体を動かすことが好きだった子ども時代を経て、憧れの航空業界へ
福井県の自然豊かな環境で育った私は、家でじっとしているよりも外に出て友達を探しに行くような子どもでした。山に昆虫採集に出かけたり、海で泳いだり、夏が終わる頃には真っ黒に日焼けするまで野外を走り回っていました。そんな生活の中で、自然と体を動かすことが好きになり、学生時代にはサッカー、水泳、剣道などの運動部に入部。当時は単純にスポーツが楽しくて部活動に打ち込んでいましたが、今振り返ってみると、この経験が現在のグランドハンドリングの仕事に大きく役立っていると感じています。
グランドハンドリングとは「航空機地上支援業務」の総称で、航空機の誘導や荷物の仕分け・搬送、PBB(空港ターミナルと航空機をつなぐ搭乗橋)の操作など多岐にわたります。体力勝負の仕事も多く、しかもチームで取り組むので、部活動で培った体力とチームスポーツで学んだ協調性は、まさに今の仕事に欠かせない要素だったのです。
高校卒業後の進路を決める時、私は航空機に携わる仕事がしたいという明確な目標を持っていました。そのきっかけは、旅行などで空港を訪れた際、展望デッキから見たグランドハンドリングスタッフの姿でした。機体のすぐそばで働き、出発する飛行機に手を振る姿に憧れを抱き、何度も見かけるうちに「自分もあの場所で働きたい」という思いが強くなっていきました。航空機に携わる仕事は数多くありますが、その中でもグランドハンドリングは機体の一番近くで働ける仕事です。私にとって「やってみたい」が詰まった仕事でした。
現場への近道を考え、私は航空専門学校のエアポートサービス科への進学を選びました。在学中には実際に空港で働いていた先生方から、グランドハンドリングの基本や特殊車両の操作方法など、実践さながらの授業を受けることができました。就職活動では、航空業界の中でもグランドハンドリングの職種に絞って企業を探しました。特にマーシャリング作業(到着機を駐機場まで誘導する業務)やプッシュバック作業(出発機を自走できる誘導路まで移動させる業務)といった、グランドハンドリングの中でも花形と言われる仕事をやってみたいという思いがありました。
卒業後は、グランドハンドリング全般を一手に担う会社に入社しました。マーシャリングもプッシュバックも、手荷物搬送も、様々な特殊車両の運転も全部やってみたい。そんな欲張りな私にとって、幅広い業務に携われる環境は大きな魅力でした。
故郷への想いが導いた転職。積み込み作業は「先を読む力」が必要なパズルゲーム
前職では、大きな空港で手荷物の仕分けや搬送、貨物の積み込み作業、翼端監視作業、貨物上屋作業、機内清掃作業など、飛行機の運航を支えるさまざまな地上業務に携わりました。専門学校で学んだとはいえ、最初から手荷物や貨物を上手に積み込めたわけではありません。貨物スペースには限りがあるので、効率よく、そして定時性も意識して作業するのは本当に大変でした。先輩からアドバイスをもらったり、失敗しても自分なりに工夫したりしながら、毎日何百個もの荷物の積み込みを行いました。今ではスムーズに積み込めますが、それはあの頃の努力の成果だと思います。
積み込み作業で大切なポイントはいくつかあります。もちろんお預かりした手荷物を時間内にすべて積み込むことは大前提ですが、ただ積み込めばいいわけではありません。飛行機は飛行中に加減速、上下左右の動きが加わるため、大きさ・重さ・形状の違う手荷物や貨物をバランスよく積み込まないと荷崩れして破損してしまうのです。しかし時間の制約もあり、これが最初はなかなか難しいポイントでした。積み込み作業はよくパズルゲームに例えられますが、パズルゲームが上手な人は次にどんなブロックが来るか見ながらプレイしています。積み込み作業もその要領で、「次は大きなスーツケースが来る」、「次は柔らかいソフトバッグが来る」などと先読みしながら進めるのが上手に積み込むコツです。
そんな充実した日々を過ごす中で、ふと心に浮かんだのは故郷への想いでした。福井県には定期便のある空港がないので、飛行機に乗る場合はお隣の石川県にある小松空港を利用していました。昔からの思い出のある空港で、私もいつかは働いてみたい。地元に近い場所で働き、恩返しがしたいと思ったのが転職を考えたきっかけです。自分がやりたかったグランドハンドリング業務があるのはもちろん、日本航空の子会社としての安定や充実した福利厚生なども決め手となり、私は地元へのUターン転職を決意しました。
自分の仕事の先にはお客さまの笑顔がある。コロナ禍の取り組みで得た気づき
現在、私は、JKMQのグランドハンドリンググループに所属しています。航空に携わる従事者すべてに言えることですが、安全運航こそが私たちの揺るぎない最大のミッションであり、お客さまに安心して飛行機をご利用していただくために日々努力しています。その中で、定時性やスムーズな手荷物返却などサービスの質を高め、お客さまに「またJALの飛行機に乗りたい」と思っていただけるように、一便一便に対して誠心誠意とまごころを込めて業務に取り組んでいます。
現職では、小松空港で行われる搬送作業や積み込み作業はもちろん、念願だったプッシュバック作業やマーシャリング作業、そしてLM(Load Master)と呼ばれる搭載責任者の業務をメインに担当しています。また、グランドハンドリング以外では毎月の勤務表を作成するデスクワークや外航便の教官も担当しています。リーダーという役職に就いており、業務では他のメンバーに的確な作業指示を出したり、上司や先輩方を補佐したり、後輩たちへの教育や指導をしたり年齢や社歴でも中堅の立場なので、先輩方と後輩たちの懸け橋役を担っています。
