横串的な活動で、出光の知的財産活動を支える

田辺が所属する知的財産部は、出光興産の知的財産活動を支える役割を担っています。知的財産といっても、ひとつの商品に対して特許権・著作権・商標権などいろいろな角度の法律があるため、ビジネスシーンに合わせて活動しています。

知的財産部は「経営・事業の一機能として、戦略的な知財活動を通じ、事業を成功させる」ことをミッションにしています。2020年は「共創」をテーマに、事業・開発・知財の共創推進をし、共創に資する人材の育成・組織力の強化を目指して行動してきました。

知的財産部のなかでも、田辺は事業や開発に密着して知財活動を推進する事業支援機能を担うチームに所属し、特に潤滑油事業部門全般を担当しています。

田辺 「事業部や研究所に寄り添った業務遂行を心がけ、事業や研究の方針を確認しながら、商品開発戦略に適した知財対応をしていくのが主な業務です。

たとえば、発明が出てきたらそれを特許にすべきかから考えて、その事業での活用シーンをイメージしながら、出願して権利を取得する手続きを取ります。また、事業部や研究所に対し、事業状況だけではなく、知財環境も踏まえて戦略を練ってもらえるような働きかけもしています。

また、競合他社の特許権の脅威から事業を守ることも重要な仕事です。私たちは法律家の側面も持っているので、他社の特許権と当社の開発品や製品を比較したうえで、侵害の有無や無害化の可能性などを判断し、対応策を提言するなどしています」

出光は石油だけでなく、電子材料などの高機能材を含む多分野の製品を扱っているのが特徴です。そのため、知的財産部も多様な事業に合わせて活動する必要があります。そこで、知的財産部では年度はじめに各事業部との知財戦略会議を行い、事業部や関係部室のトップ・代表者と、活動の計画を議論し、合意形成したうえで年間の活動を行っています。

田辺 「また、知的財産部のもうひとつの特徴は活動体制にあると思っています。組織は、機能ごとに課・グループというラインで分かれていますが、対する各事業毎に「ユニット」という部内横断チームを形成し、所属に関係なく、その事業に必要な知財対応の観点からメンバーをアサインし、横串的な活動を行っています。

知的財産部は、キャリア採用社員が約4割、女性社員が約2割、新卒からシニア勤務まで幅広い年齢層の社員に加えて管理部門を支える派遣社員も多く在籍するなど、経歴や経験、立場の異なるメンバーで構成され当社の中でも多様性に富んだ職場です。 多様なメンバーが在籍することでさまざまな視点で課題を見つけ、横串的な活動に積極的に携わる事ができます」

さらに知的財産部では、職場を生き生きとした場所にしようという主旨でさまざまな取り組みをしています。エンゲージメントツールを導入するなど、他部室に先駆けて新しいことを実施してきました。そうした活動の下地があったからこそ、全社的な働き方改革にも前向きに取り組めたのです。

働きながら専門知識を学び、出光入社後は一貫して知的財産業務を担当する

田辺が出光へ入社したのは、2005年のこと。新卒で入社した食品業界の会社では、知的財産とは関係のない仕事をしていました。働きながら、自分が生涯やりがいを持てる仕事は何だろうと考えた結果、興味を持ったのが知的財産業務だったのです。

田辺 「もともと理系だったので研究に携わる仕事にも興味を持っていたのですが、自分の特性上、ひとつのことを突き詰めるよりも、さまざまな知識を組み合わせて専門性を高めていくほうがやりがいを感じられると考えました。

知的財産業務の仕事は、最新の技術も知ることができますしビジネスの世界にもタッチできるので、私にとっては非常に魅力的な世界でした」

田辺は新卒入社した会社を辞め、ベンチャー企業で働きながらも、知的財産についての勉強を重ね仕事を探していました。ただ、専門的な勉強をしたものの実務経験はなかったため、目指す職種で就職できるか不安もありました。出光へのチャレンジでは、未経験ながらそのやる気が認められ田辺は希望と期待を胸に入社を決めたのです。

出光へ入社してから契約社員として2年ほど働き、2007年11月に正社員となりました。入社以来ずっと知的財産の実務業務全般を担当するなかで、さまざまな学びの機会に恵まれたと田辺は振り返ります。

田辺 「知的財産部にはアメリカや中国で海外研修を受けられる制度があるのですが、2012年に北京研修の第1号生として選んでいただき、中国の現場で実務の勉強をさせて頂きました。その後日本に戻って知財管理を経験した後、本社で企画スタッフ業務などを経験したうえで、2019年からグループリーダーに就任しました。

もともと知識的な面に関する志向が合っていたこともありますが、出光の働き方そのものが自分にマッチしているとも感じます。出光という会社の懐の深さは、いろいろな企業を経験しているからこそ実感できているのだと思います」

