テニスコーチの経験から学んだ「観る力」、そして農業の未来を変える覚悟
学生時代、私はテニスクラブでコーチのアルバイトに力を注いでいました。老若男女、さまざまなレベルとニーズを持ったお客様がいらっしゃる中で、当初の私は「うまく」教えることばかりに意識が向いていました。しかし、それは見事に失敗に終わりました。技術的に正しいことを伝えても、お客様の満足には必ずしもつながらない。その現実に直面して、ようやく気づいたのです。重要なのは、お客さま一人ひとりのニーズをしっかりとつかむことだと。
そこから私は、相手を徹底的に「観る」ことに拘るようになりました。お客さまごとに基本情報をリストにまとめ、私や他の生徒さんとの会話、表情を注意深く観察しながら、レッスンに来ていただく本当の目的を考えるようにしたのです。うまくなりたい方、強いボールで相手を打ち負かしたい方、良いラリーを楽しみつつも最後はコーチにやっつけてほしい方、おしゃべりを楽しみたい方。参加目的の違いが見えてくると、それぞれのニーズを満たせる形のレッスンを提供できるようになりました。この経験は、相手を理解することの大切さを私に教えてくれました。
就職活動では、「日本の農業を経済的に豊かにしうる業界・企業」をテーマに、総合商社と某IT大手を中心に活動していました。私は400年続く農家の末裔として生まれ、専業農家として懸命に努力する両親の背中を見て育ちました。しかし同時に、儲からない農業の現実も肌で感じてきました。その課題を経済的に解決できる場所を求めて、就職活動に取り組んだのです。IT企業については、オンラインで直接農家が商品を販売できるサイト運営支援サービスに注目していました。販売やマーケティングが苦手な農家が多い中、より多くの顧客にアクセスできるソリューションを提供でき、実力のある農家の成長を後押しできると考えていたのです。
そんな中で出会ったのが、今の会社でした。国内外で大規模にビジネスを展開する他の総合商社とは少し異なり、一見面倒で小粒に見える国内農業案件にも真剣に取り組む、おもしろそうな商社だと感じました。そして入社の決め手となったのは、国内農業に取り組む姿勢そのものと、もう一つ印象的な出来事がありました。グループ面接の控室で、同じ就活生たちが面接前にもかかわらず、皆楽しくエネルギッシュに話している光景を目にしたのです。採用枠を奪い合うライバルでありながら、どこかそれを超えて相手に興味や関心を寄せられる、その人間的な魅力に惹かれました。こんな人たちと一緒に働けたらおもしろそうだ、そう確信したのです。国内農業を前に進められる会社であることがより強く背中を押してくれましたが、第一志望だった会社から内定をいただいた時の喜びは、今でも鮮明に覚えています。
入社後の学びと14年間の食料領域での歩み、そして新たな挑戦へ
入社前、私は学生として社会のこと、会社業務のことをほとんど何も知りませんでした。この認識こそが、入社前後の最も大きなギャップだったと思います。国際情勢がために与える影響、一見面倒に見える管理業務が株式市場における会社の信頼を担保する重要な歯止めになっていること。食料業界がサプライチェーン上でどのような企業によって構成され、その力関係や国際情勢が、どのように私たちの食卓に影響を与えるのか。こうした因果関係を理解する前後では、世界の見え方がまるで違っていました。どんな事象も一面から見るだけではまったく理解できていないのだと痛感しました。それぞれの前線で考えて、試して、もがいて、また考える。この繰り返しによってのみ、初めてうっすらと理解できるものなのだと感じました。
入社後の14年間は、第一志望だった食料領域で働くことができました。飼料原料の輸入、三国間貿易、それらに対するリスク管理業務など、広く攻め・守り・サポート業務に携わりました。ブラジルの穀物輸出会社での語学研修と実務研修を経て、同事業会社の事業管理も担当しました。とくに事業管理の経験は、私にとって大きな転機となりました。一見華やかに見える会社経営の裏側、守りの部分を、支援とけん制の目線で精査し、問題点を把握し、対策を求める。この経験は、営業本部の視点に偏っていた私に、全社視点で物事を捉え考えることの重要性を教えてくれました。
