全社に影響をもたらすビジコン。コロナ禍の今だからこそ社会貢献を
2020年5月29日、キュービック初となる、学生インターンによる学生インターンのためのビジネスコンテストが行われた。
きっかけは、とあるニュースだ。新型コロナウイルスの影響で、自宅待機、課外活動禁止、アルバイト自粛という厳しい状況に置かれた学生たち。なかには、学費や生活費が捻出できず、退学を考える者もいるという。
創業以来、学生インターンと共に働いてきたキュービックとして、社内からは「何かできることはないか」とさまざまな支援の案が挙がった。
その一案が今回のビジネスコンテスト『CUEBiZ(キュービズ)』の開催である。
コンテストの企画・運営には学生インターンふたりが手を挙げた。上智大学3年生の須賀田香帆(すがた・かほ)と早稲田大学3年生の大中絢音(おおなか・あやね)だ。
須賀田は「1024」という横断課題の解決に挑む部署に所属し、大学生向け総合掲示板サイト「キャンボード」の運営に携わっている。一方の大中はメディア第二事業部に所属し、薬剤師向けの転職サイト「HOP!ナビ 薬剤師」でコンテンツの企画や制作を任されている。
同じ目的に向かってプロジェクトに参加したふたりだが、立候補した理由はそれぞれ異なる。
大中 「これまで自分がしてきた業務は影響範囲がチーム内に止まっていました。全社へ影響をもたらすような動きをやってみたいと思ったのがきっかけです」
大中にとって、自身の影響範囲を広げるための挑戦だったのだ。
一方の須賀田は、自分と周りの環境の違いに焦点を当てた。
須賀田 「これまで経験のない、ビジコンをイチからつくるという新しいチャレンジがしたかったんです。コロナウイルスの影響で就活が思うように進んでいなかったり、アルバイトできなくなったり、身の回りで厳しい現実に直面する友人を見てきました。
その点、私はキュービックでやりたいことができているし、収入も得られている。自分の置かれている状況を最大限に生かし、今こそ社会に貢献すべきだと思いました」
応募者が集まらない。早くも開催危ぶまれ……
代表の世一 英仁が社内にビジネスコンテストの企画・運営の募集をかけたとき、ふたりは偶然、プライベートでオンライン飲み会をしていたという。「私たちならやれる!挑戦してみようよ」この言葉が彼女たちの行動を起こすキッカケとなった。
まずはコンテストの名前を決めるところから。それぞれ案を出してみたもののピンとくる名前には出会えなかった。アイデアが降りてきたのは須賀田のお風呂タイム。
「CUE」は「CUEBiC」の「CUE」でキッカケを意味する。「BiZ」は「BUSINESS」の略称「BIZ」。これらをアレンジして『CUEBiZ(キュービズ)』。社名の正式表記「CUEBiC」に倣って“i”は小文字とした。名前が無事決まったプロジェクトはいよいよ動き出した。
そして、世一からは“8チーム以上集まらなかったら、非開催”というルールが課せられた。
企画もコンテストの設計も募集も、すべて自分たちの手でやらなくてはならない。
当初、応募があったのは1チームのみ。早くも開催が危ぶまれ、ふたりは学生たちのインサイトを掘り当てようとヒアリングを重ねた。そこで聞かれたのは「興味はあるが、ビジネスコンテストは一度も経験がないので自信がない」という声だった。
そこで、開催を迷う学生向けにふたつのイベントを企画した。
ひとつは「ビジコンの体験イベント」。一度ビジコンに参加し練習してもらうことで、彼らの背中を後押ししようと考えた。
そしてもうひとつは「マッチングイベント」。キュービックには、新型コロナによる在宅勤務期間中に入社し、まだ一度も他のインターンに会えていない学生がいる。さらに福岡支社に入社してから、東京本社のインターンたちとあまりコミュニケーションをとれていないという学生たちも多い。
そこで学生同士でビジコンに対する意見を交わしてもらい、同志を見つけてもらおうというのがイベントの狙いだ。
奔走の甲斐もあり、最終的に12チームが集結。予選という形で世一による書類審査が行われた。ビジネスコンテストのテーマは「withコロナかafterコロナを踏まえた新規事業のアイデア」だ。
衛生面に特化した飲食店のランキング掲載サイトや、日々の生活に癒しを与えるため爬虫類専門のペットを飼ってみる体験サービスなど、各チーム工夫を凝らした提案が展開された。
奮闘の末、激戦を制したチームは……
予選を終え、決勝戦に駒を進めたのは「Team Quarantine(チーム・クアランティーン)」「出会いはコロナ」「mikamo(ミカモ)」の3チーム。
「Team Quarantine」はコロナ禍で高まるリモートワークの需要に目をつけ、ホテルの空室を使った、新しい働き方を提案。リモートワークの社会人からは、仕事環境の不整備、自宅だと集中できないといったインサイトを獲得した。
さらにホテルの経営者から緊急事態宣言が解除されるも利用者数の回復見込みがなく、長期的にみて、収益獲得の厳しい状況が続いているという悲痛な声にも触れた。
空室が続き困窮するホテル業界と、自宅でのリモートワークに課題を抱える社会人。両者を結び課題解決に導くのが「Remote Work at Hotel」その名も「Remotel(リモテル)」だ。
