時代に合った新制度~若手の良き理解者として~
2020年に運用が開始されたPDO(Performance Development Officer)制度。「海技者一人一人との対話」を重視し、より個人の適性に寄り添った育成を目的としています。約200人の若手海技者に対し、乗船前と乗船後に必ず1対1の面談を1時間ほど行います。若手の頃からキャリアについて話し合い、ときには個人のモチベーションアップや助言等PDOとしての役割は幅広くあります。
髙山:PDOとして一番の目的は、海技者一人一人のコンピテンシーマネジメントを行うことです。海上人事チームの考えや会社から必要とされている人材像は、時代によって変化していきます。根本的なところは、会社の方針がどういうものなのかということです。今求められている思想や考え方、経験をしっかりと伝えることで、個々のパフォーマンスをマネージメントして伸ばせるよう心掛けています。
一人一人に対してどこまでの話をするのかは、相手によって変わってきます。やる気スイッチは人によって違うので、 メンタルやテクニカル的な話をする人もいれば、キャリア観の話をする人もいます。一番パフォーマンスを上げるために、その人が求めていないことを言っても意味がないと思っています。
ただ、組織の中で活躍する人材として好きなことだけをやっていれば良いということではないので、やる気スイッチばかりを押すのではなくバランスを考えながら話しています。
石川:PDOは、若手海技者と会社との繋がりだと感じています。NYKの社員であるというそのロイヤルティやエンゲージメントに資するため、1対1の面談を実施しています。 若手海技者の考えていることを理解して、良き先輩としてしっかり助言できるように心掛けています。
自分の意見や発言を会社に伝えたいと思っている人たちはいっぱいいるので、私たちを通してではありますが、意見を会社に伝えられるということは時代に合った非常に良い制度だなと思っています。
実際、PDOが若手海技者の人生を左右する可能性があるということは、重く受け止めています。若手海技者の良き理解者として、とにかく話をよく聞くようにしています。
若手海技者に求めるもの~意識高く、使命感をもって~
2009年に入社、海上勤務の経験が長いキャリアの中で、テクニカルな部分でもメンタリティの部分でも助言できることはいろいろあるという一等航海士の髙山。2013年に入社し、全ての船種に乗船しただけではなく、2018年には船舶管理会社に出向し管理業務の経験もした一等機関士の石川。そんな2人がPDOになったからこそ、若手海技者に求めるものがあります。
石川:若手海技者に求めることは、気持ち的にポキっと折れないでほしいなというのが一番です。みんながそういった経験をしてきているので、「あなただけじゃないのだよ」と伝えています。初めはもちろん分からないことがいっぱいありますし、多忙な業務に追われて心も疲れるときがあると思いますが、それでもその先に見えてくる世界が必ずあります。視野も広がって業務もいろいろと楽しくなってくるので、腐らずに折れずに何くそという気持ちで前を向いて頑張ってほしいなと思っています。
プラスαな部分で言うと、決まりきったことをやる時代はもう終わってきているのかなと思っています。 会社としても社会的にも、自ら考えてやっていかないといけないという方向にベクトルが向いています。やりたいと言えばチャレンジさせてもらえる環境になってきているので、是非声を挙げてもらいたいです。
髙山:中堅に差しかかろうとしたときに芽生える仕事観や所属意識みたいなものを、早い段階で育んでいけるようにしたいです。「私はこれだけ海上勤務でやってきたのです」と自信を持って言える人たちがどれだけいるのかということです。
「もっと勉強をして技術知見を深めたいのでチャンスをください」と言ってくる人が、意外と少ないなと感じています。3万5000人の日本郵船グループを牽引していく、NYK社員1800人の一員なのだという自覚を若手海技者に持ってもらえれば、自ずと働き方のレベルは上がってくると思います。
さらに、その中で約600人の海技者は、NYK社員としてのレベルを上回ってもっと会社全体を引っ張っていけるような存在になってほしいです。使命感を持って、それくらいの高いクオリティで仕事ができる若手海技者は多いと思います。
PDO兼配乗担当者として~希望は100%尊重~
海上人事チームで、配乗業務(※)にも従事している2人。一人一人の海技者に対して、育成も兼ねた配乗を行うことは非常に大変なことです。意識していることややりがいについて、次のように語ります。
髙山:良い成長も悪い成長も含めてですが、会社に所属している一人一人の社員の成長を一緒に喜んだり、間近で実感できたりすることはやりがいになっています。思わぬところでつまずいたり、海技者としてケアしたりしないといけないようなことはたくさんあります。
特に配慮していることは、その人が伝えたいことを対話の中で引き出し、言い残したことがないようにすることです。若手海技者から常に言いやすい存在であると同時に、私たち自身もなんでも伝えられる人でありたいなと思っています。
