美容師になるのが夢だった。しかし、服飾と出会い、そのおもしろさに魅了される
奈良県桜井市で生まれ育った前田。ファッションに興味を持ち、高校は服飾デザイン学科のある学校を選び、入学します。
「じつは、当時の私は服飾には興味がなく、将来は美容師になりたいと考えていました。中でもカラーリングができる美容師になりたくて資格取得ができるところを探していたら、服飾デザイン学科でカラーリング技術を学べると聞き、入学することにしたんです」
当初はカラーリングの技術習得が目的でしたが、いざ入学してみると、実際に自分で洋服のデザインを考えミシンを使って洋服を作る毎日にどんどんのめり込んでいきました。
「とくに、年に1回実施するファッションショーは、家族にも来てもらいTV取材も入る、とてもエキサイティングなイベントです。母も服飾学校を卒業していたこともあり、この世界にだんだん惹かれていったのを覚えています」
しかし、当初めざしていた美容師への夢がまったくなくなったわけではなく、高校を卒業後は美容師の専門学校へ入学し、技術を習得することにします。
「ですが、美容師の専門学校は1年で中退しました。自分でデザインした洋服を作る楽しさには勝らなかったんです。
また、私自身の身長が低く洋服を選ぶのがすごく大変で、同じ悩みを持っている人向けの商品を作って販売をしてみたらおもしろそうというアイデアが浮かびました」
「作って売るだけではだめ」──洋服のお直しとの出会い
洋服デザイナーとしての夢を追いかけることとなった前田。
当時は、2000年代前半のアパレルブーム。読者モデルが人気になり、雑誌が次々と創刊されては発行部数を伸ばしていたころで、ワンピースが人気アイテムとして売れていた時代です。
そんな中、身長の低いお客さまをターゲットにした前田の企画は成功し、売上を伸ばしていきます。
「身長の低いお客さまがワンピースを着用したときに、バランスよく見えるポイントは丈感やウエスト位置。ここに注意を払ってデザインした企画がはまりました。また、合わせて持ちたい小物も提案し、コーディネートのアクセントとして売り出しました」
順調に走り始めていましたが、ある日一つの疑問が出てきます。
「気に入った洋服をずっと着ていたいと思う一方で、好きな服はヘビーローテーションになりがちで直しが必要になったり、体系変化によるサイズ直しを要望されていたりするお客さまが多数いらっしゃることを知りました。
ただ作って売るだけではお客さまの本当のニーズには応えられない。お客さまのニーズに応えるためには、お直しも必要だということを悟ったのです」
しかし、作るのと直すのはまったくの別物。どうやってお直しの技術を習得しようか考えていましたが、洋服のお直し店でアルバイトすることが一番早いと考え自宅付近の店舗を探していたところ、偶然スタッフ募集をしていたのがマジックミシン橿原店でした。
「マジックミシンは店舗数も業界一番と多く、集客力のあるイオンに出店しているため技術習得にはちょうど良い店舗だと思いました」
桜井店と天理店。2店舗同時に加盟店オーナーになる
マジックミシン橿原店は、マジックミシンの中でも売上上位店で大変忙しい店舗の一つ。前田は、週5日のフルタイムでアルバイトをして技術を習得していきます。
「最初に覚えるのが、パンツの裾上げ。橿原店は、とくに裾上げが多い店舗でした」
週5日働いていたこと、工業用ミシンを使えたということもあり、普通は早い人で半年ほどかかるパンツの裾上げをわずか1カ月でマスターし周囲を驚かせます。
「とにかく忙しいお店だったので、数をこなすことができてすぐに習得できました。作るときは当たり前とわかっていたパンツの幅も、裾上げのときにはほどいて幅を合わせないといけないなど当たり前のことを再認識でき、作るのと直すのとの違いについて知識を深められました。
ファスナーの交換などもそうです。作るときに最初につけるものを後からどうやって直すのかまったくわかっておらず、教えてもらい感動したことを覚えています」
アルバイトを始めて5カ月で、前田は店長に任命されます。そして、技術習得だけでなく店長として店舗運営管理も学ぶことになります。
「橿原店のオーナーは人を育てることに定評のある方で、技術指導だけでなく店舗運営についても多く学びました。また、どうせなら将来加盟店オーナーになることをめざすようにといつも言われていました」
アルバイトを始めて3年半、前田にチャンスが訪れます。マジックミシン桜井店、天理店、真美ケ丘店の加盟店オーナーを募集していることを知るのです。
「すぐにオーナーに相談しました。そして、加盟店オーナーになることで橿原店スタッフを辞めることに同意をいただき、申し込みました」
前田は、1店舗でも大変な加盟店募集に3店舗でいきなり申し込みます。これには本部も驚きましたが、真美ケ丘には他に候補者がいたため、まずは桜井店と天理店を受け持つことになります。
本当に気に入った服は捨ててしまうと二度と手に入らない
いきなり2店舗の加盟店オーナーになった前田ですが、夫の手助けもあり順調に運営していきます。自身の店舗について、どんな店舗にしていきたいかこう語ります。
「橿原店は忙しい店舗で、オーダーやリメイクがほとんど受けられませんでした。しかし、ネット販売でも感じたようにご自身だけの1着にこだわる方や、既存服ではサイズが合わないお客さまも多数いらっしゃり、そういったお客さまへのご提案をしたいと思い加盟店オーナーに申し込みました。
とくに、着物については全然着る機会がなくなったので、リメイクして着たいとおっしゃるお客さまが多く、ご期待に応えたいと考えております」
また、複数店舗運営の難しさについては次のように答えます。
「スタッフとのコミュニケーションです。コミュニケーションが取れなくなると、業務に支障をきたすことがあります。これは、橿原で店長をやりながら学んだことですが、スタッフとのコミュニケーションは絶やさないようにします。そのために、自分がスタッフ全員と合うようにシフトを組んだりと工夫しています。
服が大好きな人たちが集まって、みんなで楽しく運営するお店が理想です。そんなスタッフ同志が仲の良い店舗は、お客さまから見ても楽しそうに見えると思いますし、そんなお店に自分の大切な洋服のお直しをお願いしたいと考えると思うんです」
最後に、洋服のお直しについて次のように話を締め括ります。
「お客さまが大切に着用していた洋服、とくにお気に入りであればあるほど着用頻度が高く、汚れや破れ、体系変化などでサイズ直しが必要になります。多くの方は、ここで捨ててしまわれますが、本当に自分のお気に入りの服は一度捨ててしまうと二度と手に入らないことが多いのです。
そんな、お客さまの思い入れがあるお品物を再び着られるように直すことが目標です。
ネット販売を通じて、ただ作って売るだけではお客さまのニーズに応えられない。お客さまのニーズに応えるには、気に入った洋服を直していつまでも着られるようにすることだと考え、これからも難しいお直しにチャレンジしていきたいです」
※記載内容は2024年3月時点のものです
