過剰に手助けしない「ナチュラルサポート」が、障がいのある仲間の自立を促す
山口は、三菱重工業株式会社(以下、三菱重工)長崎HRビジネスパートナーグループの業務チームに所属し、障がいのある社員が中心となって活躍する「庶務班」を率いています。庶務班に所属する12人のメンバーは身体障がいや精神障がいなど多様な特性を持っていますが、山口は一人ひとりの個性を尊重しながら、チームとしての成果を追求しています。「私たちの班では、請求書の処理や給与データの作成、技能系教育の事務局補助など、多岐にわたる業務を担当しています。私の役割は、単に業務を割り振ることだけではありません。役割分担を明確にし、メンバー同士をつなぎ、依頼元との橋渡しをすること。そして何より、みんながモチベーション高く働けるように、励まし、認めることを大切にしています」
山口自身も生まれつき腕の障がいがありますが、その経験を活かし、誰もがいきいきと自信を持って働ける環境づくりをめざしています。その中で、必要以上に手助けをするのではなく、一人ひとりの力を尊重する「ナチュラルサポート」の実現に取り組んでいます。
「昔は先回りして手を差し伸べることが正解だと思っていました。しかし、ある時『配慮の受け売りはよくない』と気づいたのです。よかれと思ってしたことが、本人の『自分でできた』という達成感を奪ってしまうこともある。だから今は、あえて言われるまで待つようにしています。『聞こえづらかった』『ここがまとめにくい』と本人が発信した時こそ、本当の意味での支援が始まります。自発的なアクションを待つことで、メンバーの自主性が育まれるのだと確信しています」
こうした環境だからこそ、班の中には「できないことははっきり伝えるが、互いに支え合う」という健全な協力体制が根付いています。山口も、自らが「甘えない姿」を背中で見せることで、チームの士気を高めています。
「私自身、紐を結ぶことなど手が届かない部分は周りに助けてもらいますが、自分でできる一歩手前までは自分の力でやり遂げます。自分ができることは自分でする。その姿勢こそが、働く喜びの原点だと思っています。みんながそれぞれの持ち場で最大限の力を発揮し、足りない部分を補い合う。そんな個性が響き合う職場でありたいと願っています」
事務補助から人材開発、給与計算まで。三菱重工グループで広がり続けた私の可能性
山口が三菱重工グループに足を踏み入れたのは2010年のことでした。それ以前の職場でも障がい者雇用として働いていましたが、当時は「ただいてくれればいい」という風潮が強く、物足りなさを感じていました。もっと自分を必要としてくれる場所はないか。その一心で転職活動をしていた山口の運命を変えたのは、三菱重工の採用担当者の一言でした。
「『うちの会社は忙しいよ』。そう言われた瞬間、ビビッと来ました。暇を持て余すのではなく、頼りにされ、忙しく立ち働ける場所を求めていた私にとって、その言葉は何よりの魅力でした。ただ実際に入社してみると、初めはそこまで忙しくなかったんです(笑)。しかし、年次を経るごとに任されることが増えていき、事務補助から始まり、人材開発、給与計算、雇用延長の手続きまで、『できること』がどんどん増えていく手応えがありました」
山口はこれまで、グループ内での業務移管や組織統合に伴い、事業会社やグループ会社など、計4社で業務経験を重ねてきました。一見、複雑な経歴に見えますが、そこには常に「人の縁」があったと振り返ります。
さまざまな事情から、三菱重工グループ内で勤務してきましたが、一身上の都合で退職を考えた際も『辞めるならうちにおいで』と声をかけてくれる方がいました。ずっと私の働いてきた姿を見ていてくれる人がいると感じ、幸せなことだなとありがたく思いましたね。
三菱重工グループの魅力は、一言で言えば『温かさ』です。人との深いつながりこそが、私がこのグループにい続ける理由です。縁が重なり合って今の私があるのだと、心から感謝しています」
キャリアを重ねる中で、山口の価値観も磨かれていきました。かつては「元気が一番」と明るさを押し出していたこともありましたが、上司からの助言で「よかれと思った元気が相手の負担になることもある」と学びました。
「共に働くメンバーは一人ひとり、年代も性格も障がい特性も違います。自分の価値観を押し付けるのではなく、相手に誠実に寄り添い、尊重すること。それが信頼関係の第一歩だと気づきました。障がいの有無に関わらず、目の前の人を一人の人間として大切にする。この揺るぎない想いが、今のリーダー業務やジョブコーチとしての支援の基盤になっています」
「人と仕事をつなぎたい」という想いを形に。企業在籍型ジョブコーチとしての転機
