アートワークやパッケージの制作・流通を担うSCMの仕事

オペレーション本部に所属する池田 達昭、岡田 恵美のふたりは、CDやDVDといったフィジカル製品の制作から店舗等への納品までの進行管理を担っています。関係各所へのやり取りも多いことから、ユニバーサル ミュージック社内ではSCM(サプライチェーンマネジメント)と呼ばれるチームです。

池田 「アーティストやレーベル、その他外部のデザイナーなど作品づくりにかかわる人達のアイデアを実際の形にするため、素材選びを含めアートワークをどのように作るか検討するのが私の仕事です。スケジュール管理や、品質管理、編集、構成などもセットで行っていますね」

通常、商品のリリースが決定してから実際に発売されるまでは、2、3か月ということがほとんど。池田は平均すると毎月約5〜6本程度のアートワークを手掛けています。

池田 「特に近年は、ひとつの作品でもパッケージにバリエーションを持たせる傾向にあるので、工程管理も複雑になってきていますね」

でき上がった商品を確実にお客様に届けるための発注業務と、入庫・在庫管理を担当するのが、岡田です。岡田自身は主に洋楽の作品を担当しており、海外で商品を製造する企業などとのコミュニケーション役も担っています。 

岡田 「新譜だけでなく、既にリリースされている旧譜などについても、在庫の動きを見て足りないものを補充しています。コンサートやライブでの即売会など、イベントに合わせてオーダーを入れることもありますね」

たとえば、2018年にイギリスのロックバンド、QUEEN(クイーン)の映画「ボヘミアン・ラプソディー」が公開されたときには、QUEENの過去のアルバム作品などの出荷が急激に増加しました。

岡田 「映画のヒットは当初の予想をはるかに上回るもので、公開後、映画の評判と比例してお店からの注文も急増しました。在庫を急ぎ補充したことを覚えています。映画の大ヒットとともにQUEENの楽曲にも改めて注目が集まり、世界的なアーティストの商品を扱っているのだとあらためて実感したできごとですね」

付加価値を生む挑戦

ストリーミング配信で手軽に音楽を楽しむ人が増える中、手に取れる商品ならではの付加価値を生んでいくことはふたりの所属しているセクションが持つ、大きなミッションのひとつです。

池田 「やはりデジタルにはない魅力を作っていかなければなりません。アーティストの想いにリスナーが触れ、自分の手元に残せるという、商品の特性ならではの方法で具現化できればと常々思っています」

その手法のひとつとして、CDやアナログ盤という「メディア」に楽曲の世界観を共有するグッズなどもあわせて制作する作品が増えています。

池田 「アイドルグループのアルバムなどでは広くファンに受け入れていただいていましたが、最近ではさらに広いジャンルのアーティストの作品にグッズやフォトブックなどが付くことも珍しくありません。種類もどんどん多様化していて、これまでの作品をまとめられていたりするボックス型の商品もこの数年でかなり増えた印象ですね」

ある作品の制作で、フィギュア(ミニチュアドール)をセットにした商品の企画が出てきたときのこと。

岡田 「私たちの業界ではリリースまでの数か月の時間で商品企画を形にしていきますが、フィギュアなどを作っている玩具メーカーさんは通常、1年程前から企画を詰めて実現に至るそうです。これまで音楽会社と取引が無かった企業とアーティストや作品のイメージにあわせた商品をつくるため、お互いのできることを探りながら企画を実現するのは大きなチャレンジだったと思います」

過去には「酒類をセットにしてみよう」というアイデアが出たことも。新たに酒類販売業の免許を取得する必要があるなどの理由で断念しましたが、商品の多様化に対応するために、日々さまざまなチャレンジや試みを行っています。

岡田 「扱う品物も増えるので、在庫管理や出荷業務の仕組みも複雑になっています。私たちの仕事はより細心の注意が必要になっていますが、現場は新しい取り組みで盛り上がっていますね」

池田 「実際、新しいものを手掛けるほどに経験やノウハウが蓄積され、さらに面白い商品づくりができるようになっていると感じます」

アーティストの作品に参加するということ

池田 「やはりいろいろなアーティストの作品に関われることが、この仕事の一番の魅力ですね。特にユニバーサル ミュージックにはバラエティに富んだアーティストが所属していて、アートワークひとつとってもいろいろな工夫がされています」

池田はもともと印刷会社に勤めていました。よりクリエイティブな現場を求めて選んだのがこの業界でした。やりがいを感じる一方、アーティストの作品の一部を担うことには大きなプレッシャーもあります。

特に、アートワークのクオリティをデザイナーやアーティストがイメージする色味・質感に限りなく近づける作業は、簡単ではありません。

池田 「商品をリリースするぎりぎりまで、色味を調整し続けるアーティストもいました。それだけアーティストがこだわりをもって作ったからこそ、伝わるものがあります。発売後にSNSなどで反応がどうか調べたりするのですが、パッケージの出来を評価してくれている方も少なくなく、嬉しい気持ちになりますね」

岡田 「手に取れる商品を取り扱うからこそ、私も発売日前後のお客様の反応は気になりますね。そこがストリーミングとは異なる面白さではないでしょうか。商品を手に写真を撮って、SNSにアップするファンの方も多くいます。私たちが手掛けたものがそれを楽しみにしてくれているファンの方々の手元に届いているんだ、という実感を得られることが何よりの喜びですね」

特に岡田が担当する洋楽作品は、世界同時に情報が解禁されることがほとんど。

邦楽に比べて情報が出てからリリースまでの時間が限られていることも珍しくないため、発売日に間違いなく店頭に並んでいるのか、ファンの皆さんの手元に届いているのか、ついつい自らの足で店舗まで確認しに行かずにはいられないと話します。

グローバルに通じるパッケージ商品を、日本から

こうした、楽曲のデジタル配信に対してフィジカルと呼ばれるCDやアナログ盤などの商品に新たな価値を付加しようとする試みは日本だけに限ったことではありませんが、特に日本のマーケットの需要は比較的高い傾向にあります。

人気の高いアーティストの作品では特に、海外で2つの仕様で販売されるアルバムでも、日本の場合はさらに2つの仕様を追加して、合計4種のバリエーションを持たせて販売する、という展開もなされたりします。

結果、洋楽の日本国内向け製品が海外のファンの心を掴み、日本仕様の作品が数多く輸出されるといったケースもあり、さらなる挑戦の余地があるとふたりは考えています。

岡田 「海外市場を視野に入れることで、仕様の豪華さも実は上げることができるようになります。海外向けの需要も含め全体的な数を増やすことで単価を下げ、少し価格が高めでも質の良い素材を使用することができるようになりますね」

池田 「ユニバーサル ミュージックは世界各国に拠点があることで、そうしたコストメリットも武器にして世界各国で受け入れられる新しい商品を作っていけるとも思います」

岡田 「メンバーカラーがあるようなアイドルだったら、たとえばメンバーごとのカラーレコードを作る、なども考えられますよね。その分生産管理の工程の複雑さがさらに大変になるのですが(笑)、聴くだけでなく目で見ていても楽しいような商品を作っていきたいですね」

こうした商品は、コレクションとしての需要がますます伸びていくと予想されています。国内外を問わずファンのニーズを叶えようとするアーティストやデザイナーのアイデアは、さらに広がっていくでしょう。その熱意を形にする挑戦も続きます。

( Text by PR Table / Photo by 杉浦弘樹 foto.Inc )