新規事業を前に進める「攻めの法務」。高い信頼を集めるチームの力
日本特殊陶業は今、事業ポートフォリオ最適化という劇的な変革期のただ中にあります。この大きな舵取りを支える重要な羅針盤として、ビジネスマネジメント室の法務チームリーダーを務める早川は、チームの役割と自身のミッションを次のように話します。
「法務チームのリーダーとして、8名のメンバーを統括しています。私の主な役割は、ビジネスマネジメント室の組織目標に基づき、法務チームの現状と今後の課題を正確に把握すること。その上で、チームがめざすべき明確な目標を設定し、日々の業務に反映させています」
もちろん、物理的に早川がすべての実務を抱え込むわけではありません。管理職としての真の役割は、メンバーへの適切な権限移譲と並走にあると考えています。
「目標が定まった時点でメンバーのパフォーマンスがチームの目標に向けてつながるように、メンバーへの配分と、その後のサポートを行うことも、私の仕事の1つです」
一般的に法務といえば、法的なリスクを指摘してビジネスにブレーキをかける「守り」の部署をイメージしがちです。しかし、早川たちがめざすのは、事業の成長を加速させるための「攻め」の法務。早川は真剣な眼差しで言葉を続けます。
「私たちの役割は、紛争の予防と取引コストの低減という、2つの相反する目標を同時に達成することで、その両方がバランスよく達成できるよう意識しています。
会社が新規事業を創出する際や、グループ再編を行う際には、必ず法律上の問題が生じます。そうした問題に対して、会社がスムーズかつ妥当な対応をとれるよう支援することが私たちの役割の一つです。
守りよりも、むしろ攻めの姿勢で臨むことが多いですね。具体的には、『どうすればこの新しい事業を前に進められるか』『どうすればより迅速に進められるか』という観点からのアドバイスが中心です。私自身がそのような意識で物事を見ているため、自ずとそうした動きになっているのかもしれません」
こうした真摯な姿勢が実を結び、社内アンケートでも常に高い評価を獲得。他部署との間には、心理的距離の近いきわめて良好な関係が築かれています。
「ビジネスマネジメント室は、社内でも高い信頼と評価をもらっています。大きな案件や訴訟が完了した際、当事者となった事業部にアンケートを実施しているのですが、社内向けの評価という側面を差し引いても、おおむね良い評価を得られています。そのため、チームの存在感は社内でしっかりと示せているのではないかと捉えています。
実際、それを裏付けるように多くの相談が寄せられますし、私自身がメンバーの主体性を最大限に尊重するマネジメントを心がけていることもあり、全員がやりがいを持って主体的に仕事を進めてくれています。他部署から敬遠されたりしている雰囲気はなく、比較的率直なコミュニケーションが取れていると感じています」
多彩なキャリアを日本特殊陶業へ。実践する「自律」と「信頼」のプロの仕事の進め方
早川はこれまで、日本の大手メーカーでの法務経験や、アメリカの法律事務所における勤務など、多彩なキャリアを積んできました。次なる活躍の舞台として日本特殊陶業を選んだ理由について、当時の記憶を鮮やかに振り返ります。
「これまでの経験と想いを活かせる環境を求めて、3つの基準で企業選びをしていました。1つは、もともと働きたいという強い思いがあった自動車部品業界であること。もう1つは、私自身が大きなやりがいを感じてきた国際的な仕事に携われること。さらに、安心して長く挑戦し続けられる『財務の安定性』という条件を加え、企業を探していました。
自動車部品業界を志望した理由は、実際にこれまでも現場や製品を見てきた背景があったからです。アメリカで勤務していた際も自動車部品会社がクライアントの大半を占めており、実際に工場の生産現場を見学させてもらう機会もありました。
また、部品を前に対話する機会も多く、自動車部品は私にとって非常に親しみがあり、業務や現場の具体的なイメージが容易に湧きました。入社後すぐに即戦力として貢献でき、かつ、すぐにおもしろさを実感しながら働けると考えたことが、この業界を選んだ決め手です」
