「We are the storytellers」をスローガンに、企業のマーケティング・コミュニケーション支援を行うインフォバーンで10年以上コンテンツづくりに携わってきた田中 圭子。雑誌編集者やWebデザイナーを経て、コンテンツディレクターに行き着いた背景にある、コンテンツ制作への愛と好奇心について語ります。
編集者からデザイナー、そして再び編集者へ
──田中圭子さんはインフォバーンのコンテンツディレクターの中でも、“編集者”というイメージが強くあります。これまで編集系のキャリアを中心に歩まれていたんでしょうか?
もともとは雑誌編集者を志望していたのですが、新卒の時に出版社は落ちてしまったため、最初は小売系のまったく違う仕事をしていたんです。でも、雑誌に関わりたい気持ちが捨てられず、新卒で入った会社はすぐに辞めて人の紹介で編集プロダクションに入りました。
そこは、大手出版社が発行する雑誌の制作を担っている編プロで、正直かなりハードな働き方でした。締め切り前の徹夜は当たり前。とにかく「やって覚えなさい」という職場だったので、何をすれば良いのかわからないまま撮影現場を任されることもありました。
雑誌編集は憧れの仕事だったし楽しいこともたくさんあったのですが、「こんなにハードな仕事をずっと続けられるのかな」と不安になっていた頃、祖母が癌を患い余命半年だと知ったんです。「最後の時間を大事に過ごしたい」と思い、退職しました。
そこからは自分のペースで仕事をしようと、派遣社員としてWebサービスのカスタマーサポートの仕事をしつつデザインの学校に通いました。
──編集職希望で、デザインを学んだのはなぜなんですか?
雑誌制作はライターや編集、カメラマン、デザイナー、スタイリストといろんな人が関わってできていることは知っていましたが、とくに学生の頃はそれぞれの方が何をやっているのか深いところまでは理解していなかったんです。「おもしろい」と感じる理由がテキストによるものなのか、写真によるものなのか、あるいはデザインの力なのかまったく区別できていませんでした。
でも、中には読まずにレイアウトを眺めているだけで楽しい雑誌もある。「もしかしたら、私に『おもしろさ』を感じさせるものはデザインなのかな?」と考えたんです。ちょうどその時期、Webメディアが世の中に浸透しはじめた時代でもあり、次第にWebデザインをやってみたいという想いが強くなったんです。
もともと絵を描くのが好きでPhotoshopやIllustratorを使ってデザイン的なことを趣味でしていたので、そこに触れられる仕事に就きたいなと思いました。
──そこから、実際にWebデザイナーになられたわけですね。
はい。派遣先の会社がとても雰囲気の良い会社で、社員に採用していただいたのですが、Webデザインの仕事が諦められなくて。同僚のデザイナーの方が立ち上げた会社に入れていただきWebデザインの仕事をするようになりました。
7年ほど勤めたその会社では、前半はデザインが業務の中心でしたが、会社の業務が拡大していくうちに「田中さんは文章を書ける人だから、書いて」と頼まれて、徐々にコンテンツ制作業務の比重が増えていきました。最後はディレクター業務をしつつ、自分でも取材して、撮影して、記事を書いてという現在のインフォバーンでやっているコンテンツディレクターのような仕事をしていました。
雑誌文化のとりこになった学生時代
──雑誌編集者をベースに、さまざまな職種へとつながっていきました。田中さんにとっての雑誌の魅力とは何ですか?
雑誌は、「めくる匂いが好き」というくらいに大好きです。中学生の頃、初めて「雑誌っておもしろい」と気づいた時のことを鮮明に覚えています。マガジンハウスさんの雑誌『anan』で「紅茶特集」があって。今ならインターネットで紅茶の情報でもなんでもたくさん手に入りますけど、その当時は紅茶文化について掘り下げた情報なんて見たことありませんでした。
「いつもティーパックで入れているあの紅茶を、こんなふうに淹れて、セッティングしたらすてきだなあ」「紅茶って、こんなにいろんな種類があるのか」と感動して。小道具にまつわる話やイギリスの文化といったコラムも載っていて、雑誌には何か生活を豊かにする私の知らない文化が詰まっているんだなと知ったんです。雑誌の魅力は、「文化の発信地」であることなんだと思います。
──紅茶について知りたい人にとってだけじゃなく、万人に対して新たなカルチャーを提供できるのが雑誌ということでしょうか?
そうです。しかも、紅茶の美味しい淹れ方を学ぶだけならそこまで感動しなかった気がします。道具とか器作家のエピソードとか、それに付随するカルチャーも含めて伝えてくることにすごく感激したんです。当時、愛読していたのは『anan』や『Olive』、『BRUTUS』ですが、本屋さんやコンビニの棚をいつもチェックして手当たり次第に雑誌を読んでました。
私はオタク気質なので、古雑誌を漁りに神保町とか中野とかの古本屋に行くこともあるくらいで。そんなにインターネットも普及してなかったので、やっぱり雑誌を通して文化に触れる時代だったような気がします。
転機となったBtoB企業との仕事
──念願の雑誌編集者とWebデザイナーを経て、現在のコンテンツディレクターへ。その間、変わらなかった想いは何ですか?
