環境技術の追求から、日本のものづくりの最前線へ
学生時代、私は工学部の機械工学科に所属し、環境問題の解決に貢献したいという思いから、液中プラズマの研究に取り組んでいました。この研究は、化石資源の枯渇問題を解決するため、より効率的な水素生成方法の開発をめざすものでした。
とくに印象に残っているのは、木質系バイオマスであるリグニンの分解実験です。水素生成の効率化だけでなく、有用な副産物の生成も重要な課題でした。機械系の研究室では珍しい化学分野への挑戦でしたが、他大学との交流や産業技術研究所の支援を受けながら、新しい知識を吸収していきました。その結果、ベンゼンやフェノールといった有用な物質の生成を確認することができ、新しい領域に挑戦する際の人的ネットワークの重要性を学びました。
就職活動では「日本のものづくりで世界中の人々の生活を豊かにしたい」という思いを軸に企業を探していました。この考えに至ったのは、台湾留学がきっかけでした。海外で暮らす中で、至るところで目にする日本製品に誇りを感じ、私も世界に貢献できるものづくりに携わりたいと考えるようになったのです。
そんな中で出会った豊田自動織機は、自動車・繊維機械・産業車両・物流など、幅広い分野で事業を展開し、世界シェアナンバー1の製品を多く生み出している企業でした。「日本のものづくりの立役者」というイメージに強く惹かれ、OB訪問や工場見学に参加しました。
そこで決定的だったのは、社員の方々の人柄の良さです。学生である私の質問に対して、常に丁寧でわかりやすい説明をしていただき、従業員同士も活気のある挨拶を交わすなど、社是である「家庭的美風」を体現するような雰囲気を感じました。また、モノづくりに対する熱い想いも印象的でした。
多様な事業分野を持ち、グローバルに活躍できる環境が整っていることも、他社にない大きな魅力でした。この環境で自分を成長させながら、世界中の人々の生活を豊かにする製品づくりに貢献したい。そんな思いを胸に、私は豊田自動織機への入社を決意しました。
新入社員研修で学んだ「考え続ける」という姿勢
入社後は、事技職問わず新入社員全員での研修からスタートしました。社会人としての基礎を学び、学生から社会人への意識の切り替えを行う大切な時間となりました。その後、工場実習を通じて現地現物のものづくりを学び、技術研修を経て現在の部署に配属となっています。
工場実習では、車両組立ラインの物流を担当することになり、トラックで納入した部品を各組立ラインの作業工程に供給する業務に携わりました。体力的にも厳しい仕事で、最初は作業が遅れてしまうこともありましたが、その経験を通じて「考え続けること」の重要性を学びました。
どのように作業すれば無理・無駄・ムラがなく、丁寧に仕事ができるのか。作業中も常にその問いを念頭に置き、班長とも相談しながら、レイアウトの変更や供給順序の見直しなど、効率化をめざしたカイゼン活動に取り組みました。その結果、遅れのない作業ができるようになり、実習最後には班長から「受け入れた実習生の中で一番成長を感じた」という言葉をいただくことができました。
配属後は、カーエアコン用コンプレッサーの事業部品質保証部で、開発から量産SOPまでの生産準備を担当しています。入社時に最も驚いたのは仕事のスピード感でした。しかし、一人で抱え込むのではなく、周りを巻き込んで課題に取り組むことで、そのスピードにも対応できるようになってきました。
具体的には、100点を目指して一人で抱え込むのではなく、まずは60点のものを作り上げて、上司や関係者とレビューしながらブラッシュアップしていく方法を学びました。自分一人で考えすぎると、本来の狙いから外れてしまう可能性があり、後戻りが大変になってしまうからです。この「まず動いて、周りと協力しながら改善していく」という姿勢は、工場実習で学んだ「考え続ける」という経験が活きていると感じています。
品質への真摯な姿勢と、グローバルな視点での品質保証
