レース観戦を楽しんだり、イベントを楽しんだり。飽きさせない、にぎやかな空間に

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▲2022年鈴鹿8耐スタートの様子

2017年に新卒でホンダモビリティランドに入社した吉岡。現在は鈴鹿サーキット モータースポーツ事業部 レース企画課に所属しています。

「鈴鹿サーキットとモビリティリゾートもてぎで開催されているレースの企画やプロデュース、当日の運営業務に携わっています。レース企画課にはレース開催時のイベントに携わるイベントチームと、競技としてレースを構築することに携わるレース事務局チームの二つがあります。私が所属するのはイベントチーム。半数以上が30歳以下の若いチームで、28歳の私も中心メンバーのひとりです」

吉岡らがいま主に準備を進めているのが「8フェス!」。これは、鈴鹿サーキットで開催される「鈴鹿8時間耐久ロードレース(以後、鈴鹿8耐)」に合わせて2日間にわたって開催される音楽フェスのこと。レースのチケットを持っていれば、このフェスにも参加できます。

「鈴鹿8耐は、FIM世界耐久選手権の1戦として多くの方に来場いただいていますが、長時間に及ぶレースということもあり、多くの方がレース観戦はもちろんイベントも楽しんでくださっています。

この8フェス!も、初めてレースを見に来た方やモータースポーツファンと一緒に来場された方に、より楽しんでいただけたらという目的で開催しています。『レースを見に来たけど、フェスも楽しかった!』、『フェス目当てだったけど、せっかくなのでレースを見たらハマった!』という方がひとりでも増えたらいいですね。

期間中、レースの爆音が響く傍らで音楽の祭典が繰り広げられ、会場はとてもにぎやかです。長時間のレースになるため、レースとイベントを行ったり来たり。お客様を飽きさせない、にぎやかな空間が広がっています」

開催を間近に控え、前年の11月に始まった準備はいま佳境を迎えています。

「通常、開催後から反省点を振り返り、課題や次に活かせることを洗い出した上で、11月に翌年の方針を立て、1年かけてイベントをつくり込んでいきます。現在は運営スタッフの配置やシーンに応じて流すべきBGMなど、細部の調整を進めている段階ですね」

新型コロナウイルス感染症の影響で3年ぶりの開催となった2022年の鈴鹿8耐には、のべ4万4,000人のお客様にご来場いただきました。また、お客様が入れ替わり立ち代わり楽しむ8フェス!の開催会場の定員は1万人ほど。こうした大規模なイベントを手がける上で、大切にしていることがあります。

「一番強く意識しているのは、イベントの“質”。鈴鹿8耐という大イベントにふさわしいクオリティかどうか。場内の装飾物からBGM、ステージの周辺など、細部まで徹底的にこだわっています。

たとえばレイアウトを組むときは、お客様に通っていただきたいルートを想定した上で出展ブースを配置したり、水をかけるスプラッシュイベントを暑い時間帯や盛り上がるアーティストの出番の次に持ってきたり。お客様の行動を予測しながら、仕掛けを考えています」

また、お客様が安全かつ快適に過ごせるインフラ整備にも力を注いできました。

「『安全なくして、ホスピタリティなし』というスローガンを掲げて、安全を最優先しながら、いかにおもしろいことを提供できるか。という視点で臨んできました。過去の事例を踏まえながら、お客様の動きや起こり得ることをイメージしながら取り組んでいます」

レースやイベント開催を支える仕事を、「守り」と「攻め」の両面から経験

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▲事務局当時、タイでのレース前ブリーフィング

子どものころから家族旅行でよく鈴鹿サーキットのパークを訪れていたという吉岡。レースを初めて本格的に観戦したのは高校3年生のときでした。

「高校のころは野球に夢中になっていたのですが、高校野球の最後の夏の大会で負けてしまって、しばらく放心状態になっていました。そんな中、父が鈴鹿8耐に連れて行ってくれて、気持ちが晴れる想いがしたんです。

そんな経験があったので、大学で開催された企業説明会でホンダモビリティランドに出会ったときに、不思議な親近感が湧いたのを覚えています」

吉岡がホンダモビリティランドへの入社を決めた理由は、熱中できる仕事だと思えたこと。当時の想いをこう振り返ります。

「22歳で就職して60代で退職するまで、縁があれば40年ほど同じ会社で働く可能性があります。そう考えると、『やらなければ』という任務のような感覚で仕事に取り組むよりも、自分が興味のあるものや好きなものを仕事にしたいと考え、ホンダモビリティランドへの就職を決めました」

入社後はレース事務局チームの一員となります。

「最初はレース事務局チームの一員として、レースを滞りなく開催するためにスケジュール調整などを行う業務に就きました。事務局チームがめざすのは、レースを当たり前に開催できる環境を整えること。野球で言えば、ミスなく守り切って当たり前とされる、『守り』の仕事だったので、プレッシャーはかなり大きかったです」

