働き方改革によって働きやすさは向上した一方で、仕事を通じた達成感・貢献感・成長実感といった「働きがい」を得にくいという声も聞かれます。では、「働きがいを感じる職場」には何が必要なのでしょうか。
推せる職場ラボでは、そのヒントとして「推せる職場」という考え方に注目しています。推せる職場とは、メンバーが「この職場・このチームを良くしたい」「目標達成に貢献したい」と感じ、組織の目標を“自分ごと”として主体的に関われる職場です。
そして、その推せる職場を作っていく要素の一つが「挑戦」です。今回は、企業事例を交えながら、「挑戦」する文化について解説します。
挑戦する文化とは
「挑戦する文化」とは、社員一人ひとりが与えられた業務をこなすだけではなく、自ら機会を創り出し、広げていく当事者である、という前提に立つ文化です。
挑戦とは、単に難しい仕事を与えられることではありません。自分の意思で考え、動き、経験を積み重ねることです。組織が挑戦を止めるのではなく後押しする姿勢を示したとき、社員は仕事を自分ごととして捉え、「この職場をより良くしたい」という想いが自然と芽生えていくのです。
挑戦を支える3つの重要な要素
挑戦が文化として根づいているかを見極めるには、次の3つの視点が重要です。
要素①:裁量が「実感」を伴っていること
年次や肩書きに関係なく、意思決定やプロジェクトを任される機会があるかどうか。重要なのは、裁量権の付与が形式的ではなく、自分で判断できる機会が明確にあることです。「自分が決めた」と実感できる範囲があるとき、挑戦は与えられた経験ではなく、「自分で選んだ経験」になります。
要素②:挑戦が“体験”として設計されていること
挑戦の文化は、単なる掛け声だけでは根づきません。大切なのは、挑戦が具体的な「体験」として設計されていることです。例えば、自ら手を挙げられるテーマがあり、アイデアを短期間で形にでき、その成果が社会やユーザーに直接届く。このように、成果が形となって返ってくるサイクルがあることで、挑戦に当事者意識が生まれ、個人の成長も後押しします。
要素③:挑戦が“連鎖”する仕組みがあること
一度の成功や失敗で終わる挑戦は、文化にはなりにくいものです。上司や周囲が見守り、経験を振り返り、「次はどうするか」を問い続けることで、次の挑戦へとつながります。個人の出来事で終わらず、組織のエネルギーとして循環しているかどうかがポイントです。
挑戦文化がある職場とは?5社の事例をもとに解説
では、実際に「挑戦」を大切にしている職場は、どのような工夫をしているのでしょうか。ここでは、5社の事例をもとに、挑戦文化を支えるポイントを紐解いていきます。
※ 掲載内容は記事公開当時の内容になります
事例1:株式会社MIXI
「ユーザーサプライズファースト」を掲げ、役割を越えたフラットなチーム開発を実践する株式会社MIXI。若手社員の挑戦を後押しする文化や仕組みから、「推せる職場」のヒントを探ります。
ポイント①:役割や年次に縛られない、主体的な挑戦の機会をつくる
MIXI社では、新卒入社2年目の社員がプロジェクトマネージャーとして活躍するなど、役割や年次にとらわれず責任ある仕事を任せる文化があります。こうした環境があることで、ベテランだけでなく若手も「挑戦してみよう」と自分から思える機会が生まれ、自分の裁量で考え、動く経験を積むことができるのです。
ポイント②:異なる視点を丁寧に擦り合わせる対話のプロセスがある
プロジェクトを進める中で、「チーム全員で同じゴール(景色)を共有するにはどうすれば良いか」を言語化していく場面も多くあります。
例えば、言葉だけでは伝わりにくいニュアンスを試作品やイメージ図として形にし、体験しながら自分たちの作りたいもののイメージを擦り合わせ、理解を深めていく。こうした「対話と実体験を往復させる試行錯誤」こそが、新しい挑戦をチームの学びとして支える土台になっています。
ポイント③:対等な関係と本質的な問いを共有する文化がある
MIXI社のチームでは、若手の視点にも耳を傾けながら、「その本質は何か」を一緒に深掘りする姿勢が大切にされています。エンジニアやデザイナーといった異なる専門性を持つメンバーが、肩書きにとらわれず意見を交わしながら、共通の目的を探求することが、対等な関係性や信頼につながっているのです。
記事リンク:“心もつながる”プロダクトをつくるために 新卒2年目が挑んだ「ユーザーサプライズファースト」の現場
事例2:TOPPANデジタル株式会社
TOPPANデジタル株式会社では、個人の「やってみたい」という想いが周囲に伝わり、新たな挑戦を呼び起こす循環が生まれています。自発的な挑戦を支える仕組みには、「推せる職場」のヒントがありました。
ポイント①:「面白い!」という自発性を起点にチームが生まれる文化がある
普段関わらないメンバー同士でも、「これは面白そうだ」という感覚から、チームが立ち上がる文化があります。
年次や役職ではなく、 “面白さを共有する力”が起点になることで、若手も挑戦しやすい機会が広がっています。
ポイント②:短期間でプロトタイプをつくり、実体験を通じて裁量を拡張している
記事の中で紹介されている、社員が挑戦した外部イベントでは、アイデアからプロトタイプ構築までのプロセスをスピード感を持って実行します。実体験を通じた挑戦は、単なる座学ではなく、ユーザー価値を意識しながら自分で考え、判断し、動く経験になります。
