「まず自分が動くことで周りを幸せに」腹落ちした企業理念との出会い
オムロングループには、「われわれの働きで われわれの生活を向上し より良い社会をつくりましょう」という企業理念があります。また、オムロン エキスパートエンジニアリング(以下、OEG)には「生涯、エンジニア。」という考え方があり、私はそれに深く共感しています。
特に共感しているのは、「まず自分の働きから始まる」という考えです。いきなり社会を良くしようとするのではなく、自分自身が働くことで周囲に良い影響を与え、その積み重ねが社会を良くしていく。そして「絶えざるチャレンジ」というオムロンの価値観。この順序と継続がとても自然で、自分ごととして受け止めやすかったんです。
入社前は理念そのものを詳しく知っていたわけではありません。しかし働く中で理念に触れ続けるうちに、「自分の考え方に合っている」と感じるようになりました。以前は社憲を唱和する機会もあり、その中で少しずつ言葉の意味が自分の中に染み込んでいったように思います。エンジニアは成長し続けるために挑戦が欠かせず、その積み重ねが新たな価値の創出につながるところが、「生涯、エンジニア。」として挑戦を続けるOEGの考えとオムロングループの価値観のひとつである「絶えざるチャレンジ」とつながっているなと個人的に感じています。
調査スキルを武器に、UXリサーチャーから特許調査のプロへ転身
私がOEGに入社したのは2016年のことです。それまで東京でユーザビリティ評価やUXリサーチに携わっていましたが、オムロングループ内にユーザビリティテストを担うチームがあることを知り、興味を持ちました。また、年齢に関係なくスキルで評価してもらえる環境があると感じたことも入社を後押ししました。今年でちょうど10年になります。
入社後はUXリサーチのグループで活動していましたが、その後チームが解散し、現在は知財部門のもとで特許調査を受託するチームに所属しています。このチームは約5年前に立ち上がり、現在はシニア社員で構成されています。知財や技術分野の経験豊富なメンバーが揃う中で、私の出身は異色の存在だったかもしれません。
特許調査とは、特許データベースを活用しながら、新しい発明の出願前調査や他社権利の侵害防止調査、技術動向調査などを行う仕事です。私は当初、知財や技術の専門知識を持っていたわけではなく、「育成枠」としてチームに加わりました。最初は特許独特の表現や検索方法に苦労しましたが、実務を通じて学び、約2年かけて調査業務全般を担当できるようになりました。
振り返ると、UXリサーチと特許調査は一見まったく異なる仕事に見えますが、「調査」という本質は共通しています。情報を集め、仮説を立て、分析し、課題解決につなげる。その考え方やアプローチは大いに活かされました。異なる分野を経験したからこそ得られる視点や応用力が、自分の強みになっていると感じています。
生成AIで挑んだ特許調査と、受賞が教えてくれた「いい会社だな」という実感
企業理念を体現できたエピソードとして真っ先に思い浮かぶのが、オムロングループ全体で行われる表彰制度(以下、TOGA)への応募と受賞です。TOGAでは、各社・各部門の改善活動やチャレンジ活動が共有されます。
グループ各社から多くの取り組みが集まる中で、自分たちの活動も発信できて評価いただけたことは、大きな自信になりました。
取り組みの中心となったのは、生成AIの活用による品質と生産性の向上です。
特許調査では、検索によって抽出された数百件から千件近い特許文献を確認し、必要な情報を選別する「スクリーニング」という工程があります。従来は人の目で確認する必要があり、私たち60代のチームにとって、この作業は身体的負担も大きく、生成AI活用に挑戦したきっかけの一つでした。そこで評価基準を生成AIに学習させることで、選別作業の効率化を進めました。
また、海外の特許調査も大きく変わりました。これまでは翻訳作業を経て内容を確認する必要がありましたが、生成AIを活用することで外国語の文献を日本語で直接分析できるようになり、業務スピードと品質の向上につながりました。
さらに、開発担当者との打ち合わせ前に生成AIを用いて資料を分析し、「どのような調査が必要か」という仮説を立てられるようになりました。その結果、打ち合わせの質が向上し、調査の手戻りも減少しています。
こうした取り組みをTOGAへ応募した結果、700テーマ以上の応募の中から受賞することができました。受賞後のパネルセッションでは、執行役員をはじめ多くの方々が足を止めて話を聞いてくださり、励ましの言葉もいただきました。普段なかなか接する機会のない方々と直接対話できたことは、とても印象深い経験でした。
そして何よりうれしかったのは、OEGの担当者の方々が一緒になってTOGAの取り組みを盛り上げてくださったことです。私一人の挑戦ではなく、周囲と力を合わせてチャレンジできた。その一体感が、「OEGに入って良かった」「いい会社だな」と実感できた理由の一つでした。65歳まで残り数年というタイミングで、これほど心に残る経験ができたことは、仕事人生における大切な財産です。
ノウハウをAIに結実させ、シニアになっても挑戦し続けられる環境へ
今後挑戦してみたいことは、特許調査に限らず、これまで培ってきた知識やノウハウを誰もが活用できる形にすることです。例えばAIエージェントのような仕組みを活用し、開発者や知財担当者が必要な情報を得られる環境をつくれたらと考えています。
引退までに自分の経験や知見を生成AIへ取り込み、次の世代に役立ててもらえる形で残したいと思っています。それが調査業務に携わってきた人間としての一つの目標です。
また、社内の仲間や後輩たちには、自分たちの取り組みをもっと積極的に発信してほしいと思っています。OEG独自の自主ゼミ活動(エンジニア主導の社内勉強会)などを通じて、多くの社員が素晴らしい取り組みやチャレンジをしていることを知りました。しかし、その価値が社内外に十分伝わっていないと感じることもあります。ぜひ自信を持って発信し、チャレンジの輪を広げてほしいと思います。
私たちのチームはシニア社員が中心ですが、年齢を重ねたからこそ培われた経験や知見があります。生成AIのような新しい技術も取り入れながら挑戦を続けられる環境があることは、OEGの大きな魅力だと思います。実際に私自身も60歳の定年後も第一線で仕事に携わり、新しいテーマへ挑戦し続けています。
そして今後めざしたいのは、生成AIを活用した調査業務のエキスパートとして、業務効率化や新たなコツの発見、調査精度の向上に貢献できる存在になることです。
OEGには、年齢に関係なく挑戦を後押ししてくれる環境があります。私自身も60歳を超えてからも新たな分野に挑戦し、生成AI活用やTOGAへの応募など多くの経験を積むことができました。ベテランの方々にも、「今さら」ではなく「今だからこそ」と考え、ぜひ新しいことに挑戦してほしいと思います。日々の積み重ねが、周囲の人や社会をより良くしていくことにつながると信じています。

