インフォバーンに新卒入社して5年目となる丸山 佑介。現在はコミュニケーションデザイン第1事業部でコンテンツディレクターを務めています。サークル活動に明け暮れた学生時代から入社までの経緯やコンテンツディレクターに必要な心構えなどについて聞きました。
無意味だったけど無価値ではなかった学生生活
──丸山さんは新卒でインフォバーンに入社されていますが、どんな学生時代を過ごしていたのでしょうか。
大学時代は仲間とスケボーサークルを設立して遊んでいました。
──今やスケボーはオリンピック競技ですから、だいぶ先見の明がありますね。高校時代からスケボーが好きだったのですか?
いいえ、全然。ほぼ乗ったことはないです。最初は学生課で「ゴミ拾いサークル」って書類に記入し、申請したんです。とにかく人名のようなサークル名にしたくて『竹内剛(たけうちごう)』と名付けました。
▲卒業アルバムにもちゃんと載っていました
──なぜゴミ拾いサークルにしたのですか?
当時の僕は「ゴミ拾いサークルならなんでも容認されるはず」と根拠のない楽観的な考えをしていたんです。「街をキレイにしたいからです!」と主張しましたが、却下されてしまい……。学生課の職員さんはちゃんと人物を見ているんだなと感心しました。
──そこからどうリベンジしたんですか?
ゴミ拾いサークルが却下された1週間後、再び学生課に行きました。同一人物だとバレたら怒られそうなので、とりあえず髪の毛を赤く染めて向かいました。
──100%バレますよね?
「スケボーサークル『竹内剛』です」と言ったら、「あれ、この前も来ましたよね?」とあっさりバレました。ですがここで引き下がることなく「このキャンパスにはスケボーをするサークルがありません。せっかく最寄り駅にスケボーをしてもOKな公園があるのに!」と主張したら、なぜか審査に通りました。
──それはよかったです。どんなサークルライフを過ごしていたのでしょうか。
気絶するまで何時間もゲームをしたり、お金もないので河原で石を拾ったり、たまにスケボーしたり。自由気ままに大学生活を謳歌していました。そうこうしているうちにあっという間に3年間が過ぎてしまいまして。あまりにも暇すぎたからなのか、唐突に何か形に残るものを作りたくなったんです。
──何を作ったのですか?
フリーペーパーです。たまたま学生フリーペーパーの祭典イベント「Student Freepaper Forum(以下SFF)」を見に行って、「自分ならここにあるフリーペーパーを超えるものが作れるはず」と思いました。
──スケボーサークルなのに、謎の自信に満ち溢れていますね。
SFFは旅行やファッションなどのジャンルのフリーペーパーが多かったので、もっと自分たち大学生にしか作れないものでないとダメだと思い、『大学喫煙所名鑑』というフリーペーパーを作りました。
──それはどういったフリーペーパーだったのでしょうか?
地方国公立大学のキャンパスにある喫煙所を紹介するものです(大学喫煙所名鑑ができる経緯はこちら)。原付きバイクで全国を回って取材したので制作に1年半もかかってしまいました。ですが、ありがたいことにそのフリーペーパーが評価されて、SFFで賞をいただき、メディアで紹介されたりしました。ラジオでピエール瀧さんに紹介していただいて嬉しかったですね。大学4年生の終わり頃の話です。
──とても順風満帆ですね。
はい。当時は制作会社の内定もいただいていました。
──えっ!ではなぜインフォバーンに入社したんですか?
意外かもしれませんが、なんと自分……留年したんですよ!!
天下分け目の留年事変
──フリーペーパーづくりに熱中して留年してしまったんですね。
そういうことにしてください。留年して、さてこれから先どうしていこうかと悩んでいたところ、SFFのイベントに当時の新卒採用担当だった田汲さんが来ていたみたいで、Xに「大学喫煙所名鑑がおもしろかった」とポストしていたのをふと思い出しました。
──偶然の出会いだったんですね。
過去のポストをたどってみると、どうやらこの人はインフォバーンという会社で働いている採用担当者ということがわかりました。自分の作ったものをおもしろいと言ってくれるのなら、ひょっとするとこの会社で雇ってもらえるかもと淡い期待を抱きまして……。善は急げということで、とりあえずDMを送りました。
▲採用担当に届いたDM。完全に社会人をナメているのがよくわかる文面です
──「あの大物ルーキーが留年しましたよ」というノリなのでしょうか。普通の採用担当ならスルーしている気がします。ところで丸山さんは会社の代表だったんですか?
