもの。それをひとつずつ克服してお客様に喜んでもらえるものができた瞬間は、プロダクトを担う者として、なにものにも代えがたい喜びを感じます。こだわりや自分らしさを織り込みながら、これからも楽しんでいくつもりです。
チャレンジして成長し続けることが楽しいと声を合わせる西岡と長野。共に歩む道のりの先には、また次の新しいチャレンジの場が無限に広がっています。これからも成長し続けていくふたりから目が離せません。
※ 記載内容は2023年10月時点のものです

