持続可能な形を模索し、お客さまにとっての最適解を導き出す
少子高齢化が進む日本では、人々の暮らしを支える社会保障制度が、さまざまな課題に直面しています。そうした課題に向き合っているのが、齊堂が所属するソーシャルイノベーションコンサルティング部 ウェルビーイング社会実装チームです。
「部門としては、ヘルスケアや教育、子ども・子育て支援、福祉関連の政策調査、民間企業の課題解決に向けた調査・コンサルティングなどを請け負っています。日本の社会保障制度は世界的に見ても充実しており、安定した社会の基盤をつくっています。
一方で、少子高齢化による社会保障費の増加、働き手の不足といった構造的な問題に加えて、物価上昇などの外的要因も絡み合い、医療機関の経営難や創薬イノベーションの停滞など、さまざまな問題を抱えています。社会の変化に合わせて、いかに持続可能な形にスライドしていくかが長年の課題です。データに基づき、制度・運用の改善や、DXなどのソリューション導入による変革を提案することが私たちのミッションです。
その中で私は医療分野を担当し、官公庁からの委託調査や、ヘルスケア分野の民間企業向け調査・コンサルティングを行っています。プロジェクトリーダーとして案件を牽引するほか、〈みずほ〉内での連携や若手の人材育成などの業務も担っています」
プレイヤーとしても、組織のためにも動く日々の中で、齊堂が大切にしている価値観があります。
「お客さまの求めていることにどれだけ誠実に対応できるかを常に心がけています。むやみに大風呂敷を広げすぎず、さまざまな制約がある中で『何がお客さまにとって最適なのか』を一から考えます。
前例を踏襲したほうが良い場合はそのメリットを活かしつつ、新たな視点も提案します。時に関係者間で意見が対立することもありますが、両者が納得できる着実な成果を出す。そのスタンスを大事にしています」
研究とコンサルのギャップを越えて。現場を動かす「文書」に携わる社会的意義
大学院時代、栄養疫学を研究していた齊堂。ここでの体験がコンサルタントというキャリアにつながりました。
「栄養疫学は、生活している人々の食事内容や環境といった大量データを解析し、健康との相関を調べる学問です。マクロな視点で人の生活を見るおもしろさに目覚め、就職活動ではシンクタンク業界を志望しました。そして縁あって、2015年にみずほ総合研究所(旧:みずほ情報総研)へ入社しました」
入社当初は、研究の世界と実務の現場が持つゴールの違いにギャップを感じたと振り返ります。
「入社後は、お客さまの要望に応じて調査設計からデータ集計まで一貫して行うカスタマイズ調査を担当しました。研究では学術的に検証された手法で厳密に事実を積み上げることが求められる一方で、官公庁のコンサルティング案件には『政策を動かす』というゴールがあります。結果を踏まえて『つまりどうすればいいか』という結論まで出さなければいけません。そのスピード感に、当初は戸惑いもありました。
しかし、官公庁の委託調査の中には、医療・介護・福祉分野の報酬や施設基準、各種ガイドラインに影響するものもあります。現場を理解しないまま調査設計をしたり、結果に偏った解釈を加えてしまうと、結論が歪み、現場が混乱してしまう可能性もある。
だからこそ、現場や行政、学術界などさまざまな立場の意見を慎重に聞き、皆が納得できる落とし所を作る必要がある。どちらが正しいかではなく、それぞれのやり方で支え合っているのだと学びました」
合意形成の難しさに直面しながらも、齊堂はそのプロセスにコンサルタントの醍醐味や意義を見出していきます。
「ただ調査結果を出すだけではなく、それによって社会に何が起こるのか、結果をもとに誰に何をしてほしいのか。それを意識すると、自然と有識者や現場の人々の話を勉強しながら調査設計することになります。
私はもともと、相手のどんな話にも興味関心を持つタイプ。政策が動く現場で何が起こっているのか想像を膨らませながら話を聞くと、皆さん真摯に現場の課題を教えてくれます。時には各所から正反対のことを言われて調整に苦労することもありますが、うまい落とし所を見つけられた時は嬉しくて。
さらに、調査報告の内容が公的な文書に反映されることがあります。一文加わるだけでも、自治体の方々はその一文をもとに予算を取ったり人材を充てたりできます。文書の根拠となるバックデータをつくっているのは私たちなんだ。その構造を入社後に知り、この仕事は確実に現場に意味をもたらしていると実感するようになりました」
現場への意識を高める中、齊堂の「食や栄養」への想いが、新たな挑戦の機会を手繰り寄せます。
「入社当初はキャリアを綿密に計画していたわけではなく、興味のある食や栄養に関する仕事をやりたいと言い続けていました。すると、食・栄養分野の案件にアサインされるようになり、2015年にはプロジェクトリーダーとして農林水産省の子ども食堂に関する全国調査を担当することに。
さらに、そのご縁でつながった認定NPO法人『全国こども食堂支援センターむすびえ』で、副業として運営実態・課題などの全国調査のディレクションを経験しました」
