「現地を訪れ、経験する機会を提供して日本と世界をつなぎたい」と航空業界へ
学生時代、私は国際社会で活躍できる人になりたいという強い想いから、二つの大きな挑戦をしました。一つは台湾での海外インターンシップ、もう一つは大学の国際寮での留学生サポートです。
インターンシップでは、台湾の5つ星ホテルのエグゼクティブラウンジで半年間バトラーを務めました。日本語、中国語、英語の3言語を駆使して、世界各国の企業の重役たちの台湾滞在をサポートしたことで、 母国語以外の言語で働くとはどういうことなのか、自分は海外でもやっていけるのかを試す機会になりました。そして、幼少期から航空業界を目指していた私にとって、学生のうちに航空以外の会社で働いて別の業界を知り、視野を広げることも大きな目的でした。
大学の国際寮では、15カ国以上から来日した総勢約80名の留学生と約1年間寝食を共にしながら、日常生活から精神面までのすべてをサポートしました。特に印象に残っているのは、日本語がわからず部屋にこもりがちだった留学生との関わりです。私は、食事時間を交流の時間に変えることを思いつき、一緒にごはんを食べるようにしました。そして、会話の中から料理や映画が好きだとわかり、少人数で料理教室や映画鑑賞会を開催したのです。次第に、その留学生が笑顔で友達と話しながら寮に帰ってくる姿を見かけるようになりました。
文化や言語が違う人たちと仕事や生活をすれば、時には些細なすれ違いからミスが起きることもありました。「もっと相手に伝わる言い回しにすれば良かった」と、自分を責めることもありました。しかし、台湾での上司や国際寮の留学生たちから、間違いを恐れず、自分の意見を言葉にすることの大切さ、人間は必ずミスをするのだから、大切なのはミスをしてしまった後の行動だということを学びました。
また、私は幼少期、メディアの影響から中国に偏見を持っていました。しかし、小学生のときに実際に中国へ行く機会に恵まれ、メディアで発信されている情報は一面に過ぎないことを知りました。現地に行かなければわからなかった、人々の優しさや奥深い文化など素敵な部分に気づいたのです。この経験から、偏見をなくし平和な世の中をつくるには、身近な情報のみで判断せず、個々人が実際に自分で経験することが大切だと学びました。
こうした経験から、私は「実際に現地を訪れ、経験する機会を人々に提供する」「世界と日本をつなぐ」仕事に就きたい、という想いで就職活動に臨みました。そして、飛行機は時間や距離を気にすることなく海を越えて日本と海外をつなぐものです。空のプロフェッショナルとして、仲間とともに飛行機を安全に飛ばす仕事がしたいと考え、SJOに入社を決めました。
安全への誓いを胸に、入社1年目から空港の現場責任者を務める
入社後の研修では、会社の概要や航空輸送に関する基礎知識を学びながら、実際に空港や飛行機の見学もしました。特に印象に残っているのは、空港で同期とともに出発する飛行機をお見送りした時のことです。目の前で飛行機が動き出す迫力に感動しながらも、これから自分の仕事の先には仲間とお客さまの命があるのだと身が引き締まりました。
JALグループの一員として、御巣鷹山慰霊登山にも参加しました。多くの航空事故では少しの気の緩みが多くの未来を奪うことになるということが言われており、安全運航に不安を感じる時は一度立ち止まる勇気を持つこと、過去から学んだ教訓を活かし、航空の安全を守ることを心の中で誓いました。
研修を経て、私は成田空港で現場責任者を務めることになりました。現場から本社に状況を報告しながら、さまざまな対応をする役割です。具体的には、飛行機の出発や到着に関する現状把握、遅延・欠航などフライトイレギュラーや入国拒否者の対応、預け荷物の取り間違えや危険物所持などお客さまに関するトラブルへの対処などです。新卒社員の私が、「現場責任者です」と堂々と名乗ってお客さまの前に立っていいのか、最初は戸惑いや不安がありました。しかし現在は、エアライン一年生の私にとって、これはとても貴重な機会だと感じています。空港でさまざまな業務を経験することで、お客さまや一緒に働く仲間たちがどんな想いを持っているのか、飛行機を安全かつ時間通りに飛ばすための規定や流れなど、ありとあらゆることを日々学んでいます。
現場責任者として、とても印象的な出来事があります。ある日の国際線において、機内への搭乗が終わったころ、客室乗務員から地上係員へ「搭乗を辞退するお客さまがいらっしゃる」という連絡を受けました。通常そうした連絡は、対象のお客さまのお名前とお座席情報の共有に留まることが多いのですが、その時は預け荷物の有無や特徴まで客室乗務員が把握し、地上に共有してくれました。おかげで、出国の取り止め手続きと預け荷物の捜索を並行して進められ、定刻で飛行機を出発させることができました。個々の仕事を極めるだけでなく、自身の仕事の先をも思い描きながら次の相手に最善を尽くして引き継ぐ──そんな職種や部署を超えたチームプレーの大切さを、身をもって学ぶことができました。
頼れる仲間たちとともに「何も起きない日」を作り上げるやりがい
空港の現場責任者の仕事は多岐に渡りますが、お客さま対応は特に十人十色で、マニュアルを作ることが難しい領域です。そのため、毎回対応するたびに何が正しいのかと仲間と悩みながら、最善の解決策を見出しています。
