「誰もが個性を活かせる共生社会を実現したい」。そんな一人の社員の想いが「東京2025デフリンピック」の理念と重なり、公式協賛が実現しました。大会100周年という記念すべき節目に、ともに歩むことを決めた大林組。社員の熱意を大切にし、それが社会貢献へとつながっていく。そんな企業文化を誇りに感じています。
社員の「声」が、組織を動かす波動に。東京2025デフリンピック 協賛に込めた、私たちの本気
はじまりは、社内イントラネットに掲載された一つの記事でした。2025年、スキー部所属の岩佐さんが日本代表として活躍する様子を紹介した直後、社内掲示板に「身障者スポーツや選手を支援することで、もっとすてきな会社になれるのでは?」という意見が届いたのです。
ちょうどその頃、私たちはDiversity(多様性)とInclusion(包摂)を推進する中で、一人ひとりが活躍の機会を逃さない「Equity(公正性)」の重要性を痛感していました。 しかし、それをどう具現化すべきかと模索していた時に、この意見で浮かんだキーワードが「身障者とスポーツ」でした。
そこで、以前一緒に仕事をした、聴覚に障がいがありながらも挑戦を続ける社員に問い合わせをしたところ、即座に返信がきました。「それならデフリンピックです。2025年に日本で初めて、しかも東京で開催されるんです。でも、パラリンピックに比べて知名度が低く、盛り上がりに欠けているのが悔しくて……」という内容。 さらに、「社内にいる元デフサッカー日本代表の野呂さんも大会に関する情報を知っているはずです。」と教えてくれました。
このやり取りをきっかけに、社内の聴覚障がいがあるメンバーとの情報交流が始まりました。そこでわかったのは、皆さんが抱く「デフリンピックの認知度を上げたい」という、切実なほど強い想いでした。
「それならば、私たち大林組も協力したい」。 もっとすてきな会社になるための一歩として、大会100周年という歴史的な節目となる「東京2025デフリンピック」のトータルサポートメンバーになることを決めました。
▲東京2025デフリンピック協賛企業・団体交流会で決意表明を行う家根谷さん(写真左:元オリンピック日本代表選手)
大林組は「事業に関わるすべての人々を大切にする」という企業理念を掲げ、人権や多様性を尊重し、すべての社員が自分らしく活躍できる職場づくりをめざしています。 この理念に共感して集まった社員の想いが次から次へと連鎖し、大きな波動が生まれていきました。
街を桜色に、社内を情熱のうねりに。東京2025デフリンピック を盛り上げる社内外の取り組み
大林組が東京2025デフリンピックへの協賛を決定したのが2025年の3月上旬。当時、大会運営委員会は、メインカラーの桜色で街を彩る「さくらキャンペーン」の真っ最中でした。
私たちは建設会社の特色を活かし、工事現場の仮囲いへの大会ポスター掲出を検討しましたが、トータルサポーターとして参画した頃には、すでにキャンペーンは中盤。準備期間の短さに不安もありましたが、関東周辺をはじめ東北、北陸、中部から計36の工事事務所が快諾してくれたおかげで各地の現場には桜色のポスターが掲げられ、選手への応援の意を示すことができました。
また、社内でも新たな動きが始まりました。聴覚に障がいのある社員が自主的に手話を教えていることを知り、「協賛を機に社内での認知度をさらに高めよう」と、手話Caféを開催してみてはと提案があったのです。
この呼びかけに、元デフサッカー選手の野呂さんや、最初に大会を教えてくれた社員をはじめ、全店から有志が集まりました。メンバーの中には手話ができる聴者もおり、初心者とろう者の会話や感情をつなぐ「橋渡し」を担ってくれました。Cafeは月2回のペースで、自己紹介や観戦時の応援など毎回テーマを決め、楽しみながら手話に親しむ雰囲気で進めていきました。
▲「手話Cafe」は講師の野呂さん(写真上)、谷口さん(写真下)と有志メンバーの協力により実現
運営を通じて再認識したのは、手話は単なる手の動きではなく、表情や首の動きで喜怒哀楽や意思を伝える「言語」であるということです。地域による方言の違いもあり、開催前の準備は多忙を極めました。それでも「11月の大会開催まで続けたい」という強い意志で継続し、計14回、延べ405名が参加。この活動は、今や社内の大きな「うねり」のひとつとなり、大林組公式Xではデフリンピックを応援する手話メッセージを配信しました。
