「一番偉いのは現場の人」――鹿児島で食品低温部門を支えるVMDの仕事
私は現在、鹿児島エリアで「低温VMD(ビジュアルマーチャンダイザー。売場づくりや陳列の方針を店舗に落とし込む役割)」として働いています。担当しているのは、東開・出水黄金・加治木・指宿の4店舗です。食品の低温部門、つまり冷蔵・冷凍食品などを扱う売場全般のマネジメントを担っています。
具体的には、週次のPDCR(計画・実行・確認・改善のサイクルを数値で管理するプロセス)を通じて、担当4店舗の売場状態や販売数値を追いかけることが主な業務です。既存3店舗と、新たに立ち上がった指宿店の4軸で数値を管理しています。特に新店である指宿については、既存店で積み上げてきた常識をそのまま当てはめるだけでは数値の改善につながらないと感じています。そのため、競合店分析をしながら、その地域の特性や競合の動向をしっかり把握した上で改善策を考えるようにしています。
現場に入ってOJT(実際の業務を通じた実践的な指導)を行うことも私の大切な役割です。店舗間では、現場スタッフであるASさん(パート・アルバイト)の経験や練度によって、販促物の設置状況や売場のボリューム感に大きなバラつきが出てしまいます。そのエラーを「現場・現物」で直接確認し、一緒に改善策を考えながらOJTを重ねることで、店舗間のズレをなくしていくことを目指しています。私自身は「作業員」ではなく「経営指導者」としてエリアマネージャーのもとで動くという意識を大切にしています。
そんな仕事の中で私がモットーとしているのは、「一番偉いのは現場で働くASさんである」という考え方です。立場の上では私がASさんに指導をする側になりますが、だからこそ、リスペクトの気持ちを忘れずに向き合うことを常に意識しています。現場を支えてくれる方々への敬意があってこそ、良い売場づくりができると信じています。
この会社を選んだ理由は、正直なところシンプルです。当時、地元・熊本に戻ることを最優先に考えており、アルバイト経験が接客業中心だったこともあって、就職先も自然と接客・販売系の仕事を軸に探していました。複数の選択肢がある中で最終的にこの会社を選んだのは、一番早く内定をいただけたからです。今は鹿児島での勤務ですが、当時の私にとって「早く家族のそばに戻りたい」という気持ちが就職活動の大きな原動力でした。
「知っている会社」から始まった就活、拭えなかったレジへの不安
トライアルという会社に初めて出会ったのは、子どものころのことです。母の買い物についていき、プライベートブランドのウーロン茶やお菓子を買ってもらった記憶があります。当時の店舗は決して広くはなかったのですが、「なんでも揃うお店」という印象がありました。ただ、正直に言うと、店内の雰囲気も含めて少し暗い印象も同時に持っていたんです。
大学生になってからは、通っていた安いスーパーが閉店してトライアルに変わりました。でもそのときは、特別に魅力を感じていたわけではありませんでした。ところが、その後リニューアルを経てからは店内もにぎわいが出てきて、惣菜のかつ重に何度もお世話になるほど足しげく通うようになりました。気づけば、生活に欠かせないお店になっていたんです。
そんな「生活の中にある身近なお店」として知っていたトライアルに、就職先として目を向けたのは、特にやりたいことや成し遂げたいことが明確にあったわけではなかったからです。就職活動自体が正直かなり苦手で、とにかく早く終わらせたいという気持ちが強かった。だったら「知っている会社」で募集があるところを探そうと思って、行き着いたのがトライアルでした。子どものころに感じた「暗い印象」のことは、そのときにはすっかり頭から抜けていましたね。
入社を決める前に店舗を訪れることはありましたが、じっくり観察するのも失礼かなと思って、軽く見るにとどめていました。神奈川にいたときはそれほど大きな店舗を知らなかったのですが、入社後に熊本の配属先を訪れたとき、「こんなに大きなトライアルがあるのか」と純粋に驚いたくらいです。
入社前に一番不安だったのは、仕事の内容についてです。スーパーで働くといえばレジ業務のイメージしかなく、自分はパズルのような作業が得意ではないので、「自分にできるだろうか」という漠然とした不安がありました。売価変更(商品の値段をシステムや売場で変更する業務)や棚替え、季節ごとに変わる売場の構成といった、スーパーの仕事の中心を担う業務のことは、当時まったく頭にありませんでした。どちらかというと、アルバイトの延長線上にあるような仕事のイメージで、自分にこなせるかどうかという不安を持っていたんです。