さらに、面接の場で感じた「人への信頼」が、入社への決定打となりました。
「一番の決め手は、面接をしてくれた方と非常に気が合ったことです。その方は現在役員をされているのですが、法務という職種は一度入ると他部署への異動が少なく、同じメンバーと長く深く付き合うことになります。
そのため、私にとって『どんな人が上司になるか』は非常に重要な要素でした。他の会社の面接もいくつか受けましたが、当社は最初の面接から私のことを信頼して『好きにやっていいよ』と言ってくれたんです。その一言で『ここなら自分らしく、のびのびと働けそうだ』と感じ、入社を決めました」
早川が仕事をする上で最も大切にしている価値観、それは「自律」と「コミュニケーション」に集約されます。この軸が生まれた背景には、かつて優秀なプロフェッショナルたちと切磋琢磨した原体験がありました。
「法律事務所で多くの局面を見てきて、コミュニケーションの真の重要性を痛感しました。とくにトラブルが起きた時、保身から報告を後回しにしたり、言い訳を先にしたりしてしまうと、かえって事態は悪化します。
コミュニケーションが上手な方は誤魔化したりせずに、すぐに『今こういう問題が起きていて、原因はこれです。次はこう手を打ちましょう』と、事実をサッと共有してくれるからこそ、周りも『よし、すぐに対策を始めよう』と、こじれずに解決へ向かうんです。
また、この仕事は各担当者の専門能力に依拠する要素が強く、個人の知識や経験で判断して動く場面がどこまでもついて回ります。他部署以上に『チームに頼りきれない』側面があるからこそ、自らを律して自走する『自律』の姿勢が不可欠であり、それが現在の私のスタイルになっています」
グローバル調査で直面した壁。文化や背景が異なる人や組織へのアプローチ
プレイヤーとして前線で仕事をしていた時期から、自身を含め9名のチームを率いるリーダーへ。その役割の変化に伴い、早川のマネジメントに対する心情や価値観には、大きな変化が芽生え始めていました。
「2022年4月にリーダー職に就いてから、今年で4年目になります。振り返ると、就任当初、私はメンバーに対して『要求の厳しい(ディマンディングな)』リーダーでした。
『このチームでこれを達成したい、こういう組織にしていきたい』という明確なビジョンがあった反面、たとえば『国際業務を拡大するためには、メンバー各自の語学力向上が不可欠』といった、高い期待をメンバーに求めすぎてしまう傾向がありました」
しかし正論を一方的に押し付けるだけでは、組織としての真の力は引き出せないと気づく瞬間が訪れます。
「しかしその後、必ずしも全員が国際業務を望んでいるわけではない、ということに気づき始めました。メンバーが前向きになれないことを私が無理に押し付けても、決して良い成果にはつながらない。
そのため、現在は『国際業務に挑戦したい人にはそれを任せ、そうではない人にはそれぞれの専門領域で力を発揮してもらう』という方針をとっています。メンバー自身の『やりたいこと』や、自認する『適性』を尊重した接し方へと改めました。スタンスを変えてからは、以前より伸び伸びと仕事に臨んでくれているのではないでしょうか」
そんな早川のこれまでの歩みの中で、とくに深く記憶に刻まれているのは、順風満帆に終えた成功体験ではなく、むしろ海外拠点を巻き込んだコンプライアンス業務での苦い経験でした。
「法務の仕事は『できて当然』と思われがちで、成果が出なかった経験ほど記憶に残ります。以前、海外25拠点を対象に内部通報制度の実態調査を行った際、回答率の数値目標を高く設定しました。通常より相当多くのリソースを注ぎ、目標に達する回答数を確保しようとしましたが、目標には届きませんでした」
文化や背景が異なる世界各国の拠点に対して、日本側の理想をそのまま押し通そうとしてもうまくいかない。その現実に直面し、早川はマネジメントの本質を痛感することになります。
