ペットボトルは「リサイクルの優等生」。近年注目の「水平リサイクル」とは
ペットボトル飲料は1982年に初めて発売されました。1996年からは、前年に成立した容器包装リサイクル法を受け、使用済みのペットボトルをごみではなく「資源」として回収する取り組みも本格的にスタートしています。
齋藤 「ペットボトルのリサイクル率は88.5%と、食品用トレーや衣類に比べて非常に高く、リサイクルの優等生ともいわれます。単一素材できているのでリサイクル資源にしやすく、さらに回収スキームが整っているからです。そして、最近注目されているのが『ボトルtoボトル』水平リサイクルです」
水平リサイクルとは、使用済み製品を原料として、同一種類の製品に作りかえるリサイクルのこと。清涼飲料業界では、ペットボトルを再びペットボトルに生まれ変わらせる取り組みを「ボトルtoボトル」水平リサイクルと呼びます。
齋藤 「サントリーでは、持続可能な社会の実現を目指し、10年前から『ボトルtoボトル』に注力しています。しかし、現状は『ボトルtoボトル』率でみると当社は37%(2021年実績)、業界全体では15.7%(2020年度データ)で、決して高いとはいえない数字です」
「ペットボトル」一筋20年のキャリア。世界初のリサイクルシステムを構築
齋藤は、2002年にサントリー入社。包材部に配属、海外赴任を経て、ペットボトルリサイクル事業を行う協栄産業(株)(以下、協栄産業)に出向。リサイクルペットボトルの品質管理の経験を積んできました。約20年間ペットボトル関連業務に携わるなか、いち早く「ボトルtoボトル」の意識を持ち、業界を牽引してきた第一人者です。2011年には協栄産業と協働し、国内初のメカニカルリサイクルシステムを開発しました。
齋藤 「メカニカルリサイクルとは、回収ペットボトルを選別・洗浄後、そのまま原料としてリサイクルすることです。これまで『ボトルtoボトル』としては、化学処理で分子レベルまで戻すケミカルリサイクルしか方法がありませんでしたが、より環境負荷の少ない手法としてメカニカルリサイクルシステムを開発しました。
開発にあたっては、飲料容器なので、安全面・衛生面はもちろん、お客様が安心して使っていただけることが何より重要です。それをどう証明するかがポイントでした」
何度も安全性の検証を重ね、ようやく完成した国内初のリサイクルシステム。両社は、メカニカルリサイクルペットボトルの安全性評価の手法を論文化し、公表しました。
齋藤 「私たち自身が安全・安心なものを供給するのは当然大事ですが、他の飲料メーカーやリサイクル業者に対しても、安全・安心の評価基準を示すことが、業界全体にとっても、世の中にとっても大事だと思ったんです」
2018年、齋藤は協栄産業とともに新たな挑戦をしました。ペットボトルを粉砕・洗浄したフレーク状のものから、ペットボトルの原型(プリフォーム)まで一貫して製造する世界初の「FtoPダイレクトリサイクル技術」の立ち上げです。
従来のリサイクル技術では、ペットボトルを粉砕・洗浄後、さらに高温で溶かして、結晶化したものを乾燥、再び高温で溶かして成型するという工程が必要でした。新技術では従来に比べ工程が短縮され、CO2排出量の削減にも成功したといいます。
齋藤 「それまで、協栄産業が担う業務はペットボトルを回収・洗浄して、ペットボトルの原料となる“ペレット”にするところまででした。再生ペット樹脂の製造能力が高い一方で、食品容器の製造に関するノウハウは不足していたため、飲料メーカーの観点から、安全・安心を保証できる品質管理の仕組みを一緒に作り上げました」
「ボトルtoボトル」がなぜ大切か。その重要さと“意外な”課題
齋藤には、協栄産業で働くなかで見た、印象的な光景があるといいます。
