実際に手にとることのできる商品ならではの魅力

河田 「コロナ禍で他の小売店と同様にCDショップを訪れる方も一時は減少してしまいましたが、状況の改善に伴って次第に人が戻ってきていると思います。やはり、本当に好きなアーティストの作品は、お店で買って楽しみたいと思う人がまだまだいるのだということをあらためて実感しましたね」

長年CDショップへの営業を担当し、あらゆるジャンルの商品を卸してきた河田。音楽ファンのニーズをリアル店舗を活用する取り組みで満たしてきました。

河田 「CDや映像商品には、グッズ付やメイキング映像が収録されていたり、店舗限定特典が付いていることもあり、ファンの方の関心も得ています。アイドルやK-POPといったジャンルで多いのですが、若い世代の方もショップに訪れるきっかけになっていますね」

もちろん特典ありきの来客だけがリアル店舗を訪れるファンの動機ではありません。規模の大きなCDショップは幅広いジャンルを豊富にそろえつつ働いているスタッフがそれぞれ得意とするジャンルを持っていて、彼らがリコメンドする新譜情報を得ようと足しげく通う人もいるといいます。

河田 「そのお店にいるスタッフの方が本当に推してくれているものを買いたい。あるいは、パッケージを眺めながら、はじめて知ったアーティストの作品を聞いてみたいというニーズもあると思います。もちろん、デジタル環境でも新しいアーティストや作品との出会いはありますが、CDショップで出会う音楽体験は、全く違うものなのだと、昨今あらためて感じています」

リアル店舗を活用した体験価値の提供

河田の仕事は、単に商品をCDショップへ卸すというだけではありません。リアル店舗を活かしたプロモーション施策をアーティストの所属レーベルの担当者や店舗の担当者と一緒に企画することで、アーティストとファンの多様なコミュニケーションを実現しています。

河田 「コロナ禍以前はアーティストが店頭で握手会を行なったり、ライブを行なって即売会を開催したりすることが多かったのですが、現在は感染症対策の観点から以前のような形での開催が難しくなっています。しかし店頭でしか提供できない価値をファンに届けるのが我々の大切な仕事のひとつです。アーティストが使用した楽器や着用した衣装、あるいはSNSで発信しやすいような写真などを展示するなど以前よりも更に試行錯誤しながら取り組んでいます」

こうしたイベントを開く際に、河田が意識するのは長期的な視点を持つことです。

河田 「展示イベントの開催が必ずしもその場ですぐに売り上げに直結するわけではありません。けれどもデジタル全盛の今の時代においては、こうしたイベントを通じてショップを訪れる楽しさを伝え、再訪につなげていくことも大切です」

店頭での衣装や楽器展示などのイベント開催は、アーティストをはじめ多くの関係各所との調整が細やかに必要となり、実現まで時間がかかるケースも多くあります。しかし河田はお客様に純粋に楽しんでもらいたいという一心で取り組み、店舗のスタッフの方や関係者の協力のもと、展示品の見せ方など細部に至るまでこだわりながら進めているのです。

商品を扱うからこそお客様を身近に感じられる

河田の商品への情熱は、いち音楽ファンとしての原体験によるものと語ります。

河田 「学生時代からアルバイト代のほとんどをCDにつぎ込んでいました。あらゆるジャンルのものを聴きましたね。アイドルやロックバンド、ビジュアル系、ヒップホップまで。いつも通っていたCDショップで気になったものは端からすべて試聴していましたし、お店の人といつの間にか仲良くなっていたことも良い思い出ですね」

そんな青春時代を過ごしつつ、最初に就職した先は音楽関係の会社ではありませんでした。20代も中盤になった頃、やはり心から大切にしたいと思えることを仕事にしようと考え、転職で音楽業界へ飛び込むことを決意したのです。

河田 「当時すでに音楽のデジタル配信もスタートしていましたが、私は実際にお客様と触れ合える機会の多いCDショップの営業に魅力を感じました。この業界にはいろいろな仕事がありますが、営業ならばジャンル関係なく自社で扱っているもの全ての情報に触れることができますし、いち早く新しいアーティストの楽曲に触れられることがすごく楽しみでしたね」

 音楽業界に身を置く、熱き音楽ファンとしての喜びこそ河田の原動力です。

河田 「初心を忘れかけたことは過去に何度もあります。でも、ファンの方の反応は気になりますし、皆さんが商品を手に取ったり、店頭での展開の様子を喜びながら写真を撮ってくださっていたりする姿を見ると学生時代の自分を思い返して初心に帰ることができます。リアル店舗を担当しているからこそ味わえる幸せですね」

デジタルの普及により、むしろリアル店舗の価値も高まる

河田 「今はCDを聴くための再生機器さえもっていない方もいらっしゃると思いますが、本当はそういう人にこそぜひ一度お店に来てもらいたいなと思っています。あらためて実際に手にとっていただけるCDやアナログレコードなど商品の魅力を伝えていきたいんです」

そこにはジャケットに使用する素材やデザインの面白さや、ブックレットの内容など、デジタル配信とはまた違った形のアーティストのこだわりが詰まっています。

デジタル配信を行ないながらも、あえてアナログレコード盤を販売し、フィジカル媒体の特性を生かした音楽体験を提供しようとするアーティストも少なくありません。

河田 「アナログレコードの人気は国内でも海外でもどんどん高まっていて、アナログ盤に特化したお店も近年、たくさんオープンしています。こうした流れで、CDのパッケージに表現されたアート性にもスポットが当たっていく可能性を感じていますね」

そうしたパッケージ商品ならではの良さやそれを活かしたアーティストの新たな挑戦を伝えていくために、コロナ禍で河田が強く感じたのは原点回帰の必要性でした。

河田 「デジタルで音楽を楽しむ人はこれからもどんどん増えていくと思います。そんななかでもやはりそれぞれの店舗ごとに持っている特色をより強く打ち出していくことをCDショップの皆さんと一緒に取り組んでいきたいと思っています。ショップ全体での取り組みはもちろん、スタッフひとりひとりが応援したいアーティストを店頭でフィーチャーし広めていくということもしっかり行い、いかにお客様に手に取って楽しむ商品を買いたいと思ってもらえるかをサポートしていきたいですね」

ショップごとの色を出していくことで、リアル店舗とデジタルの相乗効果も高まっていくといいます。 

河田 「最近ではツイッターなどのSNSを通じてショップとファンのつながりが強くなっています。店頭での販売施策がファンの人達に刺さってプチバズりするといったことも少なくないです。情熱を持ってそういった展開をしている特定の名物スタッフを目当てに来店するというお客様もいらっしゃいますね」

ショップと音楽ファンがデジタルプラットフォームを通じてつながることは、アーティストのこだわりが詰まったパッケージ商品を届ける喜びや意義をあらためて感じるきっかけにもなると河田は感じています。デジタルとともに音楽全体の楽しみ方の裾野は広がり続けており、店頭から新たなヒットが生まれ、新しい作品やアーティストとの出会いの場づくりを目指し、河田のチャレンジは続きます。

( Text by PR Table / Photo by 杉浦弘樹 foto.Inc )