設計グループマネージャーとプロジェクトマネージャー、二つの役割で木造建築の未来を
私は現在、住友林業 不動産事業本部 建築事業部 建築部 意匠設計グループに所属しています。私たち建築事業部のミッションは、建物の木造化・木質化を推進し、脱炭素社会に貢献することです。
木造建築は、鉄骨造や鉄筋コンクリート造と比較して建設時の二酸化炭素排出量が少なく、木材自体が炭素を固定する役割も果たします。こうした環境的価値を社会に提供することが、私たちの仕事の根幹にあります。
私自身は大きく二つの役割を担っています。1つ目は設計グループの取りまとめとして、設計のデザイン・品質・機能・コストの担保を行うことです。グループマネージャーとして、意匠・構造・設備の各設計担当のアサインやお客様対応、設計品質の担保、プロジェクト初期の営業対応などを担っています。2つ目はプロジェクトマネージャーとして、各グループと連携しながらプロジェクトをスムーズに進行させる役割です。事業部内の上席者や各グループマネージャーと連携し、プロジェクト全体のハンドリングを行っています。
設計品質を担保する際には、明確な判断基準を持つようにしています。建物として担保すべき最低限の機能、性能、安全性、環境への負荷、ここまではバランスではなく確実に品質を担保すべき項目です。これらは絶対に譲れない基準であり、どんなプロジェクトでも妥協はしません。その上で、コスト、工期、引渡し後の運営、意匠性などをお客様の意向に沿うようにバランスをとり、全体としてお客さまに満足いただける、また社会的価値・意味のある建物を作りたいと考えています。
仕事をする上で私が大切にしているのは、数字や文章、図面等で可視化できる部分を極力可視化した上で、目に見えにくい部分、人と人との関係性、思考の過程、時間効率等を大切にすることです。相手の目に見えにくい部分は、プロジェクトを円滑に運営することに直結する、私にとってはなくてはならない要素なのです。この価値観は、若いころに他社に向けたプレゼンテーションでの失敗を経験したことがきっかけで生まれました。当時の私は、人が共感できるのは資料の内容そのものではなく、「その内容にたどり着いた過程やその内容から想像できる期待感」だということを理解していませんでした。資料はあくまでも内容を確認するためのものではなく 、相手に共感していただくためには、その裏または先にある見えない期待値を提供する必要があると感じました。他にも、他者とのつながりやプロジェクトに向ける熱量など、目に見えにくいものほど共感をいただけると感じ、今はそれを大切にしています。
組織設計事務所から建築コンサルへ。木造建築との出会いが導いた25年のキャリア
私はこれまで、建築に関わる仕事を約25年間続けてきました。最初の20年間は組織設計事務所で意匠設計者として、その後の5年間は建築系コンサルティングでプロジェクトマネージャー、コンストラクションマネージャーとして、それぞれの立場で建設プロジェクトに携わってきました。
設計者とコンサルタント、この二つの立場を経験できたことは、私のキャリアにとって非常に大きな意味を持っています。設計では建物にまつわる技術全般を学びました。構造や設備、材料、施工方法など、建築を形にするための幅広い知識を身につけることができました。一方、コンサルでは建物に関わる多くの方々の考え方を学ぶことができました。発注者、設計者、施工者、それぞれの立場や視点の違いを理解し、プロジェクト全体を俯瞰する力が養われたと思います。
20年間設計者として働く中で、私の仕事に対する考え方も大きく変化していきました。最初の頃は、正直に言うと自身の向上のための業務という側面が強かったように思います。しかし経験を重ねるにつれて、建物を通じてお客さまと社会をよくするための業務へと、自分の中での価値観が変化していきました。この変化は自然なものでしたが、振り返ると自分の成長を実感できる大きなターニングポイントだったと感じています。
キャリアの中でとくに印象に残っているのは、木造プロジェクトです。設計者としてもコンサルとしても、木造建築には何度も携わりました。当時は中大規模の木造は今ほど一般的ではなく、鉄骨造や鉄筋コンクリート造に比べて非常に多くの労力をが必要でしたとしました。木材自体の調達ルート確保、防耐火技術への取り組みなど、課題は山積みでした。正直に言うとかなりつらく、当時プロジェクトが終わった時には二度と木造には手を出さない、と思ったのを覚えています。
しかし、できあがったものを振り返ってみると、木造建築には独特の思い入れが出てきます。つらかったですが自身にとっては良い循環でした。この経験が、後の転職を決める大きな要因になるとは、当時は思ってもいませんでした。
そして転職を考え始めたのは、建物を通じた設計やコンサルで得た知識や人脈などを、さらに幅の広い業務分野で活かすことができないかと考え始めたことがきっかけでした。これまでの経験を次のステージでどう活かせるか。その答えを探し始めた時期でもありました。
考えられなかったことができる組織へ。中大規模木造建築を推進する体制づくりの3年間
入社後、私にとって最も印象深い成功体験は、木造設計者と鉄骨造や鉄筋コンクリート造の設計者との経験と知識を融合して、中大規模木造建築に取り組むために必要な体制を整備できたことです。また、建築事業部を収益ベースで良い方向に導く一端を担えたことも、大きなやりがいを感じた出来事でした。
