インフォバーンで、企業のマーケティング支援事業を行うIBX(INFOBAHN EXPERIENCE)部門のコンテンツ・ユニットに所属する樋渡 和史。市役所の職員を経て出版社、インフォバーンと編集者としてのキャリアを歩んできました。老子の思想に感銘を受け、「ただそこにいて“聞ける”人間」でありたいと語る樋渡にコミュニケーションへの想いや仕事観について話を聞きました。
テニス歴10年、チャラサー出身?
──埼玉県出身とのことですが、どんな10代を過ごしましたか?
地元は埼玉県の久喜市というところです。家の周りは田んぼだらけで、カルチャーとしては北関東と首都圏とにまたがっている空気があります。僕が地元にいたのは小学校までで、以降は東京の中高一貫校に通っていたんです。6年間テニス部で、大学でもテニスサークルに入っていました。
──大学時代はどんな学生でしたか?
それこそ僕は、まったく勉強せずに最低限の単位だけを取るような、わりとイメージ通りの遊んでいる大学生でした。当時は髪の色が金髪だったりして、格好だけ見ると派手でしたが、そんなに破天荒なことをやっていたわけでもないです。
▲テニスサークルに打ち込んでいた大学時代
──遊びながらも、卒業後は職業として公務員を選んだのはなぜですか?
就職活動中にしっかり公務員試験の勉強をして、卒業後は地元から少し離れた市町村の役所に入職しました。僕は中学から東京の学校に通っていたので、正直、そこまで地元に対する思い入れはないんですよね。
将来のことを考えた時、「働くこと」に対して熱量がなかったので、一生懸命稼ごうとか出世しようとか全然思えなかったんです。決められたことを、決められた時間に、決められたようにやってお給料をいただけるイメージが当時は公務員だったんです。
当然、実際に働き始めたら、時期や部署によっては日付が変わっても帰れないこともあったりするぐらい、決して公務員は楽な仕事ではありませんでしたが。
──役所ではどんな仕事をしていましたか?
交通安全担当の部署に配属され、辞めるまでそこにいました。小学校に行って警察の方と一緒に自転車の乗り方を教えたり、交通指導員の方々の取りまとめをしたり、カーブミラーや道路の線の設置や修繕をしたり、業務は多岐にわたっていましたね。
交通指導員などかかわる方は有償であっても基本的にボランティアとして活動されているので、お金をベースに動くビジネスとは違った難しさがありました。
たとえば、市のお祭りの時に指導員の方にも警察による交通誘導の手伝いをしてもらうんです。その配置をこちらで決めていて、事情があってA地点とB地点の人を交代したところ、本人同士は了解していたのですが、リーダー格の方から「オレは聞いてないぞ!」と怒られたことがありました。市役所として、苦情・陳情を受けることもありましたし、いろんな経験をしましたね。
「会話はキャッチボール」という言葉の真意
──市役所を辞めたのはなぜですか?
4年経った頃に、役所で働き続ける限りは基本的にその市から出ずに働き続けることになるので、「あと40年近く、ここにいるだけで良いのかな?」と考えるようになりました。外に出てみたいという気持ちが強くなって、まずリサーチ会社に転職しました。
そして、次に出版社に移りました。もともと本を読むのが好きで、学生時代に公務員以外で就職活動をしていたら絶対に出版社は受けていたと思えるほど興味のある業界だったんです。
──そこから編集者のキャリアがスタートしたのですね。
そうですね。入社した出版社は、いわゆる自費出版を請け負う会社でした。出版社の中途採用ではなかなか未経験者を募集していないので、その中でも編集者として雇ってくれるところを探しました。
──商業出版とはどんな違いがあるのですか?
商業出版社で働いたことがないので明確にはわからないのですが、その会社では営業の業務も多かったです。自費出版は「自分でお金を払うので、本を出したいです」という方が現れてから制作がスタートします。ですから、まずは自分でお客さん見つけてくる必要があって、営業的な業務や編集的な業務を一気通貫でやっていました。
僕のいた会社では、企業出版などのビジネス寄りではなく自伝を残したいとか小説を書きたいというような個人の著者の方が多かったです。こちらから「本を出しませんか」という営業はしつつ、著者側から会社に相談に来られることもけっこうありましたね。
──著者が出資者であり作家でもある場合、コミュニケーションの取り方が難しそうですね。
はい。出版流通に乗せたいだけだから、本の内容への口出しはいらないし好きに書かせてほしいというスタンスの著者ならあまり手がかからないのですが、基本的には編集者のサポートを求めているからこそ依頼されています。
編集者はお金をいただいている立場でありながら、アレコレとアドバイスをしていきますし、ダメ出しをすることもあります。編集者が信頼されることで成り立つ関係なので、著者の方に「全然コミットしてくれないな」と感じさせないような気配りも必要でした。
──コミュニケーションの面で大切にしていたことはなんですか?
