「人の役に立ちたい」という想いを原動力に。製造業の課題にAIで挑み技術伝承に貢献
自動車に使用される棒線や鋼管などのデリバリー業務を担う条鋼鋼管事業部。そこに所属する山本は、新規事業の創出を行っています。
「私は現在、製造業の技術伝承をAIの活用によって支援している株式会社LIGHTz(ライツ)へ兼務出向しています。LIGHTz社は豊田通商が出資しているスタートアップ企業です。出資のきっかけは、私が自動車用鋼管の営業を担当していたときに感じた、お客様の課題にありました。
自動車部品関連の中小・零細企業は、深刻な人手不足や技術継承の課題に直面しています。その解決に向け、AIを活用した技術伝承に強みを持つLIGHTz社に出資し、協業に取り組むことになったのです」
製造業の課題を解決するために始まった新規事業。そこには山本自身の強い想いがありました。
「根底にあるのは、『人の役に立ちたい』という想いです。
DXの支援や技術伝承を通じ、競争力のある日本の産業を未来の子どもたちに受け継いでいきたい。そうした個人的な願いがLIGHTz社の仕事と直結しているため、非常に高いモチベーションで仕事に邁進しています。
また、こうして私が楽しみながら新規事業に取り組んでいる姿を後進に見せることで、『自分も新規事業にチャレンジしてみよう』と背中を押すきっかけになれたらという想いもあります」
高い志を持ち、山本がLIGHTz社へ兼務出向したのは2023年のこと。2024年6月にはプロダクト化を実現し、製造業の開発プロセスを効率化するソリューション「blooplinter(ブループリンター)」をリリースしました。
「ものづくりの現場では、圧倒的な開発スピードで製品を仕上げる中国企業との競争があります。また、市場ニーズに合う製品を如何にタイムリーにマーケットへ投入できるか、新たなテクノロジーを取り込めるかが製品の競争力に大きく影響し、開発リードタイムの短縮が大きな課題となっています。
そこで私たちが開発したのが『blooplinter』です。蓄積されたナレッジやノウハウを、3D図面上の形状に紐付けてデータベース化することで、類似の形状で発生した過去の成功・失敗事例が素早く検索できます。設計段階で潜在的な問題を事前に把握・対処できるため、開発期間の短縮と品質向上の実現が可能です。
リリースから現在まで、自動車メーカーや部品メーカーなどを中心に導入が進んでいます。あるお客様は『ずっと探し続けていたソリューションがようやく見つかった』と言ってくださいました。他にも『このプロダクトをベースに全社DXを進めていきたい』というお声をいただくなど、お客様の課題解決に貢献できる手ごたえを感じています」
働く人の熱意を感じ、水産業界から豊田通商へ。中国での駐在で広がったキャリア
水産学部で食品加工について学んだ後、食品商社に入社した山本。アメリカで日本食の流通事業を手がける同社で、水産物のバイヤーとして働きました。
「年間の半分近くは海外の漁場や養殖場に出向いてマグロなどの水産物の買い付けを行い、アメリカの流通拠点に出荷する業務を担当していました」
そこで3年の経験を積んだ後、山本は豊田通商へ転職。入社のきっかけは、身近な人が働いていたことでした。
「兄が豊田通商へキャリア入社していて、兄の幼馴染も働いていました。2人の話を聞く中で興味を持ったのですが、入社の決め手となったのは当時のグループリーダーとのカジュアル面談です。
仕事に対する想いを熱く語ってくださり、こんな方のもとで働けたら楽しいだろうと思い、豊田通商への転職を決めました」
2008年に豊田通商へ入社した山本は、鋼材のトレーディングを担当。リーマンショック直後という厳しい環境のもと、先進国での鉄鋼余剰を背景に、中東向けの商談を数多く手がけました。
その後、名古屋で自動車向け鋼管の業務を経験し、2012年からは中国に駐在。金属部の部長として、6人の部下をマネジメントしました。
「中国へは留学経験があったため、文化の違いに苦労することはありませんでした。駐在したときに誓ったのは、お客様や職場のメンバーが自分と働くのが1番楽しかったと思ってもらえるようにすることです。
中国では、密接にコミュニケーションを取れば取るほど、相手も心を開いてくれます。ビジネスライクに接するのではなく、人対人のつながりを大切にしてお客様と向き合い続けた結果、取引先の中国人の調達部長から『兄弟』と呼ばれるほどの信頼関係を築くことができました。
他にも競合とのコンペに勝った際に印象的だったのは、お客様が当社を選んだ理由として『豊田通商と仕事をしていると楽しいから』と言ってくださったことです。市場の競争が激しく、仕事としては大変なことが多かったのですが、今思い出しても楽しい経験だったと感じます」
豊田通商の看板とスタートアップの機動力。両社の良さを活かせることがやりがいに
中国から帰国し、グループ会社の鉄鋼製品専門商社に出向してプレイングマネージャーとして活躍した山本。その後は豊田通商に戻り、2023年からLIGHTz社に兼務出向していますが、事業が軌道に乗るまではさまざまな困難がありました。
