航空整備士への道のり──親を説得し、地元九州で夢を叶えるまで
小さい頃から、大きな飛行機が空を飛ぶ姿に魅了されていました。父が自動車整備士をしていた影響もあって、ものづくりに興味を持ち、自然と「自分も整備士になりたい」という夢を抱くようになりました。ただ、父は整備士という仕事の大変さを身をもって知っていたからこそ、私には普通高校から大学へ進学してほしいと考えていたようです。
それでも私の中で、「航空整備士になりたい」という思いは変わりませんでした。そこで、まず工業高校へ進学し、その後航空整備士の専門学校へ進むという明確な道筋を立てて、両親に説明したのです。ただ漠然と「整備士になりたい」と言うのではなく、具体的なキャリアパスを示すことで、私がしっかりと将来を考えていることを伝えました。最終的には両親も理解してくれて、後押ししてもらえました。親を説得して進学した以上、必ず成功して恩返ししたいという強い思いがありました。
航空整備士専門学校では、その思いを胸に、とにかく勉強に励みました。毎日の予習、復習を欠かさず、航空整備士としての基礎知識をしっかりと身につけることができました。この時期の努力は、後に就職してから資格試験を順調にパスする上で大きな財産になりました。
一方で、勉強だけではなく、小学校から続けていた野球も継続。寮生活では同期や先輩などさまざまな人との出会いや交流を通して、技術面だけでなく人間性も成長できたと感じます。寮で親しくなった先輩の中には、今も同じ職場で働いている方がいて、学生時代からのつながりが続いています。
就職活動では、地元が長崎県ということもあり、同じ九州で働けるエアライン会社を志望しました。また、幅広く整備業務を経験したいという思いから、運航整備(航空機が空港に到着してから次に出発するまでに実施する点検・整備)と点検整備(格納庫で実施する定期的な点検・整備)の両方に携われる会社を探しました。当時、私の学校ではエアラインへの入社試験を受けられるのは原則1社という厳しいルールがあったため、かなりのプレッシャーを感じながら活動していたことを覚えています。エアライン整備士になるという夢を叶えるための、一度きりのチャンスでした。
JACの印象は、保有する機体は小さいながらも、離島路線を支える地域密着型のエアラインで、JALグループとして日本全国の地域路線を支える重要な役割を担っている会社。当時は北海道まで路線があり、その広がりにも驚きました。そして何より、先輩方が積極的にコミュニケーションを取ってくれる、話しやすい雰囲気が印象的でした。採用選考では、他の学生もほとんどが九州出身だったことも記憶に残っています。地元に愛されている会社なんだと実感しました。
最終的な入社の決め手となったのは、運航整備にも重整備にも携われる点でした。他のエアライン会社では、配属先によってどちらかを専任することが多い中、JACでは両方の業務を経験でき、幅広い知識とスキルを身につけることができます。入社後のキャリアパスの選択肢も広く、整備士として大きく成長できる環境があると感じました。親を説得して進んだ道、そして一度きりのチャンスで挑んだ就職活動。その先に見つけた理想の職場で、私は新たなスタートを切ることになったのです。
慰霊登山で再確認した安全への強い想い。実務に励みながら、一等航空整備士も取得
入社後、まず羽田空港と成田空港でJALグループの整備系社員が一堂に会する整備訓練が約3カ月間ありました。ここでは航空整備の基礎知識はもちろん、JALグループ社員としての仕事に対する姿勢や基礎知識を徹底的に学びました。特に印象に残っているのは、安全に対する意識を高めるための教育です。航空会社で働く上では安全が大前提であるということを、座学だけでなく体験を通じて学ぶ機会がありました。
その一環として実施された御巣鷹山への慰霊登山は、今でも鮮明に記憶に残っています。この研修を通じて、航空整備士として安全が大前提であることを身をもって感じ、しっかりと認識することができました。この3カ月間の研修は、私の整備士としての土台を形成する非常に重要な期間だったと思います。
研修を終えた後、私は点検整備グループに配属されました。ここでは、格納庫に長期間航空機の運航を止めて行う重整備を主に担当しました。具体的には、数日間を要する定期点検作業や、エンジンやプロペラの交換作業などです。じっくりと時間をかけて機体と向き合える環境で、航空機整備の基礎を着実に身につけることができました。
その後、私はSAAB機、ERJ機、ATR機と順に一等航空整備士の資格を取得し、現在は運航便の整備を行う運航整備士として働いています。格納庫での点検整備から、空港ターミナルでの運航整備へと仕事が変わったことで感じた大きな違いは、時間に対するプレッシャーです。基本的な整備内容に大きな変わりはありませんが、運航便での整備の遅れは遅延や欠航に直結します。そのため、格納庫での点検整備のときとは比べものにならないほどのプレッシャーがかかることを実感しました。
また、一等航空整備士の資格取得が大変であることは入社前から承知していましたが、想像していた以上に厳しい道のりでした。何千ページもある航空機のマニュアルを全て理解する必要があり、約半年から1年間は勉強漬けの毎日。また、それらは口頭試問でのレベルチェックなどもあり、精神的にも非常に大変な時期でした。しかし、この苦労が今の自分を形作っているのだと思います。
整備士の成長に必要な「経験」を仲間と共有し、自分だけでなくチームの底上げをめざす
現在私は、運航整備グループに所属し、日常の運航便を安全に運航できるように航空機の運航品質向上に努めています。アシスタントマネージャーという一般職の最上位役職として、管理職をサポートしながら、社内教官資格を活かして後輩をはじめ社内外の方々への整備技術教育も担当しています。
