着実に一つひとつ前へ──最先端の施設を支える丁寧な仕事と確かな責任感
──まずは現在担当されている具体的な仕事の内容について、それぞれ教えてください。
増田:私はエナジードメイン スチームパワー事業部に所属し、おもに「長崎カーボンニュートラルパーク」の見学受入業務を担当しています。具体的には、管理表の整理や見学時間割の作成、入構申請、バスタクシーの予約、お客さまの声の回収・分析などを担当しています。
また、総合研究所と事業部によるバーチャルチームで毎週開催される「来客確認会議」があり、その司会進行も任せてもらっています。私は脳性麻痺による左足の障がいと軽度の知的障がいがありますが、日常生活への大きな支障はありません。理解に少し時間がかかりますが、ゆっくりと丁寧に進めるなど自分なりに工夫しています。
坂田:私は現在、大きく分けて2つの業務を担当しています。1つはスチームパワー事業部長室の秘書業務。スケジュール調整をはじめ出張手配や来客対応などを行っています。常に予定を先読みしスムーズな調整を行うことが求められます。
もう1つが、増田さんと一緒に取り組んでいる長崎カーボンニュートラルパークの見学受入業務。見学者が急増したことをきっかけに総合研究所とのバーチャルチームが立ち上がりました。私はその一員として、見学受入業務の体制整備や改善活動などを担当しています。スケジュール確定後の実務については、配属から1年あまりが経過した増田さんに、現在はロジ関係の手配やスケジュール一覧表の作成を全面的に任せています。
──長崎カーボンニュートラルパークは世界中から多くのお客さまが訪れる拠点ですが、仕事のやりがいや、日々の業務で意識している工夫はありますか。
増田:この仕事の魅力は、世界中から注目される最先端の施設に関われているという点にあります。最初は、自分が関わっている施設がどのような場所なのか想像が付かない部分もありましたが、実際に現地の見学に参加させてもらえる機会があって、アンモニア燃焼や水素製造といった最先端の設備を目の当たりにし、自分がこの重要な受け入れ業務の一端を担っているのだと理解できた時は、嬉しく、誇らしい気持ちになりました。
業務では物事を理解するのに時間がかかってしまうことがあるため、ミスをしないように一つひとつ中身を確認しながら、正確に、そして丁寧に最後までやり遂げることを何よりも大切にしています。
今の仕事を始めたばかりの頃、時間割の作成に余裕を持てず、本来の締め切り期限を過ぎて前日や当日になって共有してしまったという失敗をしました。その時に事前準備の重要性を痛感し、それ以降は忘れないようにタスクを付箋にメモして頭の中を整理するようにしています。
さらに、業務に合わせた「セルフチェックシート」を作成し、一度終わった作業をもう一度自分で二重に確認することを徹底し、ミスを未然に防ぐ工夫をしています。
──身近で見守る指導員の視点からどのように評価されていますか。
坂田:増田さんがお話しした「セルフチェックシート」は、業務を開始した当初に、作業漏れを防ぐために確認すべき項目をともに話し合って作成したものです。
増田さんは本当にきっちりと仕事をしてくれており、自らそのシートを活用しながら最終確認を丁寧に行っています。管理表への落とし込みをすべて本人が行っているからこそ、次週の予定も誰より増田さんの頭の中にしっかりと入っています。そのため、毎週の「来客確認のための週定例ミーティング」の司会も増田さんに進めてもらうのが最も合理的であると考え、一任するようになりました。
「自分でできる」が自信に変わる。任せることで育つ、自律とやりがい
──指導員として最も大切にされている心構えや、具体的な教育の工夫についてお聞かせください。
坂田:増田さんに新しい業務や手順を伝える際は、手順を最初からわかりやすく、ゆっくりとしたペースで説明することを常に意識しています。しかし、最も大切にしているのは、障がいがあるからといって過剰な甘えを作るのではなく、1人の「社会人」として信頼して業務を任せるという姿勢。
たとえば、ビジネス特有の言い回しが難しいメールのやり取りについても、最初は過去のメール文面を参考にしながら基本の型を覚えてもらい、毎回必ず送信前に内容を確認していました。
