働き方改革によって働きやすさは向上した一方で、仕事を通じた達成感・貢献感・成長実感といった働きがいが得にくいという声もよく聞きます。
では、「働きがいを感じる職場」には何が必要でしょうか。
この答えの1つが、社員一人ひとりが「この職場を自分が育てている」と実感できる「推せる職場」という概念です。今回は、推せる職場に共通する要素、「参画機会」について解説します。
※推せる職場については、こちらをご覧ください
参画機会とは?
「参画機会」は、ただ会議に出るだけの「参加」ではなく、企画や意思決定にも当事者として関わる機会を意味します。参画機会がある職場では、「自分のアクションで、この職場がより良くなっていくと信じられる」という状態が生まれます。
推せる職場ラボの研究データでも、「参画」の機会が、働きがいを高めることがわかっています。
「参画機会」を見極める3つの視点
参画機会があるかを見極める際には、以下の3つのポイントをチェックしてみましょう。
要素①:「機会」は用意されているか?(環境・制度)
年次や役職を問わず、新規事業や業務改善に対して、誰もがアイデアを提案したり、プロジェクトに参加したりできる制度や仕組みはありますか。これが「参画」への入り口となります。また、情報がオープンであることも大前提で大事です。
要素②:「挑戦」を歓迎する空気か?(心理的安全性)
機会があっても「言っても取り上げてもらえない」「失敗したら評価が下がる」といった雰囲気の職場では、行動を起こしづらくなってしまいますよね。たとえ反対意見であっても尊重され、失敗を恐れずに挑戦できる。そんな心理的安全性が確保された「カルチャー」も欠かせません。
要素③:納得できる「リターン」を得られるか?(動機付け)
リターンとは、昇進や報酬といった目に見えるものだけではありません。「この経験を通じて市場価値が高まった」というスキル面での成長、「仕事の手触り感」や「事業や企業の成長に貢献できた」という実感。そうした金銭以外の「意味報酬」を得られるかどうかが、働きがいを大きく左右します。
参画機会がある職場とは?5社の事例をもとに解説
では、実際に「参画機会」を大切にしている職場は、どのような工夫をしているのでしょうか。ここでは、5社の事例をもとに、それぞれ3つのポイントを紐解いていきます。
※ 掲載内容は記事公開当時の内容になります
事例1:株式会社アトラエ
意欲ある社員がイキイキと働ける職場には、どんな文化があるのか。“大切な人に誇れる会社”を本気でめざす、アトラエ社のカルチャーを探りました。
ポイント①:会社の課題を自分事にできる定期的な“参画機会”がある
アトラエ社では、月に1回、経営や組織、カルチャーなどを全員で考えるイベントを開催し、制度の存在意義やアップデートについて対話を実施しています。こうしたイベントが定期的に実施されていると、自社を自分事化しやすいです。
ポイント②:共通の方向性が浸透しており、安心して参画できる
記事では、「意欲あるメンバーが無駄なストレスなく活き活き働き続けられること」というメッセージが何度か発信されています。どのような組織を作っていきたいかが、皆でしっかり共有されている環境ということがわかります。
組織の方向性が全員に共有されていると、社員は安心して制度設計や、組織の議論に「参画」しやすい状態になります。また、皆で同じ方向を向き、一体感がある環境は、職場に貢献したいという意欲にもつながりやすいです。
ポイント③:情報のオープン化と社員同士の信頼関係が、自発性や主体性を後押しする
アトラエ社では、「情報が足りなくて判断できない」という状態にならないように、ほとんどの情報をオープンにしています。
また、誰かが正解を持っているのではなく、人によって捉え方が異なる問題に対して皆で解決を試みるという仲間への信頼がベースにあります。だからこそ、意見に対して先輩が説き伏せるということもないそうです。
こうした環境では、組織に対して課題を伝える自発性や、自らその解決に向けて取り組む主体性を発揮しやすくなります。
