座学を終えて実習経験を積む2人の現在地──船乗りへの入口はすぐそこに

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▲初めてとなる会社の船(自動車船)で実習中の江口

──約2カ月半の乗船実習を終えたばかりの亀井と江口。希望に満ち溢れた2人の表情からは、充実した実習期間を過ごしていることが伝わってきます。

亀井:つい先日、自動車船を下船しました。同期全員で乗船していましたが、次からは別々の船に分かれる「分散実習」です。僕はLNG船に乗る予定です。

江口:2022年12月現在は、「社船実習」といって、会社の船で実務を勉強する期間です。自動車船では経験豊富なインストラクターの指導のもと、初めての「現場」を学びました。分散実習では、私もLNG船に乗る予定です。

亀井:次の船を降りたら、いくつか研修を受けながら試験勉強です。海技大学校の卒業試験を受け、そこからさらに三級海技士の口述試験を受験します。すべての試験に合格すると、晴れて航海士・機関士としてデビューしていきます。わからないことはたくさんありますが、同期と一緒に勉強できるのは本当に心強いです。

それぞれの想い、船乗りにあこがれた2人の就活生時代

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▲本社のある東京駅にて、江口(左)と亀井(右)

──一般大学を卒業した2人はどうして海上職の道を選択したのでしょう。彼らの就活生時代を聞いてみました。

亀井:僕が海上職を目指した理由は2つあります。1つ目は、自動車船が取材された番組を見たことです。自然を相手に世界中を飛び回る船乗りという仕事の規模の大きさを知り、ものすごくワクワクしました。就職活動をしていて、他の仕事とは比べ物にならないほど、この海上職にはワクワク感があるなと。

2つ目は、船の環境が僕自身の学生時代の生活環境と似ていると思ったことです。僕は中学、高校と寮生活をしていました。大学でもラグビー部に所属をしていて、共同生活をする機会が多くありました。制限された環境でも、どう楽しく生活していくか、みんなで協力し合いながら、何か1つを目指すということがすごく好きで、それが本当に船の環境と似ているなと。自分が楽しかったこと、頑張ってきたことが、船上生活では一緒だなと思ったので、海上職を志望しました。

江口:私は最初から海運業界に興味を持っていました。会社説明会で海上職の話を聞き、とてもかっこいいなと思ったのが最初の印象です。その後に、インターンシップや訪船会といったイベントに参加しました。訪船会ではコンテナ船の中を見学しました。どういう職場で仕事するのかを見て、とてもダイナミックでかっこいいなと思ったのが大きなきっかけです。

海上職の中でも機関士を選んだ理由は大きく2つありまして、1つ目は大学の専攻が活かせると思ったことです。私は理工学部だったので、電気について勉強していて、機関士と通じるものがありました。

2つ目は、自分の性格が機関士に向いていると思ったことです。きっちりしたい性格で、整理整頓が得意なので、機関士の道具の整理だったり、整備作業だったりに活かせるのかなと思いました。

会社の垣根を越えて、同期と過ごした海技大学校での生活

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▲海技大学校での座学の様子。海図に自船の位置を記入する亀井

──入社後、海技大学校に入学した2人。新しいことを学ぶ大変さはありましたが、同期と一緒に過ごす学校生活はとても充実していたようです。

亀井:座学期間は平日朝の8時から17時ごろまで授業があり、みっちり勉強をしていました。航海科は、気象・海象、法律、消火装置や救命装置の使い方、海図に自分のいる位置を記入する方法など、操船だけではなく、幅広い分野で基礎知識を学びました。僕は法学部出身ですが、部活動ばかりやってきた身なので、本当に0からの勉強のスタートでした。とても大変でしたが、勉強することで徐々にわかるようになっていくことにやりがいを感じました。

江口:機関科も授業時間は航海科と一緒です。主に勉強したのが、ボイラー、主機、発電機など、船に搭載されている機器の基礎です。また、出身が理系か、文系かをほとんど問わない職種なので、文系出身の人でも計算に特化した授業がありました。私は大学で電気系のことを少し勉強していましたが、船に関しては全くと言っていいほど知りませんでした。

最初は部品名を覚えるのが大変で、同期でお互い教え合ったり、先生に何度も質問したりして克服していきました。文系でも理系でも、入ってみると知らないことばかりで、スタートラインはみんな同じでした。

──海技大学校では日本郵船だけではなく、他社の自社養成の社員も一緒に学校生活を送ります。会社というくくりはありつつも、そこに壁はなく、同じ船乗りを目指す「仲間」としての意識があります。

亀井:海技大学校在学中は、会社が契約していたマンションにみんなで住んでいました。近くに川が流れていまして、休みの日や学校の授業終わりにはみんなで泳いで、バーベキューをしてました(笑)。

江口:17時くらいに学校が終わるので、その後に他の会社の自社養成の人たちと一緒にご飯を食べに行ったりとか、一緒にサッカー楽しんだりとか、そういった形で交流をしていました。

──海技大学校での座学を終えると、海技教育機構の練習船で乗船実習を行います。

亀井:航海科は「海王丸」という100mくらいの帆船に乗船していました。2カ月半の乗船実習を2回行い、その間に約1カ月の休暇がありました。座学で学んだ基礎を、船の上で実践する期間でした。帆船なので、実際に帆を広げて風の力だけで走ることもありました。星を使って自分の船のいる位置を計算する、天測も行いました。

江口:機関科は最初「青雲丸」という汽船に乗りました。その後に、亀井と同じ、「海王丸」に乗りました。青雲丸のときは機関だけではなくて、航海士の仕事も勉強することができました。

亀井:練習船では他社の自社養成メンバーのほか、商船系の大学生など、メンバーごちゃまぜの班で実習をしていました。社会人だけではなく、大学生とも交流があって楽しかったです。

実習を終えた先につながる、ホンモノの船乗りを目指して

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▲「海王丸」へ、同期とともに乗船

──海技大学校での乗船実習を終え、つい先日まで会社の船で実習をしていた2人。これからの長い会社人生での目標を聞いてみました。

江口:まずは免状を取るということ、その後は、三等機関士として、早く独り立ちすることが目標です。社船実習では知らないことがたくさんありました。業務の準備や、どう改善していくか、など、深く考えられるように次の実習も意識していきたいなと思っています。

亀井:僕もまずは、免状を取ることが目標です。それと、先輩とか後輩や部員など、役職に関わらず、相手がしてほしいことを先にできるような航海士になりたいと、前回の社船実習を通じて思うようになりました。

実際に船で働いている先輩方がそれを行っていて、船内の雰囲気がすごく良くなるのを感じ、自分もそういう人になりたいなと思いました。

──立派な航海士・機関士として活躍することを目標とする2人。「船乗り人生」はまだ始まったばかりです。