「できません」は言いたくない──常に違う選択肢を探す姿勢

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2021年9月現在、大規模ECサイトのフロントエンド開発を担当しています。

ただ100%フロントエンドというよりは、必要に応じてバックエンドの軽微な修正を行うこともありますね。最近はプロダクトオーナーのサポートにも、チャレンジの一環として携わらせてもらっています。

仕事をする上で意識していることが三つあります。

一つ目は、目的に主眼を置くことです。というのも、過去に、手段を実現することに注力してしまって、後から、実はもっと簡単な方法が見つかるという経験をしたことがあるんです。油断すると手段に注目しがちなので、目的を忘れないことを意識しています。

二つ目は、「できません」と言わないことです。「できません」と伝えるときは、自分が想像できる範囲内で考えてしまい、答えを出す条件を自分で狭めているんです。目的に主眼を置いているからこそ、他に手段がないか探し、実現できないか考えるようにしています。

三つ目は、「いかに苦しまず求められているパフォーマンスを出せるか」考えることです。

なぜ、これらを意識するようになったのかを考えると、クライアントとやりとりをする中で、双方が苦しまないための工夫をしたいという想いが根底にあるからだと思います。

クライアントが開発側に不安を持つことや、クライアントに合わせて開発側が苦しむことは嫌なんです。なので、お互いが納得できることがベストだと思っています。

具体的に言うと、明らかに残業過多になっていないかとか、業務量の負荷が高くなっていないかを気にしながら作業しています。また、複数人のチームで動くこともあるので、チームの雰囲気や居心地が悪くないかも意識している部分です。

win-winの関係を築くには、開発側がやっていることをクライアントにわかってもらう必要がありますし、逆にクライアントが何をしたいかも開発側がとことんわからないといけません。そのため、すぐに「できません」と言わず、わかろうとする姿勢を大切にしていますね。

WEB業界のアルバイトで身に染みた「マイナスからゼロにする」大切さ

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今のような考え方になったのは、23歳のとき、WEB業界でアルバイトをしたことがきっかけです。

20歳で社会に出ていたのですが、ITは未経験だったので、アシスタントの立ち位置で働いていました。当時は相互リンクするのが流行っていた時期だったので、ひたすら相互リンクをお願いするためにメールを送る作業などをしていましたね。

その後、サイト制作にも携わらせてもらうようになったのですが、そのときにした提案が自分の中では転機になっています。というのも、その業務の中で、プログラムを使って効率的な制作ができるのではないかと提案したんです。それまでは膨大な手作業を行っていたので、そこを自動化できたら仕事がもっと楽になるのにと思っていました。

周りには「そこまでやらなくていい」と言われましたが、とにかくやってみることにしました。成功する根拠は何もなかったのですが、他のサイトでやっているんだから、できるのではないかと思ったんです。

決して自分にとって簡単ではない取り組みでしたが、それでもなんとか提案した内容を実装してみたところ、「とても便利になった」と大変喜んでくれました。

これがきっかけとなって、「実はこんなことができるといいなと思っていた」といった、やりたいけどできそうになくて諦めていたアイデアを、当時担当していた制作案件はもちろん、他案件の方からも相談されるようになっていきました。

当時、とくに意識はしてなかったのですが、おそらく最初に提案した効率化の実現が、みんなの理想を実現するにあたっての中継地点になって、メンバーの思考も「できない」から「できるかも」に変化したのではないかと思います。

こういうちょっとした業務負荷をなくしていくことが、その後の働きやすさや考え方の変化につながります。

そのためにもまず、マイナスとなっている部分を見つけ、改善することでゼロにする。その上で、より楽しく発展するような施策を考えていく。そんな意識が大切です。

そうすることで、最初から理想を目指すよりも、その過程をないがしろにせず取り組むことができるのです。

つくりたいものがあるから手段を身に付ける。ひとつに固執しないために

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▲川勝が開発した「Zoom背景画像ジェネレータ」

長くこの業界に身を置いてきましたが、IT系エンジニアの方々は、自分の得意分野をはっきり持たれていて、その分野をより深くしていく方が多いように感じます。

でも、実を言うと僕はそれが苦手で……。同じ分野を学習し続けるのではなく、手段に固執しないで取り組む傾向にあるんです。

何かつくりたいものがあって、そのために道具、手段を選ぶ考え方なので、技術学習を行う目的がないと、退屈になってしまいますね。そういう意味で今やっている業務は、ECサイトをより良く改修していくというはっきりした目的があります。