レース事務局として3年半ほど経験を積んだ後、2021年1月からは現在のイベントチームに所属しています。吉岡にとって、これが大きな環境の変化になりました。

「レース事務局チームと違って、イベントチームが担うのは『攻め』の仕事。リスクを取ってでもおもしろいことをしたり、やりたいこと、やったほうがいいと思うことを追求したりすることができるのが魅力です。

一方で、常に新しいことを求めているお客様の期待に応え続けなければならないプレッシャーも。また、『ここまでやればOK』というゴールがありません。100点に到達したとしても、次にめざすべきものがすぐに見えてくるので、高い目標を設定する習慣ができ、それが成長につながっていると感じますね」

想像よりも早く、現在のポジションに。大仕事を任せられるからこその成長を実感

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▲レース企画課でのミーティング

レース事務局を担当していた2020年の鈴鹿8耐で事務局長を務め、2021年にイベントチームに異動してからはプロデューサー業務を任されてきた吉岡。1年目から憧れの鈴鹿8耐に関わり、現在は主要メンバーとしてプロジェクトに取り組んでいますが、入社当時はいまの自分の姿を想像していなかったと言います。

「20代からこれほど重要なポジションや大きな仕事を任せられるとは思っていなかったので驚きました。考えていたより5〜10年早く進んでいると感じていますが、願ってもない貴重な機会。ポジティブに捉えて取り組んでいます」

中堅としてメンバーを率いる立場になったことで、仕事に取り組む上での意識にも変化がありました。

「自分の力でどこまで頑張れるかという視点から、いかにチームで結果を出せるか、周りを巻き込みながら大きなことに挑戦できるかを考えるようになりました。幸い、いまのチームメンバーは向上心が高くポジティブなので、120点をめざすようなイベントづくりができています」

イベントに携わる上で、吉岡がやはり気になるというのがお客様のリアクション。

「初めてイベントを手がけたときに、チケットの売れ行きもお客様のリアクションも自分の思うようにいかなかったときがありました。また、お客様から拍手が起きると想定していた演出に対するリアクションが薄かったことも。

お客様に驚きを提供できなかったことを猛省しました。イメージしていることを実現する難しさ。いまも日々痛感しています」

そんなことがあって、お客様のリアクションが吉岡のモチベーションの源泉や仕事のやりがいになってきました。2022年は鈴鹿8耐が3年ぶりに開催されたこともあり、大きな反響があったと言います。

「コロナ禍で中止になっている間も、開催を楽しみにしてくれている選手の方々が、『来年こそは絶対に開催したいですね』と熱い言葉をかけてくれていたので、実現できてとても嬉しかったです。

来場いただいたお客様の中には、レースを最後まで見て、感動して涙を流しながら拍手をしてくれている方もいて。感動しましたね。大きな手ごたえを感じました」

一方、8フェス!の開催は2019年以来となります。

「8フェス!を開催することで、今までモータースポーツとあまり接点のなかった方々の来場も増えると思っています。そうやってすべての方に楽しんでいただける企画をカタチにすることで、賛同していただいた企業の協力が得られ、さらに大規模な企画が実現できます。そこにイベント運営の仕事の醍醐味を感じますね」

世の中がモータースポーツファンであふれる日をめざして

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▲鈴鹿サーキットレーシングコースにて

レースやイベントを通して、モータースポーツファンを増やすことがいまの目標だと話す吉岡。

「40代以上の男性の中には、F1を生で見たことがある方や鈴鹿に足を運んだことのある方が一定数いらっしゃいますが、10〜20代でモータースポーツに関心のある方は少ないのが現状です。

ワールドカップ日本代表の試合の翌日にみんなでサッカーの話で盛り上がるように、誰もがモータースポーツに興味を持つ世の中になってほしいです。そして『鈴鹿サーキットに行きたい』、『レーサーになりたい』と思う若者がもっと増えてほしい。持続可能なエンターテインメントとして発展していく上で、少しでも自分が貢献できたらと思っています」

そんな夢をかなえるのに必要なのが、新しい仲間です。

「若者が持つ感性は圧倒的な強みになります。自分の意見が言えて、前向きにチャレンジできる方に加わっていただきたいですね。

若いうちから責任をもってコツコツ仕事を積み重ねることで自身の糧になったり、周囲の信頼を得たりすることができますよね。そうしていくうちに、じゃあこの人に任せてみよう!と、大きな仕事を任せてくれる機会も増えていきます。どんどん大きな目標を達成していきたい方にフィットするのではないでしょうか」

2023年の鈴鹿8耐の集客目標は5万人。鈴鹿8耐と8フェス!に多くの方が熱狂するその日を楽しみに待ちわびながら、吉岡は最後の調整に追われています。

「今回の見どころの一つとして、レース終了時の演出や表彰式に工夫を凝らしているので、ぜひ最後まで見届けていただきたいですね。ひとりでも多くの方に楽しんでいただけたらという気持ちでいっぱいです」

お客様にとって特別な日を過ごしていただくために。そして、モータースポーツの魅力を広めるために──仲間とともに吉岡はこれからも走り続けます。

※ 記載内容は2023年7月時点のものです