業務部門との信頼関係構築の重要性──ITの面から社内業務改革に全身全霊で挑む
約80人のメンバーで構成されるデジタルイノベーション本部コーポレートIT改革室。羽生は、この部署で知財システムの開発保守と次世代経営管理システム構築プロジェクトを担当しています。
「現在、当部署では会計、調達、製造システムの刷新プロジェクトを推進中です。30〜40代の中堅からベテランの方々が中心となり、各業務に約10~20名が配置されています。その他、知財システムや総務系システム、人事系システムなどの運用保守・開発も担っています」
羽生は、主に知財管理システムの開発保守を担当。学生時代に学んだ知的財産法の知識を活かし、発明などの権利化業務をITの面からサポートしています。
「私が担当するのは、知的財産部が管理する特許や実用新案、意匠、商標といった産業財産権を扱うシステムです。発明者、事業部、知的財産部、特許事務所がワークフローを通じて協力し、産業財産権の権利化を進めるプロセスを管理しています」
知財管理システムの利用者は多岐にわたります。そのため、業務効率化が大きな課題です。
「発明には1〜5人程度が関わり、研究所や事業部の設計者など、さまざまな部署の方々が含まれます。職務発明として正式に会社へ報告するにあたっては、その発明者全員の承認が必要です。
さらに、特許出願及びその後の審査対応にも多くの関係者が関わります。新規性の観点や出願後における各種権利手続きの期限日があり、スピードが求められるため、多数の関係者による承認プロセスや権利化に向けた業務をいかに効率よく進めるかが非常に重要です」
知財システム開発保守活動では優先順位を見極め、柔軟な対応を心がける羽生。とりわけ重視するのが、知財部メンバーとの“密な”コミュニケーションです。
「求められたことには重要度を判断してすぐ対応し、『あなたの仕事はここまで』と線引きせず、お互いを尊重し、協力しながら業務を進めています。保守案件の規模感だけでなく、誰が何を求め、誰にとって最も影響が大きいのかを常に考えながら、スムーズに進められるよう努めています。こうした対応の積み重ねが、信頼関係構築に必要だと強く感じており、業務遂行のしやすさに繋がっていると感じています」
また、次世代経営管理システム構築プロジェクトでは、ERPシステムのSAP S/4 HANAを中心とするシステム構築を行っており、2023年度の途中から三菱重工各拠点・国内グループ会社での導入テストや本番稼働支援を兼務しています。
「数百人が関わる大規模プロジェクトゆえ、拠点毎に異なる業務要件の調整や関係者間の対応に苦労しました。改めて要件定義や報連相を徹底し、周囲を巻き込み推進することの重要性を痛感しましたね。
困難な調整の末、本番稼働後に関係者から感謝の言葉を頂いた際は、大きな達成感を感じました」
想定外の新卒キャリアスタート──千里の道も一歩から得た学びが大きな糧に
物事の白黒をはっきりさせたい性格から、学生時代は法律に興味を持った羽生。中でも知的財産法を専攻したのには特別な理由がありました。
「憲法や民法などの基礎法分野はすでに研究が進んでおり、社会・経済への影響も大きいため、大幅な改正は難しい分野です。
一方で、知的財産法はさまざまな権利を中心に社会の変化に影響を受けやすく、さらに社会に与える影響も大きいのが特徴です。漫画やアニメなどのエンタメコンテンツが好きだったことに加えて、恩師との出会いもあり、ライツビジネスに興味を持ちました」
大学卒業後、羽生はエンターテインメント商材を扱う商社に入社。IT未経験で情報システム部に配属され、基幹システムや周辺システムの運用保守を担当しました。
「音楽映像の著作権、キャラクタービジネスをやりたかった私にとって、想定外の配属でした。会社の実業務やITには無知の状態であり、配属先は自分1人のみという心細い環境でした。その上、物流にも関わるシステムだったため、何か問題が発生すると会社の売上や信用問題に即直結します。わからないことだらけの中、時間に追われ、悶々とする日々でした」
当時、羽生の原動力となっていたのは、「3年間は続ける」という強い意志。慣れない環境の中、もがきながらも、少しずつ、そして着実にできることを増やしていきました。
「わからないことをそのままにしておくと、結局は自分が後で苦しむことになります。仲間に相談して、一つひとつ理解を深めるよう心がけました。
また、システムの技術要素や開発技術、システム運用保守手法などを学んだり、基本情報技術者の勉強を地道に続けたりしながら、基礎力を身につけていきました」
入社3年目、羽生は開発チームへ。この異動が大きな転機になります。
「2020~2022年にかけて新基幹システムの開発を担当し、要件定義からシステム設計、テスト、導入まで幅広く経験できました。この2年間で、システムエンジニアとしての基礎を確立できたと実感しています」
その後、ITと知財の両方のキャリアを検討するようになった羽生。転職活動を進める中で出会ったのが、三菱重工業株式会社(以下、三菱重工)でした。
「三菱重工の知財システム保守開発の求人を見て、これこそまさに私が探していたシステムエンジニアとしてのキャリアと知財の知識の両方を活かせる仕事だと感じました。運命的な出会いでしたね。
