地道な努力が報われる日本で出合った、人を大切にする会社
学生の頃から英語が得意だった蔡が、英語以外にも競争力となるスキルを身につけたいと学んだのが日本語だった。
2011年に静岡の浜松大学(現:常葉大学 浜松キャンパス)へ留学した後、静岡大学大学院に進学。日本語とマーケティングを学びながら、ボランティアで中国語や中華料理の講師を行うなど、国際交流活動にも取り組んだ。文化やルールの違いに衝撃を受けながらも、日本が自分に合っていると感じた蔡は、日本での就職を決意した。
「日本は中国と比べると、個人の努力や積み重ねを評価してもらえる機会が多いと感じました。もちろん日本にもさまざまな要素が就職やキャリアに影響しますが、中国と日本では評価の考え方や文化に違いがあります。その中で私は、日々の努力や積み重ねを重視する日本の環境に魅力を感じました」
静岡で多くの人に支えられた蔡は、「静岡に恩返ししたい」という思いから、県内企業を中心に就職活動を開始。語学や専門知識を活かせ、海外拠点がある会社を探す中で、鈴与に出合った。
「鈴与に入社を決めた一番の理由は、人を大切にする会社だと感じたことです。外国人という偏見を持たず、あくまで一個人として接する姿勢や、入社前に日本語研修の機会を設けているなど、この会社であれば自分が成長できると思いました。それは今も変わることなく、むしろ当時よりも強く感じています」
そして、鈴与で10年働く中で、蔡が自身を最も成長させたと感じたのが、多様な職種と地域を経験できた、変化に富んだジョブローテーションだった。
物流の原点を知った倉庫現場と通関業務で培った基礎力
2016年に入社した蔡は、入社後の現場研修を経て、日用品雑貨を扱う第二DC事業部 清開E棟物流センターへ配属された。倉庫での入出庫、ピッキング、梱包、流通加工。時には輸入貨物の段ボールをコンテナから一つひとつ運び出す作業も経験した。
「現場では、作業一つひとつに多くの工程や関係者が関わっています。実際に作業を経験したことで、物流がどのような工程や人の連携によって成り立っているのかを理解できました。今、営業として案件を組み立てる際も、『現場で無理なく運用できるか』という視点を自然と持てるようになっています」
一方、当時は言葉の壁にも苦しんだ。物流の専門用語が分からず、上司の指示を十分に理解できないこともあった。そのような中で現場の安全性や作業効率を高める改善活動では、自分なりに考えた提案を「全然違う」と指導されたこともあったという。その度に周囲へ相談しながら、なぜその作業が必要なのか、現場にはどのようなリスクや課題が潜んでいるのかを学んでいった。その経験を通じて培われたのが、目の前の事象だけでなく、その先に起こり得る影響まで考える視点だった。
「例えば、通路に荷物が置かれているのを見たときは、ただ『物が置かれている』と捉えるのではなく、『人やフォークリフトの通行を妨げて事故につながる危険性はないか』『作業効率の低下を招かないか』など、その先に起こり得る影響まで考えます。改善も、自分の自己満足では意味がなく、現場で働く人にとって、本当に意味のあるものにしなければいけないんです。その視点を徹底的に教わりました」
さらに現場で学んだのは、人との関わり方だった。
「物流は、一人の力だけでは成り立ちません。港湾作業員や現場スタッフ、ドライバーなど、多くの方々が関わっています。そのため、相手に配慮した伝え方や日頃からのコミュニケーションが重要だということを学びました。こうした相手との関わり方の大切さを実感できたのは、現場で働いた経験があったからこそだと思います」
物流の現場を学んだ後に配属された鈴与通関では、輸出入申告や書類確認など、専門性の高い業務を担当。蔡にとって大きな挑戦となったのが、通関士資格の取得だった。
「1年目は、少し勉強すれば受かるだろうと甘く考えていました。2年目は本気で勉強しましたが、あと1〜2点届かず不合格。悔しさをばねに、3年目は毎週末勉強を続け、ようやく合格することができました。プレッシャーもありましたが、諦めずに努力を続ければ結果につながることを実感しました」
鈴与通関での経験から「質問力」についても大きな学びを得た。通関業務では、必要な情報を社内の業務担当者を通じてお客様に確認する場面が多い。蔡は日々の業務の中で、要点を整理し、簡潔かつ正確に聞く力を磨いていった。
「質問の仕方が曖昧だと、必要な答えは返ってきません。どの情報が必要なのか、なぜ確認したいのか、相手が迷わず答えられるようにどう聞くか、かなり意識できるようになりました」
倉庫現場と通関業務で、それぞれ異なる経験と学びを重ねた蔡。次に待っていたのは、上海での新たな挑戦だった。
上海駐在での挑戦 ― 自分と向き合いながら挑んだ営業・マネジメント
蔡にとって大きな転機となったのが、中国・上海への駐在だった。母国へ戻れるうれしさがある一方で、営業職への初挑戦でもあり、不安も非常に大きかったという。