体制整備において具体的に取り組んだのは、小規模の木造では求められることのない業務のフローや対応、技術などを、鉄骨造や鉄筋コンクリート造での経験をもとにOJTで浸透させることでした。プロジェクトを通じて少しずつではありましたが、3年経ちひとしきり浸透したことで、中大規模木造建築に対応できる体制となりました。入社時では考えられなかったことができるようになってきているのを感じています。
もちろん、この道のりは決して平坦ではありませんでした。中大規模木造建築を推進していくにあたっては、まだ発展途上の部分も多く、必要な人財やノウハウを一つひとつ積み上げ、また既存メンバー同士で技術力を高めていくプロセスは決して簡単ではありませんでした。しかし、少しずつ実りを見せ始めたときの喜びは格別でした。とくに印象的だったのは、部やグループのメンバーが、中大規模木造建築プロジェクトを推進する上でクリアしなければならない課題や問題を当たり前のように意識してプロジェクトに取り組むようになったことです。まだまだこれからではありますが、補助輪がとれたことで推進力が高まったと思えたことが印象深く残っています。
収益改善に関しては、中大規模木造建築の設計技術の価値を浸透させることで、設計に必要な技術や人工 人財に対して正当な対価を求められるように部署全体のマインドチェンジを行いました。また、設計にとどまらず部全体で収益構造を追求し続けたことが収支改善につながったと感じています。
この一連の経験から、私は「組織の変化はメンバーのマインドの変化」だと学びました。必要なマインドチェンジの推進で組織は大きく変わるのです。この学びは現在の業務にも活きており、メンバーの意識改革の重要性を常に意識しながら仕事に取り組んでいます。
前職時代と比べて、自分自身の成長も大きく感じています。これまで以上によりも、より大局 でプロジェクト全体とその周辺環境を含めて捉える見る力が身に付いたと感じます。建物単体に限らない多くの経験をさせていただけていることが、「大局的な視点」を持つことにつながっていると思います。大局的なそうした視点でプロジェクトを俯瞰できると、メンバーのアサインや各メンバーに任せる役割の整理範囲、プロジェクト推進にあたり課題が良く見えてきます。マネジメント側で行うことのできるプロジェクトの効率化、深度化に寄与できていると感じています。
前職の経験については、建築に関する経験はもちろん活きていますが、それ以外の経験も多く活きていると感じますし、そうできるよう意識しています。年齢的なこともありますが、直接的な業務経験よりも、人として積み重ねた経験を現在の業務に多く活かせると感じています。
中大規模木造建築のブルーオーシャンを拓く。環境と成長、双方を手にするキャリアの可
短期的には、これまでの設計プロジェクト受注前にかけるリソースに対してのチャージを実現したいと考えています。中大規模木造建築を推進できる一定の体制が整ったことで、それが可能になると考えていて、実現できれば部の収益をさらに良化させる可能性が見いだせます。チャージにあたってはお客さまが納得できる情報の量と質を提供できることが前提になります。これまでの企画提案よりも一歩踏み込んだ情報提供が必要になるため、更なる技術力の向上と対応するための人員確保が必要になります。
中長期的には、中大規模木造建築の世界で圧倒的なブルーオーシャンを作ることが目標です。グループ会社を含めた当社のネットワークと事業を活用し、われわれが中大規模木造建築の技術力をさらに高めていけば実現可能と考えています。当社では他の設計事務所やゼネコンにはない、木にまつわる特殊な環境があります。その環境を建築事業に取り込むことがブルーオーシャンを生み出すための最善の方策であると考えていて、そのために他部署やグループ会社との連携を深めていくことに注力したいと考えています。
木造建築で脱炭素社会に貢献する動きは世界的な広がりを見せています。ESG投資は今後も広がり木造建築の需要もさらに高まると考えられます。社会から求められる環境下で、これまでの知識と経験を存分に振るってみることを考えてほしいです。社会的要請の高い立場に、身を置くに値する環境であると思います。
設計事務所やゼネコンの設計部での経験は弊社当社でも必ず活かすことができます。木造経験はなくても何ら問題ありません。木造建築の世界は技術者が少ないことが業界全体の問題になっています。ベースに鉄骨造や鉄筋コンクリート造の知識がある方はその知識で即戦力として活躍しながら木造部分の知識 を吸収していただける環境が整っています。建築の知識と技術をベースに、それをこれまでよりも広い範囲で活かしてみたいと考えている方にとっては活躍の場を広げることのできる会社です 。
エキスパートとして技術を突き詰める成長もあります。一方で、幅広い経験と知識でプロジェクトをハンドリングする立場への成長も可能です。双方の先には部全体のハンドリングを見据えた成長も可能です。キャリア志向に合わせた幅広い成長の方向性がある会社だと思います。個々のプロジェクトを関係者とコミュニケーションをとりながら自身の力でまとめられる、もしくはそうなることを目標にしている方と一緒に仕事をしたいと考えています。

