グローバルに展開する企業向けデバイス開発チームのミッションと私の役割
私たちのチームは、企業向けコンピューティングソリューションの開発を担い、世界180以上のマーケットに向けてThinkPad、ThinkStation、デスクトップ製品を届けています。日本・中国・アメリカを中心としたグローバル体制で開発を進め、世界中の企業が日々使うデバイスを通じてビジネスの生産性向上に貢献すること。それが私たちの使命です。
この使命は、メンバー全員で議論を重ねて言語化したもので、何年経っても変わらない私たちの指針となっています。「お客様の成功のために、生産性向上を通じて貢献する」という日本語の表現に加え、グローバルでは「Solve the greatest challenges for customer success for humanity through smarter technologies」と掲げています。より賢いテクノロジーでお客様の課題を解決し、人類全体の成功に貢献していく――この考え方が、私たちのものづくりの根幹です。
私の役割は、このグローバルに広がるチームをリードし、戦略策定から製品開発、イノベーションプロジェクトの推進までをドライブすることです。ただし、リーダーとして最も重視しているのは、製品そのものだけではありません。人材育成やチームカルチャーの醸成、外部パートナーとの協業など、“組織としての強さ”をつくることも大切な仕事だと考えています。
私たちのチームは、多様な国籍・文化・バックグラウンドを持つメンバーで構成されています。だからこそ、オープンでフラットな組織運営を心がけています。トップダウンで指示を出すのではなく、ボトムアップの意見を積極的に取り入れ、透明性を持って多様性を尊重する。異なる視点が集まるからこそ、より良い製品が生まれると信じています。
さらに私たちは「グローバル・ローカル」というストラテジーを採用しています。グローバルでの知見を結集しながら、各地域の強みも最大限に活かす。世界中のメンバーが持つ多様な視点とローカルの深い理解を掛け合わせることで、より価値の高い製品開発につながる。この絶妙なバランスこそが、私たちのチームの大きな強みです。
10年目の研究所への挑戦、そしてものづくりへの情熱
私がこの大和研究所に参加したのは2002年のことです。大学を卒業して、ちょうどThinkPadが最初に発売されてから10年が経った頃でした。大学時代はCPUの研究をしていて、それに関わるものづくりがしたい、そして世界中で売られている製品を通じて、世界中のお客様に自分が作ったものを届けたいという強い思いがありました。その思いを実現できる場所として、IBMの大和研究所を選んだのです。
実は、入社は決して簡単ではありませんでした。最初は「もう定員がいっぱいです」と言われて、入れなさそうな状況だったんです。でも、どうしてもここでものづくりがしたいという熱意を伝え続けました。「入れてくれないんだったら、もうこの会社自体に入らない」という覚悟を持って臨んだ結果、最終的には入ることができました。その時の気持ちは今でも鮮明に覚えています。
入社後は、電気設計のエンジニアとしてスタートしました。バッテリーライフの改善やパフォーマンスの向上といった分野に取り組んでいました。でも、私にはやりたいことがたくさんありました。ゴールは、製品全体を見て、自分が作りたいものを作ってお客様に届けることだったんです。そのために、担当エリアを少しずつ広げていきました。システム全般を理解できるようなスキルと知識を増やしていったのです。
言われたことをただやるだけではなく、「こうしたい」という提案を積極的に行いながら、徐々に範囲の広いシステム全般を開発リードできるようなポジションへと成長していきました。その後は、ThinkPadだけでなく、コマーシャル製品全般、ワークステーションやデスクトップ、さまざまなシステムに関わるようになりました。エンジニアとして、自分の可能性を広げ続けることができる環境がそこにはありました。
この大和研究所は、IBM時代の研究所として発足し、1992年に初めてThinkPadをリリースしてから30年以上の歴史を持つ場所です。当時はたくさんのものづくりをする会社が日本にあり、ハードディスクやメモリなど、すべてのものづくりの拠点として日本が機能していました。パソコンを開発するには、まさにベストの場所だったのです。IBM の中でもアメリカなど各地でパソコン開発が行われていましたが、日本のものづくりの細やかさ、イノベーション、高い品質への配慮が認められ、大和研究所は開発拠点として選ばれ続けてきました。エキスパートがたくさんいて、高いスキルを持つ環境の中で、私も開発を続けることができたのです。
世界に貢献する、自律的な組織づくりとものづくりへの想い
私が日々強く感じているのは、メンバー一人ひとりの成長と、組織としての成熟です。技術の世界は常に進化し続けますが、私たちが大切にしているのは“カルチャー”そのもの。互いを尊重し、協力し合い、1+1を2以上にしていくチーム力です。最近では、トップダウンではなく、現場から自律的にアイデアが生まれ、ボトムアップで提案が形になっていく場面が増えました。戦略を共有すれば、組織が自然と動き出す――そんな姿に大きな成長を感じています。
事業部をまとめる上で心がけているのは、多様性を尊重し合える文化づくりです。技術力の高さはもちろん重要ですが、それだけでは良いものづくりはできません。異なる価値観やバックグラウンドを持つ仲間を尊重し、良い部分を取り入れながら最適解をつくっていく“人間力”が欠かせません。日本だけでなく、アメリカや中国など、異文化・異技術領域のメンバーと協働するグローバルな環境だからこそ、多様性を力に変える文化が重要なのです。
私たちの開発した製品は、いまや180以上の国と地域で使われ、世界シェアは30%を超えています。つまり、世界の3人に1人が私たちの製品を使って仕事をしているということ。世界のビジネスの生産性を支え、価値を届けているという誇りがあります。さらに近年はESGの観点から、環境負荷に配慮した製品開発にも力を入れています。自分たちのアイデアが、企業だけでなく“地球全体”に貢献できる――そんな実感を持てるのも、この仕事の大きな魅力です。
海外出張も多く、世界中の空港やオフィスで、自分が開発に携わった製品を使って働く人々を目にする瞬間があります。そのたびに、「この仕事をしていて良かった」と心から思えるのです。
AI時代のものづくりで、世界に貢献する未来へ
いま私たちは、インターネット以来とも言われる大変革期の真っただ中にいます。AIという強力な技術が急速に広がり、社会のあり方そのものを変えようとしています。この歴史的な転換点において、私たちが挑戦したいのは、AI PCをはじめとするAIを支えるコンピューティング技術を通じて、人類の進化に貢献していくことです。
ただし、AI技術をお客様に届ける前に、まずは私たち自身がAIを活用し、開発プロセスの最適化や効率化、生産性向上を実現していく必要があります。開発の中には、必ずしもエンジニアが時間を割くべきでない作業も存在します。そうした領域にAIを積極的に取り入れることで、エンジニアはより創造的でイノベーティブな領域に集中できるようになります。面白いアイデアを形にし、未来の製品を企画する時間を増やすことで、イノベーションを加速させたいと考えています。
ThinkPadをはじめとする私たちの製品は、これまでも「生産性向上を通じてお客様の成功に貢献する」という哲学を掲げてきました。AI時代が到来した今、この哲学はさらに重要性を増しています。生産性を高めることで、より良い世界をつくり、ビジネスを発展させ、生活を豊かにしていく。このフィロソフィーを軸に、私たちはこれからも製品開発を続けていきます。
最近特に感じるのは、お客様との関係性の変化です。以前は「ここを改善してほしい」という要望をいただき、それに応える形で製品を進化させてきました。しかし今では、「私たちは何をすべきでしょうか」と相談を受けることが増えています。これは、私たちがテクノロジーカンパニーとしてリーダーシップを求められる存在へと変化している証だと感じています。「Smarter Technology for All」というスローガンのもと、技術の力でお客様に新しい道を示せるチームでありたいと思っています。
理想の組織とは、メンバー全員がやりたいことに挑戦でき、やりがいを持って働ける環境です。人生の多くの時間を費やす仕事が、楽しく、誇りを持てるものであれば、これほど幸せなことはありません。やりたいこと・できること・会社が求めることが重なる場所に自分が立てたとき、人は最大の力を発揮できます。その“重なる場所”をつくることが、リーダーとしての私の役割だと考えています。
だからこそ、私たちが迎えたいのは「やりたいことがある人」です。情熱を持って挑戦できる人は、必ず大きな成果を生み出します。ものづくりを通じて世界に貢献したいという想いを持つ方と、AI時代の新しいものづくりに挑戦していきたい。私たちと一緒に、未来をつくる仕事に踏み出してみませんか。