日々の業務では、自社機であるATR機の運航品質向上のため、毎日の定期点検や不具合修復整備を行っています。不具合の兆候を早期に察知して予防整備を実施し、航空機の品質維持・向上に努めることが私たちの重要な使命です。また、機体別訓練(整備士が、機種毎に一等航空整備士資格を取得するために受ける訓練)の現場教官として、次世代の整備士を育成する役割も担っています。
運航整備の仕事で最も印象に残っているのは、原因がわからない不具合が続いた時の出来事です。技術資料を読み込み、自分が積み上げてきた知識を総動員して原因の特定に挑みました。基本的に不具合修復はマニュアルに従って進めますが、マニュアルに手順がない不具合も多く発生します。そんな時は過去の事象からヒントを探したり、電気配線図を細かく追ったりして故障の探求を進めます。今までの経験と積み上げてきた知識を駆使して、不具合箇所を予測・特定していくのです。
このような不具合を解消するためには、資格取得時に相当な量の知識を習得しければなりません。ただ丸暗記するのではなく、理解して覚える必要があり、その意味でも多くの経験が糧になります。あの時、自分が身につけてきた知識と経験によって原因を特定し、不具合を修復できた瞬間は、まさに達成感に満ちていました。運航便を欠航させることなく機材をお客様に提供できたときの喜びは、何物にも代えがたいです。
この成功体験から、整備士は何事も経験が大切だということを改めて学びました。さらに、その経験を周囲と共有し、チームとしてスキルアップすることの重要性も痛感しました。長い整備士人生の中で直面する不具合は人それぞれで、ある人は何度も経験しても、ある人はまったく経験がないということが航空機整備にはよくあります。年齢と経験は、必ずしも比例関係にないのです。
だからこそ、現在は自分のスキルアップをめざすだけでなく、経験を仲間に共有してチームとしてレベルアップしたりミスを防いだりすることを心がけています。
どんな仕事も作業ミスや失敗は許されないとは思いますが、航空整備士のミスは事故などに直結してしまいます。そのため、常に緊張感を持って作業に臨み、少しでも不安な点があったら再確認することを徹底していますが、精神的に非常に苦しいときもあります。
このプレッシャーと向き合うために、私が大切にしているのは、作業を始める前に一旦立ち止まり、落ち着いて道筋を立てて進めるよう計画すること。そして、整備作業は準備が何より重要です。すぐにマニュアルを調べられる環境を整え、すぐに工具を使えるよう準備するなど、整備に使える時間をより多く確保し、余裕を持たせることを心がけています。
整備インチャージをめざし、次世代の仲間と一緒に地域の翼を支えたい
今、私が最も力を入れて取り組んでいるのが、整備インチャージ資格の取得です。整備インチャージとは、整備方針を決める権限を持つ、いわば整備の司令塔のような存在。当社では、北海道エアシステム(HAC)や天草エアライン(AMX)の整備を受託していますが、整備インチャージは両社と自社の運航便のメンテナンスコントロールを握る、非常に重責のある業務なのです。この資格を得るには相当量の整備知識や経験が必要ですが、それに加えて信頼関係を築くための人間性も大切です。1〜2年を目処に、さらなる経験を積み、スキルアップに努めていきたいと考えています。
そのために、自分が直接担当していない不具合事例についても、自分事として捉えて考える習慣を大事にしています。インチャージには知識、経験、判断力のすべてが求められますから、他のメンバーが対応した事例からも学び、日々の業務の一つ一つを成長の機会することで、JACだけではなく、北海道エアシステム(HAC)や天草エアライン(AMX)の地域の翼を支えることができればと日々挑戦しています。
中長期的には、マネージャー職への昇格を目指しています。航空整備士は互いに助け合い、確認の会話やアサーション(相手を尊重しながら、率直かつ適切に自分の意見を伝えるコミュニケーション)をしながらチームでミスを防ぎ、航空機の品質を高めていきます。マネージメントする立場になったら、コミュニケーションを大切に、誰もが話しやすいチームをつくりたいと思っています。
後輩の育成においても、いくつか大切にしたいことがあります。まずは航空機を安全に飛ばし、お客さまの命を守ることは大前提ですが、私たちの仕事も危険を伴う以上、自分の命、仲間の命を守ることも同じく大切です。そして、航空機整備は経験できるもの/できないものが多くあるからこそ、チームとして情報共有し、協力して助け合う意識の重要性を伝えていきたいですね。
最終的には、整備計画と整備体制をより強固にし、予防整備をより多くできる環境を整えたいと考えています。そうすることでさらに航空機の品質を上げ、JALグループの地域の翼を支える整備士として活躍したい。それが私の目指す姿です。
JACには幅広いキャリアパスがあり、幅広いスキルを得ることができます。また、年齢に関係なく、個人の努力次第で早期のステップアップも可能な会社です。航空整備士の業務は、表舞台に立つことは少ない裏方の仕事であり、一つ一つ地道に安全を積み上げていく過程は、決して華やかではないかもしれません。しかし、航空機は多くの部門が連携し、全社員が一丸となってこそ安全・安心を形にできます。もちろん、整備士がいなければ航空機を空へ送り出すことはできません。地道な作業の先にある「お客さまの空の旅を支える」ことに、私たちは大きな誇りとやりがいを感じています。
JACで活躍できるのは、コミュニケーション能力が高く、向上心を持って自ら行動できる方だと思います。私たちと一緒に地域の翼を支え、お客さまの安全・安心な空の旅を守ってくれる方と、お会いできる日を楽しみにしています。

