物流の難しさや販売との違いを感じながら、業務の統合をアシスト

渡部は、流通業務部受注配送管理センターの統括課に所属しています。受注配送管理センターは石油製品のオーダーをお客様から受け付け、どのタンクローリーでどの基地から運ぶかを決める受注・配車業務を担っています。2019年6月には旧昭和シェルのメンバーも合流して、現在は旧2社の受注・配車業務を同じオフィスで日々行っています。

渡部 「受注配送管理センターはひとつになりましたが、旧出光系、旧昭和シェル系の仕事を配送一課と配送二課で別々に行なっているので、それらの業務統合を進めるために統括課が作られました。

両系列の業務プロセスの違いを明らかにしながらどのようにまとめていくかを検討し、受注・配車の側面から統合シナジー発揮を実現していくことが、統括課の主な仕事です」

渡部は出光興産に入社してから、流通業務一筋のキャリアを歩んできたのではありません。1993年に入社し、北海道や岐阜、東京で特約販売店担当をしていました。さらに、関係会社への出向も経験し、販売をメインとした経験を積んできました。販売に20年携わり、2013年に現在の流通業務部である当時の物流部に異動しました。 

渡部 「販売する燃料油は物流部門が運んでいましたが、特約販売店担当時代の私はあまり物流部門と業務上の接点はありませんでした。セルフSSの運営では販売促進や収益拡大に関することを行なっていましたが、ローリーが燃料油を運んでくるのは当たり前で特に気に留めることではないという感覚がありました」

流通業務部に配属され燃料油を届ける側になったとき、渡部はいつでも安全・安定的に燃料油を配送することの難しさを痛感しました。

渡部 「運送会社と販売部門との間に立って動くことが多いなかで、お互いの事情や背景を知らずに話し合うと、社員同士であっても時に対立が起きたりします。販売部門の方々もこちらと同様にお客様との間に立って話に臨んでいるのだから当然です。

そのような時に相手の事情を理解し、話し合うことができているのは大きいと思います。販売の経験がそのまま使える場面ばかりではありませんが、現場で日々お客様と接し、苦労してきた経験があって良かったと感じています」

販売時代は、支店のメンバー同士の繋がりが強く、公私にわたる一体感のような仲間意識がありました。しかし、初めて販売を離れて物流に来たとき、緊張した雰囲気の漂うとても堅い職場だという印象を抱いたと渡部は振り返ります。

渡部 「物流は影響範囲が大きく、特にミスが許されない世界で、いかに安全・安定を維持してマイナスに落とさないかを頑張る仕事です。一方、販売はプラスに向けて盛り上げていく活動も多い仕事だと思います。

例えばキャンペーンを行う場合、販売と物流には違いがあります。販売は実績の向上を目指しますが、物流はいかにトラブルなどのミスを起こさないようにするかの知恵を絞ります。そのため、販売と物流では力の入れどころが異なり、職場の空気にも影響していたのかも知れません」

異なる2社の目線を揃えるため、小集団活動を実施

受注配送管理センターには所内に3つの課があるだけでなく、業務を委託している協力会社があります。旧出光系と旧昭和シェル系の仕事を担っている協力会社がそれぞれにあり、総勢110名強のメンバーがひとつのフロアで仕事をしています。 

渡部はDTK(だったらこうしよう)活動の推進窓口という形で、受注配送管理センターを代表して110名分の推進役を担当し、統合業務を進めています。

当時の課題は、経営統合した2社の企業文化・企業風土を融和させることでしたが、燃料油の配送は毎日途切れる事なく行われているため、従来のやり方を踏襲してミスなく業務をこなしながら、それらに代わる新しいやり方を検討する必要があったのです。

渡部 「全社的なDTK活動がはじまる前から所内の業務改善活動はスタートしていました。2社の差異をどのように統合するのか、日常の業務と並行しながら改革に取り組めるように、より多くの人がそれぞれの得意分野で参加できる体制づくりを意識しました」

改善活動として行なったのが、テーマごとにチームを作り、メンバーをアサインして立ち上げる小集団活動でした。

渡部 「具体的には、組織やシステムの統合を検討する会、対外的な受注のルールを見直す会、配車業務の質を向上させる会、事故トラブル対応やBCP体制を検討する会などの業務に直結する検討会に加えて、職場のルールを考える会やレクリエーション実行委員会などの文化や風土に関するチームなど約10の小集団活動がスタートしました。

とくに配送効率に大きく影響するローリーの稼働や配送ロスの管理については、両社の指標が異なっていた点をあらため、同じ目標にむかって日々の配車業務に取り組めるように、ロス稼働検討会を立ち上げました。勉強会や多くの試行錯誤を経て、今では月例の検討会で同じ目線で両社の仕事を比較し、相互に改善提案を出し合えるようになりました。

また、トラブルやクレームにつながる受注や配車の作業ミスをいかになくしていくか、両社が知見を持ち寄って原因究明と再発防止を行うトラブル防止委員会も順調に活動しています。旧社それぞれが何をもってトラブルと認識するのか、というそもそもの判断基準すら違っていた当初と比べると格段に進歩したと思います」

それぞれのチームが日々の業務を継続しながら統合や改善に向けて動いていきました。渡部自身もいくつかのチームに参加しつつ、全体を見てマネジメントを行なっていきました。

一体となるため全員に共有した「DTK & Y」の精神

改革を進めるなかで特に印象深かったのは、受注ルールを変える仕事だったと渡部は振り返ります。お客様である特約販売店に前日何時までにオーダーしてもらうといった対外的なルールが旧社それぞれに存在したので、統一する必要がありました。本社や支店の意見を聞き、協力を得ながら統一ルールを作りました。