若手が企画・実装・マネジメントまで幅広い役割を担うことで、個の広がり、視点も高まる機会になっています。
ポイント③:挑戦を見守り、次のステップにつなげるマネジメントを重視している
挑戦が一度きりで終わらないためには、周囲の関わりも欠かせません。TOPPANデジタル社では、若手の「やってみたい」をただ受け止めるだけでなく、日常業務でどう実践できるかという視点で支援するスタンスが大切にされています。
周囲が見守りながら伴走することで、一つの挑戦が次の挑戦へとつながり、組織の文化として根づいていきます。
記事リンク:挑戦が連鎖する職場のつくり方 社員の自発性を起点に
事例3:株式会社ガイアックス
社員のスキル活用と人手不足の解消を両立するため「社内副業」制度を導入した株式会社ガイアックス。社員が自らの強みを活かして他部署の業務に参画する仕組みには、会社と個人の双方にとってメリットのある「挑戦」の形がデザインされています。
ポイント①:自らのスキルを活かす場所を「自分で選ぶ」裁量がある
社内副業制度により、社員は現在の部署に所属したまま、自分の得意なことや興味のある分野を他部署の業務で活かすことができます。「どの業務に、どれくらいの割合で関わるか」を自ら選択できる実質的な裁量が、主体的な挑戦を後押ししています。
ポイント②:リスクを抑え、スキマ時間から始められる挑戦の「設計」
いきなり異動や転職をするのではなく、本業のスキマ時間を活用して他部署の仕事に挑戦できるというハードルの低さがポイントです。会社としても労務や経理のルールを整備し、個人が安心して新しい業務を体験できる環境をしっかりと設計しています。
ポイント③:個人のスキル発揮が、部署間交流や新規事業へと「連鎖」する
社内副業を通じて、普段は関わりのないメンバー同士の交流が生まれ、組織の風通しが良くなっています。個人の小さな挑戦(趣味や特技の活用)が、結果的に低リスクかつ短期間での新規事業立ち上げにつながるなど、組織全体の価値創造へと寄与しています。
記事リンク:社員の個性が活きる!新たな活躍の場を作る「社内副業」のしくみ
事例4:フジッコ株式会社
元自衛官の社員が、担当外の業務である「社員食堂の改革」に自ら手を挙げ、周囲を巻き込んでいったフジッコ株式会社。「アソビゴコロ」を大切にした手触り感のある挑戦が、組織の文化を変えていくプロセスを紹介します。
ポイント①:担当外の領域でも、想いと共感で実質的な「裁量」を獲得する
「社員食堂を良くしたい」という個人の強い想いからスタート。本来の担当業務ではないものの、その熱意で周囲を巻き込み、実質的にプロジェクトを動かす裁量を獲得していきました。役職や担当にとらわれず、自律的に挑戦の形をつくり出しています。
ポイント②:「食場」の体験を、仲間と共に形にする
会議室での議論に留まらず、商品開発担当とタッグを組んで食堂メニューやマルシェを次々と実現。誰もが参加できる「体験」を職場の真ん中に生み出すことで、周囲の共感と主体性を自然に引き出し、目に見える変化を仲間と共に作り上げています。
ポイント③:個人の熱意が部署を越えた共創へと「連鎖」していく
一人の行動がきっかけとなり、社内のさまざまな部署はもちろん、他社との「シェフ交換」など外部を巻き込む大きな企画へと発展。挑戦する姿が周囲の「やってみたい」を刺激し、新しい「食場」の文化を築くという好循環を生み出しました。
記事リンク:目指したのは“ 食場づくり”。 「おいしさ」と「けんこう」でみんなに元気と幸せを!
事例5:トヨタ自動車九州株式会社
オフィス移転の白紙撤回を機に、自らの働く環境を「カイゼン」する取り組みを始めたトヨタ自動車九州株式会社。現場を丁寧に巻き込みながら、自分たちで環境を良くしていくプロセスは、まさに「推せる職場」の条件を満たしています。
ポイント①:全員が環境づくりに参加できる「裁量」を可視化する
一部の担当者だけで決めるのではなく、「いいねシール」などを用いて現場の意見を可視化。社員一人ひとりが「自分たちの働く場所をどうするか」という意思決定に関わるプロセスを踏むことで、誰もが当事者としての影響力を実感できるようにしました。
ポイント②:モデルオフィスの設置により、新しい働き方を「実体験」する
ABW(時間と場所を自由に選ぶ働き方)という概念に対し、まずは自分たちでモデルオフィスを設置して、その運用をスタートさせました。実際にその場で働きながら、現場の視点でメリットや課題をダイレクトに体感し、次なる改善へとつなげていく「走りながら考える挑戦」を積み重ねています。
ポイント③:オフィスでの成功体験が、製造現場の改革へと「連鎖」する
オフィス環境の改善で得た「自分たちで職場を良くできる」という成功体験が、やがて製造現場の休憩所改革などへと波及。一つの場所で起きた挑戦とカイゼンの波が、組織全体へと自然に広がっていく連鎖の風土が醸成されています。
記事リンク:「カイゼン」風土をオフィスや働き方にも。ABW導入で誰もがイキイキと働ける企業へ
まとめ
さまざまな職場の事例を通して、推せる職場を支える「挑戦する文化」の姿を見てきました。
何をするかだけでなく、どのように挑戦できる環境かという視点も大切です。自ら手を挙げた挑戦が次へとつながり、自分の意思や行動が組織の前進に結びついていると実感できる——そうした環境があるかどうか。
ぜひ、そんな視点からも仕事や職場を見つめてみてはいかがでしょうか?