いえ、この会社は実在しません。フリーペーパーを作るにあたって勝手に名付けただけです。
──インフォバーンがどんなことをやっている会社かはわかった上で連絡したのでしょうか?
いや、よくわかっていなかったです。ただ、話を聞いていくうちに興味を持つようになりました。あと、内定をいただいてからわかったのですが、同期も学生時代に何かを作ることに打ち込んでいたという人が多かったので、きっとこの会社は自分に合っているんだろうなと思いました。
──同期はどんな人たちだったんですか?
ロンドンのデザイン会社でインターンをしていたカメラ好きのロン毛。食パンの袋を留めるアレ(バッグ・クロージャー)が青森県の形に似ていると気づき、3Dプリンタで青森県の形をしたバック・クロージャーを作った人(こちらをご覧ください)。あとはマリオカートで世界ランクに入った人とか。
──マリオカートで世界ランクに入るというのはとくに何も作っていないですけどね。
とにかく、ものづくりを好きな人が多そうだったので、この会社は「なんとなくいいな」と思ったんです。
──その頃はコンテンツディレクターになるという意識はもちろんないですよね。
はい。総合職としての採用なので職種についてはとくに考えていなかったです。ただ、自分は何かを企画してそれを実際に形にする仕事をしてみたいとだけ漠然と考えていました。
──学生時代の話が長くなってしまいましたが、入社してから印象に残っているエピソードってありますか?
そうですね……。僕がインフォバーンに入社して最初に手掛けたのが「絆創膏」だったんです。
──あの、傷口に貼る?
はい。インフォバーンはアウトプットがデジタルのメディアであったり、場合によっては紙の冊子だったり、イベントだったり、動画だったりとさまざまです。その中で自分が最初に手掛けたのは、とあるメディアのノベルティとして作った絆創膏でした。
イベントで配布する用途で3,000個ほど発注したんですよ。作ってもう4年以上経つのですが、その時にお世話になったノベルティ会社さんからはいまだに連絡が来ます。この前、担当者の引き継ぎの電話もありましたからね。1回しか発注していないのに。
──「この人は過去に絆創膏を大量発注したから大口顧客かもしれない。こまめに連絡しとこう」という認識なのかもしれませんね。
まわりの同期がメディアの記事を編集したり、Webサイトを制作したりしている中で、「いま自分は絆創膏を作っているんだ」という感情は鮮烈に覚えていますね。
──絆創膏制作からスタートして今はどういった仕事をされているのですか。
担当しているのはBtoB系のメディアの編集業務が多いです。ざっくり言うと、企業のまだこの世には出ていない情報や技術をわかりやすくユーザーに届けるということを日々やっています。
──丸山さんはなんとなくアイデア一発勝負みたいなイメージを抱いていましたが、少し違うんですね。
どちらかというとBtoB系のメディアの仕事が自分には合っていると思います。前提として、僕はおもしろいコンテンツ=いいコンテンツという考えです。「おもしろい」には、笑えるものも興味深いものも含まれます。そして、クライアントワークの場合は笑えるものについてあまり依頼されないんです。
したがって、専門的な知識をインプットして有識者の新鮮な視点に触れることができるBtoB系のコンテンツの方が、僕の思う「おもしろい」に近いと言いますか。それまで調べても出てこなかったものが、調べたら出てくるようにするという行為が純粋におもしろいんですよね。BtoC系に比べると、キャッチーなコンテンツではないですけど。
──なるほど。「おもしろい」というのは、メディアによっても人によっても捉え方がさまざまだと思います。
何か制作して世の中に出すのであれば、ある程度自分がいいと思ったものを出したいですよね。それが僕にとっては「おもしろい」なのかなと。あと、社会人になって驚いたのが、みんなそんなに「おもしろい」ものが好きなわけではないということです。「おしゃれ」「かっこいい」「かわいい」のほうが人気かも。みんなが「おもしろい」ってことを重視しているわけではないということを知りました。
──丸山さんの考える“いいコンテンツ”とはなんでしょうか?