「正直、営業とは何なのかもよく分かっていませんでした。しかも新規顧客開拓がミッションだったため、『自分にできるのかな』という不安はすごくありました」
特に、営業として求められる物流知識の幅広さにも苦労した。これまでの経験では、物流の“一部分”しか見えていなかったと振り返る。
「営業担当としてお客様に提案するには、倉庫での保管や作業だけでなく、輸送、輸出入、海外物流まで幅広く理解していなければなりません。最初は本当に分からないことだらけでしたから、積極的に詳しい人に聞いていました。業務リーダー、現場の人、先輩、みんなに助けてもらいました」
そんな中、上海で蔡の強みになったのが、“中国と日本の違いを説明できること”だった。
「日本のお客様は、日本の感覚を前提に中国市場を見ています。でも実際は制度も商習慣も違う。その違いを『日本ではこう、中国ではこう』と比較しながら説明すると、お客様にも納得感を持って受け入れていただけることが多いです。単に言葉を訳すだけではなく、『なぜ中国のビジネス現場ではそのような考え方になるのか』という背景まで伝えることを意識していました。日本と中国の、それぞれの考え方を理解したうえで双方に伝えられることが、自分の価値につながっていると感じました」
グローバル展開をする企業の案件では、日本、メキシコ、マレーシアなど海外拠点と連携しながら、中国国内の物流体制を構築した。その過程で、各拠点一丸となって物流を動かしている実感が強くなっていったという。
「鈴与には、世界中の拠点からつないでもらったバトンを生かしながら、自分自身の経験や強みを発揮し、国や地域を越えて物流をつないでいく面白さがあります。チームで大きな壁を乗り越える喜びと、物流が持つ本当のスケールの大きさを肌で感じました」
コロナ禍の上海ロックダウン時も、物流を止めない方法を必死に探し続けた。
「『できません』で終わらせるのではなく、『どうすればできるか』を考え続けていました。あの時は本当に、仲間と一緒に必死でした」
そんな経験を重ねる中で、営業に対する考え方も変わっていく。
「以前は、営業は特別な人しかできないと思っていました。でも実際は、地道に知識を積み重ねて、お客様目線で考えることが、営業にとって何より大切だと思うようになりました。そうした経験を重ねる中で、『私にもできた』と思えるようになったんです。それが自分にとって、とても大きな自信になりました」
上海では、現地スタッフの育成やマネジメントにも携わった。
「鈴与の考えを、どうすれば現地スタッフに抵抗感なく伝えられるか、本当に悩みました。でもその経験を通じて、人と組織を動かす難しさと面白さを学べたと思います」
そして今、蔡はこう感じている。
「鈴与は、“挑戦したい”という気持ちがある人に、挑戦の機会を与えてくれる会社です。完璧になるのを待つのではなく、まず任せて、周囲が支えてくれる。本当に感謝しています」
すべての経験が、今につながる ― キャリアの現在地と鈴与で働く意味
現在、蔡は輸出入に関する物流サービスを担う清水支店で、お客様の物流課題解決に取り組む営業を担当している。
「上海時代は幅広いお客様や案件に携わっていましたが、現在は主要顧客一社一社の物流課題について、より深く向き合いながら仕事をしています。複雑な物流課題をどう解決していくかを考えることが、今はとても面白いです。物流は、単にモノを運ぶだけではありません。現場の状況や安全、法令、品質など、さまざまな観点を踏まえながら最適な形を考えていく。その過程に、営業としてのやりがいを感じています」
蔡は、これまでの自身のキャリアについてこう語る。
「現場で学んだ人との関わり方、通関業務で磨いた質問力、上海で経験した営業やマネジメント。一見バラバラに見える経験も、今振り返るとすべてに意味があり、現在につながっているんだなと感じます」
その中でも、最も大きな財産となっているのは “人とのつながり”だという。
「これまで一緒に働いてきた方々に、今でも力を貸していただくことが多く、本当に人に恵まれていると感じています。だからこそ、今度は自分が周囲の人を大切にできる存在でありたいと思っています。静岡にいながら、世界各地の拠点の仲間とつながり、連携しながら仕事を進めていく。そのダイナミックさこそが、物流という仕事の醍醐味であり、今もなお私を惹きつけてやまない魅力です」
将来の目標は明確だ。いつか、鈴与の中国における責任者になること。そのために、今も新しい経験を求め続けている。
「将来的には、東南アジアなどさまざまな国でも経験を積みたいと思っています。そしていつか、鈴与の中国拠点を担う責任者になり、社員を大切にする組織をつくりたいです。自分が日本で感じてきた鈴与の良さを、中国でも実現できるような存在になりたいと思っています」
変化を前向きに受け止め、新しい環境へ飛び込み続けてきた蔡。これまでの経験を力に変え、これからも国境を越えて人や物流をつなぎながら、グローバルなフィールドで挑戦を続けていく。