しかし、早川が諦めずに現地の声に耳を傾け、粘り強く熱意を訴え続けた結果、現地のトップが動くという劇的な変化が起こりました。
「状況を慮った現地の社長が、『早川さんはそんなに数値目標で苦しんでいるんですか?じゃあ社長の私が個人的にビデオを作って、拠点に数百人いる従業員に配信して協力を呼びかけましょう』と言ってくれたんです。
全従業員へのビデオを自ら配信してくれた結果、回答率が上昇。目標達成まであと数%という局面であったため本当にありがたかったです。情熱を持って説明すれば動いてくれる方がいるということと、現地にはそれぞれの優先順位や複雑な感情があり、思い通りには動けないと痛感しましたね。先入観を捨てて担当者の話に耳を傾け、現実的な折り合いをつける重要性を学びました」
未経験領域もメンターが並走。その熱意をブレーキではなく「アクセル」で後押しする
これから日本特殊陶業の法務をめざすキャリア層に向けて、早川は自身の展望と、組織としての理想像を熱く語りかけます。
「個人としての目標は、法務の専門領域からさらに視野を広げ、全社的なリスク管理を担うことです。チームリーダーである現在は、専門的な実務よりも、メンバーのパフォーマンスの最大化や目標設定、それに伴うリスクの想定に注力しています。
今後はこのアプローチを全社レベルへ拡大し、法務の枠を超えたあらゆるリスクを察知し、的確に対応できる立場をめざしたいと考えています」
専門性を突き詰めるだけでなく、経営に近い場所からリスクを見つめる。それが早川の描く未来像です。同時に、チームメンバーへの教育にも力を注ぎます。
「チームとしては、メンバーの皆さんが専門家として自律的に動ける組織にしたいですし、私自身がそのためのメンターでありたいと考えています。あれこれと指示を出すのは本意ではありません。それぞれの興味や伸ばしたい能力を把握した上で、その成長を最大限に後押ししたい。壁にぶつかった時、より良い方向へ導くガイドのような存在でありたいのです」
その強い想いは、若手の基礎力を支えるための具体的な仕組みとなって結実しました。
「議論を重ねる中で、理論的な基礎体力の重要性を痛感し、不安がある人には学ぶ機会を提供したいと考えました。基礎の有無は、論理的な思考や説得力に直結するからです。そこで法務チームとして、近隣の大学で週に1回、希望する講義を受講できる仕組みを整えました。費用と時間はすべて会社が負担。
現在、メンバーはそれぞれの課題に沿った科目を履修していますが、大学で得た知見やエネルギーを持ち帰り、目に見えて成長してくれています。学びたい意欲を持つ人には、会社としていくらでも投資します」
最後に、現在進めているキャリア採用に向けて、未来の仲間へ期待する価値観と、日本特殊陶業ならではの魅力を伝えます。
「求める人物像としては、自発的・自律的に仕事を楽しめる方。そうした姿勢は高く評価しますし、ブレーキを踏むのではなく全力で後押しします。また、法務の専門用語だけでなく、現場の方々と『普通の言葉』でわかりやすく対話できるスキルも大事ですね」
メーカーでの法務経験があれば共通点も多く、何より情熱的な「ものづくりの現場」と深く関わることが仕事の最大の醍醐味になると早川は確信しています。
「メーカーが直面する法律問題は、工場の運営から製造、流通、販売まで、共通する部分が多くあります。そのためメーカー出身の方であれば、当社のビジネスにおけるリスクも直感的に把握しやすいはず。何より、自分たちの製品に誇りと愛着を持つ『ものづくりのプロ』と直接対話しながらサポートできるのは、この上ないおもしろさです。
入社後は、M&Aなどの大型案件や未経験の領域であっても、先輩社員がメンターとして並走するフォロー体制を整えていますので、安心して飛び込んできてください。
将来的は中心メンバーとして事業再編や訴訟を牽引したり、語学力を活かして海外コンプライアンスの領域で活躍したり。挑戦したいことがあれば、時間もアドバイスも費用も惜しみなく投資します。ぜひ、そうした熱意を持った方に仲間になっていただきたいですね」
※ 記載内容は2026年7月時点のものです

