「利益」の変化に気づいた2人
ふたりは、平内がプーマジャパンの社長を退任後に就任したクオンタムリープの社長時代に知り合い、平内の退任後、野々宮がクオンタムリープ共同社長に就いたという間柄です。
平内 「真剣にソーシャルビジネスに取り組みたいと唐突に熱弁する野々宮さんの顔を見ながら、もしかしたら身体に何か重大な問題が起きたのかも、と思ったよ(笑)」
野々宮はその頃、20歳前後のメンバーらと共に海外向けメディアの立ち上げを進めていて、毎日のように彼らの新しい感性を大量に浴びている時期でした。
そうした日々の中で、彼は世の中の感性の大きな変化を感じ、市場から共感を得ることの意味を考え直すようになっていたのです。そして、社会貢献が持つ力を再認識するようになっていました。
実はそれまで、野々宮は社会起業やソーシャルビジネスに対して否定的な立場を取っていました。
野々宮 「ビジネスは社会貢献することが当然で、それをわざわざキーワードにして喧伝することに違和感がありました。まずは稼ぐ力を身に付けるのが先だろ。――それまではそう考えていました(笑)」
しかし約半年間、それまでビジネス上ではあまり深い接点を持っていなかった、アフター・ザ・インターネット世代の彼らと毎日のように時間をともにした野々宮。
その中で、インターネットが世の中に及ぼしたインパクトの大きさと、彼・彼女らにとっての“かっこよさ”の意味が、いつしか大きく変容していることを実感するようになったのです。
野々宮 「その時期、世の中の利益の優先順位が、個人利益から社会利益にシフトしていっていると強く感じました。だからこそあの夜、平内さんの感覚と比べてみたかったんです」
一方その頃、平内も、これまでの企業経営で部下に感じていたのとは違う、世代間の感覚の差だけでは説明がつかない価値観の変化を、20歳前後に成長した自分の子どもたちから感じていました。
それは平内にとって、自分たちの世代の若い頃とは、「生きている目的」そのものが変わってきているような感覚でした。
平内 「野々宮さんが話している内容には最初は一部懐疑的でしたが、じっくりと聞いているうちに、子どもたちの意志や行動の多くに合点がいくようになったんです」
そうしてふたりは、全く異なる経緯で感じていた世の中の価値観の大きなシフトを、期せずして突き合わせることになったのです。
人生初の「インターン」という肩書
野々宮「優先順位はこれまでと変わらず、事業収益が上なんです。ただ、目的を達成する順番は社会貢献を劣後させないようなバランスを求めていました。いっぱい稼いで人の役にたてればいいんじゃないですか? でも、いっぱい稼ぐと同時に役に立てれば最高だよね!って」
野々宮は、ソーシャルグッドベンチャーを起業するにあたり、社会貢献を優先するばかりに小さなことにだけ注力していると、大したインパクトが得られず、本質的には社会貢献にならずに終わってしまうことを危惧したのです。
そこで事業の立ち上げに際し、より大きなインパクトが期待できる既存商社など、他社との共同事業方式で複数プロジェクトを進行させるモデルを採用しました。
野々宮はすぐさま平内に協力を要請し、ふたりで平内の関わり方を考えることに。大企業の経営経験者がベンチャーに関与する場合、「顧問」や「相談役」に就任するのが一般的です。しかしそうではなく、シニアとしての役割を果たしながらも、新世代の価値観を平内自身が学び、感じ取れると同時に、彼自身がその価値観を活かせる環境を重視することにしたのです。
結果、導き出された最適なポジションが【 インターン 】だったのです。
野々宮 「平内さん自身が、自分の子ども世代から多くを吸収して、元来の経営力をもって多くの企業に影響を与えたり、自ら新たに事業を開始する可能性を考えると、より多くの感性を吸収しやすいポジションが最適だと考えました」
平内 「平均年齢が20代、学生インターンも参加している若い会社で、経営陣も含めた皆が遠慮なく接することができ、自分も新しいことを学ぶ環境なので、インターンっていうのは面白いな!と思ったんです」
その日以来、外国人インターンや学生インターンと、“新人”シニアインターンである平内は、共に机を並べることになったのです。
相乗効果Driven