長年三菱重工グループで働く中では、障がいをネガティブに受け取られることもあったと山口は正直に語ります。それは、とあるグループ会社に転職が決まった時のこと。当初、配属先では「障がい者と働くのは初めてで不安だ」という声もあったと山口は耳にしていました。山口はそんな逆境を力に変え、「この職場で絶対に輝いてやる」と決意しました。
「報連相を誰よりも徹底し、上司の期待を超えるアウトプットを出せるよう心がけました。信頼を一つずつ積み重ねた結果、契約が終わるころには『山口さんでよかった。もっと一緒に働きたい』と言っていただけるまでになりました。相手の不安を払拭し、必要とされる存在になれるかどうかは自分次第。この成功体験があるからこそ、今のメンバーにも『自分を信じて挑戦してほしい』と自信を持って伝えられるのです」
できることをどんどん増やしていきたい。そう考えていた山口のキャリアにおけるもう一つの大きな転機が、企業在籍型ジョブコーチ(職場適応援助者)の資格取得でした。2021年頃、上司から勧められたこの資格との出会いが、山口が長年ぼんやりと抱いていた「人と仕事をつなぎたい」という想いを形にすることになります。
「資格取得のための研修で、障がい特性を理解し、どうすれば業務をわかりやすく伝えられるかを学びました。しかし本当に価値観が変わったのは、資格を取った後、実際の現場でメンバーと向き合ってからです。何度教えてもミスが出てしまうメンバーに対し、以前の私なら『なぜできないのか』と悩んでいたかもしれません。でも、企業在籍型ジョブコーチの視点を得たことで、アプローチを変えることができました」
山口は、そのメンバーのスキャン業務を徹底的に分析しました。作業工程のどこで間違いが起きやすいのかを細かく観察し、改善策を一緒に考えました。
「たとえば、両面原稿には付箋を貼って注意を促したり、確認項目を視覚化したり。本人の努力が一番ですが、工夫一つで状況は変わります。ある日、そのメンバーから『今日はミスがゼロでした』と報告を受けた瞬間、泣きそうになるほどの感動がこみ上げました。背中を少し押すだけで、その人の『できる』が確実に増える。人を成長させる喜び、そしてその人ができた瞬間に見せるイキイキした顔を見た時に、これまでにないほど大きなやりがいを感じました」
うまくいかない日々は「できる」への途中。諦めずに前を向くあなたをサポートする
現在の山口は、自身のチームに留まらず、社内全体の「働きづらさ」を解消していく存在をめざしています。業務チームから一般の職場へ異動したメンバーのサポートも行い、現場の困りごとに誠実に対応することで、「山口さんが話を聞いてくれるから助かっている」と言ってもらえる機会も増えてきています。
「社内には、まだ働きづらさを抱えながら一人で悩んでいる方がいるかもしれません。私の力は微力ですが、企業在籍型ジョブコーチとして、あるいは同じ障がいを持つ仲間として、吐け口になったり、ちょっとしたアドバイスをしたりすることで、環境を少しでも変えていきたい。誠実に対応し続け、信頼を得ることが、会社全体をよい方向に動かしていくことにつながると思っています」
そんな山口が、未来の仲間である求職者の方々に伝えたいのは、三菱重工という場所が持つ「成長のための土壌」の豊かさです。ここには、単に守られるだけではない、自らを高めていける環境が整っています。
「三菱重工は、障がいがあるからといって甘やかす会社ではありません。本人の努力や工夫も必要です。でも、うまくいかないことがあっても、それは終わりではなく『できる』につながるステップの途中。そう前向きに捉えて進もうとする人を、私たちは全力でサポートします。Excelの勉強会や障がい特性の勉強会など、学びの場も豊富です。自分のペースに合わせて、一歩ずつステップアップできる体制がここにはあります」
山口は、障がいを「つらいもの」として受け止めるのではなく、自らを成長させる糧にしてほしいと語ります。自分自身の性格や特性を受け入れ、何に助けが必要かを理解することが、輝くための第一歩だからです。
「働く環境をよくするのも悪くするのも、最後は自分自身。人任せにするのではなく、自分で輝きたい、成長したいと願うなら、これほど温かくて刺激的な環境はありません。私自身も、失敗を繰り返しながら、毎日やり直し、学び続けています。完璧である必要はありません。素直に『成長したい』と思える方と一緒に働ける日を楽しみにしています。あなたの『できる』を一緒に増やし、この三菱重工で共に輝きましょう」
障がいの有無に関わらず、一人ひとりの可能性に目を向け、その人らしく力を発揮できるための対等な支援。三菱重工は、そんな未来を共に創る仲間を待っています。