そして15年目、私は社内異動制度を利用して現在の部署に異動しました。外部環境が大きく変化する中、より大きく、かつ国内農業へのリスクにもつながる「気候変動問題対策」に注目したのです。実は大学では環境経済を専攻しており、排出権取引やカーボンクレジット、資源循環などに元々興味がありました。COP21パリ協定の合意は、地球規模の課題に民間企業でも貢献できる余地を生み出しました。この課題は、私が就職活動時に掲げていた志望動機である「国内農業を前に進めること」にも深く関係しています。気候変動問題は地球規模の課題であり、当然、国内農業の存続に大きく影響を与えるテーマだからです。葛藤はありませんでした。むしろ、自分の専門性と志を活かせる新たなステージへの挑戦として、この異動を決断したのです。
社外からの評価獲得と業界の壁を越えた成長の日々
現在私はカーボンニュートラル推進部で、「ステークホルダーエンゲージメント」を中心とした業務に携わっています。課長補佐として担当領域のチームリーダーを務め、情報収集から論点整理、施策提案、そして実施まで全般に関与する立場です。また、営業本部からコーポレート本部へ異動してきた経験を活かし、まだ脱炭素への感度が低い営業担当者に対して、CN活動の意義や事業機会を説明し、仲間に変えていくことも重要な役割となっています。
この仕事で特に印象に残っているのは、社外コンテストでの受賞支援です。気候変動対策を主導する企業・団体へ送られる表彰制度において、当社のCN貢献事業の受賞をサポートしました。担当部署は日々の業務に追われており、必ずしも乗り気ではありませんでした。しかし、企業価値向上や仲間づくりの観点から本取り組みの意義を丁寧に説明し、彼らの代わりに取組内容を的確に表現してリードする形を取りました。事業活動に専念してもらえるよう工夫を重ね、結果として受賞につなげることができたのです。この経験は、異なる立場の人々を巻き込みながら目標を達成する醍醐味を実感させてくれました。
一方で、苦労も多くありました。当社は総合商社としてさまざまな事業を手掛けているため、食料領域以外の業界理解・事業理解にはとくに苦労しました。それでも、一つひとつの事業の背景や意義を学び続けることで、少しずつ全体像が見えてくるようになりました。
学生時代と比べて大きく成長したと感じるのは、社会課題解決という究極の目標を見失わず、日々の具体的な行動をそこにつなげられるようになったことです。目の前のお客さまの期待に応えること、自分の興味関心の範囲内で学業に取り組むこと、それらも大切ですが、今はより大きな視点で自分のふるまいを設計できるようになりました。この変化こそが、社会人として成長できた証だと感じています。
CN貢献事業の創出に挑み、共に成長する未来へ
私の中には明確なビジョンがあります。コーポレート部門として営業本部を支援し続けながらも、自らの手でCN貢献事業を作り上げ、それを推進していきたいと考えています。当社ミッションである「未来の子どもたちにより良い地球を届ける」に共感し、時空を超えた壮大な挑戦に自分も直接貢献したいと考えています。
中長期的な目標としては、自ら生み出したCN貢献事業をさらに育て、大きく成長させることを見据えています。そしていずれは担当部署のマネージャーとして、チームを率いる立場になりたいと考えています。事業を創出するだけでなく、それを組織として継続的に発展させていく責任を担いたいのです。この会社にはさまざまな現場があり、さまざまな人が本気で仕事をしている多面体組織だからこそ、学べることは無限にあります。その環境を最大限活かしながら、自分自身も成長し続けたいと思っています。
会社の魅力はたくさんありますが、とくに、ヒトを好きな人が多く、本気でぶつかる人には必ず応えてくれる土壌があります。青臭いと言われるかもしれませんが、この会社は本気で難しいことに挑戦している組織なのです。私たちが求めているのは、あるべき姿をいつまでも見失わず、人間的魅力を持ち、その期待に応えられる確かな実力を持った人です。言葉にできないような魅力を持つ人、思考持久力を持ち物事を多面的に捉えられる人、そして何よりヒトを好きな人と一緒に働きたいと考えています。
最後に、これから入社を考えている皆さんへ。ご自身のキャリアに正解はありませんし、生成AIが答えを出してくれるわけでもありません。限られた時間の中で必死に考えて、考え抜いた後は思い切って飛び込んでください。本気の皆さんに全力で応えられる「ヒト」と「経験」がここにはあります。一緒に働ける日を、心から楽しみにお待ちしています。