コミュニケーションで大切なのは「聞くこと」なのかなと思います。相手の発言や気持ちに対してリアクションすることも含めての「聞く」です。よく「会話はキャッチボールだ」と言われています。すごくベタな表現ですが、編集者を続けるうちにそれが理解できるようになりました。
誰だって、ただボールを捕ってほしいんじゃなくて、良い音を立てながらしっかりミットで捕ってくれる人とキャッチボールしたいですよね。聞いてもらった人が、「自分の考えを理解してくれている」という納得感とか、「聞いてもらえている」という実感を得られることがなにより大事だと思っています。これは自分が話す側の場合でも同じで、お互いにとって大事だと思います。
BtoBオウンドメディア/BtoCオウンドメディア
──その後、インフォバーンに入社された経緯を教えてください。
自費出版の会社では、僕はずっと「企画編集」という肩書で営業と編集を兼務していました。ある時から体制が変わって完全に役割が分かれることになり、僕は営業のほうに振り分けられたんです。でも、僕はどうしても編集の仕事を続けたかったので辞めることにしました。
職種は編集職で探していましたが、紙媒体にこだわらなくても良いと考えていたのと、もともと『WIRED Japan』(インフォバーン創業者の小林弘人が創刊した雑誌で、現在はコンデナスト・ジャパンが発行)が好きだったので、採用募集を見つけた時に「入りたい!」と思って応募しました。
▲編集部が用意した『WIRED』をベンチで読む樋渡
──実際に入社してどう感じましたか?
業務内容として編集の仕事というところは同じなので、それほどギャップは感じませんでした。いちばん違いを感じたのは、業務より人ですね。
インフォバーンのメンバーは、みんなすごく理性的なんです。職場にいて誰かが怒っていることを見たことがないです。
──樋渡さんはBtoB企業のクライアント案件を多く担当していますが、難しいと感じることはありますか?
僕にとってBtoBは合っていると思います。僕が担当してきたBtoB企業のオウンドメディアは、極端に言ってしまえばビジネス情報を知りたい読者が多く、趣味やエンタメの情報を読みに来るケースはあまりないんです。だから、突飛なアイデアやギミックよりも、必要な情報が適切な文脈で書かれていることが大事です。僕はそっちのほうが得意だなと感じています。
もちろん、ビジネスの知識や業界知識が求められるので勉強する必要はありますが、僕はインプットすること自体が好きなので苦にならないです。事前のリサーチや取材でも「初めてのことを知れたな」「いろんなインプットができたな」と感じられることが、僕の仕事の原動力になっています。
──入社から4年が経って、何か変化はありましたか?
これまではずっとBtoB企業の案件だけを担当してきましたが、今年からBtoCメーカーの案件に入ってプロジェクトマネージャーを担当しています。いわば「interesting」というより「funny」なコンテンツを制作する案件なので、企画の発想も全然違いますね。
今までは企業のCXOや専門業務の担当者など学者の方に話を聞きに行くことが多かったのですが、今の案件では製品を使ったチャレンジ企画を立てたり、公園で撮影したり、エンタメ系のライターさんにオモシロ記事を書いてもらったりするので、その振れ幅がすごいです。新しくてよい経験をさせてもらっているなと感じています。
「ただそこにいて“聞ける”人間」をめざして
──コンテンツ・ユニットではメンバーが各自で付けているセルフコピーがありますね。樋渡さんの「ひりひりもわくわくもしないけど、ただそこにいて“聞ける“人間」というのはどんな発想からでしょうか?
ベースは老子の教えですね。水のように生きる、自然の成り行きに任せる、など“無為自然”を謳う「老荘思想」の老子です。老子は、良い為政者の条件として「太上は下これあるを知るのみ」と言っています。暴君は論外として、名君と称えられる人でもなく「存在は知っているけど、何をしているかわからない」というくらいの人が、じつはいちばん良いという意味ですね。
僕はその思想をカッコいいなと思って、そうなりたいという願望込みでセルフコピーを付けました。すごい切れ者だとか、オーラがあって緊張するなどとは感じさせずに、ただそこにいることでなんとなく周りの人が話したくなる存在でいたいと思っています。
とはいえまだ僕には自己顕示欲もあるし、承認欲求もあるので“願望込み”なのですけど、最近はそういうところも認めて受け入れられるようになりましたね。比喩ですが、虹を見てキレイだなと思った時に「この人に言いたいな」って思ってもらえるような存在になるのが今の理想です。
──最後にメッセージとして、インフォバーンのどこが魅力的か、どんな方にインフォバーンに入ってほしいかを教えてください。
繰り返しになりますが、インフォバーンの良さは本当に「人」だなと思います。先ほどみんな理性的だと言いましたが、メンバーの「湿度が高い」とも思っています。理性的ではあっても、あんまりカラッとドライな人はいなくてどこかウェットさを感じるんですよね。
僕はわりと内省的な方で、どうでもよさそうなことについて考え込んじゃうことが多いのですが、それに対して「そんなこと考えても無駄だよ」「考えすぎだよ」と言う人はあまりいません。
──相手にも同じように内省する心があるんですね。
そうなんですよ。そういうところが良いなと思っています。だから、インフォバーンには「やり方を教えてください」とか「TIPSを教えてください」とすぐに答えを求める人ではなくて、自分と同じような壁に当たったときに他のメンバーはどんなやり方で乗り越えたのかを具体的なエピソードで聞きながら自分なりに解釈をして、「じゃあ、自分はこうしてみようかな」と考えられる人が合うんじゃないかと思いますね。
プロセス理解というかナラティブ感度というか、あまりストレートに解を求めるのではなくて、周りからいろんな情報を得て、それをつなぎ合わせて自分で納得しながら仕事を進めていく。そういう形に価値を感じる方にぜひ入社してほしいと思います。
※ 記載内容は2024年10月時点のものです
