AI駆動開発の最前線――AI・データ基盤へのモダナイゼーション
塩沼さんは現在、どのような業務に携わっているのでしょうか
現在はあるSIerのプロジェクトに参画し、トライアローから2名体制で業務を進めています。私はチームリーダーとしてプロジェクトを推進しながら、自身でも設計や実装を担当しています。
現在の業務は大きく2つあります。
ひとつは、長年運用されてきた商用統計解析言語による巨大システムを、最先端の統合データサイエンスプラットフォームへ移行するプロジェクトに挑戦しています。
もうひとつは、移行先となるプラットフォームを実際に利用するユーザー向けの教育支援ですね。利用方法の整理や資料作成、利用者向けの説明なども担当しています。
技術的にもかなり専門性が高そうですね
そうですね。とくに移行プロジェクトについては、単純にプログラムを書き換えるという話ではありません。既存システムがどういう思想で作られているのかを理解した上で、新しい環境でどう再現するかを考えなければなりません。
私たちのチームは、AI駆動開発を駆使して「商用統計言語からモダンな統合データプラットフォームへの移行」を自動化・効率化する仕組みそのものを開発しています。例えるなら、膨大なレガシーコードの刷新を圧倒的なスピードで推し進めるための、専用の『変換エンジン』をビルドしているようなイメージですね。
プロジェクトの中でも比較的広い裁量を与えていただいており、設計から実装、改善提案まで主体的に関わっています。
AI駆動開発という言葉を聞く機会も増えていますが、実際にはどのようにAIを活用しているのでしょうか。
私たちのチームではClaude Codeを中心に活用しています。ただし、それだけではありません。CopilotやGemini、ChatGPTなども用途に応じて使い分けています。「どのAIを使うか」ではなく、「どの課題にどのAIが適しているか」という考え方ですね。
世の中にはさまざまな生成AIがありますが、それぞれ得意なことが違います。ですから、ひとつに限定するのではなく、最適なものを選択するようにしています。
AI駆動開発というと、コード生成をイメージする人も多いと思います
確かにそうだと思います。ただ実際には、コード生成だけがAI活用ではありません。
私たちは要件を整理する段階からAIと壁打ちを行っています。お客さまの要望を整理し、それを仕様に落とし込み、さらに実装手順へ変換していく。実装後も、仕様とコードに齟齬がないかをAIで確認します。
つまり、要件定義、設計、実装、検証という一連の流れの中にAIが存在しているんです。
私は「AIがコードを書く時代」というより、「AIが開発プロセス全体を支援する時代」になったと感じています。
開発の進め方そのものが変わってきているのですね。
大きく変わっています。よく「生産性が何倍になったのか」という話になりますが、私は少し違う見方をしています。もちろん効率化はされています。ただ、それ以上に価値を感じているのは品質面です。
例えば、ドキュメントの更新。
本来であれば仕様変更が入るたびにドキュメントも更新されるべきですが、現実にはそこまで手が回らないことも多いんですよね。すると仕様書が古くなり、実際のシステムとの間にズレが発生する。これまでは工数の問題で諦めざるを得なかった部分が、AIによって手を付けられるようになった。そういう意味では、AIは単なる効率化ツールではなく、開発品質を高める存在だと思っています。
ローコード開発からAIへ――変わらなかった「考えること」の価値
現在はAI駆動開発の最前線で活躍されていますが、もともとはローコード開発にも携わっていたそうですね
はい。実は私は、昔からAIだけを追いかけていたわけではないんです。前職では環境関連の業務を担当していて、工場の操業データや環境データを扱っていました。
当時から、自分でシステムを作ることが多かったんです。もともと業務で扱うデータ量が多く、手作業では限界がありました。誰かがやってくれるわけでもなかったので、自分でシステムを作るようになったんですね。風向きや風速を分析したり、条件によってリスクを予測したり。今でいう機械学習のようなこともかなり早い段階から取り組んでいました。しばらくそこで働いた後、トライアローに出会いました。
トライアローという会社が目に止まったきっかけは何だったのでしょうか
当時、トライアローはローコード開発に力を入れていて、開発エンジニアの募集を積極的に行っていました。正直に言うと、もしそのときにトライアローがローコード開発に取り組んでいなかったら応募していなかったかもしれません(笑)
それくらい興味を持った技術だったんです。
当時はAIではなく、ローコードに魅力を感じていたのですね。
そうです。ただ、今振り返ると本質は同じだったと思っています。私は昔から「コードを書く速さ」そのものに価値を感じていたわけではありません。むしろ、何を作るべきかを考えたり、全体のロジックを設計したりする方が好きなんです。ローコードもAIも、その部分に集中するための技術なんですよね。
実装作業を効率化し、人間がより本質的な部分に時間を使えるようにする。だから、ローコード開発からAI駆動開発へ移ったというよりは、一貫して同じ方向を向いていた感覚があります。技術は変わったけれど、自分が価値を感じている部分は変わっていないんです。
AIの時代だからこそ、人間にしかできないこと
生成AIの進化によって、「エンジニアの仕事がなくなるのではないか」という不安の声も聞かれるようになりました。塩沼さんは現在、AI駆動開発の最前線にいる立場として、この状況をどう見ていますか
そういった不安を持つ方がいるのは自然なことだと思います。実際、ここ数年でAIができることはものすごく増えました。コード生成はもちろんですし、設計レビューやテストの支援、ドキュメント作成までできるようになっています。昔だったら数日かかっていた作業が、数十分で終わることも珍しくありません。
