将来を見据えながら「会社の成長」と「自分らしく働き続けられる職場」の両立をめざす
2025年10月1日に導入した「Wellness Advance」は、月経随伴症状、更年期障害、妊孕性の低下、性別特有のがんといった健康課題に直面する従業員が健やかに長期的なキャリアを築けるよう支援する制度。月経随伴症状や不妊治療、更年期障害のために通院する場合に利用できる「Wellness休暇」、不妊治療に専念できるよう最大2年間の休職が可能な「Wellness休職」、卵子凍結費用補助など、働き方と経済面のどちらもサポートする制度が設けられています。
企画したのは、田中と山崎が所属する人事部Corporate Rewardsチーム。人事領域のプロフェッショナルとして、社会情勢や将来的な変化予測を踏まえた人事制度の企画設計を担っています。
田中:私たちのミッションは、組織全体の生産性と競争力の強化へ貢献するために、全社や各事業部の戦略的目標に合わせて効果的な人事制度を構築し、従業員のパフォーマンスとモチベーションを高めることです。そのために取り組んでいることは、大きく3つ。
1つめは、全社の戦略目標に適した報酬体系の企画設計や点検。2つめは、従業員の多様な価値観やワークスタイルに応える勤務条件や両立支援制度の企画。3つめが、働きがいを向上させるための福利厚生施策の企画・運営です。
2人が主に担当するのは、両立支援に関わる制度です。加えて、田中は新たなワークスタイルの構築や見直し、労務トラブルへの対応、全社の労務管理サポートといった勤務条件に関わる業務を担当。山崎は、カフェテリアプラン、持株会、JTグループの保険制度といった福利厚生制度の企画・運営を行っています。
それぞれが日々仕事に向き合う上で大切にしているのは、会社の事業成長への貢献と、従業員一人ひとりが自分らしく働き続けられる環境づくりを両立すること。
田中:私たちの仕事が会社の事業成長につながるかを常に意識し、昨今の法改正に対応するだけではなく、「JTをより成長させていくためには、何が必要なのか」を考えることを重視しています。
山崎:同時に、「従業員が自分らしく働き続けられるためにはどうあるべきなのか」を考えることも必要です。私たちの部署には、従業員からの相談も多く寄せられます。なかなか人には言いづらい悩みを受け止めるチームとして、小さな声にも耳を傾けていくことを大切にしています。
「自分ごと」になる制度設計をめざし、「知ってもらうこと」から風土醸成に取り組む
会社の成長のため、従業員が自分らしく働き続けられる環境を実現する──「Wellness Advance」も、そのための制度として企画されました。アイデアが生まれたのは約2年前。チームミーティングで、「会社の未来のために、自分たちは何をしたいか」をディスカッションしたことがきっかけです。
山崎:当時私は、卵子凍結のための支援と、生理休暇が取りにくい風土を変えたいと提案しました。制度の有無だけでなく、それを必要とする人が安心して利用できる風土を整えたいという想いを持っていました。
田中:不妊に悩む方が増えている社会状況を背景に、JTでも従業員から不妊治療を支援する制度を求める声が上がっていました。また、経済産業省の試算によると、女性特有の健康課題による経済損失は、社会全体で約3.4兆円にのぼると推計(※)されています。こうした健康課題は、当然ながらJTにおいても例外ではなく、社内で議論を進めていくことになりました。
しかし、不妊治療をはじめとする性差に基づく健康課題は、女性だけに限られるものではありません。そこで、性別に関係なく全従業員を対象にすることで、より多くの従業員が「自分ごと」として捉えてもらえる制度設計をめざしました。
センシティブなテーマを含むこの制度導入に向けた最大の課題は、制度を活用しやすい風土の醸成にあったと振り返ります。
山崎:まずは各組織の人事業務担当者向けに説明会を開くなど、丁寧な説明を心がけました。説明会では、「どうしても女性のための制度になってしまうのではないか」といった声もあり危機感を覚えたこともありましたが、制度に込めた想いを伝えるコンセプト動画を作成して社内に公開したり、マネジメント層向けのeラーニングを用意したり、コミュニケーションをとりながら理解を広げていきました。
制度を使いやすくするためには、マネジメント側の不安を払拭することも重要。「不妊治療などに関して部下から相談を受けた際に、どのように対応したらいいのかわからない」という悩みをサポートするための施策も実施したと続けます。
山崎:eラーニングに具体的なコミュニケーション方法を学ぶ講座を取り入れたほか、不妊治療、月経随伴症状、更年期障害などの当事者がどのような悩みを抱えているかという情報や、職場で役立つTipsを掲載したガイドブックを作成しました。
他にも、男性更年期を経験した著名人を招いた講演会や生理痛体験会を開催しました。他者の「見えない痛みやつらさ」を自分ごととして捉えてもらうためには、まず「知ってもらうこと」が大切だと考え、情報や体験の場を提供しました。
