前編では、パーソルホールディングス グループAI・DX本部 本部長の岡田とパーソルクロステクノロジー コンサルティング本部 本部長の小寺に、グループ横断のDX戦略や、その推進によって描く未来についてお話しました。
後編となる今回は、その挑戦を現実のものにする取り組みや、グループ内協業から生まれる新たな価値、そして「はたらく」の再定義にまで踏み込んだビジョンについて話を聞きました。
AI活用の基盤を支えるのは、継続的な技術支援と自発的な活用文化づくりにあり
──現在取り組んでいるプロジェクトについて教えてください。
小寺:パーソルグループ内の複数のAIプロジェクトに携わっており、たとえば以下のようなプロジェクトの支援を行っています。
- 営業現場の商談内容を自動で記録する仕組みの構想・PoC支援
- 営業スキル向上を目的としたツールの開発
- キャリアコーディネーター業務の効率化を目指したAIエージェントの導入支援
- 企業のニーズと人材のマッチング精度を高めるAI活用構想
単なるツール導入ではなく、最適なLLM(大規模言語モデル)の選定や、精度向上のためのインプット設計、プロンプトエンジニアリングの最適化など、実装全体を見据えた技術的な意思決定を主導しています。
岡田:こうした取り組みは、前編でも触れた「事業そのものの変革」に直結するものです。今期から本格化したプロジェクトが多く、今後は実装フェーズに移行し、いよいよ現場での価値創出が本格化していきます。
──社員のはたらき方に関する取り組みはいかがですか。
岡田:「社員のはたらき方の進化」というテーマでは、生成AIの登場初期から取り組みを進めており、すでに大きな成果につながっています。代表的な取り組みが、2023年にリリースした社内専用GPT「CHASSU(チャッス)」です。月間の利用者数は1.2万人となっており、累計利益貢献額は10億円を超えるほどになります。
また、社内には常時4,000人超えの規模の生成AI活用コミュニティが形成されており、対象社員の約20%が自主的に参加しています。そして、こうした継続的な活用や自発的な学びの文化がグループ全体に広がっているのは、パーソルクロステクノロジーによる、的確な技術支援があるからこそだと感じています。
──社員のみなさんが自発的に学ぶ環境があることで、実装面に影響はありますか?
小寺:影響は非常に大きいですね。新たな機能を自発的に活用してもらう際、もっとも難しいのは利用者の意識変容です。しかし、パーソルホールディングスが中心となって勉強会やセミナーの開催、活発なコミュニティの運営などを推進しており、グループ全体に「AIを活用しよう」という前向きなマインドが浸透しています。私たちのように実装を支援する立場としても非常に取り組みやすい環境です。
岡田:社員の活用においては、「活用推進チーム」が社内セミナーでの丁寧な説明や、現場に寄り添った支援など、きめ細かく取り組んできました。そうした積み重ねが、社員一人ひとりの自発的な取り組みに火をつけてきたのだと思います。
最近では、非エンジニア職の社員がAIエージェントの開発に取り組むケースも増えてきましたね。難易度は高いですが、コミュニティを活用しながら自ら壁を乗り越え、現場に合ったAIツールを自走してつくり出しています。こうした「やってみたい」と思える空気や、挑戦を支える仕組みがあるからこそ、私たちはより高度な実装にもチャレンジできています。
「経営の理解」「現場の共感」「技術の推進力」 まさに三位一体で進めるDXの原動力
──グループ内の協業で得られるメリットは、何だと捉えていますか?
岡田:一般的な企業では、IT部門が「AIで変革を起こしたい」と考えても、経営戦略との乖離や現場の理解不足、技術的な実行力の欠如など、さまざまな課題に直面します。しかし、パーソルホールディングスでは、経営陣が明確な方向性を打ち出し、現場にも「テクノロジーを積極的に活用しよう」という文化が根づいています。そこに加え、専門性と実行力を兼ね備えたパーソルクロステクノロジーというパートナーがいることで、構想を実現させる力に変わる。
この「経営の理解」「現場の共感」「技術の推進力」が揃っていることが、変革を進める原動力になっているのです。
小寺:私たちにとっても、グループ内での協業は非常に大きな意味を持っています。外部企業のプロジェクトでは、どうしても特定の業務プロセスを対象とした「個別最適」なAI導入に留まるケースが多く、データの活用範囲や技術的な挑戦も、その枠内に限定されがちです。一方、パーソルホールディングスとの取り組みでは、全社展開を前提としたプロジェクトが多く、AI共通基盤の構築やAIモデルを継続的に進化させるMLOpsの導入、そして日本の「はたらく」を支える膨大なデータアセットを活用した価値創出など、より高度でスケーラブルなテーマに挑戦できます。
事業変革の一翼を担うことで、私たち自身の技術力や実装力も磨かれ、得られた知見はそのまま組織のナレッジとして蓄積されていく――組織力を高められることこそ、グループ内における協業ならではの価値だと感じています。
──今回の協業は人材育成の場としても機能していると伺いました。
小寺:グループ内での連携だからこそ、まだAIの経験が浅い社員にも積極的に実践の機会を提供できるのが強みです。実際に、経験の浅いメンバーがお互いのプロジェクトに参画しながらスキルを磨いており、こうした取り組みが組織全体の技術力の底上げにつながっています。
岡田:グループとしての競争力を支えるのは、やはり「人材」です。特にAI人材の不足はグループ全体の課題でもあり、育成の仕組みを持つこと自体が大きな価値だと捉えています。なので、グループ間でのこういった機会提供の場は、非常に有益だと思っています。
小寺:これからは、外部リソースに依存せず、自分たちの手で実装・運用できる力を高める「内製化」にも注力していきます。現場での実践を通じて人材を育て、得られた知見を組織内に還元していく。その循環を強化することが、持続的な競争力につながると考えています。
学びが成長に、成長が挑戦につながる循環の中で、AI時代の実践力を高めていく
──組織におけるメリットは理解できました。実際にはたらく個人が感じられる魅力についても教えてください。
小寺:エンジニアやコンサルタントにとって、これほど手応えのある環境はないと感じています。外部企業にベンダーとして関わる場合、得られる情報が限られ、事業にどんな変化をもたらしたのかまで把握できないケースも少なくありません。
その点、グループ内の取り組みでは、自分たちが導入した技術が現場でどのように活用され、どんな変化を生んだのかまで見届けられるため、非常に大きなやりがいを感じられます。また、構想策定といった上流工程に関わる機会や、最先端技術を使った挑戦の場が開かれているのも、大きな特長です。
そして何より、私たちが向き合っているのは「はたらく」という多くの人に関わるテーマです。自分のコードや技術が、誰かのキャリアや選択、人生に影響を与えるかもしれない——この実感は、他では得られない経験だと思います。
──これからのAI時代に求められる人材にとって、どんなキャリア機会があると感じますか?