官公庁への外部出向で広がった新たな視野と、最高峰の舞台で活きた合意形成スキル
入社から約10年、齊堂に官公庁への出向という転機が訪れます。
「過去に海外の栄養支援を担える専門人材育成プログラムの組成案件を何年か担当したことがありました。その経験がつながり、『内閣官房で国際保健を担当する民間出向者を探している』という話が来たんです。国際分野は専門ではなかったものの、社外に出て知見を広げた方がいいと考えていたタイミングでもあり、良い機会だとお受けしました」
未知の領域へ進んだ齊堂を待っていたのは、国全体の舵取りを担う省庁横断の取りまとめ業務でした。
「出向先の内閣官房健康・医療戦略室のミッションはアジア・アフリカ地域の保健課題解決に貢献する形で、日本のヘルスケア企業の海外展開を支援すること。日本政府内でも海外展開に関わる省庁が複数あり、日本関係機関、民間企業・団体、国際機関、市民団体などカウンターパートも多いため、連携のハブとしての役割を担っていました」
現場では、大企業やスタートアップのバイタリティを目の当たりにしたと語る齊堂。
「短期でビジネスが成功することは難しいアフリカのヘルスケア市場でも、20~30年先を見据えて現地の課題に向き合う企業の熱意を直接聞けたことや、国際機関からの資金獲得や研究者との連携、現地企業・NGOとの協業など、多様なアプローチを学べたことは、非常に勉強になりました」
視野を広げる一方で、新たな壁にも直面します。
「周囲はメーカーからの出向者が多かったのですが、私自身は事業会社の経験がなく、官公庁案件が中心だったためヘルスケアビジネスには詳しくありませんでした。
また、公務員としての働き方や、多種多様な関係者との調整も正解がわからなくて。見栄を張らず、周りの仲間に素直に教えを乞うことで、知識を補い困難を乗り越えていきました」
業務に慣れていく中で、政府の仕事でも着実に自身のスキルを発揮できる手ごたえを感じ始めます。
「日・アフリカ間の国際会議のサイドイベントや、アジアの主要国との閣僚級会合の企画を担当していたのですが、意識したのは『このイベント・会合をどう社会に役立てるか』。省庁や関係機関、企業との意見交換を通じて地道に情報収集を行い、関係者の『次のアクション』につながる企画・議題設定ができました。
閣僚級の意見交換は、そこで言及される内容がさまざまなプロジェクトを動かす推進力になります。慎重な合意形成が必要でしたが、これまで培ってきた『関係者の役に立つものをつくる』姿勢を活かすことができ、大きなやりがいになりました」
プロジェクトを完遂し任期を終えた齊堂は、大きな財産を得たと語ります。
「メーカーからの出向者と並んで仕事をしたことで、民間の事業会社の解像度が高まったと感じます。彼らが何をめざして、部門によってどういうミッションを持っているか。調査結果をもとにどのようにビジネスを展開するのか。視野が大きく広がりました」
想いを発信し続ければ後押ししてくれる環境で、〈みずほ〉の新たな価値を形にしたい
外部出向を経て、官民双方への理解を深め、コンサルタントとしての守備範囲を広げた齊堂。2026年4月の帰任後、組織の大きな変化をも前向きに捉えています。
「出向期間中に会社がみずほ銀行と統合したことで環境が大きく変わりました。しかし、〈みずほ〉として価値を生み出すために、私たちのような調査コンサルティングをどう活用できるか、とても考えがいがあるとポジティブに捉えています。
現在、〈みずほ〉内の各部署と連携し、それぞれのミッションや望まれるソリューションのニーズを探っているところです。現場の話を深く聞き取るという私の強みをうまく組み込めたらおもしろいですね。
一方で、従来の官公庁分野にも引き続き力を入れていきます。〈みずほ〉はポリシーエンゲージメントにも力を入れながら、医療を含めた産業の振興に取り組んでいます。そこに活きるよう、医療業界で今後求められるスキルセットについて思案中です」
変革期を迎える組織の中で、齊堂は新たな仲間に求める資質についてこう話します。
「固定観念にとらわれず、社会を良くするソリューションに関心を持つような好奇心がある方と働きたいですね。理想を語りながら、実現のために自ら動き、手を動かして汗をかける方が仲間になってくださると嬉しいです」
巨大な組織のつながりを活かして、外部出向などのさまざまな経験を積める環境があるみずほ総合研究所。そのためには、自身の想いを発信することが重要だと、齊堂は自身の経験を踏まえて強調します。
「異動や外部出向には相手先のタイミングなどもあるので、すべての希望が通るわけではありません。ただ、やりたいことがあるのなら、目の前の仕事に取り組みつつ、『これがやりたい』と言い続けることが大事です。
私自身もそうですし、私の後輩も最初は希望と違う配属だったものの、そこでしっかり実績を積み、声を上げ続けた結果、希望を叶えて新しい部署で働いています」
真摯に仕事に向き合いながら、やりたいことを発信し、訪れた機会をキャリア形成につなげていく。偶然の出会いを楽しみながら、齊堂はこれからも誠実に現場の声を聞き、社会課題に挑み続けます。
※ 記載内容は2026年6月時点のものです
