仕事は山積み、でももう終電の時間…… 疲弊しかない現状を打破したい
1997年に創業したHameeは、モバイルアクセサリーの企画・販売を中心として事業領域を広げてきました。
当時の主流アイテムといえば、携帯のストラップ。Hameeでも多くの商品を企画し、ネットショップを中心に販売していました。
平野芳恵は2007年にHameeに入社。前職での経験を活かし、CRマネジメント部でカスタマーサポート業務に携わることとなります。
平野 「もともとHameeのことは知っていたので、運命的に『ここだ!』と感じて入社を決めました。カスタマーサポートと言えば大変そうなイメージですが、人とつながりを持てるという点が魅力的でした」
とはいえ、当時の職場の状況を振り返ると「率直に、ひどかった(笑)」という一言に尽きます。
平野 「とにかく問い合わせをさばきまくる!という状態でしたね。昼休みの休憩もままならず、電話の合間におにぎりを頬張り、それすらも無理やり飲み込んで次の電話に出る……という感じです」
年末商戦が激しくなる繁忙期ともなれば、殺到する問い合わせに対応するだけで精一杯の日々。業務は山積みでも終電の時間が迫り「もう終電だ!」と、バタバタ帰宅するのがいつもの光景でした。
仕事のボリュームが大きすぎるがゆえに、常に疲れ切っているメンバーたち。ほっとする時間もなく、気さくに話す余裕さえありません。
平野 「かつての携帯(ガラケー)って、メーカーや機種によって本当に多種多様だったんです。新機種が出るたびにキャリアからカタログを取り寄せ、問い合わせに備えていました。それでも数が多過ぎて、対応機種を特定するだけでも一苦労でしたね」
贈答用で商品購入を希望するお客様の場合、利用したい機種が明確にわからないケースが少なくありません。正確に回答するためにはヒアリングを重ねなければならず、おのずと対応時間も長くなります。
さらには、メールによる問い合わせも莫大な件数に。最も多かった頃、メンバー1人あたり月間に2000件のメール返信を行なっていました。
蓄積する疲労、一息つく余裕もない殺伐とした雰囲気……。「必死の形相が怖くて話しかけられない」「あの部署にだけは行きたくない」という、社内人気ワースト1部署の烙印を押されていました。
それでも、平野は信じていました。カスタマーサポートはお客様とつながれる“やりがいのある仕事”だ、と。そして、疲弊の連鎖を断ち切るために、現状打破の一歩を踏み出す決意をしたのです。
常識破りの“断捨離”を行ない 時間と心にゆとりが生まれた
そもそもカスタマーサポートは、決してお客様から一方的に怒られる仕事ではありません。もちろん、やり取りを通じてお客様からご指摘をいただいたり、対応が長引いてしまったりすることはあります。
それでも、最終的にお客様から直接「ありがとう」の一言を聞けたときのやりがいや喜びが、この仕事の醍醐味だと平野は考えていました。
平野 「だからこそ、対応の質を上げるために何としても時間的にも心理的にもゆとりがほしかったんです。『こんな対応でお客様に喜んでいただけた』という内容をメンバー間で共有できれば、CRマネジメント部全体のレベルアップにもつながりますから」
そんな想いはありながらも、現実は多忙を極める殺伐とした毎日。2016年からリアル店舗で販売している商品のサポートもスタートし、さらなるお客様対応を行なっていくこととなったのです。
ネットだけでも大変なのに、さらにリアル店舗での対応など可能なのか。どうすればこの多忙な実情から脱せるのだろうか――。
そんな不安とレベルアップを希求する想いからたどり着いたのが、業務の“断捨離”でした。まずは、業務負担を軽減し、ゆとりある時間を創出するために、カスタマーサポートの対応を1時間短縮することにしたのです。
平野 「当社は 18時 30分が終業の定時ですが、以前は 18時 30分まで電話対応を行ないました。ですから、当然ながらその後に行なう業務はすべて残業。しっかりとミーティングをしたくても、時間がどんどん後ろに押されてしまいがちでした」
たった1時間、されど1時間です。このゆとりは、CRマネジメント部に時間以上の大きな変化をもたらしてくれました。
平野 「負担軽減はもとより『改善なんてできない』『この忙しさは変えられない』という考え方から抜け出すきっかけになりました。いわば成功体験になったんです。やればできると実感できたことで、部内に明るい光が射したように思いました」
ひとつできたら、ほかにも挑戦してみたくなるのがひとの心。改めて業務を見直し、断捨離を進めていくなかで改善への道が拓けていきました。
当たり前を見直す断捨離で 仕事は驚くほどスマートになる
CRマネジメント部では、対応時間の短縮を皮切りにさらなる断捨離を進めていきました。