しかし、増田さんが型を理解し、自身で文章を組み立てられるようになってからは事前確認を無くし、今ではチェックなしで発信できるようになっています。苦手意識があったという電話連絡についても、本人が担当する業務に関しては、あえて本人から直接連絡をしてもらうように任せることで、着実にステップアップしていける環境を整えてきました。
──増田さんご自身の中ではどのようにして業務に慣れていきましたか。
増田:メールは独特の書き方や言葉遣いがとても難しく、最初はなかなか上手く文章を作ることができませんでした。ですが、坂田さんが「過去のメールをそのまま真似していいよ」と言ってくれたことで、安心してスタートすることができました。
毎回確認してもらってから発信していたものが、少しずつ「どんな文章が良いか」を自分自身で考えられるようになり、今では1人で発信できる場面が増えたことが本当に嬉しいです。
最初は苦手で躊躇してしまっていた電話連絡も、私の担当業務については自分で直接かけるように任せてもらえたことで、少しずつ壁を乗り越えていくことができました。自分でできる仕事が増えていくにつれて、いろいろな人とのやり取り自体がどんどん楽しくなってきたと感じています。
──あらためて育成を通じて実感されている増田さんの強みを教えてください。
坂田:増田さんは非常に高い責任感と向上心、そして素直さを持っています。新しく試験研究費の実績管理といった難易度の高い業務を依頼された際も、事前の打ち合わせの前に、マニュアルを熱心に読み込んで予習してくるのです。その真摯な姿勢には本当に頭が下がりますね。
事前に自分なりに流れをイメージして打ち合わせに臨んでくれるため、教えた後の理解や習得のスピードが早く、驚かされることばかり。最初は指導する側とされる側という関係性でしたが、今では「あのグループのバスの手配はどうなっていたかな?」と確認すると、すべてのスケジュールが頭に入っていて完璧に答えてくれます。今では周囲のメンバーからも頼りにされる、心強いパートナーになってくれています。
職場に吹き込んだ温かい風──周囲を動かした真摯な姿勢とめざましい成長
──増田さんがスチームパワー事業部に配属されたことで、職場全体の雰囲気や周囲のメンバーの関わり方にどのような変化が生まれましたか。
坂田:週定例ミーティングでは、周囲のメンバーや総合研究所の関係者たちが、自然と増田さんの話すスピードやペースに合わせるようになりました。その上で、質問や確認のコメントを丁寧に挟んでくれるようになり、今では誰かが置いてきぼりになることのない、スムーズで調和のとれた会議打合せが実現しています。
また、増田さんの一つひとつの業務に対して正確に、丁寧に粘り強く取り組む姿を見て、周りのベテランメンバーたちも大きな刺激を受けています。「自分たちが忘れていた初心を思い出させてもらった」「自分たちももっと一つひとつの仕事を丁寧にやろう」という声が上がっており、職場全体のモチベーションの向上につながっています。
仕事だけでなく、増田さんが大好きな女子バレーボールの応援のために、1人で電車に乗って隣県の佐賀まで連日遠征するほどの行動力を持っていると雑談で知ったときには、職場の皆で驚き、盛り上がりましたね。
増田:最初は、業務がうまく進められるかどうか、緊張しましたし不安もありました。ですが、管理表の落とし込みを任せてもらえるようになるなど、最近では毎週繰り返すことで少しずつ慣れ、スムーズに進行できるようになってきたと感じています。
現在の職場は、困ったときやわからないことがあったときにすぐに質問がしやすく、周囲の皆さんがいつも温かくサポートしてくれる環境です。だからこそ、失敗を恐れずに安心して毎日の仕事に取り組むことができています。坂田さんとは仕事の話だけでなく、毎日プライベートのことや週末の過ごし方など、雑談でもやさしく話しかけてくれるので、心が和みます。
──昨年度末の「業務発表会」で増田さんが見せたという、周囲を驚かせたエピソードについても教えていただけますか。