「次は自分が支える側に」。手話とテクノロジーでつないだ、デフリンピックの12日間
2025年11月に開催された東京2025デフリンピック。12日間にわたる熱戦が繰り広げられ、日本選手団は史上最多となる計51個のメダル獲得という大健闘を見せ、大きな感動とともに閉幕しました。
大会期間中の11月20日・21日の2日間、東京アクアティクスセンターでの水泳競技において、当社から社内応募で集まった社員19名がボランティアのサポートスタッフとして活躍しました。
▲一日目のサポートスタッフ
▲二日目のサポートスタッフ
参加者の多くはボランティア初体験でしたが、その動機は多彩です。「これまで参加した大会でボランティアの方にお世話になった恩をこの場で返したい」、「退職後のセカンドライフを見据えてボランティア経験を積みたい」、「子どもとパラスポーツを観戦する中で、次は大会を支える側になりたいと思った」など、一人ひとりが熱い思いを抱いて参加しました。
大会運営側が事前に用意した手話言語やろう文化を学ぶ研修を終え、当日は総合受付での案内や入場規制、さらには表彰式のサポートまで大会運営の最前線を担当。会場では、手話スキルを持つ社員が海外の方々と手話を通して直接やり取りする場面も見られました。
また、国籍や障がいの有無を問わず、誰もが円滑に交流できるよう、多言語対応の音声文字化や筆談機能を備えたタブレットも積極的に活用。メンバーは会場の盛り上がりを肌で感じながら、コミュニケーションの工夫や多様性への理解を深めることができました。
以下に、ボランティアとして参加したメンバーの感想の一部をご紹介します。
■参加者の感想
・普段できない経験ができ、有意義な時間を過ごせた。
・選手へ向けて手話での応援・拍手は会場全体が一体になる熱気を感じた。当日までに手話技能検定3級を勉強し、合格することができた。
・業務で関わらない社員同士の交流ができて楽しかった。
・海外の方への手話対応が難しかった。これを機に国際手話スキルを高めていきたい。
・もっと手話を使っていろいろな方とコミュニケーションを取りたかった。
・自分も片耳難聴というハンディキャップを抱えての参加だったが、選手たちの活躍する姿に感動した。
・国際大会の運営の様子や舞台裏など、興味深く勉強になった。
見えない障がいに、彩りを。デフリンピックで見つけた「世界が重なり合う」ための雰囲気づくり
デフリンピックに出場するには、「補聴器などを外した状態で、きこえる一番小さな音が55デシベルを超えている(一般的な会話が聴き取れないレベル)」という条件があります。しかし、一口に「きこえない」と言っても、選手一人ひとりによって「聴こえ方」は実に多様です。
今回ボランティアに参加した立石さんも、その一人です。片耳に難聴がある彼女は、選手たちがどのような工夫をして競技に挑み、周囲とコミュニケーションを交わしているのかに興味を持ち、今回応募を決めました。
ボランティア活動中、彼女には驚くべき出会いがありました。偶然バディを組んだ平井さんもまた、同じ「片耳難聴」だったのです。日常的に抱えている困難さを共有し合えたことをきっかけに、二人は「『聴こえの多様性』について、もっと社内の理解を広げたい」と決意。実名・顔出しでの社内共有を申し出てくれました。
聴覚障がいは多くの場合、外見だけではわかりません。まずは「聴こえの多様性」について多くの人に知ってほしいと、二人は具体的な合理的配慮として3つの例を紹介してくれました。
さまざまな聴覚障がいを持つ人々に対する合理的配慮は多岐にわたりますが、最も大切なのは必要な人が「必要だ」と言える雰囲気づくりです。自身の状況や困りごとを周囲に伝えやすい環境を、全員で育んでいくことが欠かせません。
私たち大林組は、東京2025デフリンピックのトータルサポーターとしての活動を通じ、聴こえに対する困難さの有無に思いを寄せ、きこえない・きこえにくい人と、きこえる人の世界が重なり合う社会、そして誰もが安心して過ごせる社会をめざしてまいります。
※ 記載内容は2026年3月時点のものです