社内での私の役割は、現場を担当する委託先と本社の橋渡しです。フライトイレギュラーが起きた際、運航の方針を決める責任者は本社にいるため、現場の状況を直接把握できません。だからこそ、現場で委託先とともにお客さまの対応をしながら、同時に本社の責任者に情報を共有し、問題が解決するまで現場の責任者として向き合い続けています。
最もやりがいを感じるのは、仲間と「何も起きない日」を作り上げることです。以前欠航が連日続いた経験から、飛行機が安全に飛ぶことがどれだけ貴重なことかを身をもって実感しました。欠航に至る理由はすべて「命を守るため」という苦渋の決断ですが、それをお客さまに納得いただくのが難しい時もあります。天候による欠航はどうすることもできませんが、会社事由での欠航は日ごろから一人一人の行いで改善できることもあるため、常に仲間と力を合わせて妥協することなく最善を尽くしています。何事もなく飛行機を見送り、「今日もお疲れさまでした」と言い合う瞬間に安堵とやりがいを感じます。一見平凡に見えて当たり前に感じることほど、意外と貴重で大切なものなのです。
一方で、時にはお客さまから厳しいご意見をいただくこともあります。問題を解決し、事務所に戻って仲間たちの顔を見た瞬間、張り詰めていた糸が切れて大粒の涙が止まらないことも多々ありました。そんな時、先輩に「泣き虫な自分に嫌気がさす」と相談すると、「大人になっても涙が出るのはすごいことだよ。涙が出るということは、自分にも周りにも素直な証拠。たくさん泣いて心を浄化させて」と励ましてくれました。優しい先輩方の支えがあるからこそ、つらいことにも向き合って一緒に乗り越えていくことができます。悩みは一人で抱えず周りに相談し、問題を客観的に見て、「自分には何ができて何ができないのか」を考える力を養っていこうと思います。
学生時代は、決められたことにただ従うだけでしたが、社会では言葉の定義やその物事の背景、意義をしっかり考えて自分の言葉で説明する力が重要です。例えば、当社では機内手荷物は免税品も含め一人7kg以内としています。これは、収納棚や足元の収容可能重量や大きさに制限があるため、そしてすべてのお客さまが持ち込みたいお荷物を機内へ平等に持ち込めるようにするためです。しかし、免税店でたくさんお買い物をしたお客さまの中には、なかなかこの規定にご納得いただけないことがあります。その際に、なぜ価格を抑えたチケットを提供できているのかという格安航空会社のビジネスモデルまで説明することもあります。説明するには、まず自分の知識を更新し続け、どのように話せば相手に伝わるのか考えなければなりません。こうした対応力は、入社当初よりも成長したと感じます。
また、入社当初と比べ、当たり前が当たり前ではないということを忘れてはいけないと考えるようになりました。言葉や文化が違えば、同じ事象の見方や考え方も異なります。だからこそ、お互いが同じ舞台に立てているのか、話しながら確認してお互いの折衷案を見つけ出すことが大切なのだとより深く考えるようになりました。
めざすは現場目線を忘れず、そこで働く社員に寄り添える経営者
今後の短期的な目標は、旅客便及び貨物便の全工程を管理するオペレーション業務に就くことです。これまでの経験で、旅客便の流れは目を閉じても頭に浮かぶほどになりましたが、貨物便に関してはまだまだ知識がゼロに近い状態です。旅客便の現場を支えながら、貨物便の運用業務も深く学んでいきたいと考えています。
中長期的には、総合職の社員として航空安全とは何か、どのように作り出していくのかを日々の業務や他の航空会社との交流から追及していきたいです。地上の現場だけでなく、上空では何が起きているのか、会社を持続可能にするために経営状態がどうなっているのか、改善が必要なところはどこなのか──さまざまな部署を周りながら学びを深めていきたいと思います。そしてゆくゆくは、現場の人たちも本社の人たちもワクワクする会社、全員が楽しく働ける会社を実現する経営者になりたいと考えています。
経営者を目指す上で、今の現場での経験は必ず活きると信じています。経営者は数字をもとに議論して方針や企画を考えますが、それだけでは現場とのギャップが生まれてしまう可能性があります。現場目線を忘れず、そこで働く人たちに寄り添った経営者になることが私の目標です。
JALグループを志望する皆さまには、入社前にぜひSJOの飛行機に乗っていただきたいです。ご搭乗前からご搭乗後までどのようなことを感じたのか、スタッフの案内はどうだったのか、飛行機を飛ばすためにはどんな人たちがどのような動きをしているのかを観察し、ノートに記録してほしいと思います。この気づきが、お客さま目線として入社後に大いに役立ち、自分の気持ちや考えがどのように変化しているのかを比べる指標にもなります。
私は、入社前の期待や想いは人それぞれあっていいと思います。ただ一つおすすめしたいのは、入社するまでに自分と真摯に向き合い、今の気持ちや将来どのようなことをやりたいのかなど、心に浮かんだことをノートに記すことです。人は環境が変われば考えも想いも変わります。時に道に迷うこともあるかもしれません。その時に初心を思い出せるお守りとして、ノートが役立ちます。
社会では、自分の人生を導き物語を作るプロデューサーは自分自身です。初心を大切に、入社後も時折自分を見つめ直す時間を作り、お気に入りの紙とペンで心のノートを作ってください。自身の目標に近づくために、周りの人とではなく過去の自分と今の自分の成長を比べ、次のステップは何かを見極めてほしいです。これを継続することで少しずつ成長し、その先で素晴らしい景色が見えるかもしれません。