それでは、説明しますので外に石でも拾いに行きますか。
──は、はい。
「急にわけのわからないこと言い出して」と思っていませんか?
──だ、大丈夫です。
──それで、石を拾うのといいコンテンツについて語るのは関係があるんですか?
学生時代にあまりにも暇すぎてサークルメンバーとよく石を拾っていたんですよ。そこで気づいたんですが、石選びってセンスが出るんですよね。
──たとえば?
同じ場所で石を拾うにしてもそれぞれのセンスが表れるんです。前に石拾いに行ったバックパッカーの友人は「持ちやすい石」を選んでいました。彼の中で“持ちやすさ”や、ともにいる“相棒感”が重要だったのかもしれませんね。
これは今日家から持ってきたんですけど、この石を選んだ友人は「ジブリみたいな田舎の風景に馴染む石」ということを考えて拾ったそうです。ノスタルジックなシチュエーションを好んだり、背景にあるストーリーみたいなものをいいと思ったりしたのかもしれないですね。
──たしかに、ジブリっぽい気がしてきました。その時丸山さんはどんな石を拾ったんですか?
これです。まるくて少し平べったくもある、色もグレーで「THE 石」という感じ。大きさも手のひらにちょうど収まるのがよいです。このような「石らしい石」を選んだ自分は“石”原理主義者だと思います。
結局、王道でシンプルなものがいいと思ってる節があるのと、プラスしてちょっとしたシュールさみたいなものも琴線に触れるのかもしれません。
──言わんとしていることはなんとなくわかります。
河原とかに行くと、たくさん石があるじゃないですか。膨大な数の中で「さあ、ここから選んでください!」と言われて選ぶと、その人なりのセンスや価値観が石に投影されるんです。
みんな石を選ぶ時に「なんとなくいいな」と思ったものを選ぶと思いませんか?自分の「なんとなくいい」って感覚を知るのってけっこう難しいじゃないですか。それをわかりやすくしたのが石を拾うという行為だと思います。昔から「困ったら石を拾え」ってよく言うじゃないですか。
──すみません。「困ったら石を拾え」という格言は聞いたことがなかったです。
石って権威がないですし、拾うのもタダなんです。たとえば「好きな音楽は?」と聞いた時に「はっぴいえんどが好きです」と言われても、「そのバンドを挙げれば通(つう)っぽい」という権威で選んでいる可能性もあるなと疑ってしまうんですよね。本当にそのバンドが好きだったとしても、真意はわからないじゃないですか。
石には、「この石を拾えば通っぽい」みたいなことないですから。権威がないので、好きな映画や音楽について尋ねるよりも、その人のセンスが純度高く現れると思います。また、他の人が拾った石のいい点を挙げてみると、意外とその人の意図とは違うことがあるんです。そうやって自身の視点を増やしていくのもいいと思います。
──自身のセンスを知り、他者の視点を獲得するための行動だったんですね。
ブランディングを突き詰めていくと、企業や商品を「なんとなくいい」って思うことのような気がするんです。なんとなくいいと思ってこの服を買ったり、なんとなくいいと思ってお昼ごはんを選んだり。なんとなくいいって感覚は日常に溢れていますよね。
ですが、仕事においてはその「なんとなくいい」をきちんと言語化しないといけません。そして言語化するためには日々膨大なインプットと適切なアウトプットをしないといけません。コンテンツディレクターの仕事は結局のところその繰り返しだと思うので、毎日石を拾ってその理由付けを考えているのと同じですよね。
──「なんとなくいい」を言語化するのがコンテンツディレクターってことですか?
はい。具体と抽象の行き来、みたいな。クライアントワークではとくに言語化は必須ですね。説明する必要があるので、その前段としてとにかく僕は「なんとなくいい」という感覚を大切にしています。インフォバーンも「なんとなくいいな」と思ったから入社したわけですし。
──最後にこれを読んでいる方にメッセージを。インフォバーンにはどういう人に入社してもらいたいですか?
「こじつける人」ですね。やりたい企画とかを説明するために、あらゆる手段を想定でき、自分の得意分野になりやすい趣味とか好きなものに無理矢理にでももっていくエネルギーのある人が良いんじゃないかと思います。
※ 記載内容は2024年11月時点のものです