記事リンク:「大切な人に誇れる会社」であり続けるために~“イキイキ働く”を支えるカルチャーとは~
事例2:株式会社ソルトワークス
月間ノミネートポストの中から投票を行い、2024年11月4日(いい推しの日)に「#推せる職場大賞」に選出された株式会社ソルトワークス社。今回は、推せる職場をつくるためのアプローチを人事と経営の視点から紐解きます。
ポイント①:チャレンジしやすい仕組みがある
ソルトワークス社には、「SALTQUEST(ソルトクエスト)」という社内公募システムがあります。これは、社員が勉強会の開催から新システムのテストまで、社員が有志のメンバーを募れるというもの。社員の募集への参加は任意ですが、参加すれば人事評価にも加点される仕組みです。
仕組みや人事評価は、会社が何を求めているかのメッセージにもなります。こうした仕組みがある環境は、自発性、主体性を発揮する上での安心感につながります。
ポイント②:外部発信、外部評価が、自社への誇りと貢献意欲につながる
「自分たちの仕事が社会に対してどれぐらい貢献し影響を与えているのか、つまり弊社の存在価値をブランディングとして外にもっと発信していく必要があると感じていました」という発言の通り、“推せる職場”のキャンペーンにも自ら参加するなど、外部に積極的に発信しています。
自社のことを外部に発信し、外部から認められることは、「自分たちの参画には価値がある」という誇りを持つことにつながりますし、さらなる貢献への意欲を刺激してくれます。
ポイント③:リファラル採用が社員の満足感や貢献意欲の高さを知るヒントになる
直近1〜2年は、リファラル(社員紹介)経由での採用が全体の約5割を占めているソルトワークス社。社員が「友人や知人に勧めたい」と思えるほど、自分の会社に満足し、誇りを持っている証拠です。
リファラル採用を行っていて、それが成功している環境は、自社への満足感や、「より良い職場にしていきたい」という貢献意欲の高いメンバーが多い可能性があります。
記事リンク:「#推せる職場大賞」受賞インタビュー ソルトワークスが取り組む「推せる職場」づくり
事例3:パナソニック インダストリー株式会社
「月曜日の朝、会社に行くのが楽しみで仕方ない会社にしたい」。専門職としてのキャリアと、組織を活性化したいという想い。一見、両立が難しそうなこの2つを可能にする、パナソニックインダストリーの「参画機会」とはどのようなものでしょうか。
ポイント①:挑戦意欲を形にする「社内複業制度」
ある経理担当者が、週1日の頻度で活動する「社内複業制度」の公募に応募し、選考を経てプロジェクトに参加しました。社員の「やってみたい」という想いを実際の業務として後押しする「機会」が、公募や選考といった具体的なプロセスを伴う正式な制度として提供されています。
ポイント②:未経験の挑戦を支える、学習機会と周囲のサポート
未経験のグラフィックレコーディングに挑戦する際、会社の研修プラットフォーム『マナビバevery』を活用して自主的に学習。また、決算期など本業が多忙な中でも、上司や同僚がバックアップし、応援してくれたと語っています。
社員がスキルを習得するための学習機会が提供されているだけでなく、周囲の理解とサポートによって、未経験の領域にも安心して「挑戦」できる心理的安全性が確保されています。
ポイント③:本業への貢献と、仲間への感謝という「意味報酬」
複業を通じて「いろいろな部署の人と関わる機会が増え、本業の経理でも部署間の連携がスムーズになり、業務効率が向上した」と語っています。また、「仲間の温かいサポートに助けられ、複業に挑戦できた」と、本業の同僚への感謝の念があらためて生まれたそうです。
スキルアップや業務効率の向上といった実利的な「リターン」だけでなく、周囲への感謝や「何にでも挑戦できる」という自己効力感の高まりといった、金銭以外の「意味報酬」を得られていることが、働きがいにもつながっていると考えられます。