齋藤 「同じ敷地内に、回収したペットボトルを選別する工程があるのですが、排斥されるものがとても多くて、すごくもったいないと感じました。飲み残しや異物が入ったものは、はじかざるを得ないんですよね。中身が何か確かめようがない。劇薬の可能性もあり、危険なので捨てざるを得ないんです。
きちんと分別されていないことで、新たなペットボトルに生まれ変わるチャンスを失う。ここに『ボトルtoボトル』の課題があります」
さらに、齋藤は、意外なものが「ボトルtoボトル」の妨げになっていると続けます。
齋藤 「選別工程で、地味に困るのが“輪ゴム”。ペットボトルの口部に、輪ゴムを巻いておられる方が結構いるんですよ!おそらくですが、食事どきに、パックやお弁当箱をとめていた輪ゴムを無意識に巻き付けているんでしょうね。一見わかりにくいので、目視確認時にもなかなか気づかず最終工程まで残る。
結果、そのゴム素材が異物となってしまい、製品として成立しなくなる。地味ですが、ダメージが大きいです」
「ペットボトルから他のプラスチック製品」ではなく、「ペットボトルからペットボトル」の水平リサイクルがなぜ大切か、齋藤はこう話します。
齋藤 「ペットボトルは石油が原料。極力新たな石油資源を使わないという観点からは、再びペットボトルに戻すことが重要です。ペットボトルは単一素材でできており、回収のスキームもしっかりしているので、さまざまな用途へのリサイクル資源として使えてしまいます。
ただ、そうするとどうしてもダウングレードする。異素材が入ったり、色がついたり、物性面が弱くなったり……。一旦他のものになると、もうペットボトルには戻れなくなります。新たに石油資源を使ってペットボトルを作らないといけなくなってしまう。ですので、一度ペットボトルになったものは、なるべくもう一度、そして何度もペットボトルにするのが、省資源につながるというわけなんです」
ペットボトルを「資源」とするために。飲料メーカーとしての矜持と企業努力
循環型社会を目指し、「ボトルtoボトル」を推進するうえで、前述の輪ゴムのように、日常の何気ない行動が「資源」化に支障をきたすことがあります。齋藤は「屋外でも分別を意識して」と呼びかけます。
齋藤 「皆さまにぜひお願いしたいのは、自動販売機横のリサイクルボックスに投入する前に、飲み切っていただくことです。飲み残しがあることで『資源』になれないペットボトルが多くあります。また、キャップは外してもらえると嬉しいです。キャップが付いたままだと容器を圧縮できず、輸送効率が悪くなってしまいます」
キャップについては、「むしろ閉めていた」という声もあるそうですが、空気が入った容器をそのまま圧縮すると、圧縮できず破裂する可能性があるなど大変危険。外すひと手間で圧縮できるようになるため、一度の大量輸送が可能で、CO2削減につながります。なお、外したキャップは、ペットボトルと同じボックスに入れてOK。ラベルも同様に、剥がしたら同じボックスに入れて良いとのこと。
齋藤 「中身は空にする、ラベル・キャップを外す等、しっかり分別をしていただければ、ペットボトルとしてかなり循環しやすくなります。
リサイクルの工程って、“引き算”なんです。回収後、リサイクル対象外のものを取り除き、中身があるものをはじき……と、どんどん引いていく。つまり、引かれるものが少ない方が、循環のためには良いということです」
飲み切ってもらうため、分別してもらうために、企業としての工夫もあります。
齋藤 「最後までおいしく飲める味わいをつくる、生活シーンに合わせた容量展開など、飲料メーカーとしての工夫は大前提。ラベルについても、ボトルに糊が残りにくい設計や、剥がしやすい糊の開発など、改良を続けています」
「ボトルtoボトル」として、サントリーから送り出したペットボトルが、また還ってきてほしいと願っている、という齋藤。「おかえり!」があふれる社会の実現に向けて、今日も奔走しています。

