迷いを越えて見つけた、「リーダーの形」
― なぜSVに挑戦しようと思ったのですか?
もともと事務職の経験はあり、紙の削減や手順の整理など改善することは好きでしたが、正直なところ、当初はスーパーバイザー(以下SV*1)の役割を自分が担えるイメージは沸きませんでした。特に、委託元のクライアントと向き合う役割に自分が立つイメージが持てなかったからです。転機は自身の入退院でした。仕事から離れた時間で「新しいことに挑戦したい」ということを自分のMyテーマに据えよう、という心持になり、そのタイミングでSVへも挑戦してみようと応募しました。結果的に入退院はネガティブには捉えず、前に進むきっかけになりました。
*1.SV(スーパーバイザー):プロジェクト内の現場責任者としてチーム・運用のマネジメントを担う
― SVになって最初に苦労したことは?
着任直後は余裕がなく、毎日いっぱいいっぱいでした。現場スタッフとして実務に集中していた頃とは異なり、組織全体を俯瞰して判断する役割の重さを実感し、どう振る舞うべきか自問自答する日々。特に、現場スタッフの業務改善とクライアントへの提供価値が必ずしも一致しない場面に戸惑い、双方の正しさの間に立つことが最初の大きな山でした。それでも、様々な人に相談できる環境に支えられて乗り越えることができました。
プロジェクトの転換期。専門職(PD)との協働で見出した「進化への道筋」
―突破口になった出来事を教えてください。
自分たちと類似の業務をやっている別の委託プロジェクトの業務が終了になってしまう、という出来事がありました。約20年続いていたプロジェクトだったので、この終了にかなり危機感を感じました。クライアントに価値提供を示さないと自分たちのプロジェクトも終了になるかもしれない、と。しかし、改善したい気持ちはあるのに、業務手順の更新が進まない。「分かっているのに直せない」状態が続き、クライアントからの要望も増えていきました。自分だけの力ではこの危機を乗り切れないと判断し、上長と相談して、社内のプロジェクトデザイナー(以下PD*2)へ支援を要請することになりました。
*2.PD(プロジェクトデザイナー):業務を整理・設計し、改善の方向性を示す役割
まずPDと共に業務の棚卸しを実施。全スタッフへの業務ヒアリングで「何をやめ、何を残すか」を整理し、「止めることを先に決める」重要性に気づきました。同時にExcel VBAで必要なツールも作成していただきました。「マクロって、こんなにできるんだ」という発想が自分の中で芽生えたきっかけとなり、
「ここから先は自分で進まなきゃ」と、残りの課題である工数削減とペーパーレス化には自分一人で向き合うスイッチが入りました。
「効率化コンシェルジュ」への相談
―その後の業務効率化やペーパーレス化は順調に進みましたか?
山中:それが・・そう簡単な話ではありませんでした。最初の重い腰は上がり、いろいろな課題や改善アイデアは思いつくものの、それを具体化していくにつれて、最後の具体的なやり方で詰まることがだんだん増えてきました。改善が進んでいくと、だんだんと大まかな業務フロー改善や大きくペーパーレス化というアプローチだけではない、具体的なツールレベルの方法論を詰める必要がでてきます。 工数の大きい業務を軽くするため、自作でツール作成に着手することも。ただ私はOAがそこまで強い訳ではなく、見よう見まねでマクロをつくってみたもののうまく動かずにもどかしいことが増えてきました。そんな折に「効率化コンシェルジュ」が立ち上がり、相談できる場ができたことが転機でした。
―効率化コンシェルジュとは?
菅野:SV向けにベテランPDが30分のミーティング内で業務効率化相談を受けて解決する仕組みです。ツールの作成をPDに依頼するのではなく、SV自身が解決するための疑問点をPDがクイックにアドバイスするようなイメージです。
―どんな悩みがどのように解決された?