ただ、私はAIによってエンジニアの価値がなくなるとは思っていないんです。むしろ逆で、今まで以上に人間にしかできない仕事が明確になってきたと感じています。
人間にしかできない仕事とは、具体的にどのようなことでしょうか。
一番大きいのは「ゴールを決めること」ですね。AIは非常に優秀です。与えられた目的に向かって最適な方法を提案することは得意ですし、実装もかなりのレベルでこなせます。ただ、「何を作るべきか」は決められないんです。
例えばお客さまから「業務を効率化したい」という相談を受けたとします。AIは効率化の方法はいくらでも提案できます。でも、本当にお客さまが解決したい課題は何なのか、その結果どんな状態になれば成功なのかまでは決められません。最終的なゴールを定義するのは人間です。
そして、そのゴールへ向かうためにどんな中間目標を置くか、どの順番で進めるか、といったことも人間が決めなければいけません。私はそこがエンジニアの本質的な仕事だと思っています。AIはそうした本質的な仕事に対してこれまで以上に多くの時間と労力をかけることができるようにしてくれるツールだと考えています。
AIが発達したことで、エンジニアに求められる能力も変化しているということですね
かなり変わっていると思います
従来は、コードを書く能力が重視される場面が多くありました。もちろん今でも大切です。ただ、AIがコードを書けるようになったことで、その価値の比重は少し変わってきています。
これからは、
「何を作るべきかを考える力」
「課題を整理する力」
「相手の要望を言語化する力」
こういった能力の重要性が高くなっていくと思います。
私自身、AIを活用するようになってから、以前よりも要件定義や設計について考える時間が圧倒的に増えました。コードを書く時間が減ったというより、本来もっと時間をかけるべきだった領域に時間を使えるようになった感覚ですね。
そう聞くと、AIは人間の仕事を奪うというよりも、役割を変えているようにも感じます
まさにそうだと思います。
私はAIを「競争相手」として見たことはありません。どちらかというと非常に優秀なチームメンバーに近いですね。
先ほども少し話しましたが、以前だったら手が回らなかったドキュメント整備などが良い例だと思います。開発現場では、仕様書と実装内容がズレてしまうことがよくあります。本当は更新したいけれど、工数が足りない。そういった場面でAIが支援してくれることで、人間はより重要な判断や調整に集中できるようになります。私はAIによって、人間がより人間らしい仕事に集中できるようになったと感じています。
若手エンジニアにはどのようなアドバイスを送りますか。
まずは小さなものでいいので、自分で作り切る経験を積んでほしいですね。メモ帳アプリでも、タスク管理アプリでも構いません。自分でゴールを決め、それを形にし、最後まで完成させる。その経験がとても大事だと思います。会社の仕事だけでは、なかなか全工程を経験できないこともあります。だからこそ、自分で何かを作る経験が大きな財産になります。AIはその挑戦を支援してくれる存在です。若手にとっては、むしろチャンスが増えている時代だと思います。
AI時代に活躍する人の共通点を一言で表すとしたら何でしょうか。
やはり「自分のゴールを持っている人」ですね。
AIはどんどん進化していきます。でも、その道具を使って何を実現したいのかは人間が決めるしかありません。自分がどこへ向かいたいのかを言語化できる人は強い。だから私はAIを恐れる必要はないと思っています。AIは仕事を奪う存在ではなく、自分が本当に価値を発揮するための時間をつくってくれる存在なんです。
技術の変化を楽しみながら、次の未来をつくる
塩沼さんは、ローコードからAI駆動開発へとキャリアを広げてこられました
振り返ると、自分一人の力だけではここまで来られなかったと思います。トライアローに入社した当時はローコード開発が大きなテーマでした。その後、市場の流れがAIへ向かい、私自身もAI案件へ挑戦する機会をいただきました。結果的に、技術トレンドの変化に合わせてキャリアを広げることができたんです。
トライアローの魅力はどのような部分にあると思いますか
私にとってトライアローは「船」みたいな存在だと思っています。
技術は常に変化しています。数年前に最先端だったものが、今では当たり前になっていることも珍しくありません。だからこそ、エンジニアは常に新しい技術をキャッチアップする必要があります。
一方で、個人だけですべての技術トレンドを追うのは難しいですし、新しい案件へ挑戦する機会を自力で見つけ続けるのも簡単ではありません。
その点、トライアローはさまざまなお客さまと取引があり、多種多様なプロジェクトがあります。その中には新しい技術が求められる現場もあれば、新しい市場へ挑戦している企業もある。だから、常に私たちエンジニアに「航路」を示すことができる会社だと思うんです。
それはエンジニアにとっては大きなメリットですね
そう思います。私自身もローコード開発から始まり、現在はAI駆動開発に携わっています。もし会社が変化を止めていたら、この経験はできなかったかもしれません。技術者にとって成長とは、新しい技術を学ぶことだけではありません。自分が今持っている経験や知見を、新しい領域でどう活かしていくかだと思っています。その機会を与えてくれる環境があることは、とてもありがたいですね。
最後に、どのような方と一緒に働きたいですか?
人生の最終ゴールまで決まっている必要はありません。ただ、「3年後にこんなことをしていたい」という目標を持っている人とは、一緒に成長していけると思います。
AIが進化しても、自分がどこへ向かうのかはAIが決めてくれるわけではありません。だからこそ自分なりの目標を持ち、一歩ずつ前へ進もうとしている人と働けたら嬉しいですね。
技術は変わります。市場も変わります。でも、成長したいという気持ちは変わらない。そんな人と一緒に、次の未来を創って行きたいです!
