伝統的な雰囲気を持つ部署で、業務フロー・働き方改革を推進
自社の所有する鉱山から石炭を産出し、日本およびアジアのお客様に届けている出光興産。齋藤が所属する石炭事業部では、石炭鉱山からお客様へとサプライチェーンをつないでいます。
齋藤 「私は石炭の物流プロセスにおいて、調達の仕事をしています。私の属する課はサプライヤーとして石炭を購入する役割を担っており、オーストラリアや中国、インドネシア、ロシアのサプライヤーと交渉し買い付けを行なっています。海外に現地法人を持っているため、彼らに方針を伝えサプライヤーと交渉してもらうこともあります」
齋藤は2001年に出光へ入社し、当初は産業用燃料および石炭の販売に携わっていました。その後、石炭の調達の仕事にフィールドを移しました。インドネシアのジャカルタで、5年ほど勤務をした経験もあります。
石炭事業部の大きな特徴は、伝統的な雰囲気があることだと齋藤は考えています。
齋藤 「石炭ビジネスに長く携わってきた部員が多いことが影響してか、過去からの良い伝統が残っていると感じますね。
社内では、部下指導や後輩育成などのアプローチに伝統を感じます。会社が過去から積み重ねてきたことが、きちんと引き継がれていると考えています」
その石炭事業部で、全社員が取り組む業務フロー・働き方改革である「DTK(だったらこうしよう)プロジェクト」への取り組みが始まりました。
石炭事業部は当時、出光出身者のみで構成されている部署でしたので、経営統合を経てもこれまでのやり方を変える必要性に迫られたわけではなく、変えることにも抵抗がありました。なぜ変えなければいけないのか、その意義を浸透させることにも苦労したと齋藤は振り返ります。
齋藤 「例えば今までは、社内外問わず、仕事をする基本は『対面』でした。オンラインでの会議や商談の機会はほとんどありませんでした。
私の担当する調達業務においても、サプライヤーの顔を見て話をし、関係を保つことは非常に大事とされていて、極力出向いて対面で話をしながらビジネスを進めるのが基本的なスタイルでした。
しかし、こうした伝統的なスタイルも新型コロナウイルス感染症の流行によって変えざるを得なかったのです。ただし今後も100%オンラインに移行するわけではないので、バランスが求められていくのかなと思いますね」
新型コロナの影響で生まれた、コミュニケーションの新しい形
石炭事業部をはじめとする、出光または昭和シェルのみで構成される部署では、全社的なスタートから若干遅れ、2019年10月からDTK活動を始めました。
統合新社の発展のために業務フロー・働き方を改革するという会社の想いはわかるものの、石炭事業部にどのように落とし込んでいけば良いか。そう考えながら齋藤をはじめとするDTKメンバーがまず着手したのは、新しい働き方に関するコミュニケーションのルールを、部員の意見を吸い上げながら作っていくことでした。
齋藤 「プランを作る過程で、DTK推進室の協力も得ながら部員にアンケートを実施しました。コロナの影響で出社できない状況になって働き方を大きく変えざるを得なかったこともあり、部員が何に困っているか把握し、どのようなことをすれば働き方を変えつつ効率を上げられるかを模索しました。
具体的には、TeamsやOutlookメールなどのコミュニケーションツールについてのアンケートを実施しました。どんなときにどのコミュニケーションツールをどう使っていくかが曖昧になっていたという課題もあったので、アンケートを実施し意見を募りました」
アンケートの結果、社内会議やちょっとした相談をするタイミングでは今後もTeamsを使うべきだという意見が出ました。一方、社外とのコミュニケーションについては、担当層と役職層の意見が異なる点もありました。
齋藤 「担当層はオンライン環境でも業務遂行に問題ないとしていましたが、役職層からはやはりオンライン環境だけでは不十分なので、オンラインと対面を絡めてやっていかないと難しいのではないかという意見が出ました。
これは、今ある足元の業務と未来への種まきのような仕事の両輪をしっかり回していかなければいけないというメッセージが出てきた結果だと思います」
そして石炭事業部で作成したコミュニケーションツールのガイドラインでは、社外とのコミュニケーションはOutlook、社内ではTeamsを活用していくことにしました。対面のコミュニケーションは、今後も感染対策をしたうえで続けていくという方針を取っています。
齋藤 「社内についても、すべてオンラインに移行するのが本当に良いことなのかという部分もあります。部下指導や後輩育成のため、感染対策をしたうえで週に何度かは対面で仕事をする機会を持つようにしています。
ガイドラインに沿った運用を進めていく中で、ルールがある程度部内で認識されてきたような状況です。まだ手探り感はありますが、コミュニケーションツールを使い分けながら試行錯誤で取り組んでいる状況ですね」
オンライン導入で見えてきた課題と、DTK活動による成果