「LIGHTz社に出資した後に、経営体制の立て直しが必要な局面を迎えたのです。事業ポートフォリオを見直すなど、かなり踏み込んだ対応が求められました。
他にも新規事業ならではのさまざまな苦労がありました。まず社内協力の取り付けです。LIGHTz社のサービス、ソリューションが普段の仕事の中では関わりが少ない領域でもあったため、社内のメンバーに如何に理解していただき、顧客への紹介の協力を仰いでいくか。どのように伝えたらLIGHTz社の提供する価値を理解いただけるかなどに腐心しました。同僚からの意見を基に説明や資料を何度もブラッシュアップし、協力を得るに至りました。
また、プロダクトの開発においてニーズの見極めも難しかった点です。私たちが開発しようとしているプロダクトは、お客様にとって『あればうれしい』のか『なければ困るほど必要』なのか。その判断が難しかったため、とにかく声を集めるべく200社以上にヒアリングを行いました」
何度も壁にぶつかりながら、山本があきらめずに新規事業に取り組み続けたのは、ゆるぎない信念があったからです。
「事業の将来性に対する確信があり、ここで絶対に終わらせたくないという想いがあったのです。それにこの新規事業はもともと、志を共にするメンバーと共に事業創出プロジェクトである『Toyotsu Inno-Ventures Project(TIVP)』や、社内ファンドの『ネクストテクノロジーファンド』といった当社の制度を活用してスタートしたものです。ここで失敗すれば、次が出てこなくなる。そんな危機感があり、是が非でも成功させる覚悟でいました」
堅い決意で挑戦してきた新規事業。その経験は、山本に新たな気づきをもたらしています。
「スタートアップは少数精鋭だからこそ、一人ひとりのパフォーマンスが会社の業績に大きく影響します。一人ひとりが会社の経営に与えるインパクトの大きさや、スピーディーに判断し、絶えず変化を繰り返しながら、行動に移していく。一方で豊田通商は長年培った事業ノウハウ・人脈に基づき、大企業として適切な判断を行い、チーム一体となって事業を推進していく。両社を経験したからこそ、それぞれの良さを学ぶことができました。
そうした両社の良さを活かせることが、この仕事のおもしろさだと感じています。たとえば飛び込みでセールスの電話をしたとき、『通常なら断るが、豊田通商だから話を聞くことにした』と言っていただいたことがありました。豊田通商の看板とスタートアップらしい機動力を発揮できることに、大きなやりがいを感じています」
仕事が楽しくて仕方ない。新規事業に挑戦したことで、社会人として今が1番成長を実感
順調に拡大を続けるLIGHTz社との新規事業について、山本は今後のビジョンを描いています。
「LIGHTz社が更なる成長をめざす中で、豊田通商がどう関わっていくべきか、さまざまな可能性を検討しています。ただ、どのような形になろうとも、製造業の技能伝承を支援し、未来の子どもたちに日本の産業を受け継いでいくという目的は変わりません。
この目的のために働くことが、私は楽しくて仕方がないです。楽しそうに出社する自分を見て子どもが『そんなに仕事って楽しいの?』と聞いてくる程、とにかくやりがいを感じ、前向きに仕事に取り組めています。
社内の同僚と週末は家族ぐるみで集まることもあるのですが、そういう同僚との関係性を見た子どもたちが『豊通に入りたい』と言ってくれると、良い影響を与えられているのかなとうれしくなります。
仕事がこれほど楽しいのは、社会人になってから今が1番成長できているからだとも言えます。新規事業に挑戦したことで、どうしたらうまくいくか?今できる最善は何か?を常に考え、簡単にあきらめない姿勢が身につきました。またLIGHTz社では経営に近い関わり方をする事で、より俯瞰的な視点で物事を見られるようになりました」
こうした成長の機会を得られたのは、豊田通商だからこそだと語る山本。
「社外の方と接する中で、『これほど裁量を持って新規事業に挑戦できるなんて、豊田通商はすごい会社ですね』と言われることがよくあります。外からの評価に触れたことで、あらためて当社の良さを感じることができました。
もう1つ豊田通商の特長として感じるのは、多様な人財が活躍しているということ。私自身、水産業界出身ですし、周りにはたくさんのキャリア採用の方々がその個性を発揮して、活躍されており、そういった個性を尊重しながらも、豊田通商のDNAが全社員に浸透していることも、当社の強みだと感じます」
今後も多様な仲間を迎え入れていく中で、山本は理想の人財像についてこう語ります。
「本部CEOの廣部も言っていますが、『明るく、楽しく、元気よく』仕事ができる人が1番です。逆境も含めて、すべての経験を糧に楽しめるような方なら活躍できると考えています。多様性のある組織として成長し続けるためにも、さまざまな個性や強みを持つ方が参加してくださるのを楽しみにしています」
※ 記載内容は2025年5月時点のものです