転職後に最も印象深いのは、コロナ禍での取り組みです。航空業界も国際線の運休や国内線の減便を余儀なくされた中で何かできないかと模索し、修学旅行が中止になった地域の中学生を対象に「周遊チャーターフライト」という企画を考案したのです。私もその企画の一員として生徒さん用に模擬パスポートをつくり、チャーター便に同乗して撮影係を担当しました。人生で初めて飛行機に乗った生徒さんもいて、最初は緊張から口数も少なかった子が、帰る頃には「とても楽しかったです」「また飛行機に乗りたいです」と声をかけてくれて、その笑顔がとても鮮明に記憶に残っています。グランドハンドリングは普段、お客さまと直接触れ合うことが少ない仕事ですが、この企画を通して自分の仕事の先には人の笑顔があるのだと気づき、自分の仕事のやりがい、誇りを再認識することができました。
一方で、LM業務では苦労もありました。LMは担当便の搭載作業を統率し、チームを取りまとめるとても責任ある業務です。飛行機は毎回同じように折り返し、飛んでいくわけではありません。お客さまや手荷物・貨物の数も毎回変わりますし、遅れて到着することもあれば、搭載してはいけない危険物や荷量などの制限もあります。訓練生の時には、この膨大な情報を元に作業を組み立てることに苦戦し、作業後に「もう少しこうすればよかった」と反省することも多くありました。 屋外業務は航空機の近くで行うため、騒音でなかなかコミュニケーションが取りにくい状況で、自分の作業指示がうまく作業者に伝わっていなかったこともありました。そこから「伝えた」と「伝わった」は違うのだと学び、作業する場所の環境、仕事への理解度、経験の違いを考慮し、相手の立場に立ったコミュニケーションを取るようになりました。独り立ちした今でも失敗や反省は多くありますが、その経験は確実に自分の力になっていると感じます。
前職と現職では、取り扱う航空機や作業内容、空港の規模も違いますが、前職で実践していた良い取り組みを今の職場に取り入れることで、効率や安全性を高められると思います。
飛行機が出発する時、グランドハンドリングのスタッフがお見送りに手を振ると、機内のお客さまが手を振り返してくれることがあります。実は、この姿は地上からものすごくはっきり見えて、「タイムプレッシャーのある中で無事にお客さまを送り出せた」という安堵と感動を味わえる瞬間なのです。
「知識の宝庫」を目指して。グランドハンドリングという仕事の魅力をもっと広めたい
JKMQに入社して約6年が経ち、グランドハンドリングの業務に関する資格はひと通り取得しました。これからは一つ一つの業務の質を高め、より良いサービスをお客さまに提供できるようにしたいと思っています。資格を取ることがゴールではなく、そこからがスタートなので、日々の業務の中で、どうすればもっとスムーズに、もっと安全に作業ができるのかを考え続けています。
実を言うと私には、目標としている人物がいます。当社のグランドハンドリング業務の教官(指導員)を務める方で、1つ質問したら10の答えが返ってくるような、一言で言うなら「知識の宝庫」のような方です。私もいつかはそんな頼れる教官になれるように、日々の業務に取り組んでいます。グランドハンドリングの知識には2つの種類があり、1つは「記憶する知識」です。各種作業のマニュアルは改定されますし、新しい航空機の情報や会社別のルールなど勉強しなければいけないことも多数あります。私は勉強を後回しにするタイプの子どもだったので、今は「早めに・貯め込まない」を意識して勉強を続けています 。もう1つは「経験」という知識です。これはまさに百聞は一見にしかずで、言葉で説明された難解な機械構造も、実際の航空機を見れば一気に理解が進みます。今日の経験はいつか役に立つ日が来ると信じて、「経験できるチャンスは前のめりに」の意識を大切にしています。
また、もう1つの目標としては、当社が定期的に開催している航空教室などのイベントを通じて、グランドハンドリングに興味を持ち、「将来自分もやってみたい」と思ってくれる人を増やしたいと考えています。航空の仕事と聞くとパイロットやキャビンアテンダントをイメージする方が多いと思いますが、1機の飛行機を安全に飛ばすためにはそれ以外にも多くの人間が携わっています。我々のグランドハンドリングという仕事は、まさに縁の下の力持ちという言葉がぴったりの仕事ですが、まだまだ知名度が低いと感じます。この仕事の魅力をもっと対外的に発信し、私がこの仕事に興味を持った時のように「自分もやってみたい」と感じてもらえる機会を提供できればと思います。
飛行機が出発する時、私たちは「オペレーションスタッフや旅客スタッフなど多くの仲間たちがつないできたバトンを受け取り、無事にお客さまをお見送りできた」という安堵を味わいながら手を振っています。大変なことも多い仕事ですが、この瞬間は何度経験しても「やっていて良かった」という達成感と感動を感じます。当社は、グランドハンドリング業務が未経験の人や女性も活躍している職場なので、「航空機の知識がない」「体力にあまり自信がない」という方でも安心して挑戦してみてください。仲間とのコミュニケーションが苦ではない方、最後まで投げ出さない責任感のある方、そして何より仕事を楽しんでくれる方、もちろん飛行機や空港が大好きな方も大歓迎です。