菅野:ご相談を受けて一緒に確認すると、山中さんはAIを使いながら自分でマクロを作ってみたものの、「なぜ動かないのか」が分からない状態でした。 “どこが悪いのか分からないから、直しようがない”という独学で新しい技術に挑戦される方が最初によく直面する「壁」でした。効率化コンシェルジュでは、まず「どこまで動く?」→「どこで止まる?」と、一緒にマクロを分解しながら原因を特定しました。
山中:ポイントごとにアドバイスをもらうことで、疑問点が一つずつ解け、ツールは完成。導入後、月120分→20分へと工数を圧縮できました。
この成果にクライアント内でどよめきが起こり、「期待以上に改善いただき、ありがとうございます」とのお声をいただきました。また、改めて部長からPM*3へ「生産性改善が進んだ、実りある一年」とコメントをいただきました。
*3.PM(プロジェクトマネージャー): 複数プロジェクトの全体管理やSVのマネジメントを担う
―その後、ペーパーレス化は達成しましたか?
山中:ペーパーレス化は一番時間がかかった取り組みでした。 当チームは印刷物が多く、紙を前提に回る作業が負荷の大半を占めていました。最初の提案では、 「紙のほうが速い」「慣れるまでミスが増える可能性がある、結果的にお客様にご迷惑をかけてしまうかもしれない」といった、現場の品質を大切に思うからこその慎重な意見も多くありました。どれも現場を守ってきたメンバーの真摯な声ですから、簡単に否定できるものではありません。そこで、いきなり100%を目指すのはやめ、段階的に試行しながらPMにも相談しつつ、効果を数値で示すことで理解が少しずつ進みました。紙の仕分けや差し替えがなくなり、負荷が確実に下がるのをスタッフ自身が実感してくれたことで、一気に流れが加速しました。
最終的に100%のペーパーレス化を達成。日々のオペレーションはシンプルで再現性の高い形に整い、当初は慎重だったメンバーからも「もう紙には戻れません」という声が上がりました。
菅野:以前の山中さんは改善への想いは強い一方、複雑な業務のどこから着手すべきか迷われている印象でした。直近では課題の整理や相談内容が明確で、論点も絞られ、支援がとてもスムーズでした。また、紙が“安心の拠り所”になっていた作業も、仕組みと運用へ丁寧に置き換えが進み、段階的な試行が功を奏して100%ペーパーレスに繋げられたのだと感じます。 以前から現場想いの素晴らしいSVでしたが、今は改善を自らリードする力強さも備わり、本当に心強い存在です。
SVとしてのやりがいと自分らしさ
―今後どんなチーム運営をしていきたいですか?
私が目指すのは、「楽しい職場」よりも「ストレスのない職場」です。
現場スタッフのリーダーだった時代は「楽しい職場にしたい、楽しく働きたい」という気持ちが強かったのですが、SVになってから、スタッフの面談で「私今すごく幸せです。仕事が順調でストレスがないから、プライベートも更に楽しめている」と言ってもらえたことがあって職場環境が人生にも影響すると実感しました。 私の考えるスタッフにとってのストレスのない環境とは2つ。
1つ目は、「業務を理解した上で仕事を進められている状態」。 マニュアル通り正確に業務を行うことは何より大切です。ただ、それに加えて「なぜこの作業が必要なのか」という背景まで理解できていると、判断に迷うストレスがなくなります。また、スタッフの皆さんは、現場を支えるプロフェッショナルです。ただ作業をこなすだけでなく、納得感を持ってキャリアを積み重ねていくためにも、背景の理解は不可欠だと考えています。上記を踏まえて、業務の目的・作業手順・業務フロー・チームの体制や業務の割り振りをその時々の状況に合わせて変更しています。
2つ目は、「業務を通じた成長が感じられる」事。先週できなかったことが今週できるようになった、作業時間が短縮したとチームリーダーから聞いた等、「いつも頑張ってくれてありがとう」という感じで、スタッフにちょっとした声がけをするように心がけていています。定期的に、できたことを一緒に喜ぶ時間や、うまくいかない場合の対処法を一緒に考える時間を作るようにしています。 SVの仕事は簡単ではありませんが、支えてくれる人たちと小さな改善の積み重ねがあれば前に進めます。
私は、「理解して働ける」「成長を感じられる」の二本柱で、スタッフの負担を減らし、クライアントに価値を返していきたい。だからこそ、私は“ストレスのない職場”をつくり続けるチーム運営をしていきます。