会社的なやりがいで言うと、配乗というアプローチから船の安全運航に貢献できているということです。現在20数隻の船に対して日本人の配乗をしていて、船隻数でも船員数でも限られたリソースマネージメントの中で、個人の育成も踏まえながら船がより良くなることも当然考えています。
石川:定点で成長を見ることができるというところが、やりがいだと思います。全然できなかった人がすごく楽しそうに船の話をしてくれると、「あー、なんか成長したんだなー」と嬉しく思います。「こういうトラブルがあって大変だったんですよー」みたいな話を聞くと、そういうことも楽しくなってきたのかなと成長を感じます。後は、バシッと配乗が決まって良い人に恵まれて成長したのだな、というときは配乗業務をしていてやりがいを感じる瞬間です。
大変だったことは、やっぱりコロナ禍です。いかに船を止めないかという、ビジネスの根本を維持するだけで非常に苦労しました。人繰りを考えることが私たちの仕事なのですが、コロナ禍で色々な制約がある中、一つ一つ確認しながらなんとか船を止めなかったことは良い仕事をしたなと感じました。
若手海技者のキャリアについて話し合う上で、本人の希望に寄り添うことが一番重要になってきます。限られた船隻数や船員数、ライフプランを重視する社会の流れの中、PDOとして行っている配乗について、次のことを大切にしていると話します。
髙山:配乗に関しては、ほぼ100パーセント希望を通しています。希望はとことん尊重しますが、叶わないこともあるというのはお互いの信頼関係の中ではっきりと腹を割って話し合い、理解してもらうようにしています。
結婚や引っ越しなどのライフステージ、陸上勤務のタイミングが家庭に影響してくる場合も多々あります。会社と労働者との関係性が変わりつつあり、会社が決めたことだけに従ってくださいという時代ではなくなってきている今、一緒に考え一緒に落としどころを探していくということは大事にしています。
お互いの意思と希望がある中で、どこで折り合いをつけるかという調整の仕方をしていますが、折り合いがつかなかったことは今のところありません。そういった話し合いも含めて、ほぼ100パーセント希望を通しています。
石川:満遍なく経験できるようにと思って配乗をしています。育休等の制度に関してはルールや権利としてあるものなので、本人の人生を妨げることは一切しないです。直近で見ても、男女問わず取得している人は結構多いです。人それぞれライフプランがあるので、そこはちゃんと話し合って、納得した形で進んでほしいなと思っています。
※ 配乗業務:運航管理をしている各船舶に対し、日本人船員の交代計画や乗下船の準備・手配を行うこと。
今後のPDOの在り方とは~変革の時代~
今後のPDO制度の活用について、PDOの2人だからこそ感じるものがあります。
石川:私たちが過ごしてきた10年とこれからの10年は、全く別のものに変わっていくと思います。会社としても変わろうという動きがものすごくある中で、本当にいろいろなチャンスがあると思います。
変革の時代なので、どんどんアピールをしていろいろなことにチャレンジをした方が、自分自身のやりがいもできますしやりたい仕事もできるようになります。これをやりたいということを主張して、自分自身で何か動いてみるというプロセスが大事になってくると思います。
海技者としてのベースを大事にした上で、若手海技者にはもっともっと自分の個性を伸ばしていってほしいです。本人の知識や経験が活きてくるので、必ず楽しい時代になります。
若手海技者へは自分の経験してきたことしか伝えられないので、それはそれで価値があることもあるかなと思いながら、等身大かつ自分の言葉で伝えようと努めています。飾らず偉そうにならず、気持ちはなるべく近く、「そんなに変わらないよ」というスタンスでやっています。
髙山:今の段階で言ったら、PDO制度は一歩も二歩も先に行かないといけないと思います。このPDO制度によって、まず会社との繋がりというラインはクリアしました。
海技者は、運航要員として船上で活躍するだけではなく、陸上でも活躍しないといけないというエッセンスをもっともっと入れていかないといけないという課題感を持っています。自分が求めるやりがいと会社の目指す姿が、シンクロして同じベクトルを向いていかないといけないと考えています。
陸上勤務もあることを考えるといつまでも船に乗れるわけではないので、乗船期間中に精一杯頑張ってしっかりとした技術を身に付け、その先はそれを武器に闘っていく必要があります。変化に対応できるような人材になるために、柔軟かつ自分のバックグラウンドを活かして深い洞察をして、自分が成し遂げたいことをちゃんと持った人になってほしいです。
もちろん海技者として大事な部分や変わらない部分、変えるべきではない部分は大切にしていく必要があります。上の人たちが大切にしているようなことも大事に守っていってほしいです。
育成を一緒に考える時間をもらえてありがたいと思っています。全部がうまくいくわけじゃないので、大変か大変じゃないかでいうとすごく大変ですが、若手海技者と楽しくやっています。
※ 記載内容は2023年10月時点のものです