煩わしい作業を変えていくことで、やるべきことに集中できる環境をつくる

田辺が知的財産部でプロジェクトを進める際に心がけているのは、課題意識のあるメンバーをアサインすることです。

田辺 「リーダーがプロジェクトを推進していく側面はもちろんありますが、若手であっても課題意識が高いメンバーを配置することで、プロジェクトが前に進んでいくと思います。

昔から横串的な活動をしている知的財産部であっても、最初からすべてうまくいくことばかりではありません。活動を推進しているメンバー以外の方をどう巻き込んでいくかは常に課題としてあります。熱量の高いメンバーを配置しつつ、どうやって周囲の方との温度差を埋めていくかを考えるのが大切です」

出光の全社員が取り組む働き方改革である「DTK(だったらこうしよう)プロジェクト」においても、田辺は部内の実務リーダーとして周囲を牽引してきました。メンバーの活動状況を月1回の会議でのみ確認するのではなく、日常的にコミュニケーションを取り、メンバーから意見を吸い上げながら進めるようにしたのです。

田辺 「DTKプロジェクトとしては、特に業務報告について取り組みました。報告の仕方や会議、情報共有のあり方を捉え直したのです。従来の会議は議論よりも進捗状況の共有という側面が強いものでした。しかし、役職者を交えた会議も含めすべて議論形式にし、共有を維持できる工夫をしつつ議論を中心とした仕組みに変えていったのです。

Teamsの導入により、効果的に仕事に取り組めるようになったと感じています。Teams上で共有専用チャネルや月報専用チャネルを作る事で、会議では議論に集中できるようにしたり、日々の活動に落とし込むことで直接のコミュニケーションをとる機会のない人の状況までひと目で分かるようにしたりと、工夫しながら進めています。

効率化だけを意識してしまうと余白がなくなってしまうので、我々に本当に必要なものは何なのかを考えつつ試しているところです」

業務報告などの見直しは、2020年4月から実施しています。田辺はこの効率化によって新たにできた時間を、DTK活動やその他の付加価値を生む活動に使っています。

また、知的財産部ではペーパーレス化やサテライト化、会議時間の短縮といったスマートワーク対応を早くから実施していたため、新型コロナウイルス感染症が流行しはじめたときも円滑な業務遂行が可能でした。

田辺 「知的財産部は他部室から依頼を受けてアウトプットする機会が多いのですが、これまでは書面で連絡、報告していたものを、すべてデジタルに切り替えました。DTK活動により、目を通し忘れる、片付けが手間になるといった紙の報告書にまつわる小さな煩わしさが払拭されたのではないかと思っています。

DTK活動の対象は定常業務が主です。面倒だと感じる小さな作業を取り払っていくことで、本当に目を向けるべきことにフォーカスできる環境をつくり、そしてそれが働きがいの向上につがっていくのではないかと感じています」

小さくわかりやすい成功を積み重ね、大きな改革につなげたい

今後もさらに生き生きとした職場にできるよう、田辺はDTK活動が一過性のもので終わらず、会社の風土として定着することを期待しています。

田辺 「これまでも、社内ではボトムアップでさまざまな改善活動が行われてきましたが、下から社内を変えていくためには持ち上げる労力がかなり必要だと感じていました。それが全社で取り組む動きになると、トップダウンというメッセージもあるため、周囲を巻き込んでいく力が強化されて活動しやすくなっていきます。

このような環境を整えていただけたことをありがたく思っていますし、今後もどんどん改善していきたいです。今回のDTK活動をきっかけに良い環境が整ってきていると思うので、若手メンバーには自分の手で改革を体感してもらいながら成長の機会にしてほしいです。

私も、若手がどんどん課題を見つけて提案できる環境をつくるため、知的財産部でいろいろな仕掛けをつくっていけたらと考えています」

働き方改革を進めるうえで田辺が意識していたのは、目に見えて効果が出るとわかっているものから手を付けることでした。それは、周囲を巻き込む際に「変わった」というプラスの実感を持ってもらうことが、前向きで協力的な姿勢を生むと考えているからです。

田辺 「目に見える形で残せるよう、なるべくTeamsに投稿して活動状況を見てもらうことも、改革による変化を感じやすくする取り組みです。

大きな変革をするためには、目に見えないところで動くより、小さくわかりやすい成功を積み重ねることが大事だと考えています。そうした地道な活動のなかで認知を広げ、全社で変革を起こしていくのが理想です。

変革にかかる負荷は決して小さなものではありませんが、その負荷があってもやる価値があったと思ってもらえるように、今後とも推進していきたいですね」

DTK活動がはじまる前から働き方改革に取り組んできた流れを、DTK活動という全社的な取り組みにしっかり組み入れ先頭に立って改革を進めている田辺。

新しい会社の風土を定着させるために、知的財産部でできることは何か。常にそう考えながら、今後も歩んでいきます。