キャリアとして紆余曲折はあっても、雑誌に憧れていた頃から変わらず「何かコンテンツをつくりたい」という気持ちは常に根底にあった気がします。だからこそ、コンテンツをつくるなら本格的にやっていきたいと思い、インフォバーンに転職したんです。
なぜインフォバーンを選んだかというと、インフォバーンから出ていた『MYLOHAS』という雑誌がすごく好きだったからで。ヨガが今のように広まる前から、バンクーバーのヨギー二を特集していて、すごくおもしろかった。それと、編プロ時代にもWebコンテンツ制作をした経験が少しあって、それもインフォバーンと関わりのある仕事だったんです。だから、どこか縁を感じました。
──実際に入社してからの日々はどうでしたか?
入社当時は、ひたすら記事をつくる忙しい毎日を送っていました。10年前と比べたら、今は確実に働きやすくなったと思います。
そういえば、入社してまだ2週間くらいの時に先輩社員と4人で上高地に行ったことがありました。「山に行きたいね」という話が出て、「じゃあ、今週の金曜日に行こう!」と、まだ人となりすら知らない私も誘ってくれたんです。夜にみんなで会社を出て、車でちょっと寝てから夜中の3時に星空を見て、早朝から歩いた思い出があります。そういうフットワークの軽い人がたくさんいる、おもしろい会社だなと感じました。
──案件としては、どんなことを担当していたんですか?
インフォバーン歴の前半は主にBtoCのメディアを担当していました。でも、目の前の仕事に追われていて「本当にこれでいいのかな」と迷いがある状態だった気がします。それが変わったのは、担当案件がBtoCからBtoBに移ってからでした。
初めて担当したBtoB案件は、その会社の考え方や業界の最先端の動向を発信してソートリーダーシップ(特定の分野で革新的なアイデアを出し、その分野における先導者となること)を醸成するメディア制作でした。世の中のマインドから変えていこうとするコンテンツ制作が新鮮で、その案件を担当して1年くらい過ぎてから少しずつ仕事に自信が持てるようになったんです。
──何かきっかけがあったんですか?
その案件の取材で、海外イベントに行かせていただいたんです。日本にはまだ上陸していなかった最先端のWebサービスを体感したり、世界中の方が集まる熱気を感じたりととにかく刺激的でした。また、そのイベントのついでに、慣れない英語を駆使して個人的にロサンゼルスまで足を運んだのもいい経験になりました。その頃に学んだ経験を活かして働くうちに、徐々に「BtoB案件なら田中 圭子に任せよう」と社内でも信頼してもらえるようになった気がします。そもそも私は、BtoBの仕事の方がBtoCよりも向いていたのかもしれません。
BtoCでは新鮮な企画やインフルエンサーを起用するような企画など広くたくさんの人に読まれるコンテンツのためのアイデアが求められることが多いのに対し、BtoBはじっくりストーリーを練るコンテンツづくりをする傾向があります。私には、そこが向いているのかなと思うんです。
たとえば、会社が持っているビジョンや理念を形にする時に、直接そのものを宣伝するのではなく、それに関連したテーマで取材したり対談企画を組んだりします。そこで、識者の考えを会社のビジョンに結び付ける切り口を探したり、専門家同士を組み合わせた対談の想定シナリオを作ったりします。そうしたストーリーラインを考えることが多いBtoBマーケティングの方が、おそらく私は得意なんです。
▲田中さんがその時に撮影した写真(上)と、Uberの履歴に残った遠回りルート(下)
インフォバーンは企業と読者をつなぐストーリーテラー
──インフォバーンのコンテンツ制作には、どんな魅力があると感じますか?
クライアントの方と同じ船に乗って、コンテンツをつくることができるところでしょうか。一般的なメディアだと中立的な立場をとる必要もあって、そうしたコンテンツづくりはなかなかできないように思います。
企業としての状況や社内での交渉、部署同士の関係性などまで共有していただいて「じゃあ、この部署の方に登場してもらうには、こういう取材依頼書を作って持っていきましょう」などと提案することもあります。もちろんクライアント企業が信頼してくださっているからこそできることなのですが、仲間として舞台裏に入れていただいているような感覚があります。
その上で、社会の潮流や読者の心理を想像して、企業と読者をどうつなぎ合わせるかを常に考えています。それがストーリーになり、インフォバーンはそのストーリーテラーの役割を担っているんです。それはBtoBの案件でも、BtoCの案件でも同じです。
──では、どんな方がインフォバーンに向いていると思いますか?
柔軟な方ですね。ある程度キャリアを積めば、「このやり方でやってきた」という自信があると思うんです。でも、発想を変える必要がある場面は必ず出てきます。その思考回路のスイッチを、「そっちの考え方でもやってみようか」と柔軟に切り替えたり、試してみたりできる柔軟性があると良いかなと思います。
あと、やっぱりコンテンツが好きでたまらない人。コンテンツって普段から触れていないと制作の引き出しが少なくなってしまうので。いろいろなWebサイト、本、映画、イベント、なんでもいいので好きなコンテンツがたくさんあって、かつそれらをアップデートし続けられる人はインフォバーンの仕事も合うと思います。
コンテンツが好きで自分の「好き」や「強み」をインフォバーンの人に共有しつつ、他のメンバーが持っている「好き」や「強み」を吸収できるような柔軟性を持っている人にぜひ来ていただきたいですね。
※ 記載内容は2024年11月時点のものです