オンラインでもコミュニケーションが取れるのは、今まで培ってきた関係性や経験、財産があってこそ。今後新しい人脈を構築したり、新たに何かをはじめようとしたりするときに、やはりオンラインのみでは限界がある。コロナ禍が長期化する中で、齋藤はそのように感じています。
齋藤 「既存の関係のある方々とも、複雑な交渉等が発生することはあります。そういった場面においては、対面で顔や雰囲気を見ながら交渉することの重要性や必要性が改めて浮き彫りになったと感じます。
誰がどんな表情で聞いているのかを確認しながら会話することで、交渉がうまくいくことは結構多いと思います。オンライン上では、そこにも限界があるのではと感じます」
これらを踏まえ、対面できないときにどうやって物事を進めていくのか、もっと整理して考えなければいけないと思っています。「Withコロナ」の中でどのようなコミュニケーション形態がベストなのか、探っていくことが大切です。
DTK活動の成果としては、コミュニケーションツールのガイドラインが浸透しつつあることに加え、重複業務削減の観点からも二つの取り組みを行ないました。
齋藤 「ひとつは、情報を集約し蓄積する手段をOutlookからTeamsに変えたことです。今まで石炭の需給・市況情報は、Outlookを通じて共有していました。メールを受信した人が個別情報を分類、整理する必要があり、受け手のことを考えた発信になっていませんでした。
そこでTeamsを活用し、情報を整理し投稿する仕組みに変えました。情報がチャネル別に整理されており、誰でも必要なときに情報を見ることができるので、この取り組みはうまく回っていると思います。
もうひとつは、社内の石炭関連資料をクラウドで共有したことです。これまで石炭に関する資料は個人の財産になっていて、関係者に共有されていませんでした。蓄積されてきた情報が管理されていないことで重複業務が発生していたのです。
そこで、各担当者の協力を得て各人の情報を持ち寄り、それを最新のものに更新、整理して皆が閲覧できるBoxのクラウドストレージフォルダに格納しました。誰もがいつでも必要なデータにたどり着けるようにしていて、今はほぼ完成形に近い状態まで進んでいます。新しい働き方に移行するプロセスで、このような取り組みが必要不可欠だと感じています」
強く願うのは、みんなが笑顔で働ける会社になること
業務を見直し改善していくプロセスにみんなで取り組むことで、成果もみんなで感じることができるのは、DTK活動の醍醐味のひとつだと齋藤は考えています。
齋藤 「私は、エネルギー供給を通じた社会貢献と、そこに向かう集団としての一体感に惹かれ、出光に入社しました。
入社して19年ほど経ちますが、みんながひとつの方向に向かって活動する機会はそう多くありません。何とも言えない清々しさや気持ちよさをみんなと分かち合いながら活動を推進していけるDTK活動は、非常に良いものだと感じています」
石炭事業部で今後取り組むべき課題は、重複業務削減の観点から取り組んできた活動をもう一段階推進し、定着させていくことです。さらに、削減した時間をプラスアルファの何かに変えていくことも重要だと齋藤は考えています。
齋藤 「DTK活動を進める際は、チームを作り少しずつ素早く成果を出しながら改善を重ねていくというアジャイルな進め方も取り入れました。Teamsを活用し、自発的なチームを作りながら業務を行うことにも挑戦しています。
世界的な潮流から石炭の置かれている環境は厳しく、我々も変わっていかなければ取り残されてしまうという懸念もあり、チームを作りながら何かプラスアルファの業務を通じて部や会社に貢献できないか手探りながらもアクションを始めているところです」
2021年現在は、課という単位で成果を出す組織構成となっています。アジャイルな考え方では、各課のメンバーがプロジェクトごとに横断的に集まって成果を出します。こういった形の連携は、今までの出光には多くありませんでした。
齋藤 「アジャイルな考え方を取り入れるためには、これまでのやり方を一部否定しながら進めなければならないこともあり、簡単にはいきません。プロジェクトごとにチームを作ることは、今まさに各課から人が集まって構成されているDTK活動と同じ発想です。
重複業務削減で出てきた時間を使い、複数の部署が関わるプロジェクトが自発的に立ち上がり、何か改革や変革に対する活動ができていくという流れになっていけば良いなと思います」
そして齋藤は、出光で働く人に笑顔でいてほしいという想いを強く持ち、今後もそのために活動していきたいと考えています。
齋藤 「事業環境は厳しいですし、個人の想いにそぐわないようなことも当然起こり得ると思います。それでも社員が笑って仕事ができる状態を作るために、組織のすべての人たちがどのようにアプローチしていけるかが肝であると考えています。
統合新社の理念は両社の良い部分が融合して作り上げられると思いますが、新たな理念のもとでも社員みんなが笑顔でいられる会社になれば良いですね」
DTK活動の推進が難しい伝統を重んじる部署でも、周囲と協力しながら少しずつ業務改善を進めてきた齋藤。
これからの石炭事業に関する課題を見つめながら、今何をすべきか冷静に考え、みんなが笑顔で働ける会社を作るために動き続けます。
