試験評価にとどまらない、上流から競争力を支えるEMC
私はEMC(電磁環境両立性)技術開発室に所属し、製品開発におけるEMC課題に対して、技術開発・設計支援・仕組みづくりを行っています。デンソーのEMC技術者は、“評価・試験”だけを担う存在ではありません。設計部門と連携し、製品開発の上流から品質全体を支える役割を担っています。
EMCは回路設計や筐体設計、半導体選定など幅広い工程に関わり、設計プロセス全体に影響を与える重要な領域です。そのため、私たちは解析やモデリング技術を活用してリスクを可視化し、設計者と共に適切な意思決定ができるよう技術面から支援しています。
デンソーのEMC業務の特徴は、設計段階から現場と伴走しながら品質を追求できる点です。設計の初期段階からリスクや実現性を整理し、設計部門と共に課題を解決していくなかで、製品品質の確保に貢献できる手応えを感じられます。
カーエアコン、モーター、ディスプレイ、センサー、ECU(電子制御ユニット)、半導体など、デンソーが製造するほぼすべての製品がEMC設計の対象です。製品ごとに求められる性能やリスクは異なり、同じものは一つとしてありません。多様な設計思想に触れることで、技術者としての視野が着実に広がっていきます。
さらに、各案件で得た知見を全社の設計ルールやガイドラインに反映し、全社的な品質向上にも貢献しています。俯瞰した立場で各部署と関われるからこそ、知見を横断的に展開できるのがEMC部門の強みです。実際に現場の設計者からの相談を受けながら改善を重ねていくため、現場で実際に活用される仕組みづくりに携われる実感があります。EMC部門は、各事業部のモノづくりを技術面から支える“横串”の組織です。製品単位ではなく、会社全体のモノづくりを支えながら品質を高めていく。このスケールと影響範囲の大きさこそが、デンソーのEMC技術者として働く魅力だと感じています。
多様な製品と技術に触れ、広がるキャリア
デンソーへの入社の決め手は、特定の製品や技術に閉じることなく、幅広い製品や技術領域に関われる環境があったからです。デンソーが手がける製品群は多岐にわたり、世界中の完成車メーカーで使われる製品に携われるチャンスがあります。同じEMCという技術でも、製品ごとに設計思想や課題は大きく異なるため、特定の領域だけでは得られない幅広い知見を身につけられると感じました。
入社後は、研究開発部門だけでなく、製品設計の事業部へ異動し、設計者として開発に携わる経験もできました。担った業務は、新規立ち上げ製品の適用先や顧客要求を踏まえたEMC性能の仕様検討、設計段階でのEMC課題に対するシミュレーションを活用したリスク検討などです。この経験を通じて、EMCの技術課題だけでなく、量産性やスケジュール、品質とのバランスをどのように取るのかを現場目線で学びました。単に技術的な正しさを追求するだけではなく、「設計現場がどのような制約のなかで判断しているのか」を理解した上で提案できるようになるなど、この経験は現在の業務にも大きく活きています。
このように、さまざまな事業部や技術領域を経験してキャリアを広げられる環境が、デンソーにはあります。社員一人ひとりの想いを尊重し、多様なキャリア形成を後押ししてくれるカルチャーがあるのもその特徴の一つです。自発的に動く人にはどんどんフィールドが広がり、専門性を深めながら、より広い技術領域へ挑戦していける、それがデンソーならではの魅力だと感じています。
供給危機のなかで挑んだ、止めないモノづくり
印象に残っている取り組みの一つが、半導体不足に伴う代替部品への切り替え対応です。世界的な供給不安により、一部電子部品の入手が難しくなり、デンソー製品の生産継続に大きな影響が懸念されていました。この電子部品の代替によって影響が及ぶ製品は非常に幅広く、短期間で代替部品へ切り替えながら、品質も守らなければならない状況でした。
特に難しかったのは、電子部品単体の性能を見るだけでは、適切な代替部品が判断できなかったことです。電子部品の切り替えによってデンソー製品、ひいてはクルマ全体にどのような影響を与えるかを踏まえた上で、適切な部品を一つひとつ判断していく必要がありました。生産ラインが止まれば、完成車メーカーやその先にいるお客様など、社会全体に影響が及びます。そのため、私たちには”生産を止めない”ための迅速かつ正確な技術支援が求められていました。
そのなかで私自身は、ベテラン技術者と連携しながら、設計部門へ技術情報を提供していきました。過去の成功事例や不具合事例をもとに、「どこまで確認すべきか」「どのリスクを優先して見るべきか」を整理し、一つひとつ丁寧に判断を進めました。
EMCは品質と納期のバランスが難しい領域です。過去に設計工程に携わった経験を活かし、量産スケジュールや設計の制約も踏まえて、実現性の高い提案を行うことを強く意識していました。そのために、完成車メーカーや各事業部と緊密に連携しながら、品質をどこまで担保するべきかを議論し続けました。
その結果、多数の製品に対して短期間で対応しながらも品質基準を守り抜き、製品の部品切り替え対応を完遂し、生産継続に貢献することができました。
「会社全体のモノづくりを止めない」。これほどスケールの大きな役割をやり遂げたことは、私にとって非常に価値ある経験となっています。
EMCの技術を軸に、製品開発を俯瞰し競争力向上を牽引する存在へ
今後は、EMCという専門性を軸にしながら、より広い視点で製品開発全体へ価値を提供できる技術者になりたいと考えています。これまでは解析やモデリング技術、設計支援を中心にEMC課題へ向き合ってきましたが、今後は個別技術だけではなく、製品開発プロセス全体を俯瞰しながら、最適解を導ける存在を目指しています。
EMC技術開発では、品質、コスト、開発スケジュール、量産性、現場からの要望など、さまざまな条件を踏まえながら意思決定を支援する必要があります。多くの制約のなかで優先順位を決めるバランス感覚と判断力を設計の現場で磨いた経験を糧として、今後は設計や品質保証、完成車メーカーとのコミュニケーションなど、周辺領域への理解も一層深めていきたいと考えています。
並行して、それぞれの製品や案件で得られたノウハウを仕組みとして全社へ展開していくことにも引き続き取り組んでいきたいと思っています。デンソーには多様な製品や事業部があるため、それぞれの知見を横展開できれば、より高品質な製品の製造や、今までにない技術を生み出すことに繋がるかもしれません。近年はAIを活用したナレッジ整理も進められており、ベテラン技術者が持つ暗黙知を体系化し、次世代へ継承していくことも重要なテーマになっています。自分自身も、これまで得てきた経験を単なる個人の知識にとどめず、後世へ残せる形にしたいと思っています。
将来的には、社外との連携や自動車業界全体に影響を与える標準化活動などにも挑戦したいと考えています。デンソーは自動車業界に広く関わる企業だからこそ、自社だけでなく、業界全体の品質向上や技術発展にも貢献していきたいです。
一つの専門性に閉じるのではなく、多様な立場を理解しながら全体最適を考えられる技術者になる。それが、これから私自身が目指していきたい姿です。
■これから仲間になる方へ
“デンソーの競争力”を支えながら成長できる環境
デンソーのEMC技術者は、多様な製品や事業部と関わりながら専門性を広げることができます。正解のない課題に向き合い、自ら考えて価値を生み出せる点が魅力です。「自分の技術をより広い形で社会に役立てたい」。そんな想いをお持ちの方にとって、大きなやりがいと成長機会を得られる環境があります。