旧財閥系ということもあり、当初、堅い会社だと思っていましたが、意外にもフランクな方が多く、コロナ禍の中でもスムーズに組織に溶け込めました。さらに、三菱重工ではキャリア採用者にもOJT制度があり、先輩社員が担当業務の悩みや相談に乗ってくれる環境が整っています。わからないことをすぐに聞くことができたので、入社後も安心して仕事に取り組むことができました」
“業務部門とIT”の架け橋に──挑戦と経験が育てた確かな専門性と信念
2022年に入社してわずか半年後、羽生は大きな案件を任されます。知財管理システムの大規模なバージョンアップとWindows Server移行を同時に進める挑戦的なプロジェクトでした。
「大規模にソフトウェアバージョンアップとサーバリプレイスをする対応で、要件定義フェーズでのソフトウェア面・インフラ面の影響調査や、社内申請手続きが非常に複雑でした。何をどこに申請すべきかもわからない状態の中、試行錯誤を重ねながら進めましたが、最終的には納期通りに大きな障害もなく本番稼働することができました。
システム利用ユーザーからは『処理が早くなった』、『使いやすくなった』と高い評価をもらいました。この経験を通じて、知財管理システムの基本プロセスや社内申請手続きの流れ、システム構築上の注意点を広く学べたことは、現在の業務にも活かされています」
そして、入社から3年半が経過した現在、羽生が担当する業務の規模は格段に大きなものに。仕事への向き合い方も変化しています。
「これまではスピードを優先して対応してきましたが、専門性の高い業務や責任範囲の拡大にともない、適切な判断の下により強い推進力が求められるようになりました。とくに、関係者との調整では判断が分かれるケースも多く、粘り強く対応する重要性を実感しています。
また、コミュニケーションについては大きな組織特有の調整の難しさがあり、よりいっそう柔軟に対応するように心がけています」
現在、2つの業務を兼務する羽生。重責を伴うからこそ、やりがいがあると言います。
「私が開発保守を担当している知財管理システムは、特許申請や特許事務所とのデータのやり取りに不可欠なシステムです。安定した稼働を維持し、関係者の作業負担を軽減することが私の役割。特許業務の基盤を支える『縁の下の力持ち』として貢献できていることにやりがいを感じます。
一方、次世代経営管理システム構築プロジェクトは数十年に一度の大規模な全社的プロジェクトです。想定通りに進まないことも多いですが、キャリアの糧となる貴重な知見が得られており、成長に繋がっています」
さらに、学生時代に学んだ知識を活かせるのも、この仕事の魅力の1つ。
「知財管理システムでは、出願に必要な項目の改廃・期限管理、発明者の承認、契約管理など、法律に基づいたシステム設計が求められます。ITと知財、2つの武器を活かしながら仕事ができることに喜びを感じています。
また、次世代経営管理システムでは、会計がメインとなるシステムであり、学生時代に触れた経験がある会計学・簿記の知識も活かすことができており、プロジェクト外の経理メンバーとの会話の中でもこれまでの幅広い知識が役に立っています」
強みを活かし、組織と共に成長できる存在に──システムエンジニアの次なるステージへ
三菱重工での羽生のキャリアはまだ始まったばかり。組織の一員として、明確なビジョンがあります。
「俊敏性や相手との距離の詰め方、コミュニケーションの取り方が自分の強みです。キャリア採用者としての持ち味も活かしながら、良くも悪くも組織に染まりすぎず、個性を発揮していきたいと考えています。
また、業務範囲には線引きが必要ですが、それだけではうまくいかない場面もあります。部署の枠を超えて連携し、目的を共有しながら協力できる関係を築くことが重要です。一丸となってゴールをめざせる体制を意識しながら、業務を進めていきたいですね」
そんな羽生が考える、三菱重工のシステムエンジニアに求められる資質とは。
「技術的な知識は必要ですが、すべてを完璧に理解している必要はありません。困ったときに相談できるメンバーが周囲にたくさんいるため、協力しながら学べる環境があるからです。実際のところ、私も文系出身であり、技術要素よりも要件定義フェーズで業務プロセスをみんなで意見を出し合いながら考える方が性に合っていると感じています。こうしたプロセスへの理解を深める姿勢が、結果としてバグの防止や現場との信頼関係に繋がっているのは間違いありません。とくに、各拠点・国内グループ会社にシステムを導入する際は、プロジェクトメンバーと適切に情報を共有し、相談しながら承認を得るプロセスが極めて重要です。
こうした個性の強み・自分ができることを十二分に発揮して関係者と協同し、仕事を推進できる人材が求められていると感じます。
三菱重工グループでは、現在、数百以上のシステムが運用されており、数年後にはまったく異なるシステムを担当する可能性もあります。さらに、担当する仕事の規模感が大きく、与えられる裁量権も大きいため、やりがいや成長を求める人にとっては最適な環境です。
先頭に立ち、多くの関係者を巻き込みながら、積極的なコミュニケーションで業務遂行し、自分の個性をしっかりと組織に還元できる方と共に働けることを楽しみにしています」
知財管理システムと経営管理システムの両軸を担う羽生。その専門性、柔軟な対応力、そして調整力を活かして、これからも業務部門と共にITの可能性を追求し続けます。
※ 記載内容は2026年3月時点のものです