たいてい改修業務は、運用・保守という形で扱われることが多いと思うのですが、古いシステムであればあるほど設計に無理が出てくるんです。

だから、要件自体はシンプルでも、実装となると難しい。そこをどう簡単にするかというプロセスは、パズルを解くのに近い面白さがあります。それに、難解な状況から改修できたからこその経験がたまっていくため達成感もあります。うまく行くかどうかは別として、どの技術や道具を選んだら、目的が達成できるかを考えること自体が面白いですね。

業務外ではそれとは逆で、いろんな手段を試したくて目的を探していることもあります。

最近だと、YUMEMIロゴが入った画像に自身の名前を入力することで、Zoomで使用する背景画像を生成できるツールをつくりました。社内では、デザインツールであるFigmaを各自が操作して背景画像をつくるように案内されていたのですが、誤操作でデータを壊してしまう不安があったので、ジェネレータを自分用につくろうと思って開発し始めました。

使用している技術は主にCanvasやSVGです。これらは数年前から興味があった技術でしたが、何かつくりたいものがないとその技術を使うモチベーションがあがらなかったんです。

「Zoom背景画像ジェネレータをつくる」という目的が見つかったことで、それなら前から興味あった技術が使えそうだなと思い至りました。それが実際に手を動かし始める大きな要因のひとつになってますね。

この技術使ってみたいという意欲が先にあって、そこにちょうど良さそうな目的が現れたので試してみることもあります。

根本的には自分が書いてみたものが動いてくれることが、ひたすら楽しいんです。

展望がなくても大丈夫。常に仕事を面白くするための考え方

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僕は、どんなこともどうしたら面白くなるのかを考えています。面白くないと感じていることを「しょうがない」と割り切ってしまうのは、もったいないと思ってしまうんです。

たしかに、ある程度の規模になると、例え形骸化していても慣れたものに従っていた方が、考えることが少ないので楽ではあります。そこにつまらなさや無駄を感じていても、誰かが面白くしてくれるのを待つ方が楽かもしれません。しかし僕は退屈さが続くほうが嫌なんです。

そもそも面白くない仕事を面白くできる人間は、その仕事を扱っている当事者である僕らのはずです。「仕事が面白くない」と感じるのなら、自分自身で面白くしていかないといけません。

理想をいうと、立場は関係なく関わっている人間すべてが、面白くするために考えていくほうが良いと思います。クライアントも同じフィールドに立っているならば、クライアントも含めてです。     

ただ、面白くすることを強要するのではなく、関わる人に「良さそう」、「いいね」と思ってもらって、自然と一緒に考えたくなる状態にすることをまずは頑張って考えた方がいいなと思っています。

そんな考えを持つ僕ですが、今後の展望は今のところありません(笑)。

この姿を見て「別に展望がなきゃいけないわけじゃないのか」と思ってくれたら嬉しいです。ゆめみは展望がなくても認めてくれる自由さがあるんです。

展望があることは大切だとは思いますが、なくてしんどいと感じている人もいると思いますし、僕自身、先のことを考えられない自分を、自己否定的に見ていたときもあります。

ただ、自身を振り返ってみると、思い通りに物事が進んだことってほとんどないんですよね。今に全力を尽くしていたら、なんとかなることが多い。全然想定していなかった状況でも、目の前にある問題を少しずつ解決していくことで別のハイレベルな将来像が生まれることもあるのではないかと考えています。

なので、無理やり将来像を考えるくらいなら、「将来像を考える理由はなんなのか」、「将来像を持つ事自体が目的になってしまってないか」を考えてみるのも良いんじゃないかと。そして、将来像を持たないという選択肢もあると思ってほしいです。

多種多様な選択肢を持つことで、自身が想像すらしてなかった選択肢に気づけることもあるでしょう。

バイアスにとらわれて、「できない」と決めつけるのではなく、なんでも楽しんでやってみる。僕自身、そんな現状に面白さを見出す姿勢をこれからも大切にしていきたいです。