「道なきところに道を作れる仕事」を求めて商社の門を叩いた学生時代
学生時代は法学部法律学科に在籍。サークル活動と並行して弁護士を目指して勉強していましたが、2年生の頃にアメリカ旅行に行ったことで、世界観が大きく変わりました。
それまで外国人と会話をした経験が一度もなく、米系の航空会社に乗った瞬間から英語でのやり取りがスタート。現地では父親の知り合いにお世話になったのですが、その方の英語は決して流暢ではないにも関わらず、アメリカ人と対等に渡り合ってビジネスをしている姿を目の当たりにして、「いいな!」と純粋に感動しました。そして街を歩くたびにどこの国の人かもわからないような多様な人々と出会い、世界はこんなにも広いんだと強烈な刺激を受けました。
その経験から、広い世界を見たいという気持ちが一気に高まり、弁護士への道から方向転換、3年生で司法試験を受けたものの、案の定不合格。寧ろ「世界で活躍できる仕事がしたい」と就職活動に臨みました。
就職活動では、学生時代に世界でビジネスパーソンが活躍する小説を乱読していたこともあり、中でも「ただ栄光のためでなく」という今思えばエンターテイメント小説ですが、一貫して国際ビジネスには勝負があって、国際政治の情勢にも翻弄されるという事実に「ビジネスってこんなに醍醐味があるんだ!」と衝撃を受け、さらに「不毛地帯」で描かれた商社ビジネスにおける国際的な駆け引きに興奮し、資源を持たない日本のために石油開発を通じて国の発展に貢献したいという夢を抱くようになりました。その思いを一言で表すなら「道なきところに道を作れる仕事」。そのイメージにぴったり合う「商社」「石油開発会社」「船会社」だけに絞って就職活動を進めました。
最終的に入社を決めた会社のリクルーターの先輩から、「商社は紙と鉛筆を与えるのみ。思いっきり好きな絵を描けるのが商社の醍醐味だ。一緒に思いっきり絵を描こう」という言葉をかけていただいたことで自分が描いていた「道なきところに道を作れる仕事」というイメージと重なり、この言葉が強く記憶に残っております。当時は9大商社と言われた企業を全て受けていましたが、その会社が最初に内定を出してくれたことで「他社よりも先に内定をくれたということは、自分はこの会社に求められているんだ」と感じ、入社を決意しました。
「異能の商社」という言葉に腹落ち。トレーディングから始まった商社マン人生
キャリア採用での入社は2008年のこと。配属されたのは旧鉄鋼貿易部(現在のグリーンインダストリー事業部)で、最初の会社でも手掛けていた主に日本材や三国材(日本と輸入国以外の第三国を経由する貿易形態)の海外向け鉄鋼製品の輸出を担当、いわゆるトレーディングビジネスを長く手がけていた時期です。
その後、2012年からは豊通アメリカ(TAI)に出向し、金属製品SBU長として2018年3月まで現地で勤務、帰国後は旧鉄鋼貿易部を母体とした金属製品貿易部に戻り、薄板グループと容器グループのGL(グループリーダー)を務めました。薄板、なかでも熱延鋼板(鉄を高温で圧延して作る鉄鋼の基幹製品)は鉄鋼業界における最重要製品のひとつで、鉄鋼メーカーの収益の柱でもあります。このポジションは鉄鋼メーカーとの人脈を築く上でも非常に貴重な経験となっております。
2020年にはSBU間異動で自動車素材SBUへ移り、自動車薄板貿易第三グループのGLに就任。2022年には同部門の部長となり、2023年からは再びTAIへ出向しています。2023年はTAI自動車鋼板SBU長として、2024年からは金属部門長(メタル+(Plus)部門長)として現在に至ります。
キャリアを振り返ると、入社当初は「豊田通商がいつか総合商社へと変貌していく、その一翼を担いたい」という思いを持っていました。ところが自動車分野以外のビジネスがなかなか伸びきらない現実に、ギャップを感じていた時期もあります。それでも今は、今井社長がおっしゃる「異能の商社」という言葉に、妙に腹落ちしており、「典型的な総合商社を目指す必要はなく他社とは一線を画す唯一無二の商社であることが我々の存在価値である、と感じております。
「道なきところに道をつくる」Electra出資と次世代リーダー育成への挑戦
現在、私はTAI(豊田通商アメリカ法人)のメタル+(Plus)部門長(Group Vice President & Division Head)として、部門全体を統括する立場にあります。日々の仕事は多岐にわたりますが、大きく分けると二つの柱があります。一つは、自動車鋼板を中心とした既存のコアビジネスを更に磨き上げ維持・拡大していくか。もう一つは、グリーン(脱炭素・環境貢献)に貢献できる新規ビジネスをどう創造していくか、という点です。その両方を常に念頭に置きながら、部門メンバーを率いています。