「出会いはコロナ」チームは、宅配業務の従事者に感謝を伝えるアプリを提案。宅配業界における「ドライバーの報酬不足」「再配達にともなう業務量の増加」「宅配ドライバーに対する誹謗中傷」という3つの課題に向き合った。
アプリの広告収入から得たポイントを宅配ドライバーに付与することで、給料の補填や宅配業者を取り巻く環境の改善が実現できるとプレゼンした。
チーム「mikamo」は「ポケットおつかい」と題し、学生による買い物代行サービスを提案。学生はおつかいを済ませると、依頼者からおつかいの対価として手料理をふるまってもらえる。「ポケットおつかい」はとくに高齢者や働くママたちに買い物代行のニーズがあることから着想を得たアイデアだ。
またコロナ禍でアルバイトの収入が減り、ひとり暮らしによる食生活の質の低下に陥る学生たちにとっても、誰かがつくった料理を食べられる、というメリットがあり、ご近所コミュニティ創成の手助けもできる。
3チームとも独自の発想を提案し、決勝は難航するも、三つ巴の戦いを制したのは「Team Quarantine」だった。
審査員を務めた経営陣からは「机上のアイデアで終わらず、ユーザーの声を丁寧に拾い、そのアイデアを磨き込んだ。感動した」「学生ながらホテルの経営者にヒアリングできたのがすごい。ハードルは相当高かったはず」「スライドのデザインがわかりやすく、自分の資料作りを考えさせられた」「出資したいと思うくらい実現可能性の高いサービス」といった感想が聞かれた。
一方、課題として挙げられたのは「収益性」と「ホテルの部屋を借りるのだから、万一器物破損がおきた場合の保証も考えてほしい」という点。「Team Quarantine」のメンバーはこのFBを受け、さらに企画の磨き込みにまい進している。
運営を通じてふたりが感じたこと、そしてこれから
CUEBiZの運営について、須賀田は運営で難しかった点をこう語る。
須賀田 「机上で考えたことが、実際の現場ではうまく機能しないことが多々ありました。
たとえば書類審査のために作成したエントリーシート。アピールポイントなどをしっかり設計したつもりだったのですが、参加者からは『何を書いたら良いかわからない』という声が挙がり、一方の審査サイドからは『これでは何を伝えたいサービスなのか見えてこない』と指摘されました。
とくに審査サイドからの指摘は、私たちの評価経験のなさが露呈した形ですね。評価軸の設計がこれほど難しいとは思いませんでした」
最後に、今回のビジコン運営経験をふたりはこう振り返る。
須賀田 「何も決まっていないゼロの状態からすべてを企画し、自分たちでつくりあげていくプロセスを経験できて感動しました。また参加したインターンたちが、私たちの予想をはるかに超える質の高いアウトプットを出してくれたことにも驚きを隠せません。このビジコンのために精一杯努力を重ねてきてくれたことが純粋に嬉しかったです」
大中 「福岡支社のインターンが『マッチングイベントがなければビジコンにも参加しようと思わなかったし、決勝まで残れてとてもやりがいがあった』と言ってくれて、活躍の手助けをできた、という充実感でいっぱいです。オンラインでのやりとりをはじめてから、福岡にいるインターンたちとの心の距離がグッと近くなったような気がしています」
プロジェクトを終え、ふたりはまた普段の業務に戻っていく。だが仕事に向き合う姿勢は今までと少し違うようだ。
須賀田 「主業務でも大学生向けの事業の運営を担当しているので、生かせることはたくさんあるなと思います。
これまでは自分も大学生だからこそ、ユーザーはきっとこう考えているんだろう、という思い込みが少なからずありました。しかしビジコンを通して、大学生の思考回路は多岐にわたり、誰ひとりとしてひとつの型に当てはまらないことを理解しました。
自分はユーザーではない、ユーザーのことはまだ何も知らない、という自覚をしっかり持ち、画面の向こうにいる見えない大学生に向けて、サービスをつくって行かなければならないという覚悟がより強くなりました」
須賀田の通う上智大学では、秋学期の始まる9月までオンラインによる授業が確定している。
須賀田 「対面で集まれない状況が続くと、人とのつながりが希薄になりがちです。コロナ禍で解決しなければいけない社会の課題は確実に増えたはずなのに、自分にできることなんて限られている……と私自身投げやりになっていた時期がありました」
大中「ビジコンのメッセージは“コロナがある今日をひらくのは、コロナのない明日をつくるのは誰かじゃない、自分だ”。これは参加者へのメッセージングですが、結果として自分たちもこの言葉に動かされていたんです。
世界が陥る危機に対して、『学生として何ができるんだろう、行動を起こしていかなければ』と感じました。私たちの想いに呼応するように、参加者たちからも“伝えなきゃ”という強い意志が感じられましたね」
運営のふたりを中心に、参加学生の意識に変化をもたらしたCUEBiC Business Contest 『CUEBiZ』。 キュービックでは今後も、創業時から学生と共に働いてきたバックグラウンドを生かし、学生が価値を最大限発揮できるような環境を提供していく。
