ただ処理するのではなく、自分が介在する価値を考える
私は現在、営業事務として、クライアントや協力会社、個人で参画してくださる皆さまとの契約手続きや、請求・支払業務を担当しています。
契約内容を確認し、請求・支払時の金額や条件を精査した上で、実際の処理までを行う仕事です。正しく処理されていて当然と思われる業務かもしれませんが、一つの確認漏れや誤りが、会社や取引先との信頼関係に影響することもあります。会社と、関わってくださる皆さまとの間を支える重要な仕事だと感じています。
今、こうした仕事に向き合う上で私が大切にしているのは、ただ正確に処理するだけでなく、「自分が関わることで、相手にどんな価値を提供できるか」を考えることです。
この意識を持つようになったきっかけの一つが、産育休からの復帰後に受けたOJTでした。復帰当初、契約や経理に関する業務は、私にとって経験の浅い領域でした。少しでも早く戦力になりたいと思い、最初の1カ月は、上司の仕事の進め方を徹底的にまねることにしました。
我流で進めるよりも、経験を積んできた人の判断や行動をそのまま吸収した方が、早く成長できると考えたからです。わからないことは質問し、教えてもらったことを実践する。その繰り返しの中で、上司が一つひとつの業務に込めている意図が、少しずつ見えるようになりました。
たとえば、メールを一通送る場合でも、誰を宛先にするのか、どのタイミングで送るのか、どのような情報を記載すれば相手が判断しやすいのかを考えます。必要な情報を機械的に伝えるだけでも、業務としては完了するかもしれません。しかし、相手の立場に立って考えると、宛先や伝え方、情報の順番など、工夫できる部分はたくさんあります。
上司の仕事を近くで見ながら、とくに影響を受けたのが、「自分が介在する価値」を常に考える姿勢でした。ただ処理するのではなく、自分が関わるからには、相手にとって少しでもわかりやすく、進めやすい状態をつくる。私も、どうせ取り組むのであれば、より良いものを相手に提供したいと思うようになりました。
契約や請求に関する業務では、絶対に外せない確認事項を押さえる一方で、相手との関係性や個別の事情にも配慮する必要があります。ルールを守ることと、柔軟に対応すること。その両方を成立させる上司の働き方を見ながら、日々学んでいます。
まだ目に見える大きな成果を出せているとは思っていません。それでも、以前であれば機械的に進めていた業務について、「この対応は相手にとってわかりやすいか」「自分が加えられる価値はないか」と考えられるようになったことは、自分の中での大きな変化です。
職場に守られるのではなく、自分で安定をつくる
大学卒業後、私は地元の市役所に就職しました。道路や公園、河川などを一定期間使用するための占用許認可に関する事務を担当し、その後、結婚を機に上京してからも地方公務員として区役所に勤務しました。
区役所では高齢者福祉を担当し、地域の高齢者の方々と一緒に、居場所づくりや生きがいの創出に取り組んでいました。
公務員を選んだ理由の一つは、「安定した仕事に就きたい」という思いでした。
当時の私にとっての安定とは、自分自身を大きく変え続けなくても、同じ場所で着実に働いていれば、将来の生活を見通せることでした。未知の環境へ挑戦するよりも、先の見える道を歩き続けることに安心を感じていたのだと思います。
そんな中、公務員として働く中で、私自身の仕事への向き合い方を大きく変える出来事がありました。
新入職員のOJT担当を任された際、自分の担当業務の繁忙期と、引き継ぎや指導の時期が重なりました。業務を抱えながら新人職員を育成することに苦戦しましたが、当時の私は「できない人間だと思われたくない」という気持ちが強く、周囲に助けを求めることができませんでした。
人に頼ることは、自分の能力が足りないと認めること。そんなふうに考えていたんです。
仕事を一人で抱え込み、思うように進まない状況に不満を募らせた結果、心身の調子を崩し、休職することになりました。
休職中に自分自身と向き合う中で、少しずつ考え方が変わっていきました。
どれほど自分が力をつけたとしても、一人でできることには限界があります。一人だけで頑張るよりも、周囲の力を借りた方が、より大きなことを実現でき、相手のためにできることも増えていく。そのことに気づきました。
以前の私は、人に頼ることを「できない自分を見せる恥ずかしい行為」だと捉え、自分がどう見られるかばかりを気にしていました。しかし、相手や組織のために何ができるかという視点に立てば、必要なときに周囲へ助けを求めることも、仕事を前に進めるための大切な行動です。
今では、困ったときや力を借りたいときには、ためらわずに周囲へお願いできるようになりました。
約1年間の休職を経て、元の職場へ復帰するか、転職するかを考えていた頃、当社代表の田中と出会いました。
公務員から民間企業への転職には、大きな怖さがありました。これまで身につけた公務員としてのキャリアやスキル、仕事に対する考え方では、民間企業で成果を出せないのではないかと思っていたからです。
転職して「できない自分」を突きつけられるくらいなら、公務員のままでいい。そう考えたことも一度ではありませんでした。
さらに、自分が民間企業で通用する保証もない中で、これまで安定だと感じていた環境を自ら手放すことにも怖さがありました。
迷っていた私に、田中はこう言いました。
「安定は、職場が提供してくれるのではなく、自分でスキルを磨いてつくるものだよ」
その言葉を聞いたとき、「確かにそうだ」と腑に落ちました。