印象に残っている出来事として、まず挙げたいのがElectra(電解鉄製造メーカー)への出資です。一昨年、新規事業を模索していた当時の部下からこの会社への出資を提案された際、「将来のゲームチェンジャーになるかもしれない」と直感しました。ただ、社内では当初「王道ではなく側道のようなイメージ」という声も多く、また、メタルプラス本部としても川上分野は未経験の分野でもあった為、なかなか前に進めなかったことを覚えております。
しかしCN/CE(カーボンニュートラル・サーキュラーエコノミー)の潮流の中で、鉄鋼生産が従来の高炉型から電炉型へシフトしていく中、原料となるスクラップの希少性・調達難が高まること、そして二酸化炭素排出量の大幅な削減に寄与できることが、大きなアドバンテージとなると考え、製鋼原料の代替としてElectraのような電解鉄メーカーが「一つの解になる」という仮説を立てました。そして、社内外に粘り強く働きかけ続けた結果、部署を越えて推進を後押ししてくれるメンバーが少しずつ増えていく中で、単なる経済合理性だけでなく、メタル+(Plus)部門として世の中の「グリーン化」をリードし、将来に繋がる新しい「プラス」を創出していくという熱意と情熱が、仲間を増やし、会社を動かしていく上で何より大切であることを改めて感じております。まさにこういった取り組みこそ、「道なきところに道をつくる」事業への挑戦だと感じております。
もう一つ、部門長として力を入れているのが人材育成です。旧モビリティ素材SBU(事業部)を率いていた幹部候補生を、2年間限定でメキシコの事業体社長として派遣を致しました。今まで彼が培ってきた営業・オペレーション面の強みに加え、人事・労務・会計といった経営全般を一人称で担う経験を積んでほしいという思いからの決断です。さらに彼にはTTM(豊通メキシコ)のMetal+部門長を兼務させており、新規投資の検討やネクストコアSBUの事業にも関わってもらっています。彼が抜けた後のTAIでは色々な問題が出ており残されたメンバー含めて苦労も掛けてしまっておりますが、異国の現場で視座を高め、将来の部門長候補として一段と成長して戻ってきてくれることを楽しみにしています。
部門長として特にやりがいを感じるのは、仕掛かけているプロジェクトが成功した後のことを想像する瞬間です。北米市場はグローバルでも有数の成長市場であり、ビジネスのネタは本当に尽きません。TAIの米人経営層とともに「Metal+部門のみならず、TAIを今後どう成長させていくか」を議論するたびに、強い刺激とやりがいを覚えます。
「Be the Right One」を体現する挑戦と、仲間と共に描く未来
短期的な目標として今まさに取り組んでいるのが、組織をより機動的にするための組織変更です。グリーンスチール(製造工程における二酸化炭素排出量を削減した鉄鋼)分野での新規事業を担当するチームはもともとケンタッキーに置いていましたが、機動性を高めることや、情報収集・今後の人材採用なども見据えて、シカゴ事務所へと移しました。事業環境は常に変化しています。だからこそ組織もそれに合わせて柔軟に変えていかなければなりません。変化を好まない人、安定した状態に心地よさを感じる人が抵抗感を示すこともありますが、「将来の成長と次世代のため」と伝え続けています。組織の成長を考えたとき、本当に何がベストなのかを問い続けながら、組織づくりをしていきたいと考えています。
私の好きな格言に「Ask not what your country can do for you — ask what you can do for your country」(国があなたのために何をしてくれるかではなく、あなたが国のために何ができるかを問うて欲しい)があります。会社に対しても同じことで、常に自分自身、何が出来るか、を問い続けていたいと考えております。
当社の魅力を一言で言えば、「異能」の商社であるということです。当社が目指すのは「Be the Right One」、つまり他社が真似できない、自分たちにしかできないビジネスを追求すること。この実現のアプローチは個々でそれぞれ違いますが、同じ信念を持っていることこそ「異能」だと感じております今回のElectraへの出資は、当社だからこそ強みが発揮できる可能性を秘めており、CN(カーボンニュートラル)貢献型の鉄鋼原料製品とスクラップを組み合わせ、客先・鉄鋼メーカーに貢献できるクローズドループ(資源を循環させる仕組み)の実現こそまさに「異能」の事業に成長していくと考えておりますこの事業の成功や将来的なグリーンスチールへの貢献はまだまだ大きな挑戦が残っておりますがこういった社会貢献も同時に実現できるビジネスを追求できることが、当社の最大の魅力だと感じています。
最後に、これから入社を考えている方へお伝えしたいこと。どんな事業も、一人でできることは限られており、仲間を尊重し、オープンなコミュニケーションを取れる人がここでは活躍できます。そして、「自分はこれをやりたい」という熱意と情熱を持ち続けてほしいと思います。入社前に抱く夢は、どんなに小さくても構いません。その情熱を大切にして、すべての業務を将来のキャリア形成の糧として、好奇心を持って臨んでもらえたら嬉しいです。