平野 「次に着目したのが、決済方法です。選択肢の多さはサービスの充実である反面、迷いを生む原因ともなっていました。
特にお問い合わせが多かったのが、コンビニ支払いや携帯キャリアを経由する前払い決済。お支払い確認ができなければ商品を発送できないので、ほかの決済方法と比べてお客様からのお問い合わせ件数も多かったんです」
ここでも、断捨離。前払い決済は廃止にしてしまいました。実施前は売上低下が心配されたものの、特に影響は認められないという結果に。
平野 「方法が限られたら限られたなりに、お客様はその中から選んでくださるんだ、ということがよくわかりました。選択肢が多い方がお客様は喜ばれるはず……というのは、売り手目線の思い込みだったんです」
その後、ネット上のショッピングモールの規約変更により、前払い決済を再開することになります。そこで今度は代金引換を廃止に。以前の状況に逆戻りすることがないように、何かをはじめるなら何かを辞めるというスタンスを守っています。
平野 「まさに断捨離の発想です。辞めるだけ、削るだけではなく、本当に必要なものを吟味して選ぶという姿勢です」
さらには、仕組みによる自動化にも着手。各ネットショッピングモールからの受注作業に伴う作業や、返品に伴う商品状況の確認や在庫管理といった作業は、必ずしも人力で行なう必要はありません。ヒューマンエラー防止の観点からも、自社開発のクラウド(SaaS)型ECプラットフォーム「ネクストエンジン」による自動化を進めています。
平野 「断捨離をはじめた背景と同じで、まずはスタッフが関わる作業負担を少しでも減らしたい。そして、空いた時間は商品のクオリティの改善に向けて他部署と連携したり、Hameeのファンを増やすべく情報発信などを行ない、よりお客様満足に直結する仕事に充てていきたいと考えています」
著しい技術進歩を遂げているAIの活用なども、今後はショッピングモールの規定などと足並みを合わせながら検討していくかもしれません。
断捨離や自動化の導入など、数々の挑戦を成功に結びつけてきたHameeのCRマネジメント部。その本質的な勝因は、果たしてどこにあったのでしょうか――?
全員が見つめる先にいつも 理想の姿を思い描くことが大切
さまざまな取り組みをはじめるとき、すなわち破壊的に多忙だったときに、それでもメンバーを集めて平野が実行したこと……それは、ありとあらゆる希望と理想を明確に書き出す作業でした。
忙しさを極めていた当時は、それだけの時間を捻出することさえ高いハードルとなっていました。
平野 「断捨離をすると決めたら、そのための準備が業務に乗っかってくるわけです。『そこまでしてわざわざ取り組む意味ある?』と懐疑的になる気持ちもわかります。だからこそ、一番初めに、全員で理想を思い描き、全員で共有したんです」
目の前の仕事に追われると、その先を見つめる余裕が失われてしまうもの。でも、そんな時こそ「私たちが実現したい理想はこっちだよ」と道筋を見つめ直すのが大事。
メンバー全員が目指すべき理想を共有していれば、おのずと一致団結して助け合う雰囲気が生まれていくのだと平野は語ります。
平野 「やりがいがあるとはいえ、カスタマーサポートの仕事には疲れやストレスがつきもの。でも同じ境遇にいるメンバー同士が“みんなでがんばっている”と想いを共有できれば、信頼関係が生まれます。
断捨離や自動化といった新たな挑戦も、絆や信頼、一体感などが根底にあったからこそ成功したんだと思っています」最近では、業務時間内に雑談を交わすゆとりも生まれてきたCRマネジメント部。メンバーの表情には笑顔があふれ、コミュニケーションも格段に増えました。最近では、CRマネジメント部への異動希望の声も上がるようになっています。
平野 「数年前までは『必死過ぎて怖い』人気ワースト1の部署だったのに(笑)ひとつの成功体験が呼び水になり、最近はメンバーからも『もっとこうしたい』という声が上がるようになりました。良い方への変化は大歓迎。キャリア形成に役立つ経験を積むためにも、スタッフにはどんどん新しい挑戦を推奨していきたい」お客様と直接つながりをはぐくむCRマネジメント部。そのお声には、商品開発や事業運営におけるたくさんのヒントが隠れています。
平野 「たとえば、“私たちが売りたい商品”と“お客様が買いたい商品”のギャップを埋めるためには、接点を担う私たちが社内に声を発していかねばならない。お問い合わせに応え、さらにその先の広がりを生み出していくことも、大きな使命だと思っています」変化をいとわず、変わり続けるHameeらしさ。その姿勢を体現するCRマネジメント部が起こした変化の波が、Hameeを次なる新たなステージへと導いてくれるのかもしれません。
※所属、業務内容は取材時時点の内容となります。
