「なぜそうなるのか」を問い続ける。設計者の判断を支える仕事
「なぜそうなるのか?」——私が仕事と向き合う上で、いつも起点にしている問いです。
現在、私はアドヴィックスの設計部門で、将来のブレーキ製品のシナリオ策定、業務効率化、輸出管理、品質マネジメントなどを担当しています。扱うテーマは幅広く、一見すると設計業務とは異なるように見えるかもしれません。しかし私にとっては、どれも「なぜそうなるのか」を突き詰める、設計と地続きの仕事です。本質的な課題を見極め、現場の設計者が迷わず判断できる環境をつくる——その姿勢を大切にしながら、設計部門全体を支える役割を担っています。
その土台にあるのは、私自身が機械設計の現場で積んできた経験です。前職の二輪車メーカーでは構造設計を担当し、車両全体を見ながら設計を成立させる力を磨きました。その後、より理論やデータに基づいて設計を深めたいという思いからアドヴィックスへ転職。そこで出会ったのが、部品単体から、システム全体まで見据えて設計するブレーキ開発の面白さでした。
経験だけでは足りない。設計の根拠を追い求めて転職を決意
前職では7年間、二輪車のフレーム設計に携わりました。希望していた領域で経験を積み、車両全体を見ながら成立性を確認する力も身につきました。一方で、経験を重ねるほどに、「なぜこの寸法なのか」「この形状が性能にどう効いているのか」を、感覚や前例だけではなく、理論やデータをもとに説明できるようになりたいという思いが強くなっていきました。
前職で得た経験は、今でも大切な財産です。だからこそ、その経験にさらに科学的な根拠を重ね、設計者として一段深く成長したいと考えるようになりました。それが、転職を考えるきっかけでした。
転職先を考える上で重視したのは、理論やデータをもとに、細部まで根拠を持って設計に向き合える環境かどうかでした。その点で、車の「止まる」を支えるブレーキという領域には大きな魅力を感じました。安全に直結する製品だからこそ、わずかな構造や寸法の違いにも意味があり、理詰めで考え抜く必要がある。その厳しさの中にこそ、自分が求めていた成長があると感じたのです。
さらに、ブレーキは完成された技術のように見えて、電動化や制御技術の進化によって新しい挑戦が続く領域です。前職で培った「車両全体を見ながら成立させる力」を活かしながら、より深く、より理詰めで設計に向き合える場所として、私はアドヴィックスを選びました。
理論とデータで、ブレーキの性能を磨く面白さ
入社後、前職との違いを強く感じたのは、ブレーキ油圧の変動を抑える部品の設計を担当したときでした。ブレーキ制御中には、油圧が細かく変動することがあります。その変動を抑え、安定したブレーキ性能につなげるために、部品の形状や寸法を一つひとつ検討していきました。
検討では、経験や勘だけに頼らず、計算やシミュレーションで数値を確かめながら、「なぜこの寸法がよいのか」「どの形が、どの性能に効くのか」を、理屈とデータで一つずつ確かめて決めていきました。この進め方を通じて、「根拠を持って設計できる環境がここにある」と実感しました。
その後、複数の部品を組み合わせた全体の設計を担当するようになり、見るべき範囲はさらに広がりました。ブレーキは機械の部品だけで完結するものではなく、電気や制御の技術と密接に結びついています。担当する部品がしっかり成立しているかだけでなく、制御によってどう動かすかによっても、性能は大きく変わります。そのため、システム全体として安全に働くかを、常に意識する必要がありました。
電気やソフトの担当者と認識を合わせながら、機械としてどこまで対応できるか、全体としてどの進め方がよいかを話し合う場面も少なくありません。以前は「機械として成立するか」が主な判断の軸でしたが、今は「車として、きちんと安全に止まれるか」という視点で考えるようになりました。
「ブレーキ専門の設計は、扱う範囲が狭くなるのではないか」——そう考える方もいるかもしれません。しかし、私の実感はむしろ逆でした。ブレーキは一つの部品で完結するものではなく、車全体の動きや安全に関わるため、設計から評価まで一貫して携わる中で、システム全体を見渡す視点が自然と身についていきます。特定の領域に閉じるどころか、設計者としての視野もキャリアも、むしろ広がっていく——それが、この仕事に向き合ってきた私の実感です。
「設計者が力を発揮できる土俵」をつくる存在へ、これからの挑戦
設計者として経験を重ねるうちに、私の関心は「自分自身が設計で成果を出すこと」から、「設計者がより良いものづくりに集中できる土俵をつくること」へ広がっていきました。
現在は、将来シナリオの検討、品質マネジメント、輸出管理、生成AIを活用した業務効率化など、設計部門を支える幅広いテーマに関わっています。大切にしているのは、複雑な情報やルールをそのまま現場に渡すのではなく、設計者が理解しやすく、判断しやすい仕組みに整えることです。設計者がその土俵の上で迷いなくものづくりに向き合い、持っている力を最大限に発揮できる状態をつくりたいと考えています。
その上で、設計者としての基本となる姿勢は変わらずに持ち続けたいと思っています。事実を丁寧に整理し、根拠を持って考える姿勢は、設計の現場で培ってきた最も大切なものです。土俵づくりの仕事においても、データや事実に基づいて判断する姿勢を忘れずにいたい。その積み重ねが信頼につながると信じています。
電動化や自動運転の進化により、ブレーキに求められる役割はさらに広がっていきます。人の命に関わる「止まる」という機能を、より高い信頼性で実現するために、機械設計の枠を越えて電気やソフトとつながった視点でものを考えられる設計者、そして設計組織全体の力を引き上げられる存在になっていきたいと考えています。
最後に、企業選びをしている方に伝えたいことがあります。会社の規模や知名度も大切ですが、それ以上に大切なのは、「自分がどんな環境で、どう成長したいのか」を考えることだと思います。私自身も迷いはありましたが、最終的には「新しいことに取り組めるか」「理論やデータをもとに深く考えながら設計できるか」という自分の理想を大切にして決断しました。
アドヴィックスは、安全に直結するブレーキという製品に向き合いながら、電動化や制御技術の進化の中で新しい挑戦ができる会社です。「なぜそうなるのか」を考えながら仕事を進めることに面白さを感じる人、学び続けることに前向きな人にとって、成長できる環境があると確信しています。自分で考え、学び、周囲を巻き込みながら価値を形にしていきたい方と、ぜひ一緒に働きたいと思っています。