ほどなくして、映画「マイ・インターン」さながら、最初は平内に対してどう接していいものかと遠慮気味だった学生インターンたちが、仕事のみならず、就活をはじめとしたさまざまな相談を持ちかけるようになりました。
また平内は、まさに親子ほど歳の離れた“インターン仲間”と同列に接することで、自身の常識や価値観によるフィードバックやアドバイスをしながら、彼らのそれとを日常的に比較することができるようになりました。
平内 「与えるだけではなく、最新の常識や感性を吸収することができる環境は学びが多く、これからの自分の人生をワクワクさせるような要素にも出会えるよね」
野々宮 「すぐ横に経営者OBが居るインターンシッププログラム。僕から見ても羨ましい環境ですよ」
一方、経営陣にとっても、平内と日々気軽に接することができる環境はメリットをもたらしました。平内に対してフラットな関係でさまざまな相談が可能になったのです。
野々宮 「まるで壁打ちのように、日常的に平内さんに思っていることや考えていることを話していると、いつの間にかするべきことや方向性が定まってくることを何度も経験しました」
平内は、そんな経営陣の話を聴きながら、自律的に自身のネットワークや経験を活かして、気負わずに必要な各リソースを GOODGOODに投入できるようになりました。
インターンとして気負わず仕事を進められることで柔軟性が生まれ、結果として競争力のある提案となる場合も多々あります。実際に平内が新たに身につけた感覚により、老舗商社の理解を得て、共同事業に発展したケースも存在します。
シニア・リセット = チャーミング
しかし今の時代は、そんなことよりも柔軟な思考と、経験に裏打ちされた強力な実行力をもって、いかに社会や組織に貢献できるかが問われます。
野々宮 「アフター・ザ・インターネット世代は、私たちの世代とはDNAが書き換わったくらいの進化を感じます。さらにスマホ・ネイティヴである彼らが時代を作りはじめている今、ITビジネス云々ではなく、人の生き方や生きる目的そのものが変わってきているんです。僕ら経営者はこれをいち早く実感して、新たなビジネスモデルを創り出していく必要があります。だからこそ、この大きな変化を受容したシニアは、社会や企業にとって強力な援軍になりますよ」
平内 「自分たちの世代はまだまだ先が長いので、これまでの価値観や経験に固執するのではなく、新しい価値観にこれまでの経験をアジャストさせていくことで、人生をより楽しめるのではないでしょうか」
定年ーー。それはビジネスシニアが、自ら立場をリセットして今の時代と向き合ってみる良い機会かもしれません。そして、“今の時代”はそれを容易に受け入れる環境にあります。
一般的な定年の年齢を迎えても、まだまだビジネスに関わっていこう。そう考えるとき、闇雲に自身の経験を連続的に活かそうとするのではなく、まず、大きく変容した社会の価値観を理解してから自身の活躍できる場所を探していく。
それならば、“シニアインターン”としてビジネスと関わることは、その後の可能性を膨らませる上でも最適なポジションや過程なのかもしれません。
野々宮 「今の若い人はビックリするくらいに賢くなっています。それを真に理解し、受容したビジネスシニアには、形態を問わず社会を動かしていく可能性を感じます。また、そういった人には皆、同様にチャーミングさを感じるんですよね」
真剣な人が一瞬緩んだ瞬間、チャーミングな空気が生まれます。人生のアクセルを一瞬緩めたチャーミングなシニアと共に、まったく新しい世界をーー。
野々宮と平内とは、お互いのまったく異なる人生をフラットな関係で活かしあって、さらに若い世代を巻き込んだ“大人ソーシャルグッド”に取り組むことで、改革が困難といわれてきた業界を中心に、GOODGOODなインパクトをもたらしていこうとしています。
『本物はいつもチャーミングだ。』――GOODGOOD Inc.
▼平内優 1957年神戸市生まれ
1982年ソニー株式会社 入社
2004年アディダスジャパン株式会社 取締役副社長
2006年株式会社ユニクロ 執行役員
2009年プーマジャパン株式会社 代表取締役社長
2011年クオンタムリープ株式会社 代表取締役社長
2015年VAIO株式会社 執行役員
2016年GOODGOOD合同会社 インターン (Mar.2017現在)