小寺:私たちは、あらゆる産業の「はたらく」を支えており、AIを活用できるフィールドが非常に広いのが特長です。特にパーソルクロステクノロジーでは、上流の企画領域からDX/ITやものづくりの現場まで関われるため、専門性を深めながら幅広い実践経験を積める環境があります。たとえば、コンサルティングやシステム構築で得た知見を活かし、AIプロダクトのPdM(プロダクトマネジャー)として事業開発に挑む、あるいはグループ内で培った経験をもとに、外部企業のAIプロジェクトをリードするといったキャリアも描けます。
また、パーソルグループには「キャリアチャレンジ制度*」があり、転職せずにグループ内での転籍や職種転換が可能です。領域を超えて新たなキャリアに挑戦できるこの仕組みは、自律的に成長していきたい人にとって大きな魅力だと思います。
*キャリアチャレンジ制度:グループの全社員を対象にした公募型の異動制度
ビジネスモデルの変革とはたらき方の再定義――二軸で挑むDXの未来
──DX推進を通じて実現したい未来像について教えてください。
小寺:これまでは、パーソルホールディングスが描いた構想を、私たちパーソルクロステクノロジーが実装面から支える体制が中心でした。しかし、これからはその枠を超え、テクノロジー起点での構想や価値提案を私たちからも積極的に発信し、より付加価値の高いAIサービスを創出していきたいと考えています。
加えて、グループ内にとどまらず、社外への展開とそこで得た知見のフィードバックを通じて、内外を循環する学びのエコシステムを築くことが重要です。視野を広く保ちながら進化し続けることで、グループのDXと事業成長をさらに加速させていきます。
岡田:私が目指しているのは、2つの変革です。
1つ目は、事業の変革です。従来の人材サービスにとどまらず、テクノロジーを中核とした新たなモデルへと進化させ、「人材企業」から「テクノロジー企業」への転換を図っていきます。2つ目は、社員一人ひとりの「はたらく」の再定義です。業務がAIに代替された先に、人はどのような価値を生み出すのか。そうした問いに向き合うことは、ある意味でとても創造的で、ワクワクすることだと思っています。
そして、AIによって余白が生まれたその先に、はじめて見えてくる可能性があるはずです。AI時代ならではの“新しいはたらく”を創っていく——それが、私たちの大きな挑戦です。
──テクノロジーの進化の先に見る「未来のはたらく」について、どのように考えていますか?
岡田:私は、「はたらく」はもっと自由で、多様なものになっていいと考えています。お金や生活、地位や名誉のためだけではなく、「誰かの役に立ちたい」といった純粋な気持ちだけではたらき方を選択したり、極端に言えば「はたらかない」という選択すら肯定される時代が来るかもしれません。
今の社会では、必ずしも全員が前向きな気持ちではたらけているとは限りません。パーソルグループが掲げる「はたらいて、笑おう。」を本気で実現するためにも、今の「はたらく」を根底から変えていきたいですね。
小寺:私も、未来のはたらく姿は「よりポジティブで前向きなもの」だと信じています。AIやテクノロジーによって、単純作業や負荷の高い業務が軽減され、人はより創造的な仕事や自分の強みを活かせる領域に時間を使えるようになります。
もちろん、成長には一定の挑戦も必要ですが、「生活のために仕方なくはたらく」のではなく、「自分の成長を感じながら、誰かの役に立てる」という実感を持てる。そんな質の高いはたらき方が当たり前になっていく社会を、テクノロジーとともに実現していきたいと思います。
──最後に、「未来の仲間」に向けたメッセージを聞かせてください。
小寺:いまパーソルグループは、「テクノロジードリブンの人材企業」へと大きく変貌を遂げる変革の真っただ中にあります。技術を使って、新しいビジネスをつくりたい。組織や社会にポジティブな変化を起こしたい。そんな想いを持つ人にとって、これ以上ないフィールドがここにはあります。
技術を起点にビジネスを動かし、組織を変え、そして“はたらく”の未来をつくる。そんな挑戦を、私たちと一緒に楽しんでくれる仲間をお待ちしています。
※記事内の社員の所属組織および内容は2026年1⽉の情報です