それまで私は、安定とは「先の見える環境に身を置き続けること」だと思っていました。でも、どれだけ安定しているように見える職場であっても、その環境がこの先もずっと同じであるとは限りません。
むしろ、自分自身の価値を高め、環境が変わっても必要とされる力を身につけることができれば、職場に頼らず、自分の力で安定をつくることができる。
そう考えたとき、転職への見方が変わりました。
「だったら、いつまでも慣れた環境にとどまるのではなく、できるだけ早く自分の価値を高められる環境に身を置こう。職場に頼るのではなく、自分の力で安定をつくれるようになろう」
そう覚悟を決め、未経験の民間企業へ飛び込みました。
3人の会社から、専門家が集う組織へ
私が入社した当時、会社は社長を含めて3人だけでした。
部署という概念もなく、自分の担当領域が明確に決まっていたわけでもありません。「社長の仕事以外の仕事」や「社長から頼まれた仕事」を幅広く引き受ける、秘書に近い働き方だったと思います。
人数が少ないため、コミュニケーションはとてもコンパクトでした。何かを変えると決めれば、すぐに方向転換できます。必要のなくなった業務をやめ、新しい方法を取り入れるといった、業務のスクラップ・アンド・ビルドがしやすい環境でした。
一方で、毎日の業務を回すことに精いっぱいで、チェック体制の整備や業務の効率化にまで、十分なリソースを割けない状況でもありました。私自身、公務員時代に業務が属人化していることで苦労した経験がありました。そのため当時から、自分が今どのような仕事を抱え、どこまで進めているのかを、周囲からわかる状態にしておくことを意識していました。自分が不在になっても、会社としての事務作業が滞らないようにする。その考え方は、現在の契約・請求業務にも活きています。
その後、産育休に入り、約1年半仕事から離れました。
復帰したときに最も驚いたのは、会社が「組織」としてしっかり回り、成長していたことです。チェック体制やリスク管理が整い、営業を担当するメンバーも増えていました。それぞれの職種で専門的な知見を持つ方々が加わり、以前よりも多くのお客さまの役に立てる会社になっていました。
同時に、「自分の人生の舵を自分で取りたい」と考える方々に対して、より多くのキャリアの可能性を提案できるようにもなっていました。会社を離れている間に組織が成長していたことに驚くとともに、とても嬉しく感じました。
とくに大きな変化だと感じているのが、社内にいる素晴らしい人材をチームとしてお客さまへ提案し、案件の獲得や参画につなげられるようになったことです。
以前は、社外から人材を探し、案件とつなぐことが中心でした。しかし今は、社内で専門性を持った仲間が集まり、その力を組み合わせてお客さまへ価値を届けられるようになっています。
「これから、カジトルというブランドをもっと広げていける」その可能性に、今はとてもワクワクしています。
復帰直後は、会社が成長しているからこそ、自分も一日も早く戦力にならなければという焦りがありました。加えて、子どもの体調不良などによって、急な早退や休みが必要になることもあります。限られた時間の中で成果を出すため、仕事中は複数の業務を同時に進めるのではなく、一つずつ集中して終わらせることを徹底しました。
上司の仕事をまねながら、質問と実践を繰り返し、目の前の業務を積み重ねる。そうして少しずつ仕事に余裕が生まれ、ある日、新しい業務を「松原さんに」と任せてもらえたときは、本当に嬉しかったです。
復帰したばかりの頃は、経験のない仕事に対して不安がありました。しかし今は、初めての業務にも、以前より前向きに挑戦できるようになりました。
人と人との関係から、良い仕事が生まれる会社へ
創業期から現在まで、私は、代表の田中が「カジトルはこんな未来をつくりたい」と、少年のように目を輝かせながら語る姿を近くで見てきました。
時代やお客さまのニーズに合わせて、事業や会社の形は柔軟に変化しています。それでも、その根本にある思いは、創業当時から変わっていないと感じます。
そして今、その思いを一緒に実現しようとする仲間が、少しずつ集まってきています。長く会社に在籍し、田中が語ってきた夢を知っている立場だからこそ、これから加わる方にも「この会社で働けてよかった」と感じてもらえる環境をつくりたいと考えています。
リモートワークが中心の会社だからこそ、社員同士がお互いに良い関係性を築くきっかけをつくりたいと考えています。そして、良い関係性から良いパフォーマンスが生まれる、そんな会社としての好循環をつくっていきたいと思っています。
直近では、見積書の作成から契約、請求書の発行、支払処理までの一連の業務を、安心して任せてもらえる状態をめざしています。そのために、一つひとつの作業について、「なぜこの業務が必要なのか」「誰のために行っているのか」を考えながら、日々の仕事を積み重ねています。
さらに今後は、業務が特定の人に依存しない仕組みや、ミスを防ぐためのチェック体制づくりにも、より深く関わっていきたいです。将来的には、契約や請求を処理するだけでなく、会社全体のお金の流れを把握し、経営を支えるための改善提案ができる知識や視点も身に付けたいと考えています。
できないことを隠し、一人だけで抱え込んでいた過去の自分から、周囲の力を借りながら、より大きな価値を生み出そうと考えられる自分へ。
そして、職場に安定を与えてもらおうとしていた自分から、自らの力を磨きながら、仲間が安心して力を発揮できる会社をつくろうとする自分へ。
まだ、挑戦の途中です。それでも、変化を恐れず、新しいことをおもしろいと思える仲間とともに、カジトルのこれからを支えていきたいと思っています。