坂田:昨年度の末に部署のメンバー約30名が参加した大規模な「業務発表会」があったのですが、そこでの増田さんの取り組みが素晴らしかったのです。増田さんは自分が半年以上かけて携わってきた業務内容や大切にしている価値観を、自分自身で資料にまとめ上げ、事前の準備と徹底した練習を重ねて本番に臨んでくれました。
当日は、初年度の締めくくりとして驚くほど堂々とした態度で壇上に立ち、制限時間である15分ぴったりという完璧な時間配分で発表を完遂。その後の5分間の質疑応答も見事にこなし、周囲の社員からは「自分たちもあんな風に綺麗に内容をまとめて、時間通りにわかりやすく発表しなければならない」と絶賛の声が挙がりました。真摯な努力とめざましい成長を、部全体で実感した瞬間でしたね。
障がいの有無に関わらず「人を大事に育てる」姿勢が、新しい気づきとプラスをもたらす
──今後、どのような自分をめざしていきたいか、目標を教えてください。
増田:まずは、今任せてもらっているカーボンニュートラルパークの受入れ業務や支払処理、試験研究費の実績管理といったお仕事をしっかりとやり遂げることが第一だと思っています。その上で、現状維持にとどまるのではなく、徐々に新しいことにも自ら手を挙げて挑戦し、仕事の幅をさらに広げていきたい。自分の仕事の範囲が広がることが、自分自身の成長につながると実感できているので、これからも前向きな気持ちを忘れずに進んでいきたいです。
──障がいの有無に関わらず、人を育てる重要性について、坂田さんはどのようにお考えですか。
坂田:障がいのレベルやその人の特性に合わせて、こちら側の伝え方や指導のやり方を丁寧に工夫し、手順を根気強く共有していけば、どのようなハンディキャップがあろうとも、その人は職場でなくてはならない素晴らしい存在へと成長するのだと思います。最初から先入観を持ったり、可能性の芽を摘んでしまったりするのではなく、「人を大事に育てる」という姿勢は、障がいの有無に関わらず、すべての若い世代の育成において重要になると感じています。それは教える側である私たちの学びや気づきにもなり、巡り巡って会社全体の大きなプラスにつながると確信しています。
これからの時代、誰もがその能力を発揮して活躍できる場をどう提供できるかが重要です。人には必ず、それぞれ「得意なところ」があって、それを見つけ出し、最大限に活かせる環境を提供すること。そして、増田さんのように実際に職場で活躍している姿を、しっかりと情報発信し続けていくことが、多様な人材が共生できる環境づくりの推進において大切だと感じています。
──最後に、興味がありながらも一般職場で働くことに不安を感じている方へ向けて、アドバイスやメッセージをそれぞれお聞かせください。
増田:最初は「自分にできるかな」と不安になったり、周りとの報告・連絡・相談がうまくできなかったりして心配になることもあると思います。ですが、決して焦る必要はありません。自分のペースでできることを一つずつ探していくと、仕事はどんどん楽しくなっていきます。
自分1人だけで判断しようとせず、周りの人と進捗を共有すれば物事はスムーズに進みますし、勇気を出して相談すれば、三菱重工の先輩がたはいつでも温かく話を聞いてくださるので安心してください。これからは、新しく入ってくる仲間と、お互いに支え合いながら安心して楽しく働ける職場を、一緒に作っていきたいと思っています。
坂田:社会人になることへの不安や、周囲とのコミュニケーションに苦手意識を持っている方もいらっしゃるかもしれませんが、心配しすぎる必要はありません。入社後からでも、一緒に働く職場のメンバーが一つひとつ丁寧に、業務の手順を教えてくれます。
私たちは、社員全員で新しい仲間を育てる気持ちと、温かく受け入れる姿勢で待っています。「人を大事に育てる」という基本さえあれば、障がいの有無に関わらず、すべての人が自律し、伸び伸びと成長していくことができるのだと思います。多様な特性を持つ人たちが同じ職場で一緒に働くことで、組織にはたくさんの新しい気づきが生まれます。ぜひ恐れずに、前向きに新しい一歩をトライしてほしいです。
※ 記載内容は2026年8月時点のものです