その不安を誰かに相談したかといえば、そういうことはしませんでした。「未知なことへの不安は、やってみなければ拭えない」と思っていたので、まず飛び込んでみるしかないと自分を納得させていました。コロナ禍の影響で会社説明会もオンラインのみで、業務の実態をあらかじめ知る機会もほとんどなかったというのも、正直なところです。内定をもらえたならば、あとは粉骨砕身でやっていくだけだ、という気持ちで入社を決めました。
「分からないことが分からない」状態から知った、小売業のリアル
入社してから最初に感じたポジティブなギャップは、仕事の覚え方についてでした。小売業と聞くと、新入社員はまずレジに立つものだというイメージを持っていたのですが、実際はまったく違っていました。新入社員はあくまで人手が不足しているときのフォロー要員という位置づけで、まず売場に触れながら仕事を覚えていくというスタイルだったんです。
しかも、何をすれば良いか分からないときは、先輩社員やASさんに気軽に聞いていいんだと教えてもらえたことも、最初はとても救いになりました。最初の頃は、何が分からないのかすら分からないような状態で、どうしても指示待ちになりがちだったのですが、「一年を通じて少しずつ覚えていけばいい」という言葉に、ずいぶん気持ちが楽になったのを覚えています。
一方で、入社前にある程度覚悟はしていたものの、やはり現実として突きつけられるとメンタルに来たことがありました。それが、世間がお休みのときこそ繁忙期になるという、この仕事ならではのサイクルです。
特に強く感じたのは、入社して最初のゴールデンウィークのことです。それまでは学校が休みで、長期連休は当たり前のように家族と一緒に過ごしていました。でも、社会人になって迎えた最初のゴールデンウィークは、もちろん仕事です。家族にこちらまで来てもらって、公休の一日か二日を一緒に過ごすのが精一杯でした。頭では分かっていたことのはずなのに、実際に体験してみると、想像以上に気持ちが落ち込んだのを覚えています。
今はすっかり麻痺して、「そういうものだ」と割り切れるようになりましたが、あの最初のゴールデンウィークの経験は、この仕事のリアルをいちばん肌で感じた瞬間だったと思います。覚悟していたことでも、実際に経験するまでは本当には分からない。それがこの仕事の難しさでもあるなと、今になって感じています。
「壁が見えてくれば、何をすべきかが明確になる」——入社を迷うあなたへ
入社後のリアルを知った上で、改めてこの会社の魅力を感じているのは、選択肢の広さです。トライアルはグループ内に分社が多く、今の業務形態が自分に向いていないと感じたときでも、別の業種に挑戦できる環境が整っています。実際に、私がVMDになって日が浅いころ、上司と面談をした際に、こんな言葉をいただきました。「情報を自分でとりにいくこと。トライアルにはいろんな業種があるから、自分でチャレンジしていくことも一つの道。小売りだけが道じゃない」と。その言葉は、今でも自分の中に残っています。目指す場所がはっきりしていれば、そこに向かって動ける環境はある程度整っている。教育の仕組みはまだ粗削りな部分もありますが、権利や機会は自分から動けば獲得しやすいと感じています。
今後の目標としては、現在担当している鹿児島エリアの低温部門(冷蔵・冷凍食品)の数値改善に集中していきたいと思っています。具体的には、新店も含めたエリア全体の日配の予算比を105%台まで引き上げ、他のエリアを圧倒する販売組織に育てていくことが目標です。担当店舗のASさんは入社一年未満の方がほとんどで、私自身も他のVMDと比べれば経験値がまだ足りていないと感じています。だからこそ、一緒に成長していくつもりで取り組んでいます。日常的に買われる定番商品の販促強化や、会社の施策として打ち出される季節商材の販売強化も、その手段として積極的に動いていきたいと考えています。
入社を考えている方に正直にお伝えすると、接客業に加えて数値への関心や興味が求められる仕事ですので、向き不向きはあると思います。正直なところ、今でも自分に向いているかと言われると、少し怪しいと感じる瞬間もあります。それでも、任せてもらえた仕事を精一杯こなし続けていれば、道は切り開けるものだと実感しています。まだ店舗に所属していたころ、感謝祭の売場づくりに自分が納得いくまで徹底的に取り組んでいたところ、「MVDになってみないか」と声をかけてもらいました。ただがむしゃらにアクションをとり続けた結果、分不相応とは思いながらも次のステップへの扉が開いたのです。
最初は壁さえ見えなくて、苦しい思いをすることもあるかもしれません。でも、壁が見えてきたとき、初めて「自分は何をすればいいか」が徐々に明確になっていきます。数字を見ることが好きな人、人と話すことが好きな人は、特にこの仕事に向いていると思います。日々のPDCRの中で数字と向き合い、それを店舗のASさんや上司に伝える話術が求められる。そのやりとりの中に、この仕事のおもしろさがあると、私は感じています。

