海外駐在経験者が集う国際業務の最前線で挑む地域経済活性化
私が所属する市場国際部アジアビジネス支援室は、地域企業の海外展開を支援する専門部署です。海外ネットワークの構築や現地調査、事業マッチング、販路開拓支援など、海外展開を通じて東北の企業の売上創出につなげるための実務支援を担っています。宮城県や仙台市をはじめとする地方自治体や関係機関とも連携しながら、地域金融機関ならではの国際業務の視点から、地域経済の豊かさの実現に貢献することがミッションです。
背景にあるのは、人口減少や若年層の流出による地域経済の縮小、輸入物価の高騰による企業収益力の低下など、日本、そして地域が抱える構造的な課題です。こうした状況に対し、地域企業に「海外で戦えるチャンス」と「挑戦できる場」を届けることで、新たな活路を見出そうとしています。
私自身は、本部での企画業務に加え、自治体などから受託する海外ビジネス関連のプロジェクト運営を担当しています。事業全体の企画・設計から、各社の課題に応じた支援方針の検討、現地企業とのマッチング、渡航・商談支援、実施後のフォローまで、構想段階から実行支援まで幅広く関わっています。
私が所属する部署の大きな特徴は、所属する行員全員が海外駐在経験者であることです。中国、シンガポール、タイ、イギリス、ベトナム、インドネシアなど、多様な国・地域での勤務経験を持つメンバーが集まっています。興味深いのは、私を含め、学生時代に海外経験がなかったメンバーがほとんどだという点です。実際の現地勤務を通じて語学を身につけ、文化や価値観の違いに向き合ってきた人たちばかりです。
そのため、部署全体にオープンでフラットな雰囲気があります。海外業務特有のスピード感や柔軟性が求められる環境で培われた、率直な意見交換や変化を前提とした行動スタイル、そして多様な考え方を尊重する文化が、この部署ならではの強みです。
経営広報から海外へ。現場で気づいた「自分の挑戦軸」
アジアビジネス支援室との出会いは、入行5年目でした。当時は本部で経営広報業務を担当し、各部署が作成したニュースリリースの審査や、パブリシティ推進、投資家対応にあたっていました。支店や各部が積み重ねてきた成果が行外に届いていく、その最終工程に立ち会う仕事です。銀行全体の動きが見えるおもしろさがあり、大きなやりがいを感じていました。
同時に、少しずつ関心が向くようになったのが、その成果が生まれるまでの過程でした。リリースとして表に出るのは、あくまで結果の部分です。そこに至るまでには、お客さまとの交渉や、何度も練り直した提案、思うようにいかなかった試行錯誤があったはずですが、発信する立場の私は、その部分までは十分に知りませんでした。成果の背景にある現場の動きをきちんと理解するために自分も当事者として現場に立ってみたい。そんな思いが強くなっていきました。
ちょうどその頃、海外トレーニーの募集がありました。派遣先は上海。「人生で一度くらい、海外という環境に身を置き、自分がどこまでできるのか挑戦してみたい」と考え、参加を決めました。
上海では、メガバンクの中国現地法人に出向し、企業の海外戦略策定や業界調査業務を担当しました。最初に直面したのは、困難というよりも「自分の常識が通用しない」という戸惑いです。日本では当たり前だと思っていたことが、現地ではそうではない。だからこそ、「なぜそうなるのか」を一歩引いて考え、相手の考え方を理解しようとする姿勢が求められました。
自分の価値観だけを基準にするのではなく、 「相手の当たり前を尊重する」。その姿勢こそが、異国で信頼関係を築くための最も重要な要素だったと感じています。
海外で得た視点が、支援の質を変えていく
上海での生活は、毎日が刺激に満ちていました。日本では当たり前とされることが、現地では異なる形で受け入れられていることも多く、最初は戸惑うこともありました。しかし、生活を続けるうちに、「どちらが正しいか」ではなく、「そういう違いがある」と捉えられるようになりました。
この経験を通じて学んだのは、自分の常識だけで判断せず、相手の文化や価値観、その背景まで理解しようとする姿勢です。現在、地域企業の海外展開を支援する中でも、「日本ではこうだから」と考えるのではなく、「現地ではどう受け止められるのか」「相手にとってどのような価値があるのか」という視点を大切にしています。
自分自身が異文化の中で感じた戸惑いや、そこから得た気づきがあるからこそ、海外に挑戦する企業の不安や難しさにも寄り添えると感じています。企業ごとの強みや課題を丁寧に捉え、それぞれに合った海外展開の可能性を一緒に考える。上海で得た視点は、今の私の仕事の土台になっています。
「海外=日常」に向けて。地域と世界をつなぐ存在でありたい
この仕事の大きなやりがいは、一つのプロジェクトをやり遂げることだけでなく、その過程で築いた信頼が、次の支援へと広がっていくことです。自治体から受託した事業では、多くの関係者と協力し、さまざまな課題を一つずつ解決しながら、プロジェクトを形にしてきました。 その結果、新たなプロジェクトの相談をいただいたり、参加企業から当初の支援内容にとどまらない相談を受ける機会も増えました。そこから新たな支援が生まれ、お客さまの事業や売上の拡大に結び付いたときには、自分の仕事が次の成果につながっていることを実感します。企業が「海外でも通用する」と自信を持つ瞬間に立ち会えることは、この仕事ならではの醍醐味だと感じています。
一方で、海外展開は企業にとって決して簡単な挑戦ではありません。文化や商習慣、言語など、国内では経験しない壁に直面することもあります。だからこそ、単に海外との接点をつくるだけではなく、企業それぞれの強みや課題を丁寧に捉え、その企業に合った海外展開の可能性を一緒に考えていくことを大切にしています。
今後は、行政・金融機関・企業がそれぞれの強みを持ち寄り、海外展開を総合的に支える仕組みづくりにも挑戦していきたいと考えています。「海外=特別」ではなく、「海外=日常」。地域企業にとって海外への挑戦が自然な選択肢となる環境をつくることで、地域の企業が持つ可能性をさらに広げていきたいと思っています。
文化や言語の違いを越えて、企業の想いが海外の誰かに届く瞬間があります。その積み重ねが企業の成長につながり、やがて地域全体の力になっていく。地域の企業と世界をつなぎ、その挑戦を支えることが、私たちの役割だと考えています。これからも変化を楽しみながら、地域の可能性を世界へ広げる仕事に取り組んでいきたいです。