田中:ガイドブックには、人事業務担当者からの「こういう場合はどう対応したらいいのか」という具体的な質問をたくさん反映させました。また、今回は保健師や産業医といった医療従事者との連携も図りました。マネジメント層がすべてを抱え込む必要はなく、対応に困ったら保健師に相談できる仕組みを整えたこともポイントです。
※ 出典:「女性特有の健康課題による経済損失の試算と健康経営の必要性について」(令和6年2月、経済産業省)
利用者の増加や従業員の反応から、一歩ずつめざす姿に近づいている手応えを感じる
制度導入以降、利用者は着実に増加しており、制度が浸透し始めた手応えを感じていると言います。
田中:「Wellness休暇」は、以前は生理休暇という名称でしたが、不妊治療や更年期障害にも適用できる休暇へと改めたことで、利用しやすくなったのではないかと感じています。
また、休暇を取得するだけでなく、医療機関での治療につなげてもらいたいという想いから、通院や治療にかかる費用を補助する制度も導入しました。男女ともに、こうした制度の利用も増えています。自分の体と向き合い、最大限のパフォーマンスを発揮してもらうという狙いが、少しずつ実現しつつあると実感しています。
山崎:男性更年期を経験した著名人を招いた講演会や生理体験会を開催した際、男性同士や男女間で更年期障害や生理についてごく自然に話している光景を目にし、一歩前進したと感じました。こうした取り組みの積み重ねが、変化につながってきているのかなと思います。
また、マネジメント層からは「eラーニングがわかりやすかった」「部下から相談された際の指針があることで、思いやりを持った行動ができるようになった」といったポジティブな声をもらえたことも、手応えを感じた出来事でした。
企画から導入まで携わってきたことで、2人もそれぞれに気づいたこと、学んだことがあったと話します。
山崎:私たちが想像していた以上に、こうした健康課題を抱えている当事者が多かったのだと知りました。これまで誰にも言い出せずにいた従業員に制度がしっかり届いていることが嬉しいですね。
田中:男性の更年期障害については、私自身も本プロジェクトを通してあらためて学ぶことが多くありました。とくにベテラン層の男性社員の中には、自身の弱みを表に出すことに抵抗を感じる方が少なくなく、年下の上司や女性の上司に悩みを相談することの心理的ハードルが、想像以上に高いという実態も知りました。
「Wellness Advance」の導入については社外にも情報発信を行いましたが、じつは男性の更年期障害への取り組みに対する反響が最も大きかったのです。認知度が依然として低く、自身の不調が更年期障害に起因している可能性があることに気づいていない方が多くいらっしゃるのだと感じています。
今後も、そうした方々に向けて継続的にアプローチを行い、より多くの方が自身の健康課題に気づき、適切なサポートにつながるよう取り組んでいきたいと考えています。
「心の豊かさ」の前提にある「自分らしく生きる」ことを支える土台を作っていきたい
「Wellness Advance」をさらに浸透させていくための新たな課題も見えてきています。
山崎:風土の醸成については、今後も継続して取り組んでいく必要があると考えます。JTは47都道府県に拠点を構えていますが、拠点ごとに男女比率や年代構成が異なるため、制度利用に対する受け止め方にも違いが生じる可能性があります。そのため、「必要な時には制度を使っていい」という文化を全社に浸透さていくことが、私たちの長期的な課題です。
また、社内イベントや積極的な発信を通して、まずは制度の存在を知ってもらう機会を増やしていくことが重要だと考えています。加えて、新たに寄せられた質問や意見を反映させ、ガイドブックを継続的にアップデートしていくことも欠かせません。
田中:地方拠点は、保健師との距離が近い点も特徴です。健康診断後の面談の際に、更年期障害といった性差に基づく健康課題に関する話題を取り上げてもらうなど、多角的なアプローチで認知を広げていきたいと考えています。こうした取り組みを通じて、自発的な改善活動が生まれるような環境を育んでいきたいですね。
会社の成長のために、将来を見据えながら従業員が自分らしく働き続けられる環境を実現するというミッションに挑んでいるCorporate Rewardsチーム。「Wellness Advance」などを通じで、2人が描くJTの未来とは──
田中:JTは「多様な人財が活躍できること」を大切にしています。年齢や性別に関係なく、誰もが活躍できる環境を「制度」と「風土」の両輪で作っていきたいと思っています。それが会社の成長につながると信じています。
山崎:JTのめざす「心の豊かさ」の前提には、「一人ひとりが自分らしく生きること」があると思います。更年期障害や月経随伴症状などの健康課題が、自分らしくあることを妨げる壁となっているのであれば、その壁を取り払いたい。従業員全員が心の豊かさを感じながら働ける職場を実現するために、今後もその土台づくりに挑戦していきたいですね。
※ 記載内容は2025年12月時点のものです
「Wellness Advance」の詳細はこちら▶︎ https://www.jti.co.jp/investors/library/press_releases/20251112_J01.html