現在はコンプレッサ事業部の品質保証部で、電動コンプレッサの製品立上げに関する品質保証業務を担当しています。具体的には製品監査や客先要求への対応、量産ラインの品質確認業務が主な仕事です。私のチーム内での役割は、国内ラインと海外ドイツ拠点の生産準備活動を担当することです。
品質保証という仕事は、最後の砦としての重要な役割があります。不適合なものは、はっきりと不適合と判断しなければなりません。時には他の事業部から嫌われ役になることもありますが、ダメなものをダメと言えることが、最終的に事業部の利益につながると考えています。ただし、ただ否定するのではなく、何を基準として不適合と判断したのか、しっかりと説明できることが重要です。
とくに印象に残っている成功体験は、海外拠点で立上げたラインの客先監査で高評価をいただいたことです。現地のローカルメンバーと協力して、想定される質問の事前準備をしっかり行いました。日本の拠点で問題になっていることを事前に海外拠点と共有し、現状把握と対策の回答方針を明確にしました。
一方で、苦労した経験としては、海外顧客との定例会での市場クレーム対応があります。例えば、電子素子の故障による不良発生への対応では、週単位でのスピーディーな対応が求められました。月曜日に対策報告内容の検討、火曜日に技術部や仕入先との調査依頼、木曜日の夜中までに調査報告書をまとめ、金曜日の朝に客先への報告を行うというサイクルを毎週繰り返していました。
また、国内とドイツ拠点での業務において、文化の違いを強く実感しています。ドイツのメンバーは非常に真摯で、日本では暗黙の了解とされることも、しっかりとした理由付けと説明が必要です。相手を納得させられる理由をきちんと理解し、わかりやすく説明することを心がけています。
この仕事を通じて、私自身も大きく成長できたと感じています。特に、製造ラインでの不良調査では、設備、製品、仕入先など、さまざまな要因を考慮する必要があり、多くの関係者を巻き込んで問題解決にあたることが重要だと学びました。異なる視点を取り入れることで新しい課題が見えてくることも多く、より積極的に人を巻き込んで課題に取り組めるようになりました。
グローバルな視野と成長意欲で、品質保証の新たな挑戦へ
現在、私は新たな挑戦として欧州顧客向けの製品の品質保証業務に携わることをめざしています。欧州の顧客はとくに要求水準が高く、製品の品質に対する監査も非常に厳格です。そのため、事前に顧客要求を深く理解し、それを製品や工程に確実に反映できるようサポートしていきたいと考えています。具体的な目標として、顧客の監査で課題なく合格できる体制を整えることを掲げています。
また、これまで携わってきた生産準備業務に加えて、新たにソフトウェア開発のA-SPICE活動にも参画しています。品質保証部では初めての取り組みであり、右も左もわからない状況ですが、これを成長の機会ととらえ、さまざまな方々と協力しながら知識を習得していきたいと考えています。現在は、コンサルティング会社のサポートを受けながら、A-SPICEの作法や考え方を理解する段階にありますが、品質保証部内に経験者がいない中で責任感を持って取り組んでいます。
豊田自動織機の魅力は、何と言ってもグローバルに活躍できるフィールドの広さです。海外拠点も多く、若手のうちから海外と接する機会が豊富にあります。また、チームワークを重視し、上司や先輩、他部署との風通しが良く、新しいアイデアや相互理解を重んじる自由闊達な雰囲気があります。
このような環境の中で活躍できる人材として、異なる意見に柔軟に対応しながら自分の考えを調整できる方、そしてチームで成果を出すために協調性を持ってメンバーと共に目標達成をめざせる方を求めています。とくに、挑戦心を持って行動し、多様性や変革を受け入れ、自らの成長と社会貢献を一体として考えられる方との協働を楽しみにしています。
中長期的には、製品開発の品質保証に幅広く携わることができる人材になることをめざしています。新しい分野への挑戦を恐れず、常に学び続ける姿勢を大切にしながら、品質保証の専門家として成長していきたいと考えています。