渡部 「たとえば締切時刻が前日10時と11時で異なっていたのを揃えました。締切を11時とすればご発注いただくお客様に喜んでいただけますが、一方、10時に前倒しすると配送調整等にあてる余力が生じて全体の業務をより円滑に進めることができます。

どちらが現状の体制に適しているか非常に悩みましたが、最終的には締め切り時刻を前倒しする新ルールを打ち出して、販売部門の協力のもと、お客様のご理解を得ることができました。まずは行動を起こすことで、大きく変化できたと思います」

お客様対応や内部の指標管理、ミスに対する考え方なども、それぞれの小集団が新しいルールを作ったことで納得性のある管理ができるようになりました。

受注配送管理センターでは、最初からDTKを強く意識していたわけではありません。独自に進めていた改善活動の途中から全社のDTK活動に相乗りする形となりましたが、その際に「DTK & Y」の精神をあらためて考えることによって、活動に弾みをつけることができました。

渡部 「改革をはじめた当初、我々は小集団活動で両社の違いをよく理解してより良いものを作ろうと言っていました。それで、お互いの足りないところを吸収し合おうとしていたのですが、そうするとどうしても、新しく始めることが増えてしまって、結果どんどん規模が大きくなってしまうのです。

そのような時に流通業務部長からDTK(だったらこうしよう)に『やめるもあり』の“Y”を加えた『DTK & Y』という言葉が出てきて、そもそも無ければどうなるのかと考えるようになりました。その結果、良いものを組み合わせて“作ろう”だけではなく、効果の薄いものは“やめよう”という選択肢が増えました」

「DTK & Y」を意識したことで、決断や行動がしやすくなったと渡部は感じています。

渡部 「お客様向けの問い合わせ窓口の時間を決めるときも、思いきって定休日を増やしたり、受付時間を30分短縮したりしました。また締め切り時刻の前倒しの決断の際も「&Y」の思想が背中を押してくれたと思います。

ご発注いただくお客様には、営業時間の短縮や締め切り時刻の前倒しでご負担をかけるのですが、その代わりに配送の順序や組み合わせの検討により多くの時間をかけられるようになりました。配送を更に効率化して、より多くのお客様にご不便のないようにお届けする事が、私たちが目指すべきお客様へのお返しであり、徐々にその手ごたえを感じています。

また、運送会社に翌日の仕事内容を早くお伝えすることができ、ローリー乗務員の方々の働き方の改善にも微力ながら貢献し、十分な休息を取っていただくことで現場作業の安全確保や自然災害発生時の対応力の強化にもつながるものと信じています」

DTK活動をさらに進めるため、自身や部署が解決すべき課題

これまでの渡部は、業務で自身の担当分野に没頭することが多く、チーム全体を見渡す仕事には積極的に取り組んできませんでした。そのためDTK活動では、みんなの意見を拾うのかある程度絞るのかの判断ができずに苦労した場面も多かったのです。

渡部 「私の性格上、自分自身で内容を理解して作業をこなせるようにならないと、先に進めない感覚があります。しかし、そういった職人的な入り込み方だけではチームを推進できないので、そこは反省しています。

自分自身が詳しいことはアドバイスをする従来のスタンスと、高い専門性はなくとも全体を俯瞰的に見渡せるバランスを身につけたいと思います。今回のDTK活動では、そういう気づきの機会を与えてもらったことに、感謝しています」

そして、今後DTK活動をもう一段階進めるため、渡部は自社だけでなく協力会社を含めたチームでの推進をより意識しています。

渡部 「流通業務部では受注配送管理センター以外にも、タンクローリーの運送会社や船舶関係、基地関係の会社など、いろいろな協力会社さんと一緒に仕事をしています。そのなかで改善活動が出光の社員だけのものに留まらず、協力会社の皆さんとも同じ目線で取り組めるように裾野が広がっていくといいなと思います。

そのためには、やはりお互いを知ることが大事です。多くの場合、我々がお願いする側で、協力会社の方にお力添えいただく形になるので、全体の改善になるだろうと思って伝えたことが相手側の負担になってしまうのは避けなければなりません。それぞれの状況の違いをわかったうえで、お互いがプラスになるための議論ができたらいいなと思います」 

しかし、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、テレワークがメインになったことで、改善活動を上手く進めていけるか不安があるのも事実です。

渡部 「テレワークになって協力会社の方と話す機会が減ってしまったので、不安はあります。通常であれば同じ業務をみんなでやっているので、日々会話しながら進めていけますが、今後どうなるかはわかりません。

以前は同じフロアにいる100人が大体どこにいて、どんな問題を抱えているのかが何となく空気でわかり、自分の経験や知識からアドバイスできる部分がありました。しかし、オンラインでは問題が起きていることになかなか気づけないので、それが現在のコミュニケーションの課題として感じる部分です」

先輩方に教わったルールを習得し、自らそれを高め、そして後輩に伝えていくという連鎖を担うことが自身の役割だと思っていた渡部は、そこが根本から変わったといいます。教わった通りに教えるのではなく、予測が難しいこの時代だからこそ、自ら考えて一から作っていくことを、会社全体でやらなければならないと痛感したのです。

渡部 「DTK活動以外にもいろいろなことが変化してきているので、仕事に対する意識を変えつつ、積極的に自律的に行動していくことが推奨されているのだと感じています。いつまでも古い考えを持ち、なかなか踏み出せない自分のような者は、もっと変わらないといけないなと思います」

他部署に先駆けてDTK活動を進め、旧社の統合を上手く実現しながらも自身や部署が抱えている課題を冷静に分析し、改善に向けた次の手を考えている渡部。

変わりゆく現状への対応に苦戦しながらも、確かなマネジメントで今後も出光を支えていきます。