現場の声から紡がれた、イニシアティブと成長投資──新中計の輪郭
2025年度の1年間、システム部門における次期中計策定プロジェクトが立ち上がりました。
プロジェクトの統括リーダーを務めたデータ・情報システム本部付部長のHiroseは、今回の計画の成り立ちを振り返ります。
Hirose:
中計の内容に関して、役員から「こういうテーマやコンセプトでやること」という指示があったわけではありません。プロジェクトチーム発足間もないタイミングで、現場から集められた23名のメンバーが一堂に会し、私たち日本総研がどういう会社でありたいのか、10年後にどうなっていたいかについて、広い視野で話し合いました。
そして、その姿を実現するためには次の3年間で何を行うべきなのかを真剣に議論し、必要だと思われるキーワードをピックアップして出来上がったのが今回の中計です。
同じく、チームのサブリーダーとして現場の視点を計画に注ぎ込んできたグローバル市場システム本部付部長を務めるHorikawaも言葉を重ねます。
Horikawa:
私が所属するグローバル市場システム本部の現場目線で見ても、今回の計画には強い思いが込められています。
今後、海外のIT専門家と接していく中で、私たちも管理するだけで中身を分かっていないと対等に渡り合えません。その土台となる開発力やシステムのことをしっかり知るというのが根本になってくると思っており、そこを全社としてやっていくという方針は私も大変共感しています。
役職にとらわれない現場のメンバーの知恵を、ボトムアップで結集させたのが最大の特徴である今回の中計。議論の中で浮き彫りになった大きなテーマについて挙げます。
Hirose:
一つめは「私たち自身でシステムの主導権を握っていく」こと。二つめは、システムを担う会社だからこその「生成AIのフル活用」。そして、三つめは「部門間のシナジー効果による新たなビジネスの創出」です。
これまではITソリューション、シンクタンク、コンサルティングの各部門がそれぞれ独自に動いており、シナジーを生み出しきれていないという反省がありました。
また、自社に対する投資が十分にできてこなかったことも課題でした。当社の最大の価値は「人材」に他なりません。
人を育て、環境を整えることにしっかりと資金を投じていかなければ会社として先細りになってしまうという強い危機感から、しっかりと成長投資を行うという覚悟を表明できたのもこれまでの中計と大きく異なるポイントです。
Horikawa:
大きな方向性はHiroseさんがおっしゃった通りです。システムを作るだけでなく、変革を現場からリードしていこうという強い意志が、今回の中計には込められています。
現場に即したリアルなテーマを、数ある施策の中にしっかりと位置づけられたことが非常に大きな意味を持っていると考えています。
生成AIの衝撃と直面した試練──激動の1年間がもたらした必然の変革
策定期間は丸1年。
AI到来時代の激しい情報変化と直面した大きな試練があったとHorikawaは語ります。
Horikawa:
1年をかけて中計を作るという計画でしたが、当初はどういう関わり方になるのか想像がついていませんでした。
例えば、スタート段階では、AIが日々の業務でどこまで実用的に使えるものなのか、そもそも本当に使えるのか多くの人が半信半疑だったと思っており、AIが戦略の中心になるとは当時のメンバーの誰も想像していなかったはずです。
しかし、そこからのスピードがとにかく早かった。2カ月が経ち、半年が経つ頃には、生成AIを前提とした戦略を組まなければ時代に置いていかれるという認識に変わっていました。
この変化の流れを捉え、本当にこの技術が私たちの武器になるのかを見極めながら計画に織り込んでいく作業は大変でしたが、本当に刺激的でおもしろかったですね。
Hiroseも、自身がデータサイエンスやAIを活用する組織のマネジメントを担う立場にいたからこそ、生成AIのもたらす影響の大きさを強く感じたと言います。
Hirose:
前中計を策定していた2022年度は、生成AIが登場するギリギリ直前のタイミングでした。つまり、今回は生成AIの台頭後、初めて作る中計ということになりました。
私たちはシステム開発を担っている会社です。最先端のIT技術を、自分たちこそ積極的に活用していくべきだという強い思いがありました。さらに大きな外的要因として、私たちの兄弟会社である三井住友銀行(以下、SMBC)も同じタイミングで中計を策定していたのですが、その中計でも、AIやシステムという領域に過去最大のスポットライトが当てられていたのです。
これまで銀行の堅牢な屋台骨を支える「黒衣(くろこ)」のような存在として捉えられがちだった金融グループにおけるシステム部門。しかし、時代は変わり、システムは単なる経営基盤ではなく、経営戦略そのものへと変貌を遂げました。
Hirose:
SMBCグループにおける経営戦略の主役として、私たち日本総研が表舞台に立つ。そんなドラスティックな変化を肌で感じる日々でした。これはとてつもないチャンスであると同時に、それだけグループからの期待が高まっている中で100%応えられるだけの中計を作らなければいけないというプレッシャーはありました。
Horikawa:
策定期間中は、システム障害への対応の重要性が強く認識される場面もあり、システムに絶対の安定が求められる中で、レジリエンスにどう対応していくか。AIの急速な進化と、足元の障害対応という、二つの大きな波を同時にコントロールしながら進めた1年でした。
23人の多様性が生んだ一体感。ステークホルダーと共有する日本総研の強み
中計の策定に関わった23名は役職や年齢に関係なく、ほぼ全てのシステム本部から1名以上が選出されるという多様なメンバー構成。それゆえに意見の集約には難しさもあったと2人は振り返ります。
Horikawa:
一口にSMBCグループのITを担うと言っても、本部ごとに見ている世界は異なり、文化や重視する点が違います。ミスが絶対に許されない現場もあれば、スピードを重視する現場もある。
PTメンバー23人が自分の現場の論理を主張するだけではなく、会社全体をどうしていくかという大局的な視点で発言しなければならない中、メンバー全員が前向きな意見を出し合いました。
Hiroseは、PTメンバーや役員など社内のステークホルダーとの対話を通じて自信と一体感を深めていくとともに、あらためて日本総研という会社の強みと個性を認識したと言います。
Hirose:
中計の策定経験者がほぼいない中で、自分たちのやっていることが正しいのか常に不安はありました。だからこそ頻繁に役員や本部長にヒアリングを行ったのですが、提案が覆されることなく「いいね」と受け入れてもらえました。
ネガティブな意見はほとんど出ず、みんなで良い中計を作ろうという一体感や高揚感を感じられました。
議論の末に導き出した、日本総研としてのアイデンティティやこだわりについて、二人は誇りを持って語ります。
Horikawa:
私たちは、グループ会社の一員として本当に必要なことを事業会社に提言できる立場にあります。それこそが日本総研の強みであり、グループからの最大の期待値だと思っています。
Hirose:
私は成長投資、特に開発環境のモダン化にこだわりました。現場を見ていて、ツールや開発手段がExcelベースなど改善の余地はたくさんあります。今回の中計でそこを抜本的に変える意思決定がなされ、予算も確保できたため、働く環境が大きく変わっていくことは自信を持って打ち出せるポイントです。
国内トップから世界で戦える存在へ──手札を活かし、歩み出す10年の未来
新しい中期経営計画がスタートして約1カ月。すでに中計の言葉が具体的な「形」となって動き出し始めています。
Hirose:
新しい環境に予算を使っていく動きがすでに始まっています。社内から「こんなツールを使いたい」「この環境を構築したい」という熱いリクエストがすごい勢いで集まっていることに確かな手応えを感じています。それだけ会社の環境が変わっていくということであり、一つ一つ実現していくことにワクワクしています。
一方で、計画を組織の隅々まで「浸透させる」という、足元の課題についても二人はリーダーとしての責任を見据えています。
Horikawa:
ライブ配信での社員説明会には、多くの社員が参加しました。私の部署でも、若いメンバーが中計の行動指針に基づいた行動を始めるなどの変化がありました。
ただ、3年間の長い期間で中計が忘れられてはいけないので、今度は私たちが現場の中心となって推進していく責任があると思っています。
Hirose:中計策定プロジェクトチームの役割は発表したら終わりではなく、大事なのはこれからです。中計の資料をポータルに置いて「あとは読んでおいてください」では、誰も自分事化してくれません。私たちはこの3年間、計画の先導者として社内で立ち回り、浸透をリードし続ける責任があります。そして、私たちが中計の議論の中で見据えた本当のゴールは、3年ではなくさらにその先、10年後の未来にあります。
日本総研が目指す10年後の姿。
それは、国内の優れたシステム会社という狭い枠に収まるものではなく、目線は世界へと向いています。
Hirose:
SMBCも、国内メガバンクでトップになるという観点ではなく、グローバルの銀行と比肩するような金融グループになっていくことを中計で打ち出しています。当然、グループをシステムで支える私たちも、世界に対抗できるシステム会社に向けて歩みを進めていかなければなりません。
幸いにも、私の担当する生成AIを含めた最先端のAI技術をグループ全体で活用推進していく専門組織が、このタイミングに「部」へと昇格しました。
会社からの期待の表れでもあるので、AIを活かしてグループと当社の発展に貢献することが、今の私の使命だと思っています。大変な場面も多いですが、人間関係に恵まれ、刺激的な日々を送れていることが私にとってのモチベーションの源泉です。
Horikawa:
中計を策定したからといって一足飛びには進まない話です。現場で地道に、その目的や方向性を伝えながら信頼を少しずつ得ていくというのが大切だと思います。
私は、当社でロールモデルとなるような多くの方に出会ってきました。私自身も管理職となった今、メンバーの話を聞いたり、それぞれの挑戦をサポートしたりするなどして部を牽引しつつ、私自身もグローバルに活躍できる人材になっていきたいです。
- 記載内容は2026年5月時点のものです
