大手人材会社から、ベンチャー企業へ。即戦力の重圧

「まったく文化も違うし、仕事のやり方も異なるので、はじめは戸惑いの連続でした」——。2011年、杉森はSBIビジネスサポートに転職してきました。
前職では、コールセンターなどに人材を派遣する現場からキャリアをスタートし、スーパーバイザーを務めたのちに、バックヤード側であるコーディネーター職に。コーディネーター職とは現場スタッフの採用担当で、企業のニーズにマッチする人材を見極めるとても重要なポジションです。
杉森 「大手で現場にいた頃は、いかに円滑に業務を回すかに注力していました。コールセンターのスタッフたちをどうバックアップするのか、育成していくのか……コーディネーターになってからは、求人広告を出稿して、いかにマッチングする方を採用できるかが重要で。日々、どうやって現場を支援できるかということばかり、考えていましたね」
そこから当時まだ30人ほどの規模のSBIビジネスサポートへ。コールセンター業務の現場とバックヤードに精通していた杉森は、当然、即戦力として期待されます。自身も十分に経験を積んできたと自負していた杉森でしたが、実際に入社してみると、その環境に戸惑います。
杉森 「前職は大手なので、人数も多く業務は分業で細分化されていたのですが、ここでは、何もかもをひとりでこなす必要がありました。本当にみんながマルチタスクをこなしていて。今までの知識と経験を総動員して、右も左もわからないけどついていく……ということだけで精一杯でした」
即戦力として入社直後から大きなプロジェクトを任されるも、とにかく試行錯誤の日々。そんな彼に、さらなる試練がのしかかります。
続出するコールセンターの離職者。ただ、要因がわからない
入社後に杉森がはじめて携わった案件は、コールセンターを立ち上げるという、ちょうど受注したばかりの大型案件。ゼロから作っていくという状況のなか、杉森は入社初日から派遣のアテンドやアサインを手伝いはじめます。
杉森 「コールセンターの運営経験は多くありましたが、ゼロからの立ち上げは未経験で。だから見よう見まねで、わからないことを調べる間もなく、業務は現場で覚えていきました。SBIが扱う金融の分野は、覚える必要のあることがたくさんあり、今までの経験則でなんとかこなしつつ、どうしても打破できない場面もありましたね」
どうにか立ち上げには成功したものの、杉森らがアサインしたスタッフが定着せずに、離職者が続出……その理由を探り、改善につなげるため、杉森らは連日連夜、上司と反省会を繰り返しました。
杉森「反省会だけではなく、毎日現場に通ってスタッフと話をしました。でもその当時は、決定的な原因がわからなかったんです。特に辞めたいという声も聞こえないのに人は辞めていく。今思えば、自分も完全に冷静さを失っていたのでしょう」
金融商品を扱ったコールセンター業務のサービス開発事業を行なう場合、金銭に関わる契約ややり取りでの曖昧さ、不正確さが命取りになります。そういった厳しさもある中、杉森らはいったい、どうやって困難を解決していったのでしょうか。
杉森 「前職では通信系のコールセンター業務でしたが、金融系に比べると、そこまで厳密である必要はなかったんです。一方、新しく入ってくるスタッフも、金融系の厳しさを理解できない。私がフォローするにあたって、その点を理解してあげられていなかったんですよね。後になって、それをちゃんと伝えることができれば理解してもらえる、ということに気づいて。派遣スタッフ一人ひとりと面談を何度も繰り返すことで、徐々に課題がわかるようになっていきました。そうすると少しずつ潜在的な課題を掘り起こせるようになり、ようやく道が開けてきたんです」
そこから徐々に、現場でのスタッフ離職率が低下。杉森がそのコールセンターに関わりはじめてから、実に数年後のことです。
根本的な課題はどこにあるか? 問いを繰り返して解決策を探る日々

杉森が現場で奮闘していた6年の間に、SBIビジネスサポートは規模を拡大。次第にサービスソリューションのチャネルが増え、2017年6月現在、50人を超える組織になっています。
しかし組織が拡大する一方、完全な「縦割り」ではなく、横断的に社内の連携をすることで、フレキシブルな顧客対応を可能に。さらに「人を大切にする」企業文化を絶対に失わないために、杉森は「課題抽出と解決」を繰り返すことが大事だと考えるようになりました。
杉森 「たとえば、給料や職場環境に不満があるから辞めたい、というスタッフがいるとします。でもそのことは採用の段階でちゃんと明示してあるはず。もちろん、現場で働いてみたうえで雰囲気が合わないことはあります。でもきっと何か他の理由があるはずだと思って根気強く聞いていくと、子どもの教育費などでプライベートでの出費が増えてしまったとか、実はハウスダストのアレルギー反応があって……とか。そうした根本的な原因を引き出すことで、ようやく改善策を話し合うことができるようになるんです。もちろんそれでも離れてしまう人はいますが、最終的には将来どうなりたいのか、というビジョンの話をして、ときには本人が仕事をする意味まで落とし込んで一緒に考える。それで辞めるのを留まる方もいます」
コールセンター業務では、人的資本が全てといっても過言ではありません。だからこそこうした「人を大事にする」姿勢が、クライアントにとってのメリットにもつながるのです。
杉森 「規模が拡大しても人をおざなりにしないこと。ある程度は合理化をしつつ、人間らしい部分をいかに残すかが、差別化の鍵を握ると思っています。それを実践するためには、一つひとつの課題を抽出し、新しい解決方法を提案していく、その繰り返し。派遣先で働いてくれるスタッフを大事にすることが、ひいてはクライアントの満足度につながり、会社の利益にもつながってくる。部下に対しても、そうよく話しています」
事業を拡大。ただ、今後も「人を大切にする」文化は決して薄めない

主軸の人材派遣事業に加えて、人材紹介と教育事業、採用代行へと業務範囲を拡大していったSBIビジネスサポート。専門知識を持ったスタッフを揃えることで、顧客満足度を高めて成長してきました。
それは2011年に入社した杉森が、模索を重ねながら業務に取り組み、自身を成長させてきたのと比例するかのようです。
6年のときを経て、杉森は今、自身の仕事をどんな風に見つめているのでしょうか。
杉森 「ひとつのプロジェクトが終わり、『無事にコールセンターのスタートが切れました!』 とクライアントに喜んでいただけると、やはり達成感がありますね。そしてもうひとつは、部署異動や転籍などで直接私とは関わらなくなった派遣スタッフのみなさんが、これまでと同じように電話やメールで相談してくれたり頼ってくれたりするときには、とても喜びを感じます。この人たちと一緒に仕事できてよかったな、と」
人材派遣の現場で経験を重ねてきた杉森ですが、今後は経理や管理部門に携わり、より俯瞰した立場で会社を成長させることにも関心を抱いています。
杉森 「これからは経営視点を身につけつつ、いかに人を大切にする部分を残していけるかに挑戦していきたいと思います」
組織を運営していくとき、必ず“人”が必要とされます。組織が拡大しても、「人を大切にする」原点を忘れないこと。そうした矜持があるからこそ、クライアントからいただく「いい人材が欲しい」というご要望に対して、自信を持って派遣スタッフのみなさんをご紹介できるのです。