記事リンク:経理担当が社内複業で風土醸成に挑戦──月曜日が楽しみな会社をつくりたい「想い」
事例4:富士通株式会社
「もっと手軽にお互いの居場所や出社日を伝えられるアプリケーションがあればいいのでは?」コロナ禍での「寂しい」という1人の若手の想いが、社員をつなぐサービスを生みました。社員の自発的な想いを、会社の力に変える風土がそこにありました。
ポイント①:ボトムアップの想いを歓迎し、経営層に直接提案できる風土
若手社員6名が有志で始めた活動に対し、CDXO兼CIOがポジティブな反応を示し、デザインセンターからも協力者が現れました。年次や役職に関わらず、社員の自発的なアイデアを歓迎し、部署を越えた協力が得られるオープンな「機会」があるとわかります。
ポイント②:公式リソースも活用できる、挑戦を歓迎するカルチャー
サービスの認知向上にあたっては、食堂での地道な呼びかけや社内SNSのフル活用に加え、新入社員研修でのサービス紹介や、ほぼすべての社内イベントへの登壇といった公式な場も活用できました。組織全体で社員の自発的な「挑戦」を歓迎し、後押しするカルチャーがあることを示しています。
ポイント③:ユーザーの声と、次のキャリアへの期待
ユーザーから直接届く感謝の声やキャラクターへの愛着に加え、「信頼できる仲間との試行錯誤は楽しい」「ビジネス化をめざしている」という話もあります。
ユーザーからの直接的なフィードバックという「意味報酬」だけでなく、仲間との成長実感や、活動が次のキャリア(ビジネス化)につながるという期待も「リターン」として感じられていることを物語っています。
記事リンク:「未来のなかまと会える」を軸に、有志から社内利用者数1.5万人越えのサービスを育てる
事例5:株式会社ホワイトプラス
「バリューは浸透“させる”ものではなく、浸透“する”ように作られているかどうかが肝」。エンゲージメントの低下という課題に対し、HR部門が「全社員で会社の共通言語をつくる」という一大プロジェクトを始動。トップダウンではない、組織の課題解決の形がそこにありました。
ポイント①:全社員を当事者にする、ボトムアップのプロセス設計
経営陣とHR部門のみでバリューを決めず、「社員みんなが愛着を持てるバリューをつくる」という方針のもと、全社ワークショップを開催。プロジェクトの進捗も毎月の全体会議で共有したと語られています。会社の未来を左右する重要なテーマに、全社員が「自分ごと」として関われる「機会」を、プロセスとして意図的に設計・提供している工夫と言えます。
ポイント②:多様な意見を尊重する、心理的安全性が担保された対話の場
ワークショップでは冒頭に「個人の価値観は違っていて当然」と伝え、個人ワークの時間を設けた上でグループディスカッションを行うなど、誰もが意見を言いやすいよう進行を工夫。HRメンバーもサポートに入ったそうです。
多様な意見や反対意見も尊重し、社員が安心して意見を表明することを歓迎するカルチャーがあるだけでなく、それを引き出すための具体的な運営ノウハウによって心理的安全性を担保しているとわかります。
ポイント③:「会社を良くした」という明確な成果と実感
策定したバリューを評価基準や採用基準、表彰といった人事制度に最初から組み込むことを前提としていたとあります。その結果、エンゲージメントスコアは平均以下から平均を大きく上回る状態へと改善し、離職率も改善。子連れ出勤可能な制度なども生まれたそうです。
自らの参画が「会社をより良く変えた」という明確な成果が実感でき、社員の貢献意欲をさらに高めていると考えられます。
記事リンク:全社員でつくる会社の共通言語〜バリュー策定プロジェクト〜
まとめ
さまざまな職場や人を通して、推せる職場や参画機会という概念を理解していただいたかと思います。働く上での条件面や仕事内容自体も大事ですが、参画機会があり、自分が職場をより良くできる感覚を持てることは大事です。
そういった観点でも仕事選びを考えてみてはいかがでしょうか